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【RIZIN】朝倉海が佐々木憂流迦を1R TKO! 堀口恭司と大晦日再戦が決定。ハム・ソヒは美憂退け浜崎朱加戦へ、RENA再起戦でTKO勝利、ライト級GPは川尻・上迫敗れ、海外4選手が準決勝進出

2019/10/12 14:10
2019年10月12日(土)エディオンアリーナ大阪にて『RIZIN.19』が開催された。大会は台風第19号が接近するなか、予定通り、14時からスタート。5098人の観衆を集めて行われた。 注目のバンタム級対決では、朝倉海が佐々木憂流迦を右ストレートを効かせて1R わずか54秒でTKO、大晦日の堀口恭司とのベルトをかけた再戦が決定。女子スーパーアトム級では、韓国のハム・ソヒが4連勝中だった山本美憂を退け、王者・浜崎朱加との王座戦を決めた。 また、6月の米国ニューヨーク州マジソンスクエアガーデンで開催された『Bellator 222』で一本負けしていたRENAは再起戦でTKO勝利、ライト級GPでは日本の川尻達也・上迫博仁が敗れ、年末の準決勝はトフィック・ムサエフvsジョニー・ケース、パトリッキー・フレイレvsルイス・グスタボに決定している。 ▼第13試合 100kg契約 5分3R ※ヒジ有り○イリー・プロハースカ(チェコ)[1R 1分47秒 KO]×ファビオ・マルドナド(ブラジル) RIZIN初代ライトヘビー級王者イリー・プロハースカ(チェコ)が、元UFCファイターのファビオ・マルドナド(ブラジル)と対戦。 プロハースカはムエタイとレスリングをバックボーンに持ち、2012年に母国チェコでプロデビュー。2015年末のRIZINに初来日し、ヘビー級GP1回戦で石井慧をKO、決勝ではキング・モーに敗れたものの準優勝を果たした。その後はRIZINに継続参戦し、2016年4月には藤田和之をKOするなど連勝を重ね、今年4月にはモーにリベンジを果たしてRIZINライトヘビー級王座を獲得した。 対戦相手のマルドナドは、MMA25勝13敗。プロボクシングでも26勝3敗の戦績を誇るブラジルのストライカーは、MMAでは2018年12月のチアゴ・シウバ・バティスタ戦での1R KO勝利以来の試合に臨む。2016年6月には、EFN 50のメインイベントでエメリヤーエンコ・ヒョードルから1Rにダウンを奪いKO寸前まで追い詰めている。 1R、プロハースカは長いジャブでマルドナドを入れさせず。右を入れると、効かされたマルドナドが頭を押さえて後退。コーナーに詰めたプロハースカは右ストレートを突き刺すと、左の返し、さらに右ストレートでマルドナドをマットに沈めた。 試合後、プロハースカはリング上で「ここにいられることがとても幸せです。大晦日に試合することを楽しみにしています。私はすべての選手と対戦する用意があります。それがBellatorの選手でも誰でも。皆さんサポートありがとうございました」と、年末の対抗戦出陣を宣言した。 ▼第12試合 61kg契約 5分3R ヒジ有り○朝倉 海(トライフォース赤坂)[1R 0分54秒 TKO]×佐々木憂流迦(セラ・ロンゴ・ファイト・チーム) 朝倉海は、THE OUTSIDER、ROAD FCを経て、RIZINに参戦。8月の前戦『RIZIN.18』メインイベントでは、RIZIN&Bellator世界バンタム級王者・堀口恭司を1R1分08秒、KOで破り、一躍“時の人”に。2017年12月のRIZIN参戦以来、才賀紀左衛門、マネル・ケイプ、トップノイ・タイガームエタイ、ムン・ジェフン、堀口恭司に勝利し、5連勝中だ。 対する佐々木は元修斗環太平洋バンタム級王者から2014年にUFCに参戦し4勝5敗。2018年大晦日にRIZINに初参戦し、マネル・ケイプを判定3-0で下すと、2019年7月の「RIZIN.17」で元バンタム級キング・オブ・パンクラシストの石渡伸太郎と対戦し、2Rにノースサウスチョークで一本負けしている。 朝倉海とは、4月の「RIZIN.15」横浜アリーナ大会で対戦予定だったが、佐々木が内臓疾患によりドクターストップがかかり欠場。試合が流れていた。 佐々木戦に向け、海は「(4月に試合が決まった)前から分析は出来ている。前回の石渡選手との試合も分析して、癖みたいなものは見つけた」と、堀口戦に続いて、兄弟での対戦相手の研究は万全の様子。佐々木が得意とする寝技への対策についても、「俺をテイクダウンは出来ないし、正直言って、寝技でも普通に勝負できる。極めを持っているけど、逆に言えばそれだけ」と、相手のフィールドでの勝負でも自信を見せている。 対する佐々木は「“グラップリングだけ”というのはかなりの恐怖になっているはず。作戦同士の化かし合いではなくて、総合力、MMAで勝負する。プロになってもう10年くらいやってきたMMA、今まで経験してきたすべてを出していければいい」と、MMA10年目の集大成を朝倉海戦で見せると意気込む。 リングサイドでは前戦で海に敗れたバンタム級王者・堀口恭司が見守る。 1R、オーソドックス構えの朝倉に、サウスポー構えの佐々木。いきなり詰めて右を振る佐々木に、朝倉は左から右をヒット! 効かされた佐々木はシングルレッグに入るが、がぶる朝倉はパウンド! 佐々木は朝倉の右手を掴んで寝技に巻き込もうとするが、手を抜いた朝倉は、パウンド。佐々木はガードを取ろうとするが、朝倉はなおもサッカーキックに!  出血する佐々木。ドクターチェックが入り、朝倉のTKO勝利に。佐々木はアゴ骨折の疑いありとのアナウンスが入る。 またも鮮烈なTKO勝利を決めた朝倉は、リング上で「台風の中、足を運んでくれてありがとうございます。ちょっと大振りになって反省です。右が入りました。寝技に付き合わないよう打撃で勝負しました。今日は(寝技を)見せずに終わりましたね」と試合を振り返ると、堀口との再戦を問われ、「見たいですか? 堀口選手、誕生日、おめでとうございます。僕から、この試合が誕生日プレゼントです。大晦日、ベルトを掛けて戦いましょう」と再戦を呼びかけた。 リングに上がった堀口は「一回負けてるからベルトなんていらないよ」と、ベルトを朝倉に手渡し、「もうね、年末、取りに行くよ」とタイトルマッチでの再戦を承諾。そのままリング上で誕生日を祝われた堀口だが、「今勝った、海選手をたたえてください」と海の勝利に観客の視線を再び向けさせると、榊原信行CEOからのタイトルマッチ確認に、「自分はベルト持っていると思っていないんで、挑戦させてください」と返答。朝倉海も「もちろんやらせてください」と答え、正式に大晦日のタイトルマッチが決定した。 [nextpage] ▼第11試合 女子49kg契約 5分3R○ハム・ソヒ(韓国)[2R 4分42秒 TKO]×山本美憂(KRAZY BEE/SPIKE 22) 勝者が浜崎朱加(AACC)の保持するRIZIN女子スーパーアトム級王座への挑戦権を得る、女子49kg契約試合。 山本は女子レスリングで全日本選手権8度優勝、世界選手権3度優勝の実績を持つ。2016年9月にMMAに転向し、RIZIN参戦。2018年7月からは、石岡沙織、アンディ・ウィン、長野美香、浅倉カンナ相手にいずれも判定で競り勝っており、怒涛の4連勝で挑戦者決定戦に駒を進めてきた。 試合前、山本は「一番今までの中でタフな試合になることは間違いないので、気持ちを込めてぶっ倒しに行きます」と、大一番に向け、意気込みを語っている。 ソヒはキックボクシングや散打で培った打撃を持ち、2007年2月に初来日して『DEEP』でプロデビュー。日本を主戦場にし、2013年5月にスギロックを破りDEEP JEWELSフェザー級(-48kg)王座を奪取。その後、2度の防衛を果たして2014年からは韓国人女性ファイターとして初めてのUFC参戦を果たすと、1勝2敗の戦績を残した。  2017年6月からは韓国『ROAD FC』に舞台を移し、初代ROAD FC女子アトム級王座決定戦で当時のDEEP JEWELS同級王者・黒部三奈からTKOで勝利して初代王者となった。今年7月の『RIZIN.17』に初参戦し、約5年ぶりとなる日本での試合でDEEP JEWELSアトム級王者・前澤智をKO。試合直後、「私、タイトルに挑戦したい気持ちも強いですが、まず山本美憂選手と試合をしたいです。お願いします!」とリングサイドにいた山本美憂(KRAZY BEE)に対戦をアピールし、今回の山本戦が決定した。 1R、ともにサウスポー構え。詰めるソヒに、右足に低いシングルレッグは山本。テイクダウンした山本はソヒの左足首も手繰るが、ソヒは足を抜きロープを背に立つ。立ったソヒはヒジを打つがこの試合では反則。口頭注意に。再びダブルレッグからシングルレッグに入る山本。ロープ背に座るソヒに徐々に登る山本だがブレーク。スタンド再開。左ストレートを狙うソヒ! 山本の低いダブルレッグはソヒが切る。左右からヒザを突くソヒに間合いを詰めてコーナーでボディロックした山本だが、ゴング。 2R、ジャブで距離を支配するソヒ。ジャブから左ストレートを突くソヒ。山本の低いダブルレッグは切るソヒ。山本の左前蹴りを掴んで詰めるソヒは左を刺し、さらにジャブから左で前に出るがそこにカウンターのダブルレッグは山本! ソヒは場外に上半身が出る。再開。 ソヒの左に詰めてダブルレッグから押し込んで、コーナーからコーナーまで電車道で押し込む山本。しかし切るソヒはサッカーキックへ。山本はシングルレッグへ。足を後方に飛ばしてスプロールするソヒの片足をたぐろうとする山本だが亀に。片足を掴んで亀になる山本に対角の足首を掴んだソヒは、向き合えないようにして鉄槌を連打! 動けない山本を見てレフェリーが試合を止めた。山本は右耳から出血。納得した表情でソヒと握手を交わした。 試合後、ソヒはリング上で「ありがとうございます。今日の試合は嬉しいけどなんか寂しいです。これから練習一生懸命、やります。(次は浜崎朱加戦だが?)頑張ります」と、日本語で挨拶。浜崎もリング上に上がると、「一言ハムちゃん強いなって。過去2回やって一応、勝っていますが、3度目もしっかり極めて勝たせていただきたいと思います」と防衛を宣言。ソヒは「2回も負けたのに3回目も試合の機会をくれてありがとうございます」と王者に敬意を表した。また、試合後、ソヒは視力が-4.5で、リング上での裸眼ではほとんど明確には相手が見えずに戦っていることを明かしている。 ▼第10試合 女子51kg契約 5分3R ※ヒジ有り○RENA(シーザージム)[1R 0分20秒 TKO]×アレキサンドラ・アルヴァーレ(スペイン) RENAは前戦2019年6月、米国ニューヨーク州マジソンスクエアガーデンで開催された『Bellator 222』で米国初試合に臨むも1R4分04秒、リンジー・ヴァンザント(米国)にリアネイキドチョーク(チョークスリーパー)で失神に追い込まれて敗れた。今回は4カ月ぶりの再起戦となる。 当初、対戦が決まっていたショーナ・ラム(カナダ/TEAM MAMBA)が練習中に脳震盪を起こしてドクターストップ。代わってアルヴァーレがRENAと対戦することになった。 アルヴァーレはムエタイ出身。2016年にスペインで行われたイベントでアマチュアとしてMMAにチャレンジ。2018年4月にローカル大会の『RLFC』でプロデビュー。2戦目でスペイン最大のプロモーションである『AFL』に出場するが、パンチによるKO負けを喫した。プロMMA戦績は2戦2敗でいずれもTKO負け。緊急参戦にも関わらず対戦を受諾したアルヴァーレはヒジ打ちを含めたムエタイ仕込みの打撃で勝負すると語っている。 RENAは地元大阪での復帰戦。セコンドには浜崎朱加がつく。 1R、先に前に出るRENA。サウスポー構えのアルヴァーレの右の打ち終わりに右ストレートをヒット! 効かされ下がるアルヴァーレにRENAは右前蹴り、さらに左右のラッシュにアルヴァーレはダウンしてコーナーにもたれかかり、動けず。レフェリーが間に入った。 RENAは試合後、「大阪の皆さんただいま。対戦相手あっての試合。急遽試合を受けていただきありがとうございます。ストライカーとしての打撃ができて嬉しいです。今日は足元の悪い中、会場に来ていただきありがとうございます。台風がこれからも大変ですが、日本は強い、みんなで支えあって頑張りましょう」と復活のリング上で挨拶した。 [nextpage] ▼第9試合 ライト級GP1回戦 5分3R○ジョニー・ケース(米国)[1R 1分24秒 TKO]×ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル) ライト級GP1回戦。優勝候補の1人に挙げられるジョニー・ケースはUFC4勝2敗。2014年9月のUFC JAPANで徳留一樹にギロチンチョークで一本勝ち後、フランキー・ペレス、フラシスコ・トレヴィノ、ヤンカブラルを相手に3連勝。ジェイク・マシューズとトニー・マーチンに敗れている。MMA26勝6敗1分。RIZINでは矢地祐介、北岡悟にいずれもTKO勝ちを収めている。 サトシ戦を前にケースは、「9戦全勝と言ってもサトシは甘い相手とやって来たから脅威を感じない。彼は危ない目にあったこともないが俺は死闘も経験している」と、MMAキャリアにおいて差があることを語っている。 対するサトシはブラジルのボンサイ柔術に所属し、来日当初は日系ブラジリアンの多い浜松の工場で働き、仕事後に柔術の練習を行っていた。ブラジリアン柔術世界選手権2006、2009、2010を制している日本柔術界の至宝。MMAは9勝無敗で、RIZINでは北岡悟、廣田瑞人にいずれもTKO勝ちしている。 試合直前のインタビューでは、「ケースは打撃が一番危ない。最初は様子を見て、打撃を使って、三角絞めとかバックチョークなど柔術の技で極めて、兄弟で同じ大会で勝ちたい」と、中村K太郎戦に臨む兄のマルコス・ソウザとともにRIZINでの勝利を誓うと、「(柔術で)いつも優勝しているから、今回も勝つことだけを考えている」と、ライト級GP優勝を宣言している。 1R、ともにオーソドックス構え。先に右ミドルはサトシもケースは蹴り足掴み倒すがサトシはすぐに立つ。サトシは引き込みからオモプラッタも腕を抜いて立つケース。ワンツーの右で前へ詰めるサトシは足を手繰りに行くが、ケースは下がりながらも右アッパー! パンチが目に入ったか、崩れるサトシ。そこにケースと頭が接触するが、アッパーを効かされ顔に手を当てたサトシが崩れてタップも、そこにケースはサッカーキック! そのままキックを浴びたサトシを見てレフェリーはストップ。レフェリーは動画を確認し、ケースの勝利を宣告した。 試合後、抽選が行われ、年末の準決勝はムサエフvsケース、パトリッキーvsグスタボに決定した。 ケース「絶対に世界一になるから大晦日に会おうぜ!」 ムサエフ「さいたまアリーナで皆さんにお目にかかりたい。良い試合をできるよう頑張ります」 グスタボ「優勝するために来た。応援よろしく」 パトリッキー「国を背負って勝つために日本に来たんだ。絶対優勝します、みなさん応援よろしく」 ▼第8試合 ライト級GP1回戦 5分3R○パトリッキー・“ピッドブル”・フレイレ(ブラジル)[1R 1分10秒  TKO]×川尻達也(日本/T-BLOOD) パトリッキーは先月Bellatorで2階級を同時制覇したパトリシオ“ピットブル”フレイレの実兄で、これまで21勝8敗13(T)KOの戦績を誇り、現在Bellatorで5連勝中と波に乗っている強打者。次は日本でRIZINとBellatorが熱く火花を散らしそうだ。 川尻は、PRIDE時代から国内外のメジャー団体で活躍、19年にも及ぶキャリアを持つ。20代でPRIDEライト級GP、30代でDREAMライト級GP、40代でRIZINライト級GPと各世代でライト級GPに挑んできた。MMA37勝12敗2分。RIZINのライト級では北岡悟にスプリット判定負け後、アブドゥルカリコフに判定勝ち。 1R、フェイスオフで目を離さない川尻。いきなりヒザを触りに行く、さらにシングルレッグは川尻も突き放すパトリッキー。さらに左ミドルに川尻の体がくの字に曲がる。川尻は左を振りに行くが、どこにパトリッキーはカウンターの得意の右跳びヒザ! ダウンしながらもシングルレッグで蹴り足を掴む川尻。しかし右足を掴んだまま尻餅でしがみつく川尻にパトリッキーが鉄槌連打! 片足を持ったまま川尻は倒れ、レフェリーが試合を止めた。 試合後。パトリッキーは「PRIDEが好きでした。何年も前に見てMMAを始めました。だから日本で戦えることが嬉しいです」と日本のファンに向けて挨拶した。 ▼第7試合 ライト級GP1回戦 5分3R○ルイス・グスタボ(ブラジル)[1R 3分55秒 TKO]×上迫博仁(日本/和術慧舟會HEARTS) 上迫はMMA16勝7敗。第7代DEEPフェザー級王者でPANCRASEのトップランカーとして8月名古屋大会でRIZINに初参戦。イーブス・ランドゥ(15勝8敗)を相手に2R TKO勝ちし、GP出場を決めた。 ルイス・グスタボは、2018年8月に矢地祐介を2R KOに下すなど、MMA9戦1敗で4KO、5つの一本勝ちを誇る脅威のフィニッシャー。4月に朝倉未来に判定負けで初黒星を喫した。 1R、ともにオーソドックス構え。左ジャブ、右ロングフックつくグスタボ。上迫のワンツーにブロッキングしてカウンターを狙う。カーフキック、スーパーマンパンチを狙う上迫。しかし、上迫の右に長い右ストレートはグスタボ! 効かされ下がる上迫に左右ラッシュはグスタボ! 上迫はシングルレッグから立つがグスタボはヒザ、ヒジ打ち。左目上から出血が酷い上迫がTKO負け(眼窩底骨折の疑い)。 グスタボ「ありがとうジャポン! ブラジルのみんな、家族、仲間、日本に来れて嬉しいよ。私は日本を愛しています。戦うことが好きです」 ▼第6試合 ライト級GP1回戦 5分3R○トフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン)[1R 4分14秒 TKO]×ダミアン・ブラウン(豪州) 11連勝中のムサエフ。うち10連勝はすべてKO・TKOをマークしている。RIZINでは大尊伸光をTKO、クルックシャンクに判定勝ち。遠間で懐の深い打撃から、バックキックやローキックなどを放ちながら近づき、強い腰を活かして相手をテイクダウンするダブルレッグも強力だ。何よりムサエフの脅威はパウンドにある。ひとたひテイクダウンを奪うと、ガードの中からでも長くて強いパウンドが相手を襲う。 ブラウンはMMA19勝12敗。対日本人では、2012年のLEGENDで安藤晃司の横三角に一本負け、2013年のLegend FCでは粕谷優介に腕十字で敗れているが、その後5連勝を記録するなど、息の長い格闘技キャリアを積み、2016年にUFC参戦を決めている。RIZINではクルックシャンクに一本勝ち。武田光司に判定勝ち。 UFCで観客を沸かせたアラン・パトリッキとのスクランブル合戦、体重超過した相手と壮絶な殴り合いを繰り広げたフランク・カマチョ戦、スプリット判定で競り勝ったジョン・タック戦など、逆境にも諦めないブラウンのタフな試合ぶりも注目だ。 1R、ともにオーソドックス構え。ムサエフの左インローが金的に。再開。スイッチするムサエフは左ミドル! ブラウンの右ワキ腹が赤く腫れ上がる。バックブローのムサエフに右ボディを合わせにいくブラウン。しかし、ムサエフはさらに左ミドル、インロー。ブラウンの足が流れる。さらに左ハイ! ガードの上からもらったブラウンがバランスを崩したところでムサエフは右ストレート! さらに左右ラッシュでブラウンがダウン! パウンド連打にレフェリーが間に入った。 恐るべき強さを見せたムサエフは12連勝を決めた。 [nextpage] ▼第5試合 77kg契約 5分3R○中村K太郎(和術慧舟會K太郎道場)[1R 1分18秒 TKO]×マルコス・ヨシオ・ソウザ(ブラジル) 中村は元DEEPウェルター級王者で、SRCウェルター級GP2010王者。UFCに2度参戦経験があり、2006年から2007年の初参戦時は3連敗だったものの、2015年9月から2019年4月までの2回目の参戦では8試合を戦い、4勝4敗と五分の戦績を残している。前戦は4月の「UFC Fight Nightサンクトペテルブルク」で地元ロシアのスルタン・アリエフに判定負けしていた。RIZINには妻の杉山しずかが参戦しており、RIZIN初の夫婦参戦となる。 マルコス・ソウザ(マルキーニョス)は、MMA8勝1ノーコンテスト(※キルギスで行われたヌルスルタン・ルジボエフ戦は無効試合に)。RIZINで活躍中のボンサイ柔術のサトシの兄であるマルキーニョスことマルコス・ソウザは柔術では、コパブルテリア2013優勝、ワールドプロ柔術2013世界大会優勝、ヒクソン・グレイシー杯優勝などの実績を持ち、ノーギ(道衣無し)でもQUINTETなどの大会で活躍するなど、中村同様、高いグラップリング力を持つ。 マルキーニョスについてK太郎は、「日本の柔術家の中で、立ち技・レスリングの部分で強い選手で大きい」と、警戒しながらも「ガス(スタミナ)はそんなにない印象なので、そこを突いて行ければ。経験の差はかなり大きいと思うので惑わしてやりたい」と、50戦近いMMAの経験の差が勝負の鍵になることを語っている。 1R、バックキックを空振りし下になるマルキーニョス。中村のパウンドに立つ。中村の左ストレートに腰を落とすマルキーニョス。中村はインサイドから鉄槌! マルキーニョスは一旦足を手繰るが鉄槌を浴び、ガードに戻してエビから立ち上がるが、中村は右フック! マルキーニョスが後ろを向いたところで、レフェリーが間に入った。 試合後、中村は「K太郎、なめんなよ! なんか向こうが勝つっていう予想もあって……Bellator対抗戦、やりたいです」と年末出陣をアピールした。 ▼第4試合 RIZINキックボクシングルール 62.0kg契約 3分3R〇白鳥大珠(TEAM TEPPEN)[判定3-0] ※28-25×3×大雅(TRY HARD GYM) 白鳥は那須川天心と同門のTEAM TEPPEN所属。2019年2月に第5代RISEライト級王者に輝くと、3月に開幕した「RISE WORLD SERIES 2019 -61kg Tournament」でヘクター・サンチアゴ、セクサン・オー・クワンムアン、梅野源治を下し優勝。世界王者のベルトを巻いた。特に9月の決勝戦では“日本ムエタイ界の至宝” と呼ばれる梅野源治を衝撃の1RKOに下しており、いま最も勢いのある61kgのファイターだ。 対する大雅は第3代K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者。2018年9月からRIZINに参戦も、原口健飛とドロー後、2019年3月にセクサンにスプリット判定負け、4月にタリソン・ゴメス・フェレイラに3ノックダウンでTKO負けと連敗が続き、スタイルに迷いが見られたが、7月の「RIZIN.17」では町田光に判定3-0で勝利し、復活を遂げていた。 ともにサウスポー構え。1R、右でダウンを奪う白鳥。2R、前に出る大雅、しかし白鳥はカウンターの右で再びダウンを奪う。すぐに立つ大雅は左を当て始める。3R、前に出ることでペースを取り戻した大雅は、白鳥の右に左オーバーハンドでダウンを奪い返す! さらに左右からボディも打つ大雅。そして左のダブル! 白鳥も前に出ると互いに足を止めての殴り合いに。試合は判定でダウンを重ねた白鳥が大差判定勝利した。 ▼第3試合 RIZIN キックボクシングルール 3分3R 77.0kg契約×HIROYA(TRY HARD GYM)[1R 1分20秒 TKO]○小西拓槙(フリー) 当初はHIROYAと同門の松倉信太郎(TRY HARD GYM)が小西と対戦することが決まっていたが、松倉が流行性角結膜炎および右眼角膜潰瘍によるドクターストップ。代わってHIROYAが名乗りをあげた。 西は大阪体育大学浪商高校日本拳法部出身。全国高等学校日本拳法選手権大会で個人有段の部3位入賞の実績も持つ。卒業後は消防署員という異色の経歴を持つ。2011年にACCELミドル級タイトルマッチで平尾大智に勝利し、第5代王者となる。2013年にはリレオ・ズーリック(ドイツ)を判定で下し、ISKAインターコンチネンタルスーパーウェルター級王者に輝くなど数々の成績を残してきた。REBELSを主戦場にSHOOT BOXINGやRISE、Krushなど様々な団体を渡り歩いてきた。RIZINでは2018年の大晦日に内田雄大と対戦し判定負け。RIZIN初勝利を狙う。 1R、オーソドックス構えのHIROYAにサウスポー構えの小西。体格差ある両者。いきなりHIROYAは軸足払いでこかすが、長身の小西は相打ちの左ストレートでダウン奪う。立つHIROYAは左ジャブを突くが、そこに小西は左ヒザ! HIROYAは後方にダウン。小西がKO勝利で、地元でRIZIN初白星を飾った。 試合後、小西は「HIROYA選手、急遽、試合を受けてくれてありがとうございます。松倉選手にも拍手を。大阪凱旋、勝ててありがとうございます。またRIZINに呼んでください」と、継続参戦をアピールした。◆小西のコメント「今回の試合は感謝、感謝でHIROYA選手にお礼を言いたいです。日本人もどんどん身体が大きくなってきて、今までだと70kgでも通用していましたが、それ以上の階級でも日本人は通用するところを見せていけたらと思います。HIROYA選手のローは痛かったですね。かなり痛かった。覚悟が伝わりましたね。(ダウンを奪った左ストレートは)練習でアップの時からしっかり出入りに合わせてストレートを打つのをやっていたのでドンピシャでした。(マイクは)長すぎると炎上してしまうので、早く終わりました(笑)」 ▼第2試合 RIZIN MMAルール 5分3R(無差別級)○シビサイ頌真(パラエストラ東京/巌流島)[1R 1分09秒 キムラロック]×キム・チャンヒ(韓国/GEEK GYM) シビサイ頌真は、ラオスと日本のハーフで中学から柔道を始め、高校卒業後、19歳からパラエストラで柔術を学ぶ。190cm超えの恵まれた体格を武器に、2011年にKrushでキックボクシングプロデビュー。12年からHEATに参戦し、DEEP、ZST、GRACHANと様々なリングで戦ってきた。“全身凶器”として知られる伝説の武道家・倉本成春師範から武術を学び、活躍の場を巌流島へと移すと、18年1月にはトーナメント初代王者ブライアン・ドゥウェスをレフェリーストップによる1R 25秒の圧勝劇を披露するなど4連勝を飾った。 MMAルールでは4勝2敗。2018年7月の『RIZIN 11』でモンゴルのボルドプレフ・ウヌルジャルガルと対戦。両者にイエローカードが提示され、スタミナの消耗が激しい荒れ試合のなか、ウヌルジャンガルがポジションを奪い判定勝利。シビサイはRIZIN黒星デビューとなっている。試合後、「仕事も辞めて、今は格闘技一本で生活する覚悟を決め、日々練習付けの毎日を送っています」というシビサイ。層の薄い日本人ヘビー級にあって頭角を現すことができるか。 対するキム・チャンヒはRIZIN初参戦。“韓国版おばけかぼちゃ”あるいは“韓国版バタービーン”と呼ばれる超巨体ファイターで、キックボクシングでは40戦以上のキャリアを誇り、24勝の白星を挙げている。2010年3月にプロデビューすると、同年にDEEPのリングに登場。しかしその日本デビュー戦では、巨漢ハンター美濃輪育久(現ミノワマン)の前にスカーフホールドアームロックで一本負けを喫した。その後、2012年のGLADIATORでMMA初白星を挙げ、17年にはROAD FCでシム・ユンジェを相手に1敗1NC(※チャンヒの偶発的なバッティング)となっている。 1R、ともにオーソドックス構え。右ローから入るシビサイに、詰めるチャンヒ。シビサイは首相撲ヒザ。しかしチャンヒはボディロックもシビサイは右腕をキムラロックにとらえて回してテイクダウン。最後は上のままキムラを極めた。 試合後、シビサイは「前回負けて、仕事やめて練習して周りの人に迷惑かけてやっと勝つことができました。榊原CEO、年末お願いします」と年末大会出場をアピールした。◆シビサイのコメント「勝ててよかったです。予想した展開ではなかったんですが、どんな形でも勝ちたかったので。組み付いて来たのは予想外でした。打撃の選手だと思っていたので。ダメージもなく練習も再開できるのですぐにでも試合できるいい状態です。フィットネスジムで働いていましたが半年前に辞めました。周りの人が金銭的にも応援してくれました。(組まれた時は)凄く重たいなと。あの体重の選手と練習もしたことがないので重たいのとプレッシャーがありました。(バックを取られてのアームロックは)あの状態を全く想定していなかったので全く練習していませんでした。それでも勝ててよかったです。RIZINというチャンスをいただいて、自分の年齢と格闘技をやりたい気持ちが強かったので、年齢的にもできるのが最後なので格闘技一本で行こうと決断しました。引き出しはまだまだあります。もっと試合をしていく中でそういうのを出していきたいです」 ▼第1試合 キックボクシングルール 56kg契約 3分3R〇植山征紀(龍生塾ファントム道場)判定3-0 ※29-27、29-28、29-28×梅井泰成(京都野口ジム)  シュートボクシングが誇るハードパンチャーの植山と、柔道&レスリング出身のキックボクサー梅井がオープニングを飾る。  1R、サウスポーの梅井は得意の左ミドルから入る。植山はジャブを突きながらの左右ロー。梅井はミドルを空振りするとそのままバックハンドブローで植山をヒヤリとさせる。圧力をかけて梅井にロープやコーナーを背負わせる植山。ラウンド終了間際、梅井は左ハイをヒットさせる。  2R、植山は距離を詰めて左ストレートからの右フック。右はボディにも打つ。梅井は左ミドルの蹴り数を増やしていくが、植山は軸足をローで狙い撃ち。フックの打ち合いで梅井の右フックがヒット。植山は梅井の左ミドルに左フックを合わせ、右ストレートにつなげる。  3R、軸足蹴りから左ストレート、右フックにつなげる植山。前へ出てパンチを打って行くが梅井も左ミドルを蹴り、右フックから左ハイへつなぐ。しかし、前へ出るのは植山。倒しに行く植山は梅井のパンチをもらうが、強い右をヒットさせて前へ出る。さらに左フックで梅井を吹っ飛ばす。残り15秒、梅井の左ハイに合わせた左フックで植山がダウンを奪い、判定3-0でRIZINでの2連勝を飾った。◆植山のコメント「1試合目やったからKOで勝ってもっと盛り上げたかったんですが、梅井選手が上手かったですね。もっと圧倒できると思ったんですが左ミドルがやりにくかったです。もっと強くなってもっと知名度を上げてもっと大舞台に立って格闘技界を盛り上げていきたいと思います。最初からチャンスがあれば倒すつもりだったんですが、3Rかけて倒せたらいいなと思っていて。ローが効いているのは分かったんですが、距離感が合わなかった。チャンスがあれば1Rから倒そうと思っていましたが、最低でも3Rに倒そうと思っていました。3Rでダウンを取れなかったらもっとつまらない試合になっていたのでホッとしました。もっと圧倒できると思ったんですが、まだまだなのでもっともっと強くなれるように頑張ります。何発かパンチが当たったんですが、倒せなくて焦ったって感じですね」
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ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
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