10月13日(日)、東京・両国国技館で開催される『ONE:CENTURY PART II』。同大会では修斗vsパンクラス対抗戦として両団体が誇る王者同士の対決が4試合行なわれる。前篇に続き、今回は松本光史vs久米鷹介、猿田洋祐vs北方大地の2試合について、ONEやパンクラスで解説を務める大沢ケンジ氏に見どころを聞いた。
ONE100回目となる記念大会は、『Century 世紀』と『CENTURY PART II』の昼夜2部興行。夜の部『CENTURY PART II』ではメインイベントでライトヘビー級王者のアウンラ・ンサン(ミャンマー)がヘビー級王者・ブランドン・ベラの挑戦を受ける。その他にも、大きな見どころとして挙げられるのは修斗vsパンクラスの対抗戦。両団体のチャンピオン4人が団体の看板を背負って激突する。
ライト級では松本光史(フリー・36)と久米鷹介(ALIVE・34)が対決。修斗王者・松本はグラップリングを得意としながら、最近では打撃でのKO勝利も多いオールラウンダーで20勝8敗。パンクラス王者・久米は22勝5敗4分で、グラウンド&パウンドの泥臭いファイトスタイルが持ち味。
そしてストロー級では猿田洋祐(和術慧舟會HEARTS)が北方大地(パンクラス大阪稲垣組)と対戦。修斗王者の猿田は19勝9敗3分。ONEで3戦を戦っており卓越したフィジカルとレスリング力を武器に、2019年1月にはジョシュア・パシオを下してONEストロー級王者となったが、3カ月後のダイレクトリマッチではハイキックに沈み王座陥落、今回が再起戦となる。
対するパンクラス王者・北方は2010年のデビュー以来ほとんどの試合をパンクラスで戦い、20勝8敗1分2ノーコンテスト。2016年には砂辺光久にRNCで敗れたが、以降は5連勝。2019年7月には砂辺をTKOでリベンジを果たし、ストロー級のベルトを巻いた。打撃を得意としながら寝技でも一本を取れる力を持つファイターだ。
▼第1試合 ONEライト級(※77.1kg)5分3R
松本光史(フリー)
久米鷹介(ALIVE)
――対外国人の王者対決とは異なる、日本人王者同士の対戦です。そして36歳の松本選手と34歳の久米選手の対戦。互いに期するものがあると思います。まずは両者の印象について伺います。
「松本選手は打撃も寝技も何でもできる。ただ上手いんですけどずっと一定のペースで来るので、怖さが少ないかなと。急にぐいぐい来たりとかペースアップして来たりとかはなく、淡々とやっている感じ。打撃的には中間距離ですかね。飛び込んでくるわけでもないし、想定以上に伸びてくるという訳でもない。打ち方的にはずっと真ん中重心の構えなので、前重心で伸びてくるようなパンチは来ない。距離が一定なんですよね。だから相手としては測りやすいと思います。僕がセコンドだったら『この距離は危ないからな』と想定しやすい。
対して久米選手の距離はめちゃくちゃ短い。近いところに入ってブンブンと振り回してタックルに入る。この試合に関しては久米選手次第なところはあると思いますね。久米選手はこういう中間距離をキープされるのは苦手だと思うんですよ。ずっと左右に動き続けながらガチャガチャにして近づいて攻めるタイプなので、中間距離だと組めないし、パンチも届かない。その辺で言うと松本選手がジャブで止められるかっていうところなんですけど、松本君選手のジャブもそこまで長くないんですよね。どっちも寝技は上手いから、組みの展開にもなるかもしれないし、入り際に合わせた打撃の勝負になるかもしれないし、どっちもありますね……」
――松本選手はグラップラーながらここ最近はKO勝利も多く見られます。
「結構いいタイミングでパンチを当てていますよね。よく距離を見ることができている。爆発力があるわけじゃないんですけど、合わせるのが上手いですね。久米選手の忙しい感じに松本選手が合わせられそうな気もします。久米選手はアントン・クイバネンとやった時はいいところが出せずに終わったじゃないですか(2RパンチでTKO負け)。距離を上手く取られてガチャガチャにさせてもらえなかった。だから近い距離に入れなかったときは苦戦するんじゃないですかね。そこを松本選手がやらせなければ有利だと思います」
――松本選手としてはどういう戦い方をしたい?
「ジャブじゃないですかね。ただ中間距離のジャブはちょっとミスしたら入られてしまうから、そこをどう考えるか。足を使って下がりながらジャブを打っていくか。でも久米選手の勢いはすごいから、単発のジャブだったら近くに入られちゃう気もするんですよね」
――松本選手から組みに行くことはありますか?
「四つで勝負することもあるんじゃないですかね。柔道が強いから」
――久米選手は以前一松本選手と一緒に練習したことがあり、『壁レスが強くて動かなかった』とコメントしていました。
「松本選手はいまだにロータス世田谷での練習で青木(真也)選手とかと組んでいるから強いのは間違いなんじゃないですかね。久米選手の距離になったからといって組んだ時にどちらが強いか、四つの攻防がどうなるかは注目ですね」
▼第4試合 ONEストロー級(※61.2kg)5分3R
猿田洋祐(和術慧舟會HEARTS)
北方大地(パンクラス大阪稲垣組)
――続いては猿田選手vs北方選手。猿田選手は大沢さんのジムである和術慧舟會HEARTS所属の選手なので作戦などあまり話せない部分はあるかと思いますが、お互いどのような部分が強みでしょう。
「猿田が強いのはレスリングとパウンドですよね。対して北方選手は打撃。しっかり待てて、あまり攻め急がないタイプです。見たいんですよ相手を。プレッシャーをかけて相手が来たところに合わせたり、相手の動きを見て飛び込んだり、3Rプレッシャーをかけ続けて後半に隙が出たところで当てるとかそういう感覚でいられる。こちらも、それに対しての対策はありますけど、北方選手にはラウンドごとでなくトータルで判定するONEの基準はすごく合っているんじゃないかなと思います」
――猿田選手は既にONEで3戦を経験していて、ベルトも巻いています。その経験値がアドバンテージになるのではないですか。
「そこまでないと思います。北方選手は普通に戦っていればONEの判定基準は戦いやすいと思うのであまりファイトスタイルを変える必要がない。そこまで必死になってラウンドを取りに来ている感じはしないし、取ることを考えていないと思うんですよ。倒すチャンスをずっと狙っているような。だからあまり判定基準を意識せず、やりやすいと思います。僕が北方陣営だったらこうしようというのもありますし、そこまで差はないと思います。結構難しい戦いだなと」
――猿田選手としては北方選手をいかに寝かせるかがポイントになるかと思いますが。
「北方選手は立つ力がありますよね。でも猿田はそこまで抑え込むのが上手じゃないし」
――上手じゃないことはないと思いますが(苦笑)。打撃に関しては猿田選手は出入りが早く、北方選手はどっしり構えるタイプ、そしてフックの強打があります。どういう展開になる……とは言えないですよね。
「ああこれは言えないですね(笑)。勝つことで勘弁してくださいという感じです。ただしっかりしたモノは見せられると思うので」
――当日の楽しみにしておきましょう。北方選手は前戦で砂辺光久選手に勝利していますが、再戦で砂辺選手を徹底研究してきた感があります。対して猿田選手は砂辺選手とはタイプが違いすぎる。北方選手は猿田選手について「全局面でグチャグチャにして戦う」というコメントをしています。
「そこも含めて、まあやってみなって感じですね。お互いに練ったモノをぶつけ合って、どっちが合ってるのか、どっちの手札がいいのかやってみようよと」
――最後に、対抗戦全体で期待したいことはありますか?
「決着をつけて欲しいですね。全員がしっかりとフィニッシュして、俺がこいつより強いっていうのをハッキリしてほしい。判定で勝つことを想定するんじゃなくて、フィニッシュした先に判定があるくらいの気持ちでやってほしいですね」
――9月1日に行なわれた前哨戦、『Road to ONE:CENTURY』では修斗が4勝1敗と大きく勝ち越しという結果になりました。それもあってパンクラス側としても気合を入れて臨んでくることがうかがえます。
「はい。パンクラス側の僕としては負けられないですよ!」
――え!? 確かに大沢さんはパンクラスの解説をしていますが、猿田選手は修斗側として出場しますよね……。
「パンクラス側の僕としては負けられないです!(2回目)これ、書いといてくださいよ!」
――わ、わかりました。今日はありがとうございました。
「ありがとうございました!」
大沢ケンジ
2002年、アマチュア修斗東日本大会&全日本大会のフェザー級で優勝し、03年2月のDEMOLITIONでプロデビュー。プロ修斗で勝ち星を重ね、07年からCAGE FORCE、北米WECに参戦。11年、DREAMバンタム級日本トーナメント3位。12年12月「VTJ 1st」でリオン武に判定勝ち。14年4月29日「DEEPバンタム級王者決定戦」で大塚隆史に判定で敗れ、引退を表明。和術慧舟會HEARTS主宰(東京都渋谷区代々木2-20-1 1F A号 TEL:03-6383-4057)。
受け手:中田大貴(写真右):東京都出身、23歳。中学校から空道を始め、その後柔術やキックボクシングも経験し、2018年からMMAを始める。アマ戦績7勝1敗。172㎝、73㎏。「空道時代にゴン格本誌の試合レポートに後ろ姿が写ったことがある」とのこと。
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