MMA
インタビュー

【RIZIN】賽は投げられた──武田に一本勝ちのシェイドゥラエフ「なるべく早く次戦を組んでほしい」&関をKOしたダウトベック「年末にはチャンピオンになる」

2024/06/12 19:06
 2024年6月9日(日)東京・国立代々木競技場第一体育館にて『RIZIN.47』が開催され、フェザー級でクレベル・コイケがフアン・アーチュレッタに一本勝ちし、王者・鈴木千裕の挑戦者に名乗りを挙げるなか、新たな海外選手が一気に上位戦線に割って入る活躍を見せた。  第6試合では、ラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)が武田光司に1R 一本勝ち。第4試合では、朝倉未来戦以来5年9カ月ぶりにRIZINに参戦したカルシャガ・ダウトベック(カザフスタン)が関鉄矢に1R KO勝ちと、いずれも初回でRIZIN常連日本人選手を仕留めている。  ダウトベックは7連勝。6連続1Rフィニッシュ勝利中で、ディエゴ・ブランダオ、松嶋こよみをフィニュシュしていることからもその実力は折り紙付き。今回の関との試合でも左の打撃を武器に、左ミドルを当てておいての左オーバーハンドでダウンを奪い、立ち上がったところに強烈な左ボディで関を悶絶KOに下している。「岩のような拳だった」と関に言わしめたカザフスタンの“ハンズ・オブ・ストーン”は、試合後、「ベルトに近づける試合を組んでいただけるなら戦う準備はできている」と、上位戦線に宣戦布告した。  また、マチュアGAMMAフェザー級王者から、プロMMAで10戦無敗としたシェイドゥラエフは、RIZINバンタム級で活躍するヤン・ジヨンをROAD FCで1R リアネイキドチョークで極めている実力を武田戦でも披露。右を強振してコーナーに詰めると、尻下でクラッチして、レスリング強者の武田を巧みに、そして力強くリフトしてテイクダウン。  バックテイクのプレッシャーに前転して振り向きざまのギロチンも狙う武田の亀からの立ち際にバックを奪い、左手首をコントロールして、右腕一本で肩を抱いてリアネイキドチョーク。最後は左手も抜いて後ろ頭で組んでタップを奪っている。  試合後、武田は「こんなに1Rで組みで圧倒されたことはなかった」と舌を巻いたが、勝者は、「1Rは自分にとっては柔軟体操のようなものだった。1日2試合でもいい。もう1回、全然試合ができる」と余裕の表情。「RIZINにお願いしたいのは、なるべく早く次の試合を組んでほしいということ。そして私がチャンピオンになる」と戴冠を宣言した。 「箱庭」か「開国」かと議論が沸くなか、ダウトベックとシェイドゥラエフ以外にも、RIZIN3連勝中のビクター・コレスニック(ロシア)、2連勝中のイルホム・ノジモフ(ウズベキスタン)とロシア、中央アジアからの参戦組は増えており、“フィニュシュ力を持つ優良選手”の市場価値が上がるなか、RIZINが手をつけなければ、他団体に流れていくだけの状況で、すでに賽は投げられているといえる。  試合後、榊原CEOは「ワールドワイドの世界観の手応えを感じる内容だった。日本人選手はさらに奮起して頑張ればいい。もう少し外国勢をミックスして、海外勢同士の対戦も含め、“熱がつけば”フェザー級GPになってもいい」と期待を寄せている。  扉を開いてみなければ分からなかった実力やフィジカル差を、日本人選手はどう攻略するか。そのプロセスが日本MMAのレベルアップに繋がるはずだ。一方で、海外選手の増加でドラックテスト&罰則の重要度が増すことは間違いないだろう。  RIZINフェザー級の主な選手のスケジュールと、今回、参戦したシェイドゥラエフ、武田、ダウトベック、関との一問一答全文は以下の通りだ。 主なRIZINフェザー級ファイター 王者 鈴木千裕(13勝3敗)ヴガール・ケラモフ(19勝5敗)金原正徳(29勝13敗)クレベル・コイケ(33勝7敗)フアン・アーチュレッタ(29勝6敗)ビクター・コレスニック(26勝4敗)ラジャブアリ・シェイドゥラエフ(11勝0敗)カルシャガ・ダウトベック(15勝3敗)朝倉未来(17勝4敗)(vs.平本蓮)斎藤 裕(21勝8敗)(vs.久保優太)武田光司(16勝7敗)イルホム・ノジモフ(11勝3敗)新居すぐる(17勝11敗)中原由貴(18勝7敗)今成正和(40勝22敗)摩嶋一整(16勝5敗)久保優太(4勝1敗)(vs.斎藤裕)高橋遼伍(14勝8敗1分)平本 蓮(3勝3敗)(vs.朝倉未来)弥益ドミネーター聡志(13勝8敗)萩原京平(7勝9敗)関 鉄矢(16勝10敗1分)高木 凌(7勝2敗)白川陸斗(11勝9敗1分)(vs.中村大介 DEEP)青井 人(13勝5敗1分)神田コウヤ(12勝6敗)(vs.木下カラテ DEEP)横山武司(5勝1敗)鈴木博昭(4勝3敗)(vs.YA-MAN)山本空良(12勝8敗)カイル・アグォン(14勝12敗)芦田崇宏(24勝14敗2分)中村大介(34勝25敗1分)(vs.白川陸斗)YA-MAN(1勝1敗)(vs.鈴木博昭) [nextpage] ラジャブアリ・シェイドゥラエフ「66kgでやって上手くいった」 ──試合後の率直な感想をお聞かせください。 「とても素晴らしい、良い気分です。怪我もしませんでしたし最高の気分です」 ──対戦相手と実際に戦ってみて戦う前の印象と違ったところがあったら教えてください。 「武田選手に対してかなり準備してきました。自分のチームと彼に対する作戦も計画して、その作戦がうまくいくよう練習してきました。彼の弱点も研究していましたし、そういうものを見て、全てうまくいったと思います」 ──試合後のリング上のマイクで話したことがどんな話だったか、改めて聞かせていただけますか。 「自分のトレーナーたちに対しての心からの本当の感謝と、それだけでなく両親、兄や親戚に対する感謝の気持ちを述べました。あともうひとつ、自分は1日2試合でもできるので、RIZINに誰か対戦相手を選んでいただき、試合をさせていただきたいということをRIZINに伝えました」 ──もう1試合できる体力が残っているのですね。 「そうですね。今回1Rで勝ちましたので、1Rは自分にとっては柔軟体操のようなものだったので。あと1回は全然試合ができます」 ──昨年、韓国とUAEで試合をされました。日本で戦ってみて、RIZINというプロモーションのファイトウィークを、去年の2団体と比べてどう感じましたか? 「UAEの組織はいいところだったし強い選手もいてやりがいがありましたが、RIZINはより良いと思いますし組織としてしっかりしていて条件もいいですし、やりがいがありました」 ──ROAD FCでは63kgで体重超過をしましたが、フェザー級で戦うとご自身のフィジカルはその時と比べてどんな感じですか。 「あの時は本当にもうあと100gだけだったのですが、それを落とすのに時間が足りなくてオーバーになりました。63kgと66kgでフィジカルの違いや準備の違いはうまく表現できないけど、63kgだと自分の体重をリミットに持っていくのが大変でした。今回66kgでやって、うまくいったと思います」 ──今回の試合で素晴らしい圧倒的な勝ち方だったと思います。今日勝利したクレベル・コイケ選手もそうなのですが、66kgにいい選手が揃っています。戦いたい相手はいますか? 「ありがとうございます。正直に言ってRIZINの66kgにどういう選手がいるかはっきり知らないんです。ですから、RIZINから提供あるいは推薦してくれた選手といつでも戦う準備はできています」 ──武田選手は71kgのライト級から落としてきた選手でした。それでもフィジカルやパワーで優っていた。強い理由はあるのですか。 「山岳地帯の生まれで、小さいときから山で育ち、毎朝山を駆け抜けランニングしたりいい空気のなかで体を鍛えてきたので、もしかしたらそれが理由かもしれないです」 ──今後の目標・展望を教えていただけますか。 「今日までに11試合して全部勝っています。ほとんど1R、少なくとも2Rでフィニッシュしています。RIZINにお願いしたいのは、なるべく早く次の試合を組んでほしいということ。そして私がチャンピオンになります」 [nextpage] 武田光司「こんな1Rで組み負けたのは初めて」 ──試合後の率直な感想をお聞かせください。 「完敗です」 ──対戦相手と実際に戦ってみて戦う前の印象と違ったところがあったら教えてください。 「スタンドに関してはコーチ陣、セコンド陣と、打撃のオフェンス、アタックに対するムーブメントとかやっていて、1Rもやっていないですけれどスタンドでは成長しているところを出すことができて自分のなかでは良かったと思っているし、セコンド、コーチ陣と話してそこに関しては『成長を感じている』と言ってもらえたので成長していると思いますけど、組み力ですね。RIZINに出てきて大きな舞台でやらせてもらってこんな1Rで組みで負けたのは初めてなので、とんでもない奴だな、シェイドラエフ選手はとんでもない選手だなと思いました」 ──世界のファイターたちには違う強さを感じましたか。 「柏木(信吾・海外事業担当)さんも『荒削り』とおっしゃってたと思うのですけど、地力って言うのですかね。単純な力だけでここまで来たんだなって感じましたね。プラス、フィニッシュ力が、今回で11フィニッシュになるけれど。そうですね、やられましたね」 ──リアネイキド・チョークには警戒していたと思いますが、右腕を喉もとに通されて左は手首を内側から掴まれていました。右手で肩を掴まれて右だけでそこまで入ったから、左のリストを外された形になるのでしょうか。 「右だけで極められかけていましたね、それだけです」 ──負けてしまったけれど清々しさのようなものがありますか。 「いえ。すごい悔しくて、それを隠しています」 ──試合を終えたばかりですが、今後の目標・展望を教えていただけますか。 「試合をしてきて、今までやってきて今回23戦目かな? やってきて“初心に帰ろう”と思いました。トップに行きたい気持ちは本当に変わっていません、今でも変わっていないし変わりないと思いましたけど。まあ、2年前スパイク・カーライルに首を狩り落とされたときの気分です。日本でやってきて、別に海外に行ったから強くなるわけじゃないけれど、またそういうことをトライしていくしかないって感じましたね。別に日本がダメっていうわけじゃないです。  日本で今、素晴らしい選手と出稽古メインでやってきて成長している実感はありますけど、テクニックじゃないところを見せられたのもそうだし、僕が上に行くためには、ファンのみんなに“こいつ強くなってるな”と思ってもらうためには、もっといろんなことやらなきゃいけないなと思ったし。スパイクに負けた後みたいな気分ですね。それだけです。展望は、試合がどうたらこうたらは何もないです。後日、RIZIN事務所に行き、佐伯の親父(佐伯繁DEEP代表)のところに行き、今後のことを色々決めたいです」 ──武田選手の前に行われた関選手とダウトベック選手の試合はご覧になりましたか。 「観ました」 ──あの試合も日本人選手が外国人選手に負けましたが、関選手はフィジカル差をすごく感じたと。RIZINフェザー級の選手が勝ち切れないことに通じると思いますが、武田選手はいかがですか。 「シンプルにフィジカルってことですね。地力もとても重要な技術のひとつだと思いました。ライト級で試合をしてきてフェザーで2戦目になりますが、こんなに1Rで組みで圧倒されたことはなかったので、もっとフィジカルを、力をつけないといけないと本当に単純に思いました」 ──日本の練習のなかでも対応できるものは作れると? 「もちろん。それを、BRAVE所属ですけど、いまBRAVE外でやっているので。コーチつけて打撃のステップワークだとか、スポンサーのBLUE FITNESS 24でムーブメントの修正や補強、フィジカル、いろんなことをトライして今年の頭からやってきて、これがダメだったからもうダメとかじゃないんですけど、そういうことも色々やってきた上でのこの結果で、技術でなくフィジカル面ですけれどダメだったので、色々見直してこれからやらなければいけないと思いました」 [nextpage] カルシャガ・ダウトベック「一緒にトレーニングしたこともあるシェイドゥラエフも圧倒的な勝利をした」 ──試合後の率直な感想をお聞かせください。 「皆さんこんにちは。またお会いできて嬉しいです。とても気分がいいです。日本は初めてではありませんが、私はとても日本が大好きです。日本でRIZINがスタートしてだいぶ経って着々と時間を刻んで、日本だけじゃなくて世界中に知られている団体だと思います。それで今日の試合ですが、今日は本当に会場もいっぱいでファンの方たちが見守るなかで内容のいい試合ができたと思っています。今はとても満足しています」 ──対戦相手と実際に戦ってみて、戦う前の印象と違ったところがあったら教えてください。 「今日の試合で対戦する前に関選手のいろんな試合を見て、とても実力のある強い選手だと感じていました。テイクダウンやグラウンドでの戦いぶりも実力あり、経験豊かな選手だと思いました。KOも何度もしているし、対戦相手としてまったく満足できるものでした。試合をしてみて思った通り、強く才能のある選手だと感じました」 ──今回勝利しました。今後の目標・展望を教えていただけますか。 「RIZINで2回目(※前回は2018年9月に朝倉未来に判定負け)ですが、以前も今回も自分が対戦相手として“この人とやりたい”と選んだことはありません。提供されたファイターとやってきました。こうして勝って自分の目標はチャンピオンになること。またすぐ対戦する機会を与えていただき、年末にはチャンピオンになるという目標を叶えたいと思います」 ──フェザー級王者であったり戦いたい相手はいますか。 「いい質問をありがとうございます。常に自分の階級のなかにどんな優秀な選手がいるのかをウォッチングしています。クレベル選手は元王者だと思いますが、朝倉未来選手もチャンピオンになったことがあるのですよね?(※THE OUTSIDER2階級王者。RIZINでは2度挑戦も戴冠ならず)現王者の鈴木千裕選手のこともよく知っています。試合も見ているし素晴らしいファイターだと思っています」 ──クレベル選手とアーチュレッタ選手の試合の勝者が「次期挑戦者」と言われています。ここに絡んでいきたいですか。 「今日のこれからの試合は興味を持ってみるつもりですが、今クレベル選手かアーチュレッタ選手のどちらが勝つかは問題ではないです。勝った方と組んでくださればいつでも対戦しますし、どんな選手とでも、ベルトに近づける試合を組んでいただけるなら戦う準備はできています」 ──敗れた関選手は「あれほどボディを効かされたのは初めてで、岩のようだった」と言っていました。よく硬いと言われると思いますが、どのように拳を鍛えているのか秘訣があれば教えてください。 「とても嬉しい質問ですね、ありがとうございます。自分は特に拳を強くするためのトレーニングはしていないけれど、MMAを始めて既に15年トレーニングしています。ですから今までのトレーニングをさらに充実させていき、フィジカルの強いところをさらに強めて、自分の目標であるベルトに向けて進んでいきます」 ──武田vs.シェイドゥラエフ戦はご覧になりましたか? 「観ました」 ──実際に見ていてシェイドゥラエフ選手がとても強かったと思いましたが、印象はいかがでしたか? 「観ていましたが、実際自分は随分前から知り合いで(タイガームエタイで)一緒にトレーニングしたこともあります。本当に彼はパンチだけではなくレスリングのテクニックなどほとんど持っているものを披露して圧倒的な勝利をしたと思います」 [nextpage] 関鉄矢「腹にすごい衝撃がきて、耐えきれなかった」 ──試合後の率直な感想をお聞かせください。 「やっぱり悔しいですね……」 ──左フックをもらって倒れた場面は、すぐに立ち上がりましたが、どのくらい効いていたのでしょうか。 「いや、記憶に無いです、あそこはもう。意識朦朧みたいな。気がついたら(マットに)転がっていたので立ち上がって、何がなんだか分からないまま腹にすごい衝撃がきて、ちょっと耐えきれなかったですね」 ──対戦相手と実際に戦ってみて戦う前の印象と違ったところがあったら教えてください。 「やっぱり左は強いですね」 ──想定していたパワーよりもかなり強かったのでしょうか。 「いや、想定はしていて、自分の作戦に持ち込むための種まきも順調に行っていたので、次は組みの展開を作ればもう自分のペースになるかなと思ってたんですけど。破壊力で持って行かれましたね」 ──種まきをしていたということですが、具体的にどういう展開に持っていくプランだったのか教えていただけますか。 「今回のプランはまず相手の左を出させないためにインローと、相手の高い位置のガードに目掛けてハイキックを当てて(上体を立てさせて)、そこから自分が蹴りのモーションで牽制してタックルとかで入って、自分が得意なスクランブルに持って行きたかったんですけど、その前に腹を効かされてガードが下がったところにもらっちゃったんです」 ──ボディへの打撃でフィニッシュされることはこれまでの試合でありましたか? 「無いですね。そんなに苦しくなるほど効かされたこともなくて。もうガードの上からでも岩のような拳だった感じがします」 ──試合を終えたばかりですが、今後の目標・展望を教えていただけますか。 「今、気持ちが下がっていて、ちょっとまだ今後のことは考えられないですけど。いやあ本当に、強くなりたいですね。ほんとに……ごめんなさい、ちょっと。みなさんの予想を超えられなくてごめんなさい。ちょっと強くなってきます」 ──なかなかフェザー級では関選手に限らず外国人と日本人選手の対戦で日本人が勝ち切れない状況が続いているかと思います。ここの壁を抜けるのに必要なことは? 「どうなんですかね、自分が言えたことじゃないですけど、フィジカルがちょっと外国人とはポテンシャルって言うんですかね、それが違うんで。やっぱ組み立てなきゃいけなかったんですよね、もっと。ただ……、うーん、ちょっと分からないですけど……。ごめんなさい、ちょっと分からないです」
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