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2024年11月16日(日本時間17日)、米国ニューヨーク州ニューヨークシティのマジソン・スクエア・ガーデンにて開催される『UFC 309』(U-NEXT配信)の前日計量が15日(日本時間16日)行われた。
メインイベントの「UFC世界ヘビー級タイトルマッチ」では、初防衛戦に臨む王者のジョン・ジョーンズ(米国)が237.6ポンド(107.77kg)でパス。元王者で同級8位のスティぺ・ミオシッチ(米国)が248.6ポンド(112.76kg)で計量をパスした。
元オールアメリカンレスラーのジョーンズは、2008年に20歳でプロMMAデビュー。前戦2023年3月の『UFC 285』での「UFCヘビー級王座決定戦」で前暫定王者のシリル・ガーヌに1R ギロチンチョークで一本勝ち。ライトヘビー&ヘビーの二階級制覇に成功した。
その後11月にミオシッチとの初防衛戦にへ臨む予定だったが、練習中に左胸の胸筋腱断裂で欠場。JJにとって、1年8カ月ぶりの試合となる。
対する挑戦者ミオシッチは、ミルコ・クロコップを尊敬し、野球やアメフト、レスリングで活躍後、MMAファイターと並行して消防士としても働き、2010年にプロMMAデビュー。2016年5月にファブリシオ・ヴェウドゥムに1R KO勝ちでヘビー級王座獲得。その後、フランシス・ガヌー戦を含む3試合で王座防衛。ダニエル・コーミエーに敗れ王座陥落も、コーミエーから奪還し、2020年8月のラバーマッチも判定勝ち防衛。2021年3月『UFC 260』でガヌーと約3年2カ月ぶりに再戦。2R KO負けで王座陥落、リベンジを許していた。
新旧UFCヘビー級王者の対決は、ジョーンズが初防衛するか、ミオシッチが王座奪還なるか。同級にはセルゲイ・パブロビッチとカーティス・ブレイズを1R KOした「暫定王者」トム・アスピナルも控えているが、会見でジョーンズは、アスピナルに嫌悪感を示し、現UFC世界ライトヘビー級王者のアレックス・ペレイラとのスーパーマッチを望んでいる。
ジョン・ジョーンズ「スティペとの試合後、ペレイラとの試合だけが自分のレガシーに値するものだ。リスクを取るに値する」
──ニューヨークでMMAが合法化されて以来、毎年11月にMSG(マディソン・スクエア・ガーデン)で大会が開催されているが、これまでのインタビューでもあなたは「いつニューヨークで戦うのか?」と聞かれることが多かった。ヘビー級王者としてMSGで戦うことになった今の気分は?
「ここに来られて本当に誇りに思う。UFCの現状にも誇りを持っているし、あの選挙の時にデイナ・ホワイトがステージに立った瞬間、MMA業界全体が格上げされた気がする。アメリカ人だけでなく、世界中の人々が『あのスキンヘッドの男は誰だ?』って思っただろうし、彼が私たち全員を代表しているんだと思う。MMA記者のみんなにとっても同じだろう。この業界全体がより名誉あるものになったように感じるんだ。それくらいマディソン・スクエア・ガーデンで戦うことは特別なんだよ。
ここは格闘技の聖地みたいなものだし、大統領が観戦するかもしれないなんて話もあるし、タイムズスクエアのビルボードに自分の顔があることもすごく誇らしい。数日前にはラスベガスにいたんだけど、人々がまるで王族みたいに接してくれたんだ。それくらい、この試合に対する期待の高さを感じてる。ファンの中にはこの試合が相応しくないと思っている人もいるみたいだけど、俺にとってはキャリアの中でもっとも名誉なイベントのひとつだ。ここでメインイベントを務めることに感謝しているし、心から光栄だと思っている」
──あなたは対戦相手が決まると、相手の映像を徹底的に見て、すべての動きや癖、なぜそのステップを踏むのか、なぜそのハイキックを出すのか、なぜ特定のブロックをするのかを分析する、と公言している。スティペについては多くの人が「史上最もスキルのあるヘビー級ファイター」と評価しているが、あなたにとって、彼はこれまでにUFCで対戦した中で最もスキルのある相手だと見ている?
「実際のところ、ダニエル・コーミエーが最もスキルフルだと考えている。彼のオリンピックレベルのレスリングや、ダーティーボクシング、ボクシング技術は素晴らしい。でもスティペはそのコーミエーを倒しているからね。
スティペはタイトルマッチに相応しい存在だ。彼はレスリングもできるし、いつも引き締まった体で試合に挑む。スタミナもある。そして右のパンチ――ストレート、オーバーハンド、アッパーカット――これが彼の本当の武器だし、彼にとっての勝機だ。そこはしっかり警戒して準備しているよ」
──あなたの試合が組まれると、ファンやメディアは対戦相手より次の試合に目を向けてしまうのはなぜだろう? アレクサンダー・グスタフソン戦の前には当時勢いに乗っていたグローバー・テイシェイラのことに質問が集中したし、いざグローバー戦が組まれるとダニエル・コーミエーに関する話題が多くなった。今回も、スティペではない他のファイターの話題が先行しているように思える。
「傲慢に聞こえてしまうのは嫌なんだけど、要するに自分がそれだけの実力を持っているからだと思う。自分が何を成し遂げても、常にそれ以上を求められる。正直言って、今もトム・アスピナル(UFCヘビー級暫定王者)の話題の方がスティペよりも多く取り上げられていることは理解している。それが俺の置かれている立場なんだ。勝つたびに、なにかしらの物言いがつくんだよ。『あいつは実際には万能なファイターではなかった』とかね。
この状況は他のどんなファイターとも違うユニークなものだと思う。シリル・ ガーン(ヘビー級2位)と戦う前は、彼の身体能力やスピード、そしてタイ・ トゥイバサ(ヘビー級12位)戦での勝利で評価が高かった。でも俺が勝つとすぐに『あの程度だった』『こういう欠点があった』と変わるんだ。だから、自分は特殊な環境に置かれていると思うし、そういうものだと受け入れているよ」
──なぜあなたはファンに、トム・アスピナルから逃げていると誤解されていると思う?
「正直に言うと、根も葉もない話が作られているように感じているんだ。戦う予定が一度もなかった相手から逃げるなんてことはありえない。まるで一度も声をかけていない女の子に振られたようなものだよ。言いたいことがわかる? デイナ・ホワイトやハンター・キャンベル(※UFC首脳陣)とトム・アスピナルについて話し合ったこともないし、彼が自分の対戦相手の候補に入ったことも、一度もない。
キャリアを通じて数々の相手を倒してきたけど、彼を避けているわけじゃない。今自分がスティペと戦う契約を結んでいるから、もし他の相手と戦うとなれば、むしろスティペから逃げることになるだろう。スティペと戦う契約はもう1年以上前に結ばれているんだ。トム・アスピナルの話は急に出てきたもので、彼がベルトを取った瞬間から『俺が逃げている』という話になってしまった。でも彼と対戦する話なんて一度も交渉されたことがないんだよ。だから、ファンはただ現実を無視している。彼らはやっと自分と競い合えると思う相手を見つけて、どうしてもその試合が見たいと思っているんだ。それだけのことさ。
これはフランスのファンと同じようなものだ。シリル・ガーンを倒した後、フランスのファンはかなり批判的だった。それでもまた同じ状況に戻る。『ああ、また一人倒した。次は何だ?』って感じになるんだ。グローバー・テイシェイラを倒した時もそうだ。彼は20連勝していたけど、倒した瞬間に次の話題に移る。それが俺にとっては普通のことだ。
トム・アスピナルがエキサイティングなファイターだというのは分かっている。16年経って、ついに6歳若くて30ポンド重い相手が出てきて、みんなそれを見たがっているのも理解している。でも自分にとってはこう思うんだ。『俺にとって何の意味があるんだ?』と。彼に勝ったとしても何も変わらない。トムを倒すのはシリル・ガーンを倒すのと同じようなものだ。彼には英国全体の応援があるし、今勢いに乗っている。でも俺が彼を倒しても、自分には何の変化もないんだ」
──もしUFCがこの試合の後に話を持ちかけてきて、金銭的な条件が納得できるものであった場合、トム・アスピナルと戦うことを考える? それとも、彼が自分にとって何の意味もないから戦うつもりはない、という立場を貫く?
「彼は俺にとって何の意味もないんだ。何も変わらない。彼は6歳若くて、35ポンドも大きいからね。それを見たいと思う人がいるのは理解している。『ジョンよりずっと若くて大きな相手と戦うのを見たい』という話になるのも理解できるよ。
でも俺から見たら、あるいはもし君が俺のマネージャーだったらどう考えるかだよね。同じ年齢で、今歩いている体重もほぼ同じのアレックス・ペレイラ(ライトヘビー級王者)と戦う方がいいだろう。ペレイラは普段240ポンドくらいで過ごしているからサイズ的にも近いし、彼の実績も素晴らしい。ビジネス的にも理にかなっている。
全く名のない、しかし危険かもしれない相手と戦うか、それともすでに多くの実績を持ち、非常に危険で自分のレガシーにも影響を与える相手と戦うかの違いだ。シリル・ガーンを倒しても俺にとっては何も変わらなかった。ただ少し多くの金を稼いだだけだ。トム・アスピナルとの試合も同じだろう。でも、アレックス・ペレイラを倒したとなれば、それはもっと大きな意味を持つんだ。その論理を理解できないわけじゃないだろう」
──新しいUFCグローブが6月に導入されてから、今回また以前のグローブに戻るようだが、これについてどう思う?
「以前のグローブに戻るのはすごく嬉しいよ。数週間前に新しいグローブが送られてきて試してみたんだけど、キツく感じた。以前はXLサイズのグローブを使っていたけど、新しいグローブでは3XLをつけなければならなかったんだ。手がカーブする形状が非常に不快で、ファイトウィークに、このグローブをつけてどうやって戦うか悩んでいたよ。本当にトレーニングでも使いたくないと思っていたからね。
最近ハンター・キャンベルから電話があって、『UFC309に出るファイターはみんなベテランだ。なぜ新しいグローブで不安を与える必要がある? 慣れたグローブを使えばいい』と言ってくれた時、本当にホッとした。自分の手を巻いてくれるコーチのブランデンもすごく安心していたし、俺もホッとしたよ」
──デイナ・ホワイトは君を「歴史上最高のファイター」と称していて、多くの人が同意しているし、あなたもそう主張している。一方で、トム・ブレイディやウサイン・ボルトは自らを「歴史上最高」と言うことは避けている。この事実についてどう思う?
「デイナ・ホワイトが自分を『歴史上最高のファイター』と強く推してくれているのは確かだね。彼の支援には本当に感謝しているよ。MMAは他のスポーツとは少し違う。俺はトム・ブレイディやレブロン・ジェームズ、マイケル・ジョーダンといった偉大なアスリートたちのファンだ。でも格闘技は何かを超越しているんだよ。全く異なるものなんだ。
億万長者のオフィスを見てみると、モハメド・アリの写真が飾られていることがある。人種、宗教、信仰に関係なく、ファイターという存在は特別なんだ。これは他のどの称号とも違う名誉であり、特別なバッジを身につけるようなものだ。モハメド・アリ自身も『自分は史上最高だ』と言い続け、それが今でも記憶に残っている。もし俺が同じことを言えば、アリの言葉を思い出す人もいるだろう。
マイク・タイソンも同様にその偉大さで人々を魅了してきた。もし自分がそのレベルに近づいているなら、受け入れ、主張するべきだと思うんだ。それは簡単に手に入るものじゃないし、特別なことだ。時には自分自身が一番の応援者になることも必要だし、今はその瞬間だと感じている。亡き母もそれを望んでいたはずだから」
──アレックス・ペレイラとの試合が注目されるべきものだということには同意するよ。彼の実績についても、君の主張は説得力がある。ただ、多くの人が批判するのは、君がトムを選ばなかったことよりも、彼について「自分と戦うに値しない」といった発言だと思う。君がタイトル挑戦権を得た時期と比べると、トムの方が勝利数、フィニッシュ数、ランカーへの勝利数、メインイベントの出場回数が多いし、暫定王者でもある。これについての君の見解は?
「たしかに、自分の言い方が正しくなかったかもしれない。実際のところ、トム・アスピナルにはタイトルマッチを戦う権利があるし、彼には最高のUFCキャリアを歩んでほしいと本気で思っている。個人的にトムに対して何の悪意もない。だから『彼が自分に相応しくない』と言ったのは間違いだったかもしれない。彼は価値あるものを持っている。
ただ、自分が思うのは、彼はもっと素晴らしいキャリアを築くべきだということだ。多くの人はすぐにトップに行きたがるけど、ビジネスの世界で言えば、今の彼の立ち位置と自分の立ち位置が違うんだ。彼が自分と交わるべき相手ではないということさ。わかるだろう?
トムがどうとかではなく、自分がどうしたいかが重要だ。これだけ長い間UFCで戦い続け、努力を積み重ねてきたからこそ、自分には『この相手と戦いたい、この相手は嫌だ』と言う権利があると思っている。だからこそ、自分はベルトを返上することも厭わない。ヘビー級の王座が必要とは思っていないし、自分が築いてきたものはベルト以上のものだと感じている。もし自分が一歩退いて、『さあ君が新たなヘビー級王者になれ』とチャンスを与える時が来たら、それは自分の選択でそうするだけだ。でも、今の自分にとって意味がある試合を求めているんだ。
アレックス・ペレイラとの試合だけが、自分のレガシーに値するものだ。彼は自分と同い年で、現役で戦っていて、特別な価値がある。多くのファンも見たいと思っている。彼らは自分が負けるところを見たいんだろう。それは理解している。だから、アレックスとの試合はリスクを取るに値するものだ。
トムのことを言えば、彼はフィニッシュ率が高いとか、色々な点で注目されているかもしれない。でもタイトルを持っていない。17回の世界タイトルを獲得した自分が戦う相手は、自分と同じレベルでなければ意味がない。トム・アスピナルとアレックス・ペレイラが同じレベルではないということさ。興奮を呼ぶ試合を望む人もいるだろうが、自分はレガシーを追求したい。それが自分にとって重要なことなんだ」
──引退についてはまだ決めかねているようだが、インタビューのたびに考えが揺れているようにも見える。これまでのキャリアを振り返って、後悔していることはある?それとも、全てが予定通りに進んできた?
「たくさんの後悔があるよ。でも最終的に、今の自分が成長した大人になっているというのも自覚している。チームプレイヤーとして、隣人として、個人として、自分がどんな人間かを誇りに思っているんだ。人生で経験するすべてのことが、自分を形作るものだから、過去に経験したいくつかの出来事がなければ、今の知恵も持っていなかっただろうね。だから、今の自分をとても誇りに思っているよ。素晴らしいキャリアだったと思うし、これで質問の答えになっているか分からないけど。
引退について言えば、今の目標はスティペを倒すことなんだ。スティペを無視して、次のことを考えるなんて失礼だろう。まずは彼を倒すことが最大の目標だ。そして、もし圧倒的で破壊的な勝利を収められたなら、その時の心の中の願いは『次はアレックス・ペレイラだ』となるだろう。
ただ、最終的にはUFCがどう判断するか次第だ。もしUFCがその試合を望まないなら、それは実現しないし、自分も次のステージに進むだけだ。でも、こう考えるんだ。『みんなは自分との別れを選ぶのか、それとももう一つのスーパーファイトを見たいのか』ってね。そして、俺にとって唯一意味があるスーパーファイトは、アレックス・ペレイラ戦なんだ」
──キャリアの中で一番の思い出は?
「2011年、ニュージャージー州ニューアークでの出来事だね。強盗にあった夫婦を助けたんだ。自分は刑事司法を学んでいたし、その知識を活かして犯人を取り押さえ、警察が来るまで拘束することができた。
そしてその数時間後に、(『UFC 128』で)初めて世界タイトルマッチで勝つことができたんだ(※マウリシオ・ショーグンに3R TKO勝ち)。その日は、自分の力を正しい方向で2回も使えた気がして、本当に特別な日だった。あの日のことは絶対に忘れない。それが自分のキャリアの中で最高の瞬間だと思う」
──あなたのこれまでの受け答えは非常に正直で、ビジネス的にもアレックス・ペレイラとの対戦が合理的だと感じる。ただ、あなたよりも若く、あなたよりも大きな相手に挑戦しているジョン・ジョーンズを見たいというファンの希望も理解できる。競技者として、その挑戦に興味は沸かない?
「少しはそういう気持ちもあるかもしれない。でも正直に言うと、トムがあまりにも嫌な奴だから、ビジネスをしたくないんだ。あいつのファンもすごくうるさいし、あいつ自身が本当に嫌な奴なんだよ。彼は30歳で、いわゆるインフルエンサー世代の人間だ。ネットでTシャツを売ったり、そういうのにはもう興味がない。もっとリスペクトがあれば、何か考えられたかもしれないけどな。
でも、これはビジネスなんだ。俺と戦うことであいつは人生を一変させるチャンスを得ることになる。でもそのチャンスすら与えたくない。個人的に俺に対する態度が間違ってたんだよ。俺はもう40歳目前の大人だから、記者会見とかで騒ぎを起こしたくない。
一方でペレイラは尊敬できるし、クールで多くを語らないタイプだ。そんな彼とはビジネスをするのもありだし、彼のような人間ならすべてを賭けることができる。彼は実績もある。トムはただのおしゃべり野郎だ。今はホットかもしれないけど、こんな奴はすぐ消えるんだよ。セルゲイ・ スピバック(ヘビー級7位)も同じようなポジションにいたが、すでに失速している。俺はこのスポーツを長くやってきたから、一時的な話題先行型の奴にチャンスを与える気はない」