2024年8月23日(日本時間24日朝10時~)、米国ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXにて開催される『ROAD TO UFC シーズン3』(U-NEXT配信)のフェザー級準決勝で、日本の原口伸(BRAVE)が、中国のズー・カンジエと対戦する。
原口は、鹿児島・樟南高から国士舘大レスリング部に進み、2019年の全日本選手権フリースタイル70kg級で優勝。2021年9月にプロMMAデビューすると、2023年2月のGRACHANでライト級王座戴冠。グアムBRAWLでのキム・サンウォン戦、小谷直之戦の連続1R TKO勝ちを経て『ROAD TO UFC 2023』にライト級で参戦も、決勝で元UFCのロン・チューに敗れ、契約ならず。2024年5月に『ROAD TO UFC 2024』にフェザー級で再挑戦し、1回戦でホン・ジュニョン(韓国)に判定勝ちしている。
対するズー・カンジエは、中国WLF、JCK等で活躍後、2024年5月に『ROAD TO UFC 2024』参戦。1回戦で安藤達也との壮絶な打撃戦を制し、判定勝ち。MMA戦績を19勝4敗としている。
果たして原口は、適正階級のフェザー級でUFCとの契約を掴むことができるか。今回の準決勝を互いに勝ち上がれば、決勝で河名マストとの日本人頂上決戦の可能性も出て来る『ROAD TO UFC 3』だ。
自分の中では『シーズン2』と『シーズン3』がひとつに繋がっている
――ライト級からフェザー級へ階級転向し、減量の緊張感がある中で試合に向かっていくことについて、トーナメント初戦を経て、今回に向けて練習しながらどのように感じていましたか?
「1回戦と一緒で、どんどん神経が研ぎ澄まされていく感じがあって、ライト級のときよりいいなと感じています」
――通常体重はどれくらいなのですか?
「通常は76kgです」
――今回のコーナーは? お兄さん(原口央)がつけないですよね。
「今回ちょっと兄貴が試合前(『ROAD FC 63kgトーナメントでエルデュカルディ・ドゥイシェフと対戦)だったので、1回戦と同様、後輩の子(荒井銀二)を連れてきています」
――この試合に向けてどのような練習に取り組んできましたか?
「今回はいつもより打撃と組み、レスリング以外のところをけっこう集中してやってきた感じです」
――打撃と組みというのは、打撃から組みへと繋げる、という意味でしょうか。
「繋ぐということと、レスリングはいい意味で切り捨てる、じゃないですけど、それ以外のところでちゃんと勝負ができるように打撃と、寝かしたところから、という部分を強化してきました」
――協栄ボクシングジムの大橋忠幸トレーナーにミットを持ってもらっているのですよね。そこで原口選手のスタイルに合った打撃を習得しているのでしょうか。
「そうですね。自分の動きに照らし合わせて、最悪組めればいいよねというような形で、作ってもらっています」
――1回戦を勝ち切り、ご自身では試合内容にどれくらい納得しているのでしょうか。良かった点や、課題となった部分があったかなど、前戦をどのように捉えていますか?
「良かった点は、ライト級で参戦した『RTUシーズン2』決勝戦での失敗を結構活かして臨めたことです。逆に、固くなりすぎてしまって、もうちょっとフィニッシュを取りにいくような形が理想ではあるかなと思いました」
――これまでの原口選手の戦い方として、とにかくテイクダウンし続けることで自分が疲弊してしまうことが課題のひとつだったことと思いますが、前回の試合ではクラッチに固執せず、自分のペースで動かしているような場面も見受けられました。
「そうですね。本当に仰るとおり自分から行きすぎてしまう性格もあって、ちょっと気持ちをセーブして、焦らず固執せずで、また相手が来たところで合わせて入ったりすればいいや、というくらいの感覚で行けたので、そこが良かったなと」
――それは、フェザー級に落としたことによって、自分から無理に入ろうとせずに相手から来るような展開になっても、それほどダメージを負わずに仕切り直してもう1回組んで倒せるという自信があったのでしょうか。
「そうですね。本当にそれが、(2月の)決勝戦の負け試合から数時間後に思った “こういう風にすれば決勝も勝てたんじゃないかな” という筋書きを、そのまま(5月の)1回戦でやった、という感じです」
――今回も、たとえば自分の頭が相手の頭より下にあるときにコツコツ殴られてしまったりするのは、できるだけ少なくしたい、というような課題は浮かびましたか。
「そうですね。準決勝でもそれでポイントを取られることもたぶんあると思いますし、それは避けたいことですので、昨日も陣営で話し合ったのですが、逆に自分の印象を良くするためにどうするかを考えて、作っています」
――相手は画面越しで見ているとスタッツで見るよりも大きい印象なのですが、本人を目の前にしてみてどのような印象ですか?
「ラスベガスに入ってからアンチドーピングの講座のようなものに出席して、一緒の空間に対戦相手もいましたが、とくに何も感じなかったです」
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ラスベガスでUFCのアンチドーピングの講座を受けて──
――そのような講座を直前でも皆で受けるのですね!
「初めてのことでした」
――気づきはありましたか?
「気づき、ありましたね。日本の商品だと表記されていないものばっかりで、危険物質とかそういうのがあったり。逆にアメリカとかで取るなら『こういうマークを見なさい』とか。でも『同じ会社だからといってその商品は大丈夫とは限らない』だとか、本当に小さいところまで」
――普段からかなり気をつけている部分なのですよね。
「そうですね。風邪も自力で治したりしてました。(薬が)怖くて」
――2月に前シーズンの決勝があって、3カ月後には今シーズンの初戦を迎えました。そこは原口選手にとっては逆に短期間での再挑戦となりました。その上で、絶対に負けが許されないトーナメント戦を、半年以上というロングスパンのなかで勝ち抜いていかなくてはいけません。1度このタイムラインを過ごしたことは今のご自身にとってプラスに働いていますか?
「そうですね。去年はライト級で参戦して。決勝で負けましたが、戦い抜けたということは自分の中でプラスになっているのと、自分の中では『シーズン2』と『シーズン3』がひとつに繋がっていて、ずっと戦いが続いているような感覚ですね」
――切り替えるのではなく、ずっと続いていると考えることは、しんどくはなりませんでしたか? またあれがずっと続くのか、というような。
「そうですね。たまに、ふとした瞬間、気持ち的にキツいと思うときもありますね」
――武田光司選手がBRAVEを離脱されたりと環境が変わってきていると思いますが、出稽古を含めてどのような選手とよく手を合わせてきたのでしょうか。
「BRAVEでは打撃がうまい選手とかと自分からたくさん触れるようにして。それ以外だと先ほども話に挙がった協栄ボクシングジムでやってきたのと、タケダイグウジさんにムーブメントとかも教えていただくようになって、身体の使い方だったり、試合前だったら追い込みのなかで心拍数を測ってもらってデータ化してもらったりしていましいた。そういう自分が今までやってこなかったことを、今回けっこう採り入れてやっています」
――体の連動を意識しているのでしょうか。手応えは?
「そうですね。体の使い方です。気づいていなかったことが多かったので、こういうこと考えないでやってたなっていうことを意識するだけで、どんどん余裕が生まれたり」
――対戦相手のズー・カンジエ選手を想定した練習もしてきましたか?
「そうですね。対策ばっかり結構やってきました。でも、本番で思わず面食らうようなことがないようにだけ気をつけたいなと」
――相手はオーソドックスで原口選手はサウスポーですので、(相手が)安藤達也選手と対戦した1回戦と同じ構図になりますね。
「そうですね。前戦は自分にとってのいい材料じゃないですけど、まっすぐ下がると右が届いてくるから危ないとか、ヒザがあるな、とかそういうざっくりとしたものを掴めました」
──立ち位置にも注意ですよね。ズー・カンジエが外足を取ってきたときに踏み込んで……。
「右をバチーンと狙ってきますね」
――レスリング時代は、右足前のサウスポー構えで戦っていて、MMAで今もサウスポースタイルですが、利き手が左なのですか。
「そうですね。利き手は左で、自分的にはオーソでも良かったのかなとか思うときはあるんですけど、最初にサウスポーでやっちゃったので。最近はスイッチとかも取り入れたりしています」
――ストライカーを相手に、あの左の攻撃と組みの融合が今回どう出るのか楽しみです。どんな試合になりそうですか?
「自分が一方的にやっつけるか、あるいは相手は距離取ったりするのうまいので、さっきも言ったように面食らってしまったら、相手の流れになってしまうかもしれません。そこは状況を見てという感じです、自分の中で」
――もしそうなっても自分のペースになんとか持ってこなくてはいけません。
「そうですね。そういうときはもうゴリゴリに行ったほうが、意外とうまくいったりとかするかもしれないし」
――その両方をちゃんと想定できているということですね。
「そうですね。2パターンを」
――前回は1つ上の階級でUFCとの契約まであと一歩のところまで行きました。今回は、適正階級でUFCの本線で戦っていくことをイメージしての戦いなのか、それとも今は目の前の1戦1戦だけに集中しているのか、どのようにトーナメントを捉えていますか。
「1戦1戦という考えだったんですけど、自分の中で最近はもう自分がUFCに行って上に上がっていくためのひとつの過程なんだと思って。1戦1戦で考えちゃうと精神的にキツい時もあるので。“勝たなきゃ! 勝たなきゃ! 勝たなきゃ!”って。そういう気持ちを切り替えて、これはあくまで上に行くためのひとつの過程なんだと思って、試合を捉えています」
――世界のトップと戦うために、ということですね。ところで、パリオリンピックのレスリングはご覧になったりはしましたか。
「はい。自分の試合前だったので夜ふかしはしませんでしたが、翌朝ハイライトや全試合を見たりしていました」
――気になった試合や、刺激になった試合もありましたか?
「いっぱいありましたね。フリースタイル65kg級金メダルの清岡(幸太郎)選手と、74kg級銀メダルの高谷大地選手は自分が全日本学生選手権を取った頃くらいに一緒に全日本合宿とかも経験した選手なので。そこからのことを考えると、自分がオリンピックを語るのはおこがましいんですけど、“わあ、あの舞台まで行ったんだ”って。そういうことは、すごい感じます」
――コンタクトスポーツにおいて日本人は敵わないといわれている中で、世界の中で中量級以上でああやって多くのメダルを獲得した結果を見て、ロシア勢がいなかったものの、日本人でも戦えるんだと思わされました。原口選手はどのように見ていましたか?
「(日本人が通用しないといのは)もう言い訳でしかないんだなと。その先入観が駄目というのと、高谷選手に関しては階級を上げて74kgですから、UFCでライト級でランキング2位くらいまで上がるということ。本当に言い訳できないですよね。ああいうのを見せられると」
――原口選手もUFCフェザー級世界王者のイリア・トプリア選手と戦うことをイメージしながら戦っていかなくてはいけませんね。
「本当に自分が勝てるって思わなきゃ、たぶんああいうオリンピック選手たちみたいにはなれないです」
――U-NEXTで試合を見る皆さんに、メッセージを。
「今回は二度目の参戦になって、前回はライト級で準優勝したので、少し期待してくださっている方もいると思うんですけど、その期待を超えられるような試合を当日はしたいと思うので、よろしくお願いします!」