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【RIZIN】使用した薬と使用しなかった薬──平本蓮「僕は(ドーピングが)無くても全然勝てるタイプ」、今週RIZINがドラッグテスト結果を会見で発表

2024/09/03 14:09
 2024年9月2日(月)18時から都内ホテルにて平本蓮(剛毅會)が会見。その要点をまとめた。  RIZIN主催ではなく平本蓮個人による今回の会見には、平本のほかに弁護士2名(のぞみ総合法律事務所弁護士・吉野弦太氏と成豪哲氏)が出席。  冒頭で平本は「まず自分は一切、ドーピングに違反するようなことはやってはいませんし、進んでお願いしたような事実はありません」とし、会見中も「僕から『尿検査に出ないドーピングを教えて』と言ったことは一度もない」と、ドーピングを否定した。 赤沢を無下に出来ず、電話口で話を合わせていた。14万振込も「一切使いませんでした」  2021年から練習仲間の赤沢幸典から14万1,450円で購入したという明細書は本物で、赤沢との会話音声も自身とのものとしながらも、「『ドーピング検査が大丈夫なトレーニングの効率を上げるサプリ』を、(赤沢を)信頼していたので、値段だけ言われて購入させてもらいました。6月に(梱包材で)ぐるぐる巻きのサプリを受け取って、でも所属事務所の人間が家に来て『今は風邪薬でもドーピング違反になるから接種しないほうがいいんじゃないか』と(アドバイスを受けて)。それ(梱包)を外した状態にして置いてあって、自分は一切使いませんでした。赤沢氏から連絡があり、録音を聞いた人もいると思いますが、信頼関係もあったので無下にすることも出来ないと思い、電話口で話を合わせていました」と、サプリと認識しながらも使用せず、赤沢が公開した会話は、話を合わせていただけとした。 「とにかく『トレーニングの効率を上げる』という説明しか受けていなくて、自分もトレーニングで(忙しく)話している余裕もなく見てもいないので、(中身の詳細を)確認する場面は一度もありませんでした」(平本)  サプリとして購入したSARMs(選択的アンドロゲン受容体調節因子)やノルヴァデックス(抗乳癌剤)などのケア剤については、開封していない、あるいは薬が使用されずそのまま残っていることを示すことが未使用の証明になりうるが、平本は「所属事務所で管理しているので、ここから必要であれば、その都度証明をしていこうと思います」とした。吉野弁護士は、これらの薬物の所持は違法ではないことも語っている。 [nextpage] アイルランド修行中に負傷、回復の注射を自分で数回打った  また、アイルランド修行中に痛めた靭帯と半月板損傷を回復させるために、高校生の時から信頼していた赤沢とは別の格闘家のフィジカルトレーナーから「ドーピング検査に問題がない注射」を勧められ、「4月に数回自分で打ちました」と吐露。  赤沢との電話で、尻に打ったという会話は、「そういう注射の会話とかはフィジカルトレーナーと話した内容と、赤沢さんもそのトレーナーにお願いしている、その会話の延長線上。三人の共通認識だった」と説明しながらも「アスリートとしていくら信頼するトレーナーから(の勧め)とはいえ、自分で調べる必要があったんじゃないかとは思う」と反省の弁も述べた。  身体が大きくなったことについては、「10週間もフィジカル死ぬほどやれば当たり前にデカくなるので。たぶん筋トレしたことないですよね? 10週でだいぶ変わりますよ」と反論。  試合の2、3カ月前から今回の朝倉未来との試合がLMSタイトルマッチでベルトがかかること、それに伴いドラッグテストもあることは理解していたといい、「試合自体は自信を持って正々堂々と戦ったので、このような騒動が出て、引退をかけて戦ってくれた朝倉選手や陣営にはご心配をおかけしたと思います」と、朝倉に謝罪した。 ドーピングは「必要ない」、血液検査を求められたら「やります」  平本を告発した赤沢は、自身がドーピングしていたことを告白しているが、赤沢のドーピングを平本は、「僕は本当に全く分からなかった」と気付かなかったといい、「信頼していたし、今でも嘘であってほしい、特別な事情で赤沢さんが(告発を)やらざるをえなかったと自分では思っていたい気持ちでいっぱいです」と話した。  これまでの海外修行を経てのドーピングに対する誘惑についても「そのような現場を見たこともないし、そのようなやりとりが話になったことも一度もありません」と言い、「格闘技でドーピングで強くなることは卑怯だと考えますか?」と問われると、「僕は(ドーピングが)無くても全然勝てるタイプという考え方。昔の人に関してはとやかく言いませんが、ただ、必要ない」と、きっぱりと語っている。 「1日3部練を死ぬ気でこなしてきた。それに嘘はひとつもない。よりによって自分がずっと望んでいた朝倉未来選手との試合で、そんな馬鹿なことを僕が一切するわけがありません。(RIZINの)検査結果はまだですが、必ずシロなんでいまは結果を待ちたいと思います」という平本。  抜き打ち検査ではなく、検査の日付が決定している場合、マスキング剤を併用しドラッグテストから逆算してのドーピングを行うケースがあるが、血液検査や毛髪検査もして欲しいとのファンの声に対しては、「尿検査の結果とともに怪しい点があるなら、血液検査などRIZINの指示に全て従おうと思っています」と言い、毛髪検査や血液検査の必要があれば? と問われ、「やります」と返答している。  そして、「負けたら引退」を表明し、試合後に引退した朝倉未来との再戦の可能性について問われると「いつでも何回でもやります」と即答した。 [nextpage] 「今回の作戦に赤沢さんはなかった」。告発文は「朝倉未来に寄り添いすぎている」  北米をメッカとする世界のMMAで、ドラッグテストによるドーピングの陽性反応は少なくなく、UFCファイターの制裁を決定するコンバット・スポーツ・アンチドーピングでは、UFC内での身体強化薬の使用/乱用に関するあらゆる情報を報告できる内部通報ホットライン、通称“タレコミ・ライン”も設けている。  しかし、今回の平本のドーピング騒動は、トレーナーなど近しい周囲からのSNSを通じての暴露という点で世間を巻き込んだ。さいたまスーパーアリーナに4万8117人・満員の観客を動員したメインイベント後、かつては平本を指導し、勝利に導いた赤沢が、ここにきて「良心の呵責に苛まれて告発した」のはなぜか。  思い当たる点を問われた平本は、「対立関係などは考えてみたんですけど、まったく思い当たらなかったので、なにか赤沢さんのほうで特別な事情があったのかと。  赤沢さんのセコンドで2回とも勝負に勝ってるし、今回も『セコンドにつきたい』と言われましたが、今回の作戦には赤沢さんはなかったので、(岩崎達也)先生や大塚(隆史)さんとやってきて、剛毅會に(赤沢が)来たときがあり、大塚さんが『何で急に来たのか』と不審がっていました。(今思えば)寂しい思いをさせてしまったんじゃないかと思います。自分はどうしても勝ちたかったので勝負に徹しさせてもらった。試合は思い出作りじゃないので。(今回、赤沢とは)練習は全くしていないし、8月4日にサプリの購入の会話をしただけ。練習に関わっていない、喋っていないので距離を感じさせたのかと今では思っています」と、疎遠だったことを明かした。  そして、今回の会見にあたり弁護士を同席させたのも、その背後関係を懸念してのものだったという。 「赤沢さんが自分から始めたのではないのでは、と。何人か大人が後ろについているのではと僕は感じたので、ひとりで対処できる問題ではないと、弁護士さんに相談させてもらった感じです。 (告発文は)僕は赤沢さんが書いたんじゃないんと正直思う気持ちがあって、赤沢さんが“朝倉未来選手に申し訳ない気持ち”と言っていますが、今までの対戦相手に対しての申し訳ない気持ちは書いてなかったので、本当に赤沢さんが書いたのかな? と。朝倉未来サイドというか、朝倉未来選手に寄り添いすぎている文章に感じました。赤沢さんのことは今でも信じたいというか、もし困ってることがあるなら、助けられることは助けたい」と、違和感があることと、赤沢の身を案じる発言も残している。  普段、SNSで饒舌な平本が、今回の告発以降、沈黙していたことで、SNSでは様々な憶測が流れ、誹謗中傷もされたが、平本は「次の試合はさらに注目されると見て楽しんでました」と言いつつも、自身のSNSでの存在感を高めるやり方を「なんか、今回の騒動で、あまりにも自分は嫌われているんだなと改めて感じました(苦笑)。(SNSの使い方を)変えます。もう相手にしないために。本当は言いたいこといっぱいあるんですけど、自分が招いた、蒔いた種でもあるのかなと反省しています」と、SNSでの取り組みを再考する気持ちを明かしている。 [nextpage] 相手に直接ダメージを与えるフルコンタクトスポーツ「ファイトにおけるドーピング」とは? 「本当、今回の騒動で、自分自身、人生で初めて人に裏切られたというか、ショックな出来事だったのですが、自分の妻をはじめ両親や家族、所属事務所の方がこんなにすごい動いてくえて、岩崎先生など近しい、信頼している人が考えてくれて、自分は恵まれていると毎日感じました。そのためにも身の潔白を証明したい」(平本)──ドラッグテストの結果について、RIZINの榊原CEOは8月31日、「ドーピングの検査結果を踏まえて、来週後半までには記者会見を必ず実施します。時間がかかっていますが、今暫くお待ち下さい」としている。  7月28日の『超RIZIN.3』から1カ月と1週間。当初は、8月最終週に届くとされていたドラッグテストの検査結果は、すでに届いているのか、それともまだ結果待ちなのか  平本は、「自分が(2日に)会見すると(RIZINに)お伝えしましたが、RIZINの指示ではなく自分が開いた会なので深くは話していません。(検査結果発表が後ろ倒しになったのは)まったく分からないです。自分も先週出ると聞いて結果を待っていたのですが、なかなか連絡が来なかったので、自分もいつになるかと。でも自分は白だと思っています」と語る。  RIZINがドラッグテストを依頼しているのは、米国の検査機関・SMRTL(スポーツメディカルリサーチ&テイスティングラボラトリー)で、もしRIZINがWADA(世界ドーピング防止機構)規約に署名したクライアントであれば、ADAMS(アンチ・ドーピング管理運営システム)のポータルを使用して結果がアップされ次第、依頼者はアクセスが可能だ。  RIZINでは、2015年の旗揚げ以来、タイトルマッチやグランプリ出場選手に対し、大会前後に尿検体によるドーピング検査を行っており(※SMRTLのクライアントにより検査のレギュレーションは異なる)、2023年9月以降、この2つに関しては検査結果を発表することを決めている。陽性者は、罰則と試合結果が「無効試合」になる。 違反をしていないことの証明は──  本誌既報通り、また、会見で吉野弁護士が指摘した通り、「違反をしていないことの証明は、ドーピング検査の結果で行うことが世界のスタンダードなので、それが全て」(吉野氏)。今後、そのチェック体制にどれほどの予算を割くか。  榊原CEOは、「一人の検査を行うのにかかる費用は約10万円。本格的にやるとなると数億円規模になる。米国は賭け(スポーツベッティング)になっていることが前提にあるので、第三者機関がドーピングをさせないことになっている」と語っているが、今回のような騒動を未然に防ぐために、王座戦に限って、抜き打ち検査や血液検査を追加することや厳罰化の検討は、ドーピングの抑止力になるだろう。  また、検査にあたり、通常は怪我や風邪などで服用した薬やサプリメントは、事前申告の必要がある。今回のケースで平本と朝倉は、どんな事前申告をしていたか。また、平本は告発の潔白を証明するために、「開封しなかった」ドラッグを公開、または自ら血液検査を受けることはあるのか。  国内MMAでは、2019年からいち早くタイトルマッチのドラッグテスト結果を公表しているPANCRASEでは、陽性反応が検出された際の薬物が風邪薬由来の興奮剤のエフェドリンであったことなども公開。また、RIZINも2023年9月に、木村ミノルによるクレンブテロールなどの服用をドーピングとして、半年間の出場停止処分を下している。  興行であるプロ格闘技は、アマチュア五輪スポーツに比べて、罰則が緩いのが現状だ。一方で、フルコンタクトスポーツであるファイトスポーツは、直接ダメージを与えるという点で、自身が得るもののみならず、対戦相手が失うものも大きい。  今週発表されるRIZINによるドラッグテストの結果は、ドーピング騒動に終止符を打つと同時に、日本MMAのドラッグテストに新たな扉を開くか。
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