MMA
インタビュー

【RIZIN】サトシとクレベルが「静岡いわたPR大使」に任命。市長から委嘱状と大使の名刺が手渡される──W王者の原点とは?

2025/01/25 16:01

マウリシオ・ダイ・ソウザ「サトシとクレベルのやり場のないエネルギーが、柔術に昇華された」

サトシの兄ダイが、クレベルと出会ったのは出稼ぎ工場行きのバス。ヤンチャな少年と心優しき弟は、いかに柔術と向き合い、王者となったのか。

──ダイ先生は、出稼ぎ先の工場へ向かうバスの中でクレベルと一緒だったそうですね。

「あ、その送迎バスを今朝も見ました。“あれで通っていたんだな”と思ったところですよ。一応定刻は早朝6時のバスなのですが、いつもクレベルは6時ちょっと過ぎに現れてバスの一番後ろの席に座るとものすごい大音量でラジオを聴き始めるんですよ(笑)。私は音楽を聞いていたので、イラッときて彼のところまでいってぶちのめしてやろうかと思ったんですけど(笑)。バスでみんながウトウトしているところにクレベルは『みんな、おっはよー!』とか『元気ぃ?』って声をかけまくってて。大音響のラジオとともに。そういう感じでとりたてて話したりしたことはなくて、自分としては内心『いつかコイツを懲らしめてやりたいな』なんて思っていたんですよね(笑)。

 いつぞやに、私が柔術を教えていることを聞きつけたクレベルの方からやってきたわけです。突然自分の横に座ってきたから、その時自分は“おっ、コイツ、やる気か? よしブッ飛ばしてやる”と心に決めたんですけど(笑)、彼はおもむろに『柔術を教えてほしいのですが… …』と。当時は自分のジムが無くて武道館を借りて教えていたんですけれど、クレベルが『先生、あなたと練習するには練習料はいくらかかりますか?』と聞いてきたので、『いいよ、君はサービス。お金はいらないよ』と返したんです。とにかくちょっとお灸を据えてやりたいって気持ちがあったから『ぜひ来てくださいね』といって畳の上でフルボッコにしました(笑)。そこから練習を始めるようになって、自分もプロとして普通に教えていて、それからはクレベルは工場行きのバスでいつも私の隣に座るようになって、会話もするようになりました。もうその時は全然問題なくなっていました」

──そんなクレベル選手がサトシ選手とともにベルトを巻きました。感慨もあるのではないですか。

「何を置いてもね、あの子はひたむきで一生懸命頑張る子なんです。あらゆる敗北があった上で今のあの子はいるし、いつもひたむきに自分の夢や目標を追いかけてきた。これこそがまさしく柔術というスポーツのあるべき形だとあの子を通して実感しています。何か困難な問題を抱えた人々を受け入れ、規律を叩き込む。それは技術的な意味だけではなくて、正しい道へと導いていくこと。それこそが武道、マーシャルアーツの本質であり、それが柔術家としての私の矜持です。クレベルのかつての幼さと乱暴さ──それを決して私は悪とは言いません──そういう何かやり場のない大きなエネルギーが柔術とリンクしたんですよね、それはサムライスピリットのようなものと言ってもいいのかもしれない。

 そしてこれはサトシも同じなのです。サトシにとってそのやり場のないエネルギーというのは、父親の喪失による悲しみです。どうしても父のことで感情的になってしまうそのエネルギーを柔術によって昇華する。悲しみそのものをエネルギーにしてはいけません。それを、柔術を通してプラスに働く力へと変換する。それこそが武道だと思います。クレベルはヤンチャだけどとっても心根の善い子だし、自立心があります。そういう子が、柔術とともに精神修練をして自分の持つエネルギーをプラスに換えて、優れた選手へと育ちました。ボンサイファミリーのみんなが、私にマーシャルアーツとはこういうものだと教えてくれています」

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.341
2025年12月21日発売
大晦日決戦に臨むシェイドゥラエフと朝倉未来ほか「特集◎大晦日を読む」では、5大タイトルマッチのインタビューと川尻達也らが試合解説。UFC平良達郎、40周年記念・水垣偉弥インタビューも
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント