相手に直接ダメージを与えるフルコンタクトスポーツ「ファイトにおけるドーピング」とは?
「本当、今回の騒動で、自分自身、人生で初めて人に裏切られたというか、ショックな出来事だったのですが、自分の妻をはじめ両親や家族、所属事務所の方がこんなにすごい動いてくえて、岩崎先生など近しい、信頼している人が考えてくれて、自分は恵まれていると毎日感じました。そのためにも身の潔白を証明したい」(平本)──ドラッグテストの結果について、RIZINの榊原CEOは8月31日、「ドーピングの検査結果を踏まえて、来週後半までには記者会見を必ず実施します。時間がかかっていますが、今暫くお待ち下さい」としている。
7月28日の『超RIZIN.3』から1カ月と1週間。当初は、8月最終週に届くとされていたドラッグテストの検査結果は、すでに届いているのか、それともまだ結果待ちなのか
平本は、「自分が(2日に)会見すると(RIZINに)お伝えしましたが、RIZINの指示ではなく自分が開いた会なので深くは話していません。(検査結果発表が後ろ倒しになったのは)まったく分からないです。自分も先週出ると聞いて結果を待っていたのですが、なかなか連絡が来なかったので、自分もいつになるかと。でも自分は白だと思っています」と語る。
RIZINがドラッグテストを依頼しているのは、米国の検査機関・SMRTL(スポーツメディカルリサーチ&テイスティングラボラトリー)で、もしRIZINがWADA(世界ドーピング防止機構)規約に署名したクライアントであれば、ADAMS(アンチ・ドーピング管理運営システム)のポータルを使用して結果がアップされ次第、依頼者はアクセスが可能だ。
RIZINでは、2015年の旗揚げ以来、タイトルマッチやグランプリ出場選手に対し、大会前後に尿検体によるドーピング検査を行っており(※SMRTLのクライアントにより検査のレギュレーションは異なる)、2023年9月以降、この2つに関しては検査結果を発表することを決めている。陽性者は、罰則と試合結果が「無効試合」になる。
違反をしていないことの証明は──
本誌既報通り、また、会見で吉野弁護士が指摘した通り、「違反をしていないことの証明は、ドーピング検査の結果で行うことが世界のスタンダードなので、それが全て」(吉野氏)。今後、そのチェック体制にどれほどの予算を割くか。
榊原CEOは、「一人の検査を行うのにかかる費用は約10万円。本格的にやるとなると数億円規模になる。米国は賭け(スポーツベッティング)になっていることが前提にあるので、第三者機関がドーピングをさせないことになっている」と語っているが、今回のような騒動を未然に防ぐために、王座戦に限って、抜き打ち検査や血液検査を追加することや厳罰化の検討は、ドーピングの抑止力になるだろう。
また、検査にあたり、通常は怪我や風邪などで服用した薬やサプリメントは、事前申告の必要がある。今回のケースで平本と朝倉は、どんな事前申告をしていたか。また、平本は告発の潔白を証明するために、「開封しなかった」ドラッグを公開、または自ら血液検査を受けることはあるのか。
国内MMAでは、2019年からいち早くタイトルマッチのドラッグテスト結果を公表しているPANCRASEでは、陽性反応が検出された際の薬物が風邪薬由来の興奮剤のエフェドリンであったことなども公開。また、RIZINも2023年9月に、木村ミノルによるクレンブテロールなどの服用をドーピングとして、半年間の出場停止処分を下している。
興行であるプロ格闘技は、アマチュア五輪スポーツに比べて、罰則が緩いのが現状だ。一方で、フルコンタクトスポーツであるファイトスポーツは、直接ダメージを与えるという点で、自身が得るもののみならず、対戦相手が失うものも大きい。
今週発表されるRIZINによるドラッグテストの結果は、ドーピング騒動に終止符を打つと同時に、日本MMAのドラッグテストに新たな扉を開くか。