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インタビュー

【RIZIN】伝わらなかった言葉──山本美憂を破ったハム・ソヒが伝えたかったこと

2019/10/19 21:10
【RIZIN】伝わらなかった言葉──山本美憂を破ったハム・ソヒが伝えたかったこと

(C)RIZIN FF, ROAD FC, GONG KAKUTOGI

2019年10月12日(土)エディオンアリーナ大阪にて開催された『RIZIN.19』で、女子総合格闘技の黎明期から日本でキャリアを積んできたハム・ソヒ(韓国)が山本美憂(KRAZY BEE/SPIKE 22)と対戦。2R4分42秒、TKOで勝利し、試合後、複雑な心境を語った。

レスリング世界選手権で3度優勝の実績を誇り、MMAでも4連勝中だった山本を相手に、現ROAD FC女子アトム級(-48kg)王者のハム・ソヒは経験豊富な試合運びで山本を手詰まりにさせた。

山本の低いシングルレッグ(片足タックル)を何度も切り、サウスポー構えから右ジャブ、左ストレートを当てて距離を制すると、山本のタックルを受けても両足を後方に飛ばしてがぶり。山本を亀にさせると胸で相手をしっかり抑え、対角の足首を掴んで向き合えないようにすると鉄槌を連打。最後は動けない山本を見てレフェリーが試合を止めた。

ゴングが鳴らされた直後、出血した山本を見て、思わずソヒは山本にハグ。右手を両手で握りうなだれると、山本が顔を上げ、ソヒの両手を引き上げて笑顔で勝者を祝福した。

試合後、ソヒはリング上で日本語で、「今日の試合はほんとうに嬉しいけど……なんか寂しいです」と涙声。「山本選手との試合が決まり、とてもワクワクしましたが、実際に試合をしてみて嬉しい気持ちもありましたけど、悲しい気持ちにもなりました」と、複雑な心境を吐露した。

もともと韓国ではキックボクシングや散打で活躍していたソヒは、2007年2月16日の「DEEP」後楽園ホール大会で初来日し、MMAに挑戦。デビュー戦では判定勝利を収めたものの、MIKUや辻結花、藤井惠、浜崎朱加といったグラップリングの実力者たちに敗れるなど、キャリアの初期に辛酸を舐めてきた。

まだ女子格闘技が世間から認知を得られていない時代から、日本での戦いを経て、MMAファイターへと成長したソヒにとって、レスリング界のビッグネームである山本美憂がセカンドキャリアにMMMAを選択し、そして日本のメジャーリングで自分と戦うことになるとは、当時は思いもしなかったという。

2015年から2016年にかけては、世界最高峰のUFCにも参戦。1勝2敗と勝ち星に恵まれなかったが、115ポンド、つまり52.5kg(※王座戦以外は+450gまで認められる)と、現在より4.5kgも重い階級で世界では戦わなければならなかった。

一時は引退も考えていたソヒにとって、今回の山本戦はこの12年間、試行錯誤を重ね、磨き上げたMMAの結晶が試合に現れていたと言える。

リング上で「寂しい」と語ったのは、「山本選手のバックボーンや背景を全部知っているので、そのような気持ちになったのだと思います」と、自身とは異なる道のりながら、他競技からMMAに転向し、連敗や、弟・山本“KID”徳郁の他界を乗り越えて、連勝から王座挑戦者決定戦に進んできた美憂の夢を、自身の拳で打ち砕いたことへの素直な気持ちの表れだったのだろう。

日本語で「ほんとうにすみません。これから練習一生懸命、やります。これからも応援よろしくお願いします」と語ったのは、その思いを日本のファンに伝えたかったからだった。

しかし、リング上では、伝わらない言葉もあった。

山本戦後、場内のコールに呼び出されリングに上がった現RIZIN女子スーパーアトム級王者・浜崎朱加がコメントを求められ、「一言ハムちゃん強いなって。過去2回やって、一応勝っていますが、3度目もしっかり極めて勝たせていただきたいと思います」と挨拶すると、マイクはソヒにも向けられた。

ソヒは通訳を通して「大晦日とにかく勝ちます。浜崎さんにひとつだけ言いたいと思います、2回負けたので、3回目はないと思います」と強気の発言で場内を沸かせた。

しかし、その通訳はニュアンスが異なっていた。実際には「大晦日、絶対頑張ります。浜崎さんに言いたいことがひとつあります。私は2回も負けたのに3回目も試合の機会を与えてくれて、本当にありがとうございます」と、王者・浜崎に大きな敬意を持って、ソヒはみたび浜崎と戦えることに感謝の言葉を述べていた。

2019年6月の「RIZIN.16」で浜崎は現Invicta FCアトム級王者ジン・ユ・フレイと対戦。序盤はフレイの打撃に苦しみながらも、後半に得意の柔道技の払い腰でテイクダウンを奪い、トータルジャッジのRIZINで判定3-0で初防衛に成功している。

そのフレイとソヒは、2017年12月の「Road FC女子アトム級選手権試合」で王者として対戦。1Rにカウンターの左ストレートからの鉄槌でTKOに下し、ソヒが王座防衛に成功している。

そして、ソヒと浜崎は2010年12月と2011年12月にJEWELSライト級(-52kg)王座を巡り2度対戦しており、いずれも浜崎がソヒを下し、戴冠を阻んでいる。

今年7月にRIZINに初参戦し、約5年ぶりとなる日本での試合でDEEP JEWELSアトム級王者・前澤智をKOしていたソヒ。RIZINで2連勝を決めたソヒは試合後の会見で、こうも語っている

「浜崎選手とは9年前に試合(2010年12月17日・判定0-3)をしたときも、2戦目(2011年12月17日・1R終了時 TKO※タオル投入)も自分より上にいる選手だと思っていました。今回は3戦目になりますが、1戦目、2戦目に恥ずかしくない試合をしたいと思います」

「3回も試合の機会を与えてくれた」「1戦目、2戦目に恥ずかしくない試合を」──ソヒにとって、大晦日の試合は、単なるタイトルマッチではない。日本でキックボクシングから総合格闘技に挑戦した、これまでの軌跡が何であったのかを証明する、大一番となる。

試合後、バックステージでソヒが語った一問一答は以下の通り。会見の最後には、ソヒが視力が悪すぎて「相手がちゃんと見える状態で試合をしたことがない」ことも告白している。

同じ人間として、同じ女性として、今日の試合はなぜか心が痛む試合でした

──試合直後の率直な感想をお聞かせください。

「試合に勝って嬉しい気分もありますが、心はちょっと寂しい気持ちです」

──対戦を終えて、相手の印象は?

「試合をする前から強くて凄い選手だと思っていましたが、実際に試合をしてみたら、考えていたより強い選手だと思いました」

──今後の展望を教えて下さい。

「ただ、これからも頑張っていきたいと思います」

──試合が終わった後にリング上で山本美憂選手と話していましたが、どんな言葉を交わしましたか?

「……(感極まり言葉に詰まり)特別な言葉を交わしたわけではありませんが、同じ人間として、女性として、今日の試合はなぜか心が痛む試合でした」

──浜崎選手と3戦目を迎えますが、浜崎選手も成長していると思います。どうとらえていますか?

「浜崎選手とは9年前に試合(2010年12月17日・判定0-3)をしたときも、2戦目(2011年12月17日・1R終了時 TKO※タオル投入)も自分より上にいる選手だと思っていました。今回は3戦目になりますが、1戦目、2戦目に恥ずかしくない試合をしたいと思います」

──「悲しい」「寂しい」とはやりたいことが出来なかったのか、美憂選手と試合をするなかで互いに感情が反応したのか、どういう気持なのか教えて下さい。

「試合の作戦が上手く行かなかったとは全く感じていませんでした。同じ人間として、女性として、相手に害を与えるということに対して、そのような(悲しい)気持ちになりました」

──今までそういう気持ちになったことはありますか?

「今まではここまで心が荒んだ悲しい気持ちになったことはありませんが、今日はなぜだか分かりませんが、そういう気持ちになりました」

──山本選手にそう思わせる特別なものがあったのでしょうか。

「特別なことがあったわけではないですが、山本選手のバックボーンや背景の話などを全部知っているので、そのような気持ちになったのだと思います」

──ところでメガネ姿が印象的ですが、視力はいくつですか? 試合に影響はないですか?

「視力は-4.5です。今まで試合をする中で相手の姿をちゃんと見えていないので形だけ見える状態で試合をしていました。私の一番の願いは、相手がちゃんと見える状態で試合をしてみたいと思います」

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