MMA
インタビュー

【UFC】パントージャと朝倉海がニアミス「ジャパニーズスタイルだな」「柔術の母国・日本は俺が行きたい場所」=12月8日(日)『UFC 310』

2024/12/05 18:12
 2024年12月7日(日本時間8日)、米国ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催される『UFC 310: Pantoja vs. Asakura』(U-NEXT/UFC Fight Pass配信)のメインイベント「UFC世界フライ級選手権試合」(5分5R)に向け、前RIZINバンタム級王者の朝倉海(日本・JTT)の挑戦を鵜受ける同級王者アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル・ATT)が4日(日本時間5日朝)同地でメディア向けの個別インタビューに臨んだ。  先にインタビューを受けた朝倉に続いてインタビュー会場に現れたパントージャは、バックステージでのテレビ取材を終えた朝倉とニアミス。朝倉が飲み物を片手に壇上のパントージャを観察し、両者が視線をかわす場面が見られた。 「初対面だ。いいやつそうだね。ジャパニーズスタイルだな」と笑顔で応えたパントージャ。  あらためて朝倉について問うと、「朝倉海は打撃がとても強い選手だ。もちろん俺も自分の打撃に自信はあるけど、この試合ではグラップリングが彼との違いを明白にするだろう。これはMMAだし、俺も立ち会うが、ずっと打撃で付き合うつもりはない」と、自身のストロングポイントで勝負する算段を語った。  朝倉は会見で、RIZINリングとUFCのフルサイズのケージの違いについて、JTTでの練習で慣れていることを語ったが、パントージャは、「UFCとRIZINの大きな違いの一つは、RIZINには自分のように強いグラップラーがあまりいないということだ。昔のPRIDEはそういうファイトスタイルだったけど、UFCでは違う。UFCには多くの優れた局面がある。UFCには最強のグラップラー達が揃っていて、特にフライ級ではスタミナ・打撃・グラップリングなど全て揃っていないとランキングトップ10に入ることなんてできない。ここの全員が全局面で強くて、それが本物のMMAだ。その点では俺がかなり有利だと思う」と、UFCトップでは、すべてが出来た上で、突出した強さを持つファイターしかトップに立てない、とした。  その“最強のオールラウンダー”の一人が、同じATTの堀口恭司だ。 「恭司は実際に世界最高のファイターの一人だ。彼のおかげで、俺は自分の試合に臨むことができる。その恭司を海がノックアウトしたのを見て、海のことがもっと気になったんだ。誰が恭司を倒せる? そして、とてもいいファイターと戦えることに気づいたんだ。2回目は恭司が勝っている。今回はもう1回、海が負ける時だ」  海のみならず、王者パントージャにとっても、UFCフライ級をもう一段階上げるための試合となる。  パントージャは「この試合を(団体間の)クロスオーバーのような試合にして、世界中のたくさんの良いファイター、世界中のたくさんの若いファイターに門戸を開くんだ。日本には巨大なマーケットがある。俺は若い頃に『PRIDE』を見て、日本人がどれだけすべてのファイターを尊敬しているか分かったし、それは俺が行きたい場所でもあるんだ。日本に行きたい。フィードバックが欲しい。俺はブラジリアン柔術のトレーニングをしているけど、柔術は日本から伝わってきたものなんだ。俺が柔術で学んだ哲学はリスペクト、試合に出て自分を証明することだ。俺は日本が大好きで、行きたい場所の一つ。もし俺がみんなと良い関係になって、彼のファンも得ることができたら、俺にとってもとても特別なことになる」と、朝倉海との王座戦の意味を語る。 「ここラスベガスで、このイベントを作る。それは俺にとって特別なことなんだ。ラスベガスに来て試合をするのは大好きだし、ここでメインイベントをする機会もある。この街はビッグショー、ビッグイベントのために君たちが作っている街だし、スーパースターになるための方法をもっと学ぶことができて超ハッピーだよ。というのも、この街には多くの仕事がある。  そんななか、誰もが話題の順位が上がれば……と思ってしまう。でも、実はファイター全員にとって、これはとても大きなことなんだ。『世界最高のファイターになること』は、誰もが望むことなんだ。俺もそうありたいと思っているし、俺はそうしようとしている。世界最高のファイターになること、そして土曜日(日本時間日曜日)にはこの階級をアップさせる大きなチャンスがあることを知っている。 新しいショーツを選ぶために来たんじゃない  王者になる前は、UFCに参戦しながら、ウーバーイーツでも働いていた。その間のパントージャを支えたのは糟糠の妻の存在だったという。 「すべての少年は男になるためにスタートする。妻と会う前の俺はまだ小さな子供で、自分の居場所を見つけようとしていた。俺はたくさんの間違いを犯したけど、妻は正しい人間になる方法を教えてくれたんだ」と、今回はパントージャの一本勝ちを予言する妻について、王者は語る。  UFCではメインイベンター級のファイトや選手に近年「カスタムショーツ」を制作している。今回のパントージャと朝倉海には、それが用意されているというアナウンスはいまのところ無い。  パントージャは、「俺は自分が世界最高のファイターと証明するためにここにいるし、世界最高のファイターになろうと努力したんだ。だから土曜日に来るんだ。新しいショーツを選ぶとか、そういうことをしに来たんじゃない。欲しいものを持って来てくれるなら、それはいいことだ。でも、結局のところ、俺は家に帰って家族と一緒にいる。家族と過ごす時間は金に換えられない。だから俺には関係ない話だ。大切なのは家族。俺の子供たちは、俺にとってもっとも特別なものだ。そして、お金を稼げば稼ぐほど、家族との時間が増える。だからここにいるんだ」と、カスタムショーツがあろうがなかろうが、家族の存在が戦う大きな理由となっていると語った。  余裕とともに大きな自信を見せる王者の現地での主要オッズはパントージャが1.38倍に対し、挑戦者・朝倉海は3.15倍となっている。 [nextpage] 会見後のパントージャ U-NEXTインタビュー「日本のさいたまスーパーアリーナで試合ができたらいい」 ──試合まであと3日となりました。現在の心境は? 「素晴らしい気持ちだよ、日本の大スターで、とてもいいファイターの朝倉海と対戦できることにワクワクしてる、というか超ワクワクしてる!ああいう、優れた選手であり難敵と試合するのはエキサイティングなことだし、だからそういう瞬間をすごくハッピーに感じるんだよ」 ──試合に向けてのトレーニングキャンプは充実していましたか? 「最高だった! 何しろ堀口恭司という素晴らしいファイターが自分の練習に協力してくれて、それに彼だけじゃなくて、自分のトレーニング人生において最高のメンバーがたくさん力を貸してくれた。ジム(ATT)にはたくさんのいい選手がいるけど、そのなかでもアドリアーノ・モラエスや元谷友貴たちに助けてもらえているなんて、最高だよね、完璧なトレーニングキャンプだったよ」 ──今名前の挙がったメンバーで言うと、長身のモラエス選手が朝倉海対策の役割を担っていたのですか? 「アドリアーノは柔術黒帯の優れたグラップラーであるっていうところが大きくて、フットワーク的には空手ベースの恭司のほうが朝倉海の対策だったと思う。それから、恭司と練習するっていうことは、より精神的な駆け引きの面で大きいんだ。やっぱり朝倉海に勝ちたいと思ったら、自分自身のメンタルをしっかり整えていなくてはいけなくて、彼をぶっ潰すんだっていう。そうすれば勝てるというようなね」 ──堀口選手は海選手と二度対戦していますが、具体的にアドバイスをもらいましたか? 「言葉で何かっていう感じじゃないかな。練習をとにかくたくさん一緒に積んできたなかで大事なことを伝えてくれているというか、つまり朝倉はいい選手だからリスペクトを持って臨むようにっていうことだ。恭司がどれほどいい選手か知っている俺としては、朝倉が堀口を倒した試合を見て、朝倉はすごくいい選手なんだと知ったわけだし、恭司が誰かにやられたとしたら、それをした相手はとてもデンジャラスだって感じるよね」 ──そんな堀口選手との練習はどのようなものですか? 「恭司とのトレーニングがどんなかって? ぶっ飛ばしてやってるよ! なんてね、もちろんそれは冗談で、素晴らしいんだよ。すごくたくさんのことを学んだ。何より、恭司のおかげで俺のファイターとしての考え方はすっかり変わったんだよ。いかにしてポイントを取り、スコアが付いて、そしていかに勝つかを教わった。それに、とにかく感謝しかなくて、自分を助けてくれたときというのは、家族、子どもたちの面倒も見てくれて、恭司とても特別な存在なんだよ」 ──朝倉対策として意識していたことは? 「ヒザはもちろんだけど朝倉は打撃のスペシャリストだからその点で警戒はもちろんしていて、それを踏まえても自分の勝負の鍵となるのはグラップリングだから、たくさんの練習を重ねた」 ──打撃は朝倉選手の大きな武器ですが、パントージャ選手の方が武器の量自体が多いと思います。そのことがアドバンテージになると思っていますか。 「もちろん。自分がよりコンプリートファイターだし、自分が持っていきたい方向に試合運びができる、ゲームメイクできると思っている。自分は彼と打撃でやりあえて、さらにグラップリングがある。さらに、チャンピオンシップは5ラウンドあるということ。彼には5ラウンドマッチの経験がないから、その点も自分が優位だと思うし、その上で早期フィニッシュを狙いに行くつもりだ」 ──今の話を踏まえて、5ラウンド、ドロドロの試合にひきづりこむという考えはありますか?やはりおっしゃったように、とにかく早いラウンドで決着するように仕掛けていくのか。 「自分はどっちもできるわけだから、5ラウンドまで行ったとすれば彼の功績を称えるという感じかな。だって、俺は最初からフィニッシュを狙っていくわけだから。俺がやりたいこと自体は、それだから。俺は、世界に誰がフライ級最強なのかを知らしめたいし、試合がどうなろうと絶対に自分はフィニッシュできると信じてる。朝倉はバンタム級から落としてきたわけで、自分よりも大きく体が強い相手と戦うという挑戦こそ、俺がやりたかったことなんだ」 ──バンタム級から階級転向してくるという点で、どこまで朝倉選手がリカバリできるかなど、気になることはありますか? 「彼のリカバリがすごくうまくいくとは考えないようにしている。彼に取ってタフな試合をしたいということを念頭においているのだけど、彼がバンタムから落としてくるということは自分より優れた状態になるとは思わないと言うか、むしろ大きい分だけ、落ちる、劣ると思っていて。そう言うふうに考えることが自分の勝利にとっては大事なことでもある」 ──ずばり、勝利にどれほどの自信を持っていますか。 「すごく自信がある。自信を持つと言うこと自体が、最も重要なことだから。その逆に、全ての対戦相手に対してリスペクトを捧げることもまた、勝利の大切なカギなんだ。全ての対戦相手にリスペクトがあるし、朝倉がどれほど素晴らしいかもちゃんとわかってる。それに俺が持つこのベルトを奪取するために、彼は自分が持っていたRIZINのベルトを手放したわけだ。UFCで戦うために、自分の手の中にあるベルトを返上するということは、もう失うものなど何もないだろう。そういうことが、人を危険な存在たらしめるんだよ」 ──防衛戦に臨む=負けたら失うものがあるパントージャ選手にとって、全身全霊で守り抜きたいこのベルトの価値とは? UFC王者であるということの重みとはなんでしょうか。 「このベルト、UFC王者であることは俺にとって多くの意味を持っているんだ。戦う理由なんだ。自分自身が世界最高のファイターであるということを証明し、そのために人生を賭けて、そして機会を手にした。自分はそのポジションを手にし、ベルトを手にし、そして今再び機会を得ているということなんだ。だから日本のファンのみんなに、そんな自分を見せられるということはワクワクするよ。  というのは、日本文化に対してとてもリスペクトがあるから。自分の根っこにある最初のディシプリンは柔術なんだ。それはブラジリアン柔術ではあるけれども、柔術は日本から生まれたもの。そういう文化や信念というものに対して深い敬意を持っているし、それに全てのものに敬意を払おうというその姿勢、頭を下げ、目を見て戦いに臨む、そういう部分をすごく尊敬している。自分が行きたい場所のひとつなんだ」 ──柔術を通じ日本のことを思ってくださりありがとうございます。ところで、そんな柔術ではなく、バックボーンのひとつである「ムエタイ」という文字が、パントージャ選手の腕にタトゥーとして刻まれています。このタトゥーについて教えていただけますか。 「そう、あと炎と、龍とがセットだ。柔術というディシプリンがあって、ムエタイも割と若い頃から始めて、俺はムエタイで無敗なんだけど、自分の師匠に促されたものだよ。この炎、ムエタイ、自分の大好きなオリエンタルなドラゴン=龍が自分にとってパワーを与えてくれているんだよ」 ──パントージャ選手のバイオグラフィーを見ると、ご自身の強みとして「アグレッシブさ」のほかに、「家族」を挙げていますね。ファイターとして強さを語る上での、家族の存在の大きさとは? 「文字通りになるけれど、自分はアグレッシブな選手であり、それでいて、家族を大切にする人間だということなんだよね。家族は何があろうと自分の人生の全てだし、何よりも大切なんだ、家族が。妻と2人の子供がね。俺としてはもっと稼いで、もっと家族との時間を持ちたい。それこそが強さにつながるんだ。この試合に勝つことで、より家族との大切な時間を過ごせるようになるからなんだ」 ──「UFCカウントダウン」(公式の事前映像)でも紹介されていましたが、マルコス・"パフンピーニャ”・ダマッタコーチとの絆がどのように紡がれたのか、教えてください。 「俺の父と母は俺がすごく幼い頃に夫婦関係が壊れてしまって、父親がいなかったんだ、それって物理的な意味だけではなくて、男としていかにやってくかを導いてくれる存在がいなかったということ。だから若い頃はいろんな過ちを犯した。教えてくれる人がいなかったから。それから自分は師として教えを請える人たちにたくさん出会って、いろんな人が、どうやって前に進むかを教えてくれた。そのなかでも最高の出会いが、パフンパ。自分にとって彼は素晴らしいメンターで、道を促してくれるんだ。  それはトレーニングやコーナーマンとしての面だけではなく、人生においてもだ。自分みたいな生い立ちの人間にとってそういう出会いに恵まれたことはとても大事なことだ。それに、パフンパはカーウソン・グレイシーの黒帯だから、そういう偉大な柔術の師から樹木のように系譜が伸びて、その一部にいられるということはとても光栄なこと。パフンパの存在はとても特別なんだよ」 ──その絆とは直接関係のない余談ですが、外国からアメリカに渡ってMMAに身を投じるのは簡単な決断ではないと思います。そういうなかで、ATTにはブラジルから来た選手やコーチがたくさんいるということは安心ですか。 「そうだね。フロリダのATTという場所はブラジル出身のファイターにとっては理想的だと思う。気候も温暖で、ブラジルにいるような気持ちになれてホームだなって感じられるから移住してきても順応しやすいんだよ。ただ素晴らしい環境であるという意味では、世界中から選手が集まってきているからね。ロシアの人もいれば中国も、そして日本の選手だってご存知の通りたくさんいるだろう。特別なジムってことだね」 ──最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。 「日本のファンの皆さん、応援ありがとう。日本のスター選手である朝倉海と対戦できることを光栄に思うし、スーパーハッピーだよ!今回勝利してベルトを防衛して、日本のさいたまスーパーアリーナで試合ができたらいいな。UFCを日本からU-NEXTで見ててね」
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