9月29日(日)東京・スタジオコーストで『PANCRASE 308』が開催される。
メインでは、ライト級暫定王座戦として、粕谷優介(総合格闘技道場CROWN)がサドゥロエフ・ソリホン(ロシアパンクラチオン ハバロフスク/タジキスタン)と対戦する。
粕谷は、2009年に「先輩の試合に便乗して」北陸アマチュア修斗選手権に出場し、ウェルター級で優勝。全日本アマ修、東北アマ修を経て、M-1、Cage Forceでプロの初期を戦った。2011年に修斗ウェルター級新人王を獲得すると、Legend FCでダミアン・ブラウン(元UFC、RIZINで2連勝中)、PXCでフランク・カマチョ(現在UFC)を破り、2015年からUFCに参戦。ニック・ヘイン、アレクサンダー・ヴォルカノフスキー(12.14「UFC245」でフェザー級王者マックス・ホロウェイと対戦)といった強豪相手に2連敗を喫し、リリースとなった。
2017年8月からPANCRASE参戦もフェザー級で松嶋こよみ、ISAO相手に判定負け。1年4カ月のブランクを経て2019年4月、心機一転、ライト級に転向し、4連勝中だった菊入正行に1R パウンドで復活のTKO勝利を収めている。
対戦相手のソリホンは、ロシアパンクラチオン協会からPANCRASEのベルトを奪いに派遣された強豪。2018年11月にアキラをバックヒジで沈めると、2019年3月には上迫博仁と対戦。左フックで先にダウンを奪うも、2R早々に右ローに崩れ試合を放棄したが、試合前から肋骨を傷めていたといい、ベルト獲得に強い執念を見せている。
そんなソリホンと対戦する粕谷は、高校卒業と同時に就職し、結婚。社会人として仕事を続けながらUFCでも戦ってきた、誰もが認める実力者だ。一時は引退も考えたなかで、ライト級で新鋭を撃破。今回の王座戦に至るまでのなかで、意外な選手への思いを持ち続けてきたという。
どれだけピンチになっても、最後は必ず自分が試合を決める
──粕谷選手、ソリホン選手と計量で向かい合っていかがでしたか。
「そうですね……前回の菊入選手があまりに大きかったので、それよりはちょっとマシかなと思っています(苦笑)」
──1年4カ月のブランクがありながら、菊入戦での左ミドル、ダブルレッグテイクダウンに力強さを感じました。フェザー級からライト級に戻して、コンディションはいかがでしょうか。
「体調もよくて減量もうまくいったので、5Rフルに動けると思います」
──ソリホン選手をどのようにとらえていますか。
「倒す力が強い、試合を決める力が強いですね。それは気をつけたいなと思います」
──勝負どころで前に出続ける波にのまれないように。
「そうですね。その波に気を付けるのと、のまれたとしても諦めないこと。気持ちでは絶対に負けない。ヒジにも気をつけて、5Rを通してどれだけピンチになっても、最後は必ず自分が決めます」
──そういう場面になることも想定して練習されてきたと。
「はい。ピンチになっても逆転できるというのが僕のスタイルだと思っているので、5Rの中でチャンスを見つけたいと思います」
──ご家族、お子さんもおられてお仕事もされながら練習・試合に臨まれているそうですが、それはいつからでしょうか。UFCのときも……。
「仕事は18歳からずっとです。建設関係で運転なども多いのですが、10年目なので抜くところは抜いて、ジムの経営もありますので、仕事の後に、指導する前と指導後に自分の練習を、短時間でやっています」
──仕事と指導を終えたあとに練習……疲労などを抜くのが大変そうに感じます。
「そうですね……休みの日に子供たちを公園に連れていきながら休む、という感じです。限界だなと感じることも、ここ5年間くらいあるのですが(苦笑)」
──ケツを叩いてくれるような人は……。
「小林コーチと柔術で岡本先生の2人にケツを叩いてもらっています」
──MMAのスパーリングパートナーはどのような選手と?
「基本は、打ち込みです。時々、以前所属していたジム(秋本道場Jungle Junction)から先輩が出稽古に来てくださってスパーとかはするのですが、基本的には道場生と、打ち込み──シチュエーションスパーリングを行っています」
──それは打ち込みの集中力が問われそうです。ライト級の正王者の久米鷹介選手がONE Championship出場ということもあり、今回の暫定王座戦で勝者がベルトを巻きます。ベルトへの思いは?
「ベルトをあまり意識していませんが、ひとつの試合、ひとつの戦いに勝ちたい、そういう思いです。勝てば、おまけとしてご褒美としてついてくるもので、ベルトのことよりもソリホン選手を倒す、ということに集中したいです」
──なるほど。ところで、MMAPLANETでの事前インタビューでは、川尻達也選手への想い入れがあるそうですね。引退を考えていたときに「漠然と川尻選手と戦いたい」ということへのこだわりがあった、と。
「もともとMMAを始めるきっかけが川尻さんなんです。中学校でちょっと停学になっている間に(苦笑)、J:COMで川尻さんと宇野選手の試合を観て──そのときは極真空手をやっていたんですけど──これは修斗、MMAをやるしかないと思ったんです。あの試合で川尻さんに憧れて、川尻さんを目指してMMAをやっていた、ということはあります」
──では、ソリホン戦の先にもしかしたらライト級の統一戦、そして、川尻選手と……。「そうですね。もう何回か写真は撮らせてもらったのですが、サインももらって」
──(苦笑)そこは「戦いたい」と言うところではないですか。
「機会があれば……。まずはソリホン戦に集中します!」