ムジンスキの顔面ディフェンスは侮れない
――オウヤン選手の決勝トーナメント一回戦の相手はワイルドカードになっていまして、まだ誰になるのか未定です。
「だったら、ブアカーオ選手がいいんじゃないですか! 僕は、ブアカーオ選手とオウヤン選手の試合が見たいですね」
――さすがにブアカーオ選手が3試合を戦うのは、年齢的にも厳しいのでは。
「それでも僕は、見たいですね。オウヤン選手がトップのタイ人と戦っていないならば、ブアカーオ選手が勝てる可能性も十分にありますから」
――オウヤン選手に勝つのは、ブアカーオ選手だと。
「ムエタイのトップ選手の初めての相手がブアカーオ選手だと、あのオウヤン選手でも苦戦すると思います。どちらが勝つにしても、注目の一戦になりますね」
――他に注目選手はいますか?
「ブラジルの選手ですね」
――璃久選手をTKOで下したデング・シルバ選手ですね。190cmの身長と圧倒的な攻撃力 で、彼を優勝候補に挙げる人もいます。
「耐久力がどこまであるかですね。身長190cmで体重70kgだと、肉体的に縦に細くなります。必然的に筋肉量が少なくなるため、ローキックへの耐性がどこまであるかが気になるところ。また、自分が蹴った時にスネを痛めるリスクも出てくるため、そこはこの前の試合だけでは分からない未知の部分ですね。でも、攻撃力はめちゃくちゃ高いです。映像では彼の動きは遅く見えるかもしれませんが、空に飛んでいる飛行機を地上から見ているのと同じで、実際には速いと思います。遠心力が思い切りかかっているパンチなので、かなり重かったはずですよ」
――デング選手の攻撃力は脅威ですね。とくに2階からの打ち下ろしのパンチは。
「デング選手の強打を受ける距離にいたら、耐えられる選手は少ないでしょうね。僕だったら、いかに彼の遠心力がかかった攻撃の距離を外せるかをテーマに戦います。一番、強い攻撃が飛んできた時に、少し前へ出てインパクトの瞬間を外す。オウヤン選手は、これが非常にうまいので、2人の対戦を見たいですね。逆にデング選手が、距離を外された時に、どんな二次的な攻撃を出せるか、そこも見たいです」
――あと開幕戦で驚いたのは、活躍が期待されていた実績のあるムエタイのタナンチャイ・シッソンピーノン選手が、K-1ルールに順応できなかったことです。
「タナンチャイ選手の参戦が決まり、僕は仲間に“凄い選手が来るから注目して”と言っていたくらい注目していたんです。でも、試合後はみんなに謝りました(苦笑)。両スネを痛めていたのかなと思うくらいミドルキックを蹴らなかったですよね」
――試合中にセコンドの顔を気にして見ていたくらいなので、戸惑っていたのでは。
「ロマーノ・バクボード選手が距離を潰したのはありましたが、普通、あのくらいのレベルのタイ人ならば、接近させないように戦えるんですよね。腕を破壊するくらいのミドルキック地獄が見られると期待していたので、見れなくて残念でした」
――K-1ルールに適応してきたタナンチャイ選手の次戦に期待したいですね。
「逆にバクボード選手が、タナンチャイ選手の良さを出させなかったと見た方がいいのかもしれません。マラット・グレゴリアン選手のようにガンガン前へ出る作戦をしていましたので、大化けする可能性もありますよ」
――あとはゾーラ・アカピャン選手も優勝候補と言われています。
「ウクライナのタラス・ナチュック選手と戦ったアカピャン選手は、凄く体幹がしっかりしているなと思いました。技を出した時に右のガードをまったく下げないので、軸がブレていない。ジャブを打つ時に、逆の腕がまったく動かない選手は脇腹の筋肉が強いことが多いんですけど、アカピャン選手もそうですね。軸がブレないので、相手は攻撃を予測することが難しい。今回はウクライナの選手が強かったのでアカピャン選手の強さが際立たなかったですが、上位に行く実力があるように見えました」
――決勝トーナメント一回戦は、オウヤンvs.X、デングvs.フェルドンク、アキモフvsバクボード、ムシンスキvs.アカピャンになっていますが、この時点で誰が優勝しそうですか。
「Xが誰かにもよりますが、準決勝はオウヤン選手とデング選手、バクボード選手とムシンスキ選手が戦うのではないでしょうか。そしてオウヤン選手とムシンスキ選手が決勝を争うのではないかと見ています」
――ムシンスキ選手の評価は高いですね。
「あの顔面ディフェンスは脅威です。オウヤン選手が総合力で優勝すると思いますが、ムジンスキ選手の顔面ディフェンスは侮れないとみています」
――優勝はオウヤン選手で、サプライズを起こすとすればムシンスキ選手と。それにしても、まだ無名の選手がここまで強いと日本の選手は今後が厳しいですね。
「いえ、ここに日本の選手をどんどん放り込んであげればいいんですよ。昔のK-1MAXの時もそうでしたが、最初は通用しないと思われていても、段々と通用するようになっていきます。そういう選手が必ず出てきます。最初は犠牲になった選手もいるかと思いますが、それも日本のレベルが上がるための糧になります。どうしたら世界で勝てるようになるのかというのが、見えてくるんです。
だんだんと日本人が勝つための方法が見えてきますので、まったく問題にすることはないです。ここがワールドクラスのスタンダードだとしても、ここから立ち上がってほしいですね。絶対に日本人が勝てる階級なので、僕は逆襲に期待しています」