12月7日(金)ONE Championshipマレーシア・クアラルンプール大会で、V.V Meiこと山口芽生が、フィリピンのジョマリー・トーレスと対戦する。5月のシンガポール大会でONE女子アトム級王者のアンジェラ・リーと再戦し、判定負けに終わって以来の試合。2019年3月31日に日本大会(両国国技館)を控えるなか、Meiは「勝ち方を問われている」と語る。チャトリ代表と過ごしたリトリートでの言葉も含め、紹介したい。
──ONEの前日計量はいかがでしたか。
「今回、すごく順調で最後、勝手に落ちた感じです。この計量になって最初は普通の水抜き減量の感覚でいってしまい、最後は何も食べずに水をのみ続けていてすごくキツかったこともあったのですが、いまは最後にどのくらい水を飲めばいいのかも分かってきました。ただ、体調によってお風呂で落ちるはずの体重が落ちなくて水が飲めないとヒヤッとするんですが、今回は大丈夫でした。私にとってはこの計量はヘルシーに感じます」
──前回は5月にシンガポール大会でアンジェラ・リーと対戦し、そこから7カ月が経ちました。試合に向けての調整や緊張を保つことは大変ではなかったですか。
「自分としては、全然空いた感覚が無くて、というのも練習仲間の誰かしらが毎月、常に試合だったので、その人の練習に合わせて自分も頑張ってメニューをしたり、緊張感が続いていました。和術慧舟會GODSやHEARTSでの女子練習、打撃では前回の試合の半年ほど前からTEPPEN GYMのプロ練に通い続けていますので、アンジェラ戦で出したかったけど出せなかった打撃がいま、自然に出るようになってきている感覚はあります」
Angela Lee overcame all fears and insecurities she had from her car accident, scoring a unanimous decision win over Mei Yamaguchi and retaining ONE gold! #UnstoppableDreams #Singapore #MartialArts pic.twitter.com/rC6Kxr9Z5O
— ONE Championship (@ONEChampionship) May 18, 2018
──アンジェラ戦前はスピードを重視した「抜いた打撃」を試みていると仰っていました。
「アンジェラ戦はもっと手数も出したかったんです。出せるところで手数も出していこうと」
──アンジェラ戦の序盤は後手に回ることがありました。
「そうですね。あそこを先手先手で行きたいです。最近のONEのジャッジの傾向を考えると、打撃のポイント、どれだけ当てたかを重視しているので、それにちゃんと沿ってやればもっと勝てる要素が多くなると思っています。今回はその描いている戦略をどこまで実行できるかのテストだとも思っています」
──Mei選手は後半にクリーンテイクダウンや打撃の猛攻もありました。前半のアンジェラにはそこに入らせないものがあったのでしょうか。
「5Rの各ラウンドのマスト判定ではなくて全体のジャッジを考えたときにどうしても後半の印象が強くなります。5Rの試合の作り方を考えたときに、1、2Rはイーブンでいったとしても、後半の3つを取ったら勝てるだろうなという計算もありました。あそこで1、2R行けたらもっとよかったかもしれませんが、そこで疲れて後半力を出せなかった可能性もあります。
5Rフルに行くのは難しい、と考えるとやはり最後にKO・TKOしなければいけなかった。ましてや、アンジェラの地元の応援もあり、看板選手のアンジェラが出るか出ないかでスポンサーが数億円変わる、と聞いたら判定に持ち込むのはどうだったのか、とも思います」
──今回は3R戦です。対戦相手のジョマリー・トーレスはMMA4勝1敗で、リカ・イシゲにも勝利しています。どんな印象を持っていますか。
「フィジカルが結構強そうです。細かいテクニックはまだのところもあるかもしれませんが、キャリアが多くないぶん、予想できない動きをすることもあるので全く油断はできないですね」
──トーレスはレネ・カタランに学んでいますし、ONEの舞台に上がり経験を積んでいる選手の成長の早さは計り知れない部分もあると思います。
「そうですね。ほんとうに油断できません。ただ、ONEが日本大会に向けてアピールできるかというテストとして組んだカードと考えていますので、勝ち方を問われている試合でもあるととらえています」
──SMACKGIRLやVALKYRIE、JEWELS、PXCなども経てMei選手がONEで初めてアンジェラと対戦したのは2016年5月でした。女子選手の試合も定期的に組まれ、その間の盛り上がりをどのように感じていますか。
「チケットの売り方やスポンサーのつけかたも考えらているのでしょうけど、ミャンマー大会もどこに行っても毎回満杯なんです。シンガポールで最初にアンジェラと対戦したときは、街なかにポスターもないし、みんな知りませんでした。密かにやっている大会なのかなと(苦笑)思ったくらいです。
それが2年後の再戦では、バスの車体広告とかいろんなところに露出していて、民放でも放送しているので、街を歩いていても多くの人から声をかけられるようになりました。すいぶん浸透しているなと。最初はチケットを貰ったから来たという人もいますが、観客も細かい技術がわからなくても思い切った動きに反応して、それが複数回会場に来ることによって、寝技も面白いと理解が進み、上下をひっくり返しても沸くようになりました。日本でもMMAが紹介された初期はそうだったなって。それにみんな熱い試合が好きです。ピュアなMMAを見る喜びをストレートに感じますし、戦っていてもそれを感じて感動します」
──見ている人にどう届けるか。その国、その格闘技、その人となりを丁寧に伝えているように感じます。
「はい。選手としてもどう観客にアプローチしていくのかを考えるようになりました。実際、今年の1月に出場回数の多い選手をフィリピンのバラカイ島に集めてリトリート(※日常生活を新たに再スタートさせるリセットの時間)を行ったんです。バケーション的なリトリートかと思って、喜んで行ったら、半分くらいがセミナーでした(笑)。インスタやtwitterをどう使うか、なぜフォロワーが大事なのかとか、どういうものをどうハッシュタグをつけてアップするのか、とかSNSの使い方や、マスコミ対応とかの勉強会を行いました。
そこでのチャトリ代表の話にも説得力があって、みんな徐々に引き込まれていくんです。『君たちはアジアの女性の代表なんだ』って言われて『アジアで成功を収めた女性の代表としてどう思いますか?』と聞かれたりもしました。それを初めて聞いたときは、いや、ほかにも立派な女性はいっぱいいますから、と尻込みしていたんですけど、それを本気で言ってくるんです。
何回もそのやりとりを繰り返すうちに、この人は本気なんだ、と。自分もアジアの発展途上の国で試合をするときに、そういう視線で見られていることを感じると、それに恥じないような選手にならないといけないという意識に変わりました。どういう心持ちでいるべきかを問われますね」
──何かをなすときに「本気で信じているか」は重要なのだと思います。金曜日の試合も期待しています。
「はい。日本からもぜひ見てください!」
【追記】12月7日の試合ではテイクダウンからグラウンドのヒザでトーレスを圧倒したV.V Mei。盤石の体制で2019年3月31日の日本大会(両国国技館)に臨む。(C)ONE Championship