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【UFC】2大王座戦ライトヘビー級王者ペレイラvs.挑戦者ラウントリーJr、女子バンタム級王者ペニントンvs.挑戦者ペーニャ! アルドvs.6連勝バティスタ、ケイラ・ハリソン2戦目、エスパルザが涙の引退=速報中

2024/10/06 07:10
 2024年10月5日(日本時間6日)に米国ソルトレイクシティのデルタセンターにて『UFC 307: Pereira vs. Rountree』(U-NEXT配信)が開催されている。  メインは「UFC世界ライトヘビー級タイトルマッチ」として王者アレックス・ペレイラ(ブラジル)と、挑戦者カリル・ラウントリー・ジュニア(米国)が対戦。コメインは、「UFC世界女子バンタム級タイトルマッチ」で、UFC6連勝中の王者ラケル・ペニントン(米国)が、元王者にして挑戦者のジュリアナ・ペーニャ(米国)と、いずれも5分5Rで対戦する。 『UFC 307: Pereira vs. Rountree』速報 2024年10月6日(日本時間7日)U-NEXT配信米国ソルトレイクシティ・デルタセンター ▼UFC世界ライトヘビー級選手権試合 5分5Rアレックス・ペレイラ(ブラジル)11勝2敗(UFC8勝1敗)9KO/TKO ※UFC4連勝中 205lbs/92.99kgカリル・ラウントリー・ジュニア(米国)13勝5敗(UFC9勝5敗)9KO/TKO ※UFC5連勝中 205lbs/92.99kg  メインイベントは、UFC世界ライトヘビー級選手権試合(5分5R)で、王者のアレックス・ペレイラ(ブラジル・37歳)が、同級8位のカリル・ラウントリー(米国・34歳)を挑戦者に迎えて、3度目の防衛戦に臨む。  ペレイラは、キックボクシング33勝7敗後、MMAに転向し11勝(9KO)2敗。フィニッシュ勝利率81パーセントの強打者だ。  UFCではミドル級、ライトヘビー級の二階級制覇王者で、ミドル級時代にはショーン・ストリックランド、イズラエル・アデサニヤらに勝利している。  2023年7月にライトヘビー級に転向し、ヤン・ブラホヴィッチに判定勝利。11月にはライトヘビー級王座決定戦として元同級王者イリ―・プロハースカを2R KOに下し王座戴冠を果たした。  2024年4月の『UFC 300』で元ライトヘビー級王者のジャマール・ヒルを1R、左フックでKOして初防衛戦に成功すると、6月の『UFC 303』ではプロハースカと再戦。1R終了時に左フックでダウンを奪うと、2R開始時に左ハイキックで再びダウンを奪いパウンドで2R TKO勝ち。2度目の王座防衛に成功している。  対するラウントリーJrは、MMA13勝(9KO)5敗。UFC5連勝中のムエタイバックボーンのストライカーだ。2018年7月の『UFC 226』では、元K-1ファイターのグーカン・サキに1R TKO勝ちしている。  2014年にプロMMAデビューすると、16年の『TUF23』で決勝進出。2021年9月のモデスタス・ブカウスカス戦以降、カール・ロバーソン、ダスティン・ジャコビー、 クリス・ドーカス、アンソニー・スミスを相手に5試合中4試合をフィニッシュ勝利している。  2024年6月の『UFC 303』でジャマール・ヒルと対戦予定だったが、ラウントリーが禁止薬物のDHEAが混合されたサプリメントを誤って摂取したとUFC側に申告したため、試合中止に。2カ月間の出場停止処分後、約10カ月ぶりの試合でペレイラに挑む。 [nextpage] ▼UFC世界女子バンタム級選手権試合 5分5Rラケル・ペニントン(米国)16勝8敗(UFC13勝5敗)1KO/TKO 4SUB ※UFC6連勝中 135lbs/61.24kgジュリアナ・ペーニャ(米国)11勝5敗(UFC7勝3敗)3KO/TKO 5SUB 134.5lbs/61.01kg  コメインでは「UFC世界女子バンタム級選手権試合」(5分5R)として、王者のラケル・ペニントン(米国)に、元王者で同級1位のジュリアナ・ペーニャ(米国)が挑戦する。  ペニントンは、2024年1月に、アマンダ・ヌネスが返上したベルトの王座決定戦でマイラ・ブエノ・シウバに判定勝ちして王座獲得。MMA16勝8敗で6連勝中。  対するペーニャは、王者ヌネスから唯一、一本勝ちで王座を奪取し「UFC史上最大の番狂わせの一つ」を成し遂げたバンタム級元王者。2022年7月のダイレクトリマッチではヌネスに判定負けで王座陥落。2年2カ月ぶりの再起戦となる。MMA11勝5敗。  ペニントンが初防衛成功なるか、ペーニャが王座返り咲きなるか。 ペニントン「自らの努力によって、ここまで辿りついたことに誇りを持っている」 ──いよいよ念願の試合が実現したという心境かと思いますが、ジュリアナ・ペーニャ選手との一戦に向けての思いを聞かせてください。準備は万全といったところでしょうか。 「もちろん!まさしくこの試合はずっと待ち望んでいた試合で、11年前にしていたかもしれない試合をがやっとできるっていう意味で、いつものような、6〜8週間くらい前に対戦オファーを受けて意志を聞かれるのような類の試合とは全然違う。どうして今までジュリアナと戦えなかったかも分からないし、本当にずっと待ち望んできた試合です。それがユタ州で行われるっていう、つまりみんながここ数日話題にしているけれど高地での試合になった。自分はコロラドで生まれ育っているから標高としては下がっているし、慣れたものだし、高地トレーニングももちろんしてきました。とてもいいファイトキャンプを過ごせたと思っているから、準備はしっかり整っています」 ──ご自身のファイトキャンプではどんなトレーニングパートナーがいましたか? 「コロラド州のスプリングのジムに通いながら、デンバーまで週2回通っていて、柔術、レスリング、キックボクシングに特化した5人のコーチがいるのだけれど、自分専用のキャンプのような感じで、トレーニングパートナーを都度連れてきて、家族や友達もずっと近くにいられる環境で取り組んでいます」 ──ジュリアナ・ペーニャ対策を、言える範囲で教えていただけませんか? 「実際、試合でコントロールできることって、自分の側のことだけだって思うんですよね。ジュリアナとはTUFで一緒に過ごした経験があって、お互いを敵視したりもしたしで、よく知っている相手だから、いつものように自分がやるべきことをこなしてきたという感じですね。映像も色々見たけれど向こうの試合を見て実際に分析したりするのはコーチやチームメイトの仕事で、彼らがしっかり準備をしてくれているから、自分自身のことに集中していました。自分の映像もたくさん見たんです。というのは、どうやったら自分に勝てるのか。それが今回のキャンプのテーマでもあったから。自分自身についてをひとつずつ紐解いていって変える必要があるところは修正してきた。そういう取り組みによって、これまでなかった自分の引き出しを増やすことができたと思うから、本当にいいキャンプになったという実感があります」  ──TUFの話題も出ましたが、当時を振り返ってあの経験はどのように今に活きていますか? 「UFCに入れるかもしれないという重要な機会としても本当にいい経験だった。この格闘技のパイオニアでもある二人の有名なコーチ(ロンダ・ラウジーとミーシャ・テイト)が立っていて、本当に唯一無二の経験だったと思っています。TUFのいいところは、やっぱりあくまでも『創られた世界』だということだと感じているんです、TVのリアリティショーだから、見せたいように編集しているし、逆にそのことで選手たちのアスリートであるという側面以外の部分も見せる事ができる。あと、自分自身がとても家族を大事にしているというのがひとつあって、そんな家族の元を離れるというのは、自分にとって快適な空間領域からは引き剥がされて、非日常の世界に飛び込み、閉じ込められるということ。それが自分の夢に集中することにつながっていて、食べることや眠ること、トレーニングしてリカバリをして、そうやって何人もの同じ夢を持った同じような選手たちと一緒に過ごすというのは本当にユニークな経験だし、二人のコーチと何人もの女子選手が集まり、始まりから進化を追って見ていくというのはすごいことだし、次へ向かうためのひとつの節目のようなものとして、いい経験になっています」 ──そのTUFで、ラケル選手のチームメイトに日本と馴染みの深いロクサン・モダフェリ選手の姿もありました。 「ロキシーは本当にいい子。TUFのトライアウトに行ったときのことを思い出すけど、ロキシーはいつものままというか、無垢で陽気な、ちょっとおどけた様子でストレッチをしていて。自分としては、まだ他の女子選手のことはよく知らないまま、言われるがままトライアウトに飛び込んだ感じだったから、これ全然意地悪な意味じゃないんだけど、ロキシーのその姿を見て、『あそこにいるのは、学校の先生か何か?』って聞いたの(笑)。オチとして彼女は実際先生やってるから結果当たってたんだけど(笑)。でも当時、彼女が他団体でチャンピオンになったこともそうだし、築いていたキャリアを何も知らなかった。他の選手たちともそういう環境で出会えたのは嬉しかったし、その中にロキシーがいたことっていうのは、彼女は本当に陽キャだしポジティブで、彼女のニックネームの『ハッピー・ウォリアー』と呼ぶにふさわしい人柄だから、あのシーズンのTUFに色んなミックスした要素が加えられたんじゃないかと思っています」 ──今も女子格闘技界で活躍を続けているキャット・ジンガーノであったり、レズリー・スミスなどとキャリア初期に戦ってきましたね。その当時を振り返って、10年以上経って女子格闘技が今のように注目されるとは考えられましたか? 「やり続けていることで“あ、これはいつか注目されるかもしれない”って思えたタイミングはあったかなと。このスポーツはどうしたって男性のほうが注目されがちだし、女性の選手の中に全てをかけてトレーニングして頑張れる人がどれくらいいるのかと疑問符をつけられがちなのだと思うけれど、そういうなかにあって女子格闘技も成長を遂げてデイナ・ホワイトがようやく機会をくれるようになって……、本当にクレイジーだと思う。14年間この競技をやっているけど、14年前は対戦相手を見つけることすら大変だった。今でも覚えているけど、昔『UFC初の女子ファイターになりたい!』って言ったら笑われたんです。でもその後、UFCが最初に契約をした女子選手10人の1人に自分が入っていたっていうのは、最高なこと。今、UFCの全ての階級がどんどん大きなものになって、UFCだけではなく他の団体も成長していっているのは、本当にすごいと思っています。今まさに成長の過程にある次の世代の女子選手たちなんて、もう“ワオ!”としか言えないくらい。だって、小さい頃から(MMAの)練習を始めているんだから。恐怖でしかない!」 ──女子格闘技を引っ張ってきた世代として、今王者であるということはどのような意味を持っていますか。ベルトを獲ったことはラケル選手の人生にどのような影響を与えたのでしょうか。 「この競技をやっているのはきっと世界の人口の1%くらいの数ですよね。その中で世界チャンピオンになるのはもっと数が少ないでしょう?他のスポーツもそうだけれど、世界チャンピオンになりたいと思っても、大多数の人はなれないまま終わる、それが現実。自分のこれまでのキャリアや歩んできた道のりを振り返ると、自分は別に恵まれていたわけではなくて。本当に自らの努力によって、今のポジションまで這いあがってきた自負があります。その点では自分を誇れる。そんな自分が目標を叶えて今UFC女子バンタム級の王者であるという事実を誰も変えることはできません。それで、何を得られたかといえば、家族の人生を変える事ができたと思う。コロラドで育って、いつか自分の土地や山が欲しい、そこで冒険したり大きな小屋を建てたりと夢見てきたことが実現できました。それを叶えられたのは自分が頑張ったからこそだと思っています。自分の情熱を諦めず追いかけることで、自分の才能を発揮し、夢を叶えることができたと思っています」 ──そうやって手にしたベルトを防衛する大切な試合を迎えますが、パートナーのテシア選手が同じイベントで戦うのは、やはり心強いですか?当日は、家族が一堂に会することになるのでしょうか。 「今回はコロラドからもフロリダからも、家族全員が来ます。テシアの家族も全員来るし親友たちとかも揃うからもうてんやわんやですね(笑)。テシアと同じ日に戦うことにはすごくワクワクしています。『一緒の日に戦おう』って自分が提案したんです。テシアは前回の試合から少し自信を失っているところもあって「どうしたい?戦いたい?」って。そうしたら彼女が『戦う』って決めたから、同じ日に戦えるようリクエストしました。それで、少しでも早くストレスから解放されたいから早めのカードに入れてってテシアは頼んでた(笑)」 ──二人で同時に育児もしながらトレーニングキャンプを過ごすのは相当大変だったのではありませんか? 「そうですね。だから完全に分業していました。まず私が早朝のトレーニングに行って、その後から彼女がトレーニングに入る。『ひとりの子どもを育てるには村全体の協力が必要だ』ということわざがあるでしょう?その意味が本当に理解できた気がしています。ファイトキャンプ中、母や友人たちがすごくサポートをしてくれた。テシアが朝食を子どもにあげた後、リモートワークをしている友人の家に子供を預けに行く。それから平日の夜は2回くらい母が子どもを預かってくれて、そのまま友人に預けに行ったり。私のトレーニングはテシアより早く終わるから友人の家に私が迎えに行って、子どもの世話をしている間にテシアが帰ってくる、そういう感じでやっていました。今までは私がキャンプの間はテシアが家を守る、彼女がキャンプの間はその逆というふうにやってきたけれど、今回は二人が同時にキャンプに入るということで、あらゆる面で新しいチャレンジになりました」 ──さらにラケル選手はベルトを持つ王者でもあります。母としての自分と王者でありファイターとしての自分、そのバランスをどのように保っているのでしょうか。 「この競技の選手でいるということは、感情の振り幅が大きくなることを意味してるんです。全てを懸けて戦うから。特にMMAは良い時と悪い時のギャップが大きい。だからうまくいっていないと本当にどん底まで落ちるし、ファイターであることが自己存在証明そのものなわけだから、すごく辛いこともあります。母になってからは、娘の存在が戦う意味になりました。戦うことそれ自体は自分自身の情熱に基づくけれど、戦う目的は娘のためであるという風にバランスをとれるようになったんです。娘がいることで人生での勝利を得られるというか、勇敢であること、強くあること、努力すること、そういったものをこの子に教える存在は自分なのだと教えられるのですよね。まだ15カ月でほとんどのことは分からないけれど、そんな娘の存在が、新たな情熱や、新しいモチベーションであったりと私に火を着つけてくれる。それから、家族にもすごく感謝しています。お互いそれぞれに試合のために役割を分担してきたけれど、今回に関しては二人でファイトキャンプに入ったので、家族や友人とともに全員で育児をしているような感覚でした。そういう環境で夢を追えることに本当に感謝しているし、とてもワクワクするから、そこでバランスが取れているんだと思います」 ──最後に日本のU-NEXTを通して応援しているファンの皆さんにメッセージをいただけますか。 「私を応援してくれている日本のファンの皆さんへ愛を伝えたいです。また日本に行ける日が待ち遠しいです。今まで行った国の中で大好きな国のひとつです。試合を見てもらえると嬉しいです。ワクワクする夜になると思います! レッツゴー! チーム・ロッキーファン!※ロッキーはラケル選手のニックネーム」(U-NEXT SQUAREより) ペーニャ「相手が何をできるかじゃなく、自分が何をするか」 ──前戦は2022年7月、アマンダ・ヌネスとのタイトルマッチでした。あれから2年以上の長期離脱となりましたが、久しぶりの再起戦に向けて、現在のコンディションはいかがですか? 「コンディションは最高です、ハッピーだしワクワクしていてやる気もあるし。復帰戦に向けてしっかり準備してきました。怪我が長引いて随分と試合が開いてしまって。前回タイトルマッチをオファーされたタイミングにまだ怪我が治りきっていなかったから、ラケルは別の相手と戦うことになったのだけれど、その後、私と戦いたいからということで、私が準備できる10月まで次の防衛戦を待ってくれていたのです。だから怪我も完治して、完璧な状態でこの試合に臨めます」 ──練習環境としては、現UFCウェルター級チャンピオンのベラル・ムハンマド選手とトレーニングしていますよね。欠場している間にベラル選手がベルトを獲ったことは刺激になりましたか? 「もちろん! ベラルは今回私のコーナーに付いてくれます」 ──ジムのVFCアカデミーは選手層が厚いと思いますが、どんなトレーニングパートナーたちと練習してきたのですか?  「ヒザの手術をして戻ってきたあとだから1年半くらい前ですかね、(2015年にUFCで対戦しペーニャがTKO勝利を挙げている)ミラナ・ドゥディエバがロシアから来てチームに加わりました。だから、おもなトレーニングパートナーとしてはミラナ。それから、メキシコから同じUFCバンタム級ファイターのモンツェラート・レンドンにも来てもらったし、ボクシングのスパーリングパートナーとしては今年のオリンピック予選に出ていたタリア・ハルボーセンとか国内でナンバーワンになったキラ・テニーだったりと、若手の有望株を含めて、今すごく強い女子選手達が揃っていて、ここまで毎日みんなが背中を押してくれていました。そんなトレーニングパートナーのみんなにとても感謝しています。本当に素晴らしいファイトキャンプを過ごせました」 ──対戦相手である現王者のペニントン選手は2020年のホリー・ホルム戦で判定負けを喫して以降は6連勝中ですが、ファイターとしての進化をどのように見ていますか?また、ボクシングスキルがとても高いですが、対策を練ってきているのでしょうか。 「ラケルが何をできるか、という部分は重視していなくて、自分が何をできるかということに集中しています。ケージに入ってから、きちんと自分のやるべきことを遂行したいから」  ──久しぶりの試合で見せたいと思っていること、技術的な意味でもパフォーマンスという面でも、なにかサプライズは用意されているのでしょうか? 「見せたいものはもちろんあるけれど、それはここでは言えないですね(笑)」  ──今回、2013年の『The Ultimate Fighter 18』(TUF)でチーム・テイトの仲間として寝食を共にしたペニントン選手と、10年以上の時を経てタイトルマッチという形で対戦が実現しました。そのTUFでの経験を振り返ってみて、ファイターとしての現在に活きていますか?  「(TUFハウス=合宿所で)ラケルは二段ベッドの上段、自分がその下で寝ていました。TUFで優勝はしたものの、これまでラケルとの対戦機会なかったのは本当に不思議だなと思っているし、それが巡り巡って今こうして戦うことになりました。当時を振り返って、ということだけれど、ああいうリアリティショーのなかで生活したのはいい経験でしたよ。自分が食べたいものを紙に書いておくと、それを何でも用意してくれて……、本当に、何を書いてあっても翌朝テーブルに並んでいるの!6週間の間、最高のコーチたちとトレーニングできるのはもちろんだし、ケータイもなし、テレビも雑誌も本もなしという外の世界からは完全に隔離された生活になることで、余計な情報を遮断して自分がファイターであるということだけにあんなにも集中していられる機会というのは他にないですからね。生活費や、家族とのいざこざも一切忘れて、食べること、眠ること、必要なサプリを獲って世界最強クラスの選手たちと毎日2度のトレーニングをすることに専念できる、そんな経験は二度とないと思います。それを最大限活用できたし、本当にいい経験になりました。あまり仲良くない人たちと生活を共にするってことを除いては(笑)」  ──みんな自分のことだけで精一杯というひとたちが集った共同生活ですからね。やはり一番しんどいのは人間関係でしたか。 「完全にそう。自分のことに集中をしていたし、TUFハウスの中では人気者ではなかったしで、友達といえる関係にはなれなかったですね」  ──先ほど、「ファイターでいることだけに専念できる」とおっしゃっていましたが、そういう “究極の” 環境にまた身を投じてみたいと思うことはありますか? 「今は娘がいるから、それはないですね。ただ、もし娘がいなかったら、望んでいたと思います。無料で最高の環境を得られるし、自分のことだけに集中して最高のトレーニングができるというのはファイターとしては本当にいい時間だったから」  ──ところで、もともとMMAを始めたきっかけは? 「痩せたかったから。体重を落としたくて女性用のカーディオ・キックボクシングのクラスに参加してみたんだけど、インストラクターが『どこでボクシング習ったの?』って聞いてきて、初めてだから『習ったことはありません』って答えるでしょう(笑)?なのにまたインストラクターが『どこでそのパンチを習ったの?』って聞くものだから、『今、あなたが私に教えてくれた』って(笑)。それが、19歳で初めてパンチを学んだ経験です(笑)。そこからは振り返ることなく、今に至っていますね」  ──初手からセンスが迸っていたのですね(笑)。もともと運動神経がよかったのだと思いますが、その前は何かスポーツをやっていたのですか?  「学校でシーズン中だったスポーツをやっていた感じですね。サッカーシーズンはサッカーチームに入って、バスケのシーズンにはバスケチームに入って。バレーボールのシーズンはバレーボールチーム、というような。ただ、大のWWEファンの兄に姉も二人いる大家族の末っ子でいつもやられてたから、タフなのは育った環境のおかげだと思います(笑)」  ──WWEの話題が出ましたが、ペーニャ選手ご自身、ハルク・ホーガンの大ファンだそうですね。 「そうです。私、リアル・アメリカン・ビール(ハルクホーガンが共同設立者のビールブランド)の最初のアスリートスポンサーなんですよ(笑)。“ハルクが受けた手術と私が受けた手術が同じだ!”って比較したこともあったし、ハルクに会うことが実現したのは、ちょうどTVで彼のハイライトが放送されている時期だったから、それを通して彼のプロレス人生を見たうえで、つまり彼が日本にいた頃も含めて、アンドレ・ザ・ジャイアントや、アイアン・シークはもちろん、ザ・ロックの話だとか、リック・フレアーの顔を蹴り飛ばしたとか、彼の時代の話を踏まえて会話することができたのは、本当に特別な時間でしたね」  ──先ほど、娘がいるからTUFのような生活はもうできないという話がありましたが、母であることと、ファイターであることを両立するのは大変だと思います。どのようにバランスを取っていますか? 「とても難しいですね。娘は週に2回柔術を習っているのですが、ちょっとこれは口に出すと悲しい事情で、要するに体操だとかダンスだとか、他の習いごとをさせてあげられないから、自分と同じ環境に身を置かせるしかない、娘にはほかの選択肢がなかっただけなんです。他の家族はみんなワシントン州に住んでいて私はシカゴ在住なので頼ることもできないし。だから娘にほかのことをするための時間をとってあげることができません。そういう意味でバランスをとるのは難しいと感じているけれど、今のこの状況は、より良い人生にするための犠牲でもあり、自分たちの将来のためなんだって信じるようにしています。すくなくとも私は彼女にファイターにはなってほしくないし、娘自身もファイターになりたいとは思っていないとは思う。でも、自分で自分を護る術は学ばなくてはいけないのは確かだから、格闘技を教えるのはそのために良いことだとは思っていますし。自信もつくから、いじめられて下を向いてしまうことなく、しっかり毎日顔を上げて堂々と過ごせるようにもしてあげられると思いますし。父が黒帯、母も黒帯になろうとしている、そういう最強ファミリーの娘だってことも含めて(笑)」  ──それでは最後に、U-NEXTを通してUFCを見ている日本のファンの皆さんにメッセージをいただけますか? 「まずはこれから始めないと。えっと(日本語で)コンニチハ! 私の名前はジュリーです」  ──流暢な日本語はどこかで習ったのですか? 「ロクサン・モダフェリ(元UFC女子フライ級。TUFではペーニャ、ペニントンと同じチーム・テイトに所属)が教えてくれました。メッセージの続きだけれど、皆さん、私の試合を是非見てください。応援してくれている日本のファンの皆さんには感謝を伝えたいです。数年前に東京に行く事ができたのだけれど、本当に素晴らしい街でとても楽しかったので、またいずれ行きたいと思っています!」(U-NEXT SQUAREより) [nextpage] ▼バンタム級 5分3Rジョゼ・アルド(ブラジル)32勝8敗(UFC14勝7敗)17KO/TKO 1SUB 136lbs/61.69kgマリオ・バティスタ(米国)14勝2敗(UFC8勝2敗)3KO/TKO 6SUB ※UFC6連勝中 136lbs/61.69kg [nextpage] ▼ミドル級 5分3Rロマン・ドリーゼ(ジョージア)13勝3敗(UFC7勝3敗)185.5lbs/84.14kgケビン・ホランド(米国)26勝11敗(UFC13勝8敗)185.5lbs/84.14kg [nextpage] ▼女子バンタム級 5分3Rケトレン・ヴィエラ(ブラジル)14勝3敗(UFC8勝3敗)136lbs/61.69kgケイラ・ハリソン(米国)17勝1敗(UFC1勝0敗)136lbs/61.69kg [nextpage] 【プレリム】 ▼ウェルター級 5分3Rスティーブン・トンプソン(米国)17勝7敗(UFC12勝7敗)171lbs/77.56kgホアキン・バックリー(米国)19勝6敗(UFC9勝4敗)※UFC4連勝中 [nextpage] ▼女子ストロー級 5分3Rマリナ・ロドリゲス(ブラジル)17勝4敗(UFC7勝4敗)115.5lbs/52.39kgヤスミン・ルシンド(ブラジル)16勝5敗(UFC3勝1敗)※UFC3連勝中 116lbs/52.62kg [nextpage] ▼ライト級 5分3Rオースティン・ハバード(米国)16勝7敗(UFC4勝5敗)156lbs/70.76kgアレクサンダー・ヘルナンデス(米国)14勝8敗(UFC6勝7敗)156lbs/70.76kg [nextpage] ▼ミドル級 5分3Rセザル・アウメイダ(ブラジル)5勝1敗(UFC1勝1敗)185.5lbs/84.14kgイーホル・ポティエリア(ウクライナ)20勝6敗(UFC2勝4敗)185.5lbs/84.14kg  1R、オーソのアウメイダ、サウスポー構えのポティエリアは右で差して押し込むも突き放すアウメイダ。サウスポーにスイッチして左を突く。  ポティエリアのシングルレッグを切るアウメイダは左ローをヒット。ポティエリアはダブルレッグテイクダウンも尻を着いてすぐに立ち上がり、バッククリンチのポティエリアのクラッチを切ると右ロー、右ハイをガード上に当てる。 [nextpage] 【アーリープレリム】 ▼ライトヘビー級 5分3R〇ライアン・スパン(米国)22勝10敗(UFC8勝5敗)205.5lbs/93.21kg[1R 1分35秒 ギロチンチョーク]×オヴィンス・サン・プルー(ハイチ)27勝18敗(UFC15勝13敗)205.5lbs/93.21kg  スパンのワンツーにグラつくサンプルー。金網に詰まりながらサンプルーは左も、そこに右ストレートを合わせたスパン。被弾したサンプルーの組み付きにノーアームのギロチンチョーク、最後はマウントで極めた。 [nextpage] ▼女子ストロー級 5分3R〇ティーシャ・ペニントン(米国)14勝7敗(UFC10勝7敗)[判定3-0] ※29-28×2. 30-27×カーラ・エスパルザ(米国)19勝8敗(UFC10勝6敗)※引退試合  初代女子ストロー級王者カーラ・エスパルザの引退試合。2010年にプロMMAデビューし、Invicta FCでストロー級王座を獲得後、2014年に「TUF20初代女子ストロー級王座決定トーナメント」決勝でローズ・ナマユナスを破り優勝。 初防衛戦でヨアンナ・イェンジェイチックに敗れて王座陥落。その後3勝3敗と厳しい時期を経て、2019年から5連勝。2022年5月、『UFC 274』で王者ナマユナスに挑戦し、2-1の5R判定勝ち。王座再獲得に成功した。  2022年11月『UFC 281』でストロー級2位の挑戦者ジャン・ウェイリーと対戦し、リアネイキドチョークで2R一本負け。王座から陥落。2023年に妊娠・出産に伴い休業。今回の試合で引退する。36歳。  ティーシャ・ペニントンはコメインで初防衛戦に臨むパートナーのラケル・ペニントンと同日参戦。エスパルザと同じく2023年に娘を出産。2024年5月の復帰戦で、元SEI☆ZAのタバタ・ヒッチにスプリット判定負け。35歳。  1R、ともにオーソドックス構え。ワンツーで前に出るペニントンが右オーバーハンドをかすめる。さらに右カーフ、右ストレート。下がるエスパルザ、詰めて離れ際にヒザ。エスパルザも左右から左を返すとダブルレッグテイクダウン!  蹴り上げするペニントンの足をさばきパスガード。サイドを奪い、クルスフィックスでパウンド!さらに上四方に変えて押さえ込み、鉄槌、アメリカーナも狙う。  2R、右を突くエスパルザ。1Rのテイクダウンの影響でペニントンの手数が減る。遠間から前足に左右ローはペニントン。エスパルザは右ストレートを当てる。左から右を見せるペニントン。右ローにエスパルザも左右。徐々に間合いを詰めるペニントンも連打で前に。  右カーフ2度のペニントンにダブルレッグはエスパルザ。左小手巻きで投げるペニントンに、正対してダブルレッグテイクダウンはエスパルザだが、ペニントンは下から腕十字狙い。かわしてバック狙いのエスパルザだが、すぐにペニントンも立ち上がる。  3R、ペニントンのインローに左右を狙うエスパルザ。ペニントンは右前蹴りを当て、右ロー、左ローも。エスパルザの左右の飛び込みをさばくペニントン。エスパルザは左右の連打の右をかすめるが、とらえきれず。右カーフを当て、エスパルザの入りに左を当てるペニントン。左右ローをこつこつ突く。エスパルザは左で思い切りよく前進もそこにカウンターの右を当てるペニントンは右ロー! 足が流れたエスパルザだが、最後に蹴り足を取ってテイクダウンを決めてパウンドを振ってゴング。  判定は3-0(29-28×2. 30-27)でペニントンが勝利。  試合後、エスパルザは着ぐるみの子供を抱きながら「私が勝ったと思ったけどジャッジに委ねるべきじゃなかった。テーシャと戦えてよかった。この15年間はいい旅路でした。ベストを相手に戦い、一番いい競技、ファン、家族、UFCスタッフ、そしてコリン・オーヤマ、マネージャー、みんなありがとう」と語り、涙でオープンフィンガーグローブをマットに置いて引退した。 [nextpage] ▼ウェルター級 5分3R〇コート・マクギー(米国)22勝13敗(UFC11勝12敗)170lbs/77.11kg[1R 3分19秒 リアネイキドチョーク]×ティム・ミーンズ(米国)33勝17敗(UFC15勝14敗)171lbs/77.56kg  1R、サウスポー構えのミーンズに、オーソのマクギーは右フックで組んでクリンチボクシング。回転の速い左右でミーンズをケージに詰めるとダブルレッグテイクダウン。右足をかけ、左手で手首をコントロールし、右のパウンドからリアネイキドチョーク狙い。  ミーンズの立ち上がりに両足をダブルフック。引き込み、左腕でフェイスクランク気味にリアネイキドチョークを極めた。地元ユタで3連敗から脱出したマクギーの一本勝ちは、2010年10月のライアン・ジェンセン戦以来、14年ぶり。
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