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2024年8月31日(土)午後6時から東京・お台場青海R区画野外特設ステージにて開催される『DEEPサマーフェスティバル2024 in お台場』(U-NEXT配信/DEEPメンバーシップ配信)第3試合で、空手の世界女王・月井隼南がプロMMAデビュー。BreakingDownで“土木ネキ”として活躍した坂本瑠華と対戦する。
▼DEEP JEWELS 54kg以下 5分2R
坂本瑠華(江口道場)54.00kg
月井隼南(FIGHTER'S FLOW)53.70kg
月井は、剛柔流出身。伝統派空手で2019年東南アジア競技大会女子組手50kg級金メダル、2022年ワールドゲームズ2022女子組手50kg級金メダルなど数々のメダルを獲得。2024年6月、空手選手を卒業してMMAに転向することを表明していた。
前日計量を53.70kgでパスした月井は、「伝統派空手から来ました。伝統派空手って“世界チャンピオン”と謡っている方たくさんいますけど、国を代表して、世界ランカーになって世界を獲ってこうした舞台に立つのは私だけなんで、明日は伝統派らしいアグレッシブな試合を見せられるように頑張ります」とコメント。計量後、MMAデビュー戦に向け、本誌のインタビューに応じた。
最後に空手を生かすために、他を組み合わせていきたかった
――無事計量が終わりました。54kgのキャッチウェイト戦ですが、減量はいかがでしたか。
「今回はキャッチウェイトなので、ほぼナチュラルだったので大丈夫でした」
――今回はストロー級(52.2kg)とフライ級(56.7kg)の間ということになります。今回のDEEPでの試合に向けて、MMAはFIGHTER'S FLOWで練習してきたのですよね。
「そうですね。FIGHTER'S FLOWさんでMMAグラップリング、レスリング、打撃と寝技の組み合わせの基本をやって、MMAの打撃は打撃で磨かないといけなかったので、ONE Championshipで活躍されている片島聡志さんにムエタイを教わり、ボクシングはボクサーの元5階級制覇の藤岡奈穂子さんに教わりに行っています」
――ストライカーですが、打ち込む打撃もいちから学んでいるのですね。実際にMMAの練習を始めたのはいつからでしたか。
「今年の2月からで、最初はちょっと体験で、FIGHTER'S FLOWの上田貴央さんに基礎・基本を教わりました。最初は寝技が特に難しくて……打撃は間合いの感覚で“相手が来る・来ない、来たときにこういう技を出す”っていうことを離れた間合いでコントロールするんですけど、寝技の場合、組んで重心移動だとか、そのフェイントのかけ方も逆方向に重心をかけて1回崩して、本来行かせたい方向に動かすとかが、真逆な動きも多かったので、けっこう大変でした」
――伝統派空手に組みの動きはあるものの、寝技は初体験だったのですか。
「はい。空手は立ちでの軽い投げとかはあるんですけど、崩しまでなので。FIGHTER'S FLOWには女子選手も渡辺華奈さんや出稽古の選手もたくさん来ていて、みんな優しく、全然初めからガンガンスパーではなく、できることから教えてくれるので、身に付き始めています」
――空手時代の動画を見ると、得意技の上段の突きもさることながら、スイッチしての左の蹴りなど左右無く自在な蹴りも大きな武器に感じました。
「左右はどちらでも行けます。基本“ミラー”って私たちは呼ぶんですけど、サウスポー構えの選手が少ないので、それを嫌がる子が多いことから、そういう場面に遭遇したときのために、戦略的にずっと幼少期から両方できるようにやってきました」
――あの歩くような入れ替えは、MMAの組みのある中でも出せそうでしょうか。
「そうですね。左右両方なるべく使うようにはしていますし、この半年間で思っていたよりも、MMAファイターになっています。特に打撃メインで組み立てたかったので、それを空手の単発で終わってしまわないよう、コンビネーションとの組み合わせは、かなり相性が良くなってきたなと思います。それにタックルもディフェンスだけでなく攻撃も。相手をテイクダウンして上からも仕掛けられるように、少しずつなんですけどなっていると思います」
――伝統派空手には鋭い飛び込みや後ろへの移動もある。でもそこで重心が浮いてしまうと、MMAでは組まれてしまう。いまは打撃でもあらためてムエタイやボクシングの動きも混ぜているということですね。
「そうです。だから、ボクシングの藤岡さんのところに行った理由も、やっぱり重心が浮いてしまったらどんな技を出しても効かないので浮かずに、とくに近場のパンチは絶対浮いちゃいけないことを教わっていて、フットワーク自体も幅が広がっていますね」
――前後に加え、角度がついてくる。
「そうなんです。前後は得意なんですけど、横に行くこと、それをとくにボクシングのフットワークで学びましたね」
――その融合ができてくれば自分の空手がより生きて来ると。
「はい。最後に空手を生かすために他を組み合わせていきたかったので。最初から空手一本ありきでやってしまうと、MMAのなかで空手の使い辛いところはどう直せばいいのか、いうのが自分自身の疑問でした。最初から空手のどこがMMAで難しいのか。どこを改善すれば使えるのかをずっと考えてやってきて、ボクシングで苦戦して、ムエタイで苦戦して、下段蹴りが無いのでローキックで苦戦して……というのが、ちょうど本当5カ月くらい経ってから、だいぶ“こういう風に打つと私たち空手家はすごいいい打ち方できるな”とか、この距離からのコンビネーションだと生かすことができるんだ、というのが掴めてきました。おいしいとこ取りがMMAだと出来る、それが新鮮で楽しいです」
――上田代表からは、試合に向けてどんな言葉を?
「上田さんからは、『もう全然いつもどおりやれば大丈夫』と。セコンドに渡辺華奈さんと、鈴木隼人先生もついてくれますし、レスリングも本当にみっちり教わっていて、テイクダウンディフェンスや、華奈さんからはコンビネーションだったり、『本番ではこういうことが起こり得る』というのも聞いています」
――女子で伝統派空手出身の同階級の王者クラスでMMAに転向した選手はいるのでしょうか。
「キックボクシングでは、自衛隊から島田知佳ちゃんがデビューしてRISEで勝っていますが、MMAは、女子は伝統派トップからはいないんです。男子は堀口恭司選手をはじめ、五明宏人選手や野村駿太選手らがいるんですけど、女子はテコンドーから空手、空手からテコンドーというオリンピック競技間での変動はあっても、プロMMAに行った方はまだいないですね」
――なるほど。では伝統派空手を活かした女子の強さをMMAでも見せたいところですね。
「そうですね。やっぱり堀口選手やリョート・マチダ選手らが先陣切って、男子MMAで切り開いてくれたので、女子もやっていきたいです」
――対戦相手の坂本瑠華選手の印象をどう捉えていますか。
「アグレッシブで、あまりバックステップを使うような感じではなかったので、特にBreakingDownの試合はガンガン行っていたので、楽しみです。間合いを詰めて来られても押され負けずに、テイクダウンに来られても対処する練習もやってきています」
――どんな試合をしたいですか?
「女子MMAの試合を見ていると、けっこうパンチは皆さん繰り出すんですけど、キックはどうしてもテイクダウンを取られてしまう恐れがあるから、フェイクとかもあまり出さない印象なんです。そこでしっかり蹴りと突きの組み合わせで戦い、インファイトでも外でも戦えるように仕上げてきました。“タイミングと間合い”は私の強みだと思っているので、そこを必ず見せて、KOしたいなと思っています」
――まだMMAデビュー戦ですが、目標は?
「やっぱりコツコツやっていくことがすごく大事だと思っています。空手で強かったからといっても土俵が違うので、今までもらったことのないような技に遭遇したり、気持ちを折られそうな場面もあるかもしれませんが、そこでめげずに戦います。こつこつやっていって、強い選手とやらせていただきたいなと思っています」