2024年11月9日(土)タイ・ルンピニースタジアム『ONE 169: Malykhin vs. Reug Reug』のコー・メインイベントで行われる、ロッタン・ジットムアンノン(タイ)vs.ジェイコブ・スミス(英国)をK-1三階級制覇の武尊(team VASILEUS)が現地観戦する予定であることが分かった。
武尊は9月27日に同会場で開催された『ONE Friday Fights 81』にて、1Rにタン・ジン(ミャンマー)にダウンを奪われるも2Rに逆転KO勝ち。試合後には対戦を熱望するロッタンがリングに上がり、額を押し付け合っての激しいフェイスオフを展開。
「『やっと試合ができるな』っていう嬉しさだけでした。あの時はもう『やっとコイツと戦える』っていうそれだけの喜びでした。もしあの試合で負けていたら対戦はないと思うし、自分も終わりかなと思っていたんで、ロッタンと戦えることへの喜びだけでした」と当時を振り返る武尊。
一方、ロッタンは「観戦してスリリングな戦いだった。彼がダウンをもらった時は、正直ショックだった。『もし戦えなかったらどうしよう』と不安がよぎった。でも最終的には彼はその力強さを見せてKO勝ちした。本当に素晴らしい試合だった」と、まずは武尊が前哨戦をクリアしたことを喜んでいた。
ONEのチャトリ・シットヨートン代表は今年7月の会見にて、「ロッタンは今年後半(11月)にムエタイの世界王座防衛戦を戦います。武尊は9月27日にまた非常に困難なキックボクシングの試合に臨みます。その後にロッタンと武尊はついに対戦します。間違いなく壮絶な戦いになるでしょう。日本史上最高のストライカー同士の対戦になると思います」と、両者が次戦をクリアしたら対戦を実現させると明言していた。
【写真】ハイドレーションテスト&計量をミスしたロッタン 今回のスミス戦に関して武尊は「この前のデニス・ピューリックとの試合を見ると、自分よりフィジカルの強い選手に対し、技術の巧さでいなす事に長けていると感じました。ジェイコブ選手自身も身体は強そうですが、攻撃はロッタンが上手く当てるのではないかと思います。ムエタイルールでヒジもありますが、どちらにしても勝ってもらわないと困るので、しっかりと勝って欲しいです」と、ロッタンにエールを送る。
しかし、既報通りロッタンは計量をパスすることが出来ず、王座ははく奪。試合はキャッチウェイトで行われ、スミスが勝利した場合のみ王座戴冠となる変則タイトル戦として行われることに。
ロッタンが保持していたのはONEフライ級ムエタイ世界王座で、武尊との試合はキックボクシングルールで行われることが濃厚であり、武尊はロッタンと戦うことが第一でロッタンが王者でなくてもモチベーションに変化はないだろう。
ただ、ロッタンはこれで2試合連続フライ級での計量をミスしており、ロッタンが今回のスミス戦をクリアしたとしてもすんなり実現するのかどうか。現地観戦する武尊は、再びロッタンとリング上で対峙するのか。注目される。
[nextpage]
武尊がロッタン戦について語る
2024年9月27日にタイ・バンコクのルンピニースタジアムで開催された『ONE FRIDAY FIGHTS 81』のフライ級キックボクシングで、タン・ジン(ミャンマー)をKO勝利した武尊(team VASILEUS)。ONE初勝利の振り返りと共に今後の展望、そして対戦が期待される宿敵ロッタン・ジットムアンノンについての心境を語った。
自分の強さに色々な格闘技の良い部分のエッセンスを加えて
――改めて前回のタン・ジン戦を振り返るといかがですか。
「1R目は、相手が結構一発がある選手だったので、色々攻撃を警戒していました。特にローキックでその前の試合で足を怪我したので、そのイメージが強くあって、結構下に意識が行ってしまいました。最初のダウンもやはり、下に意識が行き過ぎて、パンチをもらったというのがあります。でもそこからはいつも通りの戦いに戻れた感覚で。2Rからは、倒し返さないと勝てない状況だったので、もう倒しに行くしかない感じで戦えていました。気持ちを切り替えて上手く勝てた感じです」
――そのパフォーマンを自身ではどう評価し、何点をつけますか。
「ダウンを取られているので、そんなに自分では評価はできないですが、2R以降は自分の戦いができたと思うので2R以降で言ったら70点ぐらいという感じですね」
――対戦したタン・ジン選手のパフォーマンスはいかがでしたか?試合前と試合後で印象は変わりましたか。
「一撃が強い選手というイメージがありましたので、実際に試合の時にもらってしまい、思っていた以上にパンチ力はあったかなと感じました。オープンフィンガーだから倒せてきたパンチなのかなって思っていましたが、グローブでもしっかり効くパンチを打ってきたし、パンチを受けても一発一発が重かったので、これからドンドン成長する選手だと言う風に思っています」
――ルンピニースタジアムの雰囲気はいかがでしたか。
「お客さんの熱がすごい伝わる会場だし歓声も凄くて、戦っていて気持ちがいい会場だなっていう風に思いました」
――これまでと違った雰囲気は新鮮でしたか。
「そうですね。新鮮だし、お客さんの盛り上がり方も日本と全然違う盛り上がり方をしていました。選手は戦い甲斐がある会場だと思いますね」
――最近の練習状況を教えてください。所属するteam VASILEUSは全員好調だと思いますが、メンバーとどの様な練習を行なっていますか。
「練習内容はそんなに今までと変わらないですが、今ジムを新しく作って、皆で一緒に練習できることが結構多くなって、他の選手の技術を盗んだりとか、教え合ったりみたいな事は前よりは増えたと思います」
――その中で現在、技術面やメンタル面などの新しい発見や手応えがあれば教えてください。
「自分がこれまでやってきた戦い方とか、練習方法とか、そういうものを信じてずっとやってきて、それで勝ち続けてきたので、それを続けて来たのはあるのですが、前々回のスーパーレック戦で負けてその事で色々考えさせられることがありました。怪我もありましたし、試合前も本当にオーバーワークで動けなくなったりとか体調を崩したり色々とありました。今まではそれでも勝ってきたので、変えてこなかったのですが、前回の負けで『これじゃダメなんだな』っていうのが分かって。今回の試合はいつもと違う調整方法にしたりしました。ちょっとずつですが、自分に合うやり方が作れてきたのかなと思っています」
――今後ですが、海外トレーニングなども予定していますか。
「そうですね。次の試合が決まったら、また合宿に入ろうと思っています。最近はラドウィックさんのジムではなくてLAのジムで練習しています。アメリカのムエタイジムなので、MMAの選手やボクシングの選手も来るし、もちろんムエタイファイターもいて、様々なジャンルの良いところを掻い摘んでやれる。タイに行くと本当にムエタイの練習ばっかりになるし、それこそムエタイ選手を相手にムエタイの練習をしても経験値が違うし、同じ戦いをして勝てる相手ではないと思う。自分の強さに色々な格闘技の良い部分のエッセンスを加えて自分のスタイルを作り上げていくのがここ数年の自分のやり方で、行っているジムはそういうことができる場所です」
[nextpage]
あの試合で負けていたら自分も終わりかなと思っていた
――11月9日の「ONE169」でロッタン選手がフライ級ムエタイの防衛戦を行いますが、武尊選手は現地観戦しますか。
「そうですね、見に行こうと思っています」
――因みに、ロッタン選手とは普段コミュニケーションは取っていますか。
「いえ、全く取ってないです。この前の試合後のリング上で初めて喋ったぐらいですね」
――そのリング上でフェイスオフしました。改めて、あの時の瞬間の感情やお気持ちを教えてください。
「『やっと試合ができるな』っていう嬉しさだけでした。あの時はもう『やっとコイツと戦える』っていうそれだけの喜びでした。もしあの試合で負けていたら対戦はないと思うし、自分も終わりかなと思っていたんで、ロッタンと戦えることへの喜びだけでした」
――武尊選手が感じるロッタン選手の魅力は何でしょうか。
「やっぱりONEでチャンピオンになっていることもそうだし、今までの戦いとか見てきて、本当に強さプラス唯一無二の戦い方とあのキャラクター。試合を見てなかなか熱くなれる選手って少ないと思うんですけど、僕はあの選手だったらすごい熱い試合ができるなっていうのを見て感じました。同じ階級で世界の頂点を極めている選手で、あれだけ噛み合う選手はいないと思うので、僕からしたら戦いたい理由でもあるし、魅力でもあります」
――ロッタン選手のファイトスタイルは非常にアグレッシブだと評価されます。選手目線であの戦い方をどう見ますか。
「アグレッシブだと思うのですが、意外と細かい技術使っていたり、意外と丁寧だったりとか、何も考えずに打ち合う選手じゃない。最近の試合を見ると、アウトボクシングみたいな戦い方もできているし、ヒット&アウェイみたいなこともできる。そういうところもできる普通に上手い選手だと思います」
――自身のファイトスタイルとの共通点を多く感じますか。
「そうですね。本当に気持ちだけ殴り合っているだけだったら、多分世界は獲れないし、これだけの結果を残せないと思います。 ロッタン選手も凄いバチバチやっているようで高い技術のある選手だと思います。僕も自分で言うのもあれですが、何も考えずにいつも殴り合っている訳じゃなくて、しっかりと技術を磨いて、その上で自分が得意な所で打ち合いだったり殴り合いっていうのをやっています。そういう部分では凄く似ている選手だと思います」
――ロッタン選手が試合中、自分の感情を表現する対戦相手への「挑発パフォーマンス」をどう思いますか?
「お客さんも盛り上がるし、対戦相手としても気持ちもは上がるし。僕は全然いいかなと思います。やはり盛り上がると思います」
――一瞬で会場を沸かすと言う点でも、武尊選手とロッタン選手は共通すると思います。ご自身はどう思いますか?
「盛り上がることは嬉しいことだし。プロとしてはやっぱり大事なことじゃないかなって思います。僕は会場を盛り上げるとか相手と熱くなるっていうのもあるんですけど、自分自身を鼓舞する意味でも盛り上げたりします。それをやることによって自分のパフォーマンスも上がるし、ロッタン選手も多分そういう感覚でやっている部分もあるんじゃないかと思います」
――武尊選手が感じるロッタン選手の1番の強さは何でしょうか。
「肉体が凄く強い選手だと思います。打たれ強さだったり、体の芯の強さみたいなのが凄くある選手。その一方で細かい技術やディフェンスの巧さもある。そこが強さの理由だと思います」
――その上で今回のジェイコブ・スミスとの防衛戦をどう予想しますか?
「この前のデニス・ピューリックとの試合を見ると、自分よりフィジカルの強い選手に対し、技術の巧さでいなす事に長けていると感じました。ジェイコブ選手自身も身体は強そうですが、攻撃はロッタンが上手く当てるのではないかと思います。ムエタイルールでヒジもありますが、どちらにしても勝ってもらわないと困るので、しっかりと勝って欲しいです」
――最後にファンへのメッセージをお願いします。
「ロッタン選手がしっかりと勝ってくれたら、試合は実現すると思います。ONEの過去イチ最高のベストバウトにして必ず勝ちます。皆様も応援をよろしくお願い致します」