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【ONE】体重超過のロッタンが判定勝ちで「武尊と戦いたい」、野杁がシッティチャイに無念の判定負け、平田樹がギロチンチョーク失神で3連敗。メインはタワンチャイがまたも辛勝でV3、マイキーが3年ぶりリベンジ、ケイド・ルオトロがMMAデビュー戦で一本勝ち!

2024/06/08 08:06
 2024年6月8日(土)朝9時から、タイ・バンコクのインパクトアリーナにて『ONE 167:Tawanchai vs. Nattawut II』(U-NEXTにてLIVE配信)が開催された。 ▼第9試合 ONEフェザー級ムエタイ世界タイトルマッチ 3分5R〇タワンチャイ・PK・センチャイ(タイ/王者)[判定2-0]×ジョー・ナタウット(タイ/挑戦者)※タワンチャイが3度目の防衛に成功。  タワンチャイは“タイの神童”。2022年9月にケージ・OFGのONEムエタイでペットモラコットに判定勝利し、ONEムエタイ世界フェザー級王座を戴冠。その後、ジャマール・ユスポフ、ダビッド・キリアをサウスポーからの左の蹴りでTKOに下し、2023年10月にはナタウットに判定勝ちしている。12月にスーパーボンの挑戦を判定3-0で退け、2度目の防衛に成功した。  ナタウットは10歳でムエタイを始め、2013年にはアメリカへ渡って試合を行い、ラスベガスを拠点とする『LION FIGHT』で2階級を制覇。2018年4月にONEに参戦すると、ジョルジオ・ペトロシアン(2敗)、チンギス・アラゾフ、ジャマル・エスポフと強豪に敗れたが、2023年10月にスーパーボンの代打としてタワンチャイと対戦。判定で敗れるも右ストレートと右ローでタワンチャイを苦しめた。2023年12月にルーク・リッシに判定勝ちして連敗を脱出し、今回タワンチャイとの再戦に臨む。  1R、ナタウットはサウスポーのタワンチャイに右ミドルハイ、タワンチャイは左ミドル、左インローを蹴る。タワンチャイはナタウットの蹴りをキャッチするとすかさず左を打つ。ナタウットは得意の右ストレートを顔面とボディへ。タワンチャイはその右腕を殺すように左ミドルで腕を蹴っていく。ナタウットは左へ回り込みながら右ロー。  2R、ナタウットは右ミドルからの右ストレートのコンビネーション、タワンチャイは淡々と左ローと左ミドルを蹴る。得意の横蹴りのような前蹴りも。ナタウットの右を空振りさせての左ストレートを返すタワンチャイだが、ナタウットも右フックを返す。  3R、左ミドルを蹴っていくタワンチャイにナタウットの右ロングフックが伸び、ヒットを奪う。左目を気にするタワンチャイ。ナタウットは距離を詰めて右ストレートから左右フック、さらに右ストレート。またも右ロングフックから入っていくナタウット。タワンチャイの左ミドルはスウェーでかわして右ローを蹴り返す。前に出だすタワンチャイが左ストレート、左ヒジで逆襲に転じる。  4R、前に出て左ローと左ミドルを蹴るタワンチャイにナタウットは右フックを合わせにいく。組んでの首相撲でヒザを蹴るのはナタウット、両者ともヒジを打って離れる。そこでタワンチャイがすかさず左ストレート、続いて左ヒジを打つ。ここで勝負と見たかタワンチャイは左ミドルでナタウットの右腕を蹴り、左ストレートを打ってナタウットを下がらせる。ナタウットも足払いでタワンチャイをコカすが、右の威力が明らかに落ちている。  5R、前に出るのはタワンチャイ。スーパーマンパンチを放ち、右を打とうとするナタウットに左ミドルをヒットさせる。さらにワンツーも。ナタウットはヒザを突き上げて応戦するが、前へ出て行くタワンチャイがワンツー、ヒジ。下がるナタウットを左ミドルで追って当てるタワンチャイ。蹴られるとパンチを返すナタウットだが、タワンチャイほどの力強さがない。最後までタワンチャイが前に出て試合を終えた。  左目の下を大きく腫らしたタワンチャイだが、前回と同じ判定2-0でタワンチャイが勝利。3度目の防衛に成功した。インタビュー中にはブーイングが沸き起こるも「言いたいことはない。目は打たれた後はよく見えなかった。みんなを失望させたならごめんなさい。来てくれたファンのみんなありがとう」とファンに礼を言った。 [nextpage] ▼第8試合 ONEフライ級 キックボクシング 3分3R〇ロッタン・ジットムアンノン(タイ)[判定3-0]×デニス・ピューリック(カナダ/ボスニア・ヘルツェゴビナ) ロッタンは2018年3月にスアキムを破り日本でも名が知られるようになり、同年6月にRISEに初来日。那須川天心とRISE世界フェザー級王座を争い、延長戦の末に敗れるも那須川を追い詰めて一躍人気選手となった。同年9月からONEに参戦し、2019年10月にボルター・ゴンサルベスを破りONEムエタイ世界フライ級王座に就いた。同王座は4度の防衛に成功。  2023年9月、スーパーレックとのキャッチウェイト戦(当初はロッタンが保持するONEフライ級ムエタイ世界王座を懸けたタイトルマッチで行われる予定だったが、スーパーレックが体重超過したためノンタイトル戦となった)で判定負け。2024年1月のONE日本大会で武尊との激突が発表されるも、左手の負傷で欠場していた。戦績は270勝43敗10分。  ピューリックは2015年1月にK-1に初来日、卜部功也にKO負け。2022年5月の『ONE 157』でONE初参戦を果たし、シャーゾット・カブトフに判定負け。8月にタギール・カリロフに判定勝利、2023年5月にヨードレックペットにTKO負け、12月にニューイエンにKO勝ちと勝ち負けを繰り返し、2024年4月にジェイコブ・スミスに判定勝ちしてONEでの戦績を3勝2敗とした。ブアカーオが所属するバンチャメークジムでムエタイを学んだほか、テコンドー、空手、MMAの経験もある。  ロッタンは約1.4kgオーバーで体重超過、ハイドレーションテストもパス出来なかったが、ピューリックが約64.06kgのキャッチウェイト戦を受け入れたため試合成立。ロッタンはファイトマネーの25%をピューリックに支払う。  1R、ロッタンが左インローで先制し、右ローも蹴る。ピューリックはその蹴りをキャッチしてのハイキックを繰り出すがこれは反則。左右ローを蹴り、左ボディ、右ストレートを打つロッタンは、ピューリックの動きに合わせてバックステップやステップインで一定の距離を保つ。そのためピューリックの左右フックは空振りが目立つ。  ロッタンが左右フックをヒットさせるとピューリックはロッタンのお株を奪うように自分の頭を叩いて“もっと打ってこい”と挑発。ならばとロッタンは左右フック、左ボディを打ち込み、ピューリックの返しのフックは空振りさせる。近距離だがロッタンが一方的にジャブ、右アッパー、左フック当てる展開となりピューリックは左フックにグラつく。  2R、ピューリックのパンチをボディワークで鮮やかにかわしていくロッタン。逆にピューリックの攻撃がやむと右ストレート、ジャブを当てていく。左ボディから左フックのダブルも。ピューリックは左右フックに加えて左右のミドル。このミドルと左ローがロッタンを捉えるが、続くパンチが当たらない。  ロッタンはヒザ蹴りと前蹴り、左ボディとボディへ攻撃をまとめていき、下がるピューリックに左右フックで前へ出る。ピューリックも左右フックを返すが、ロッタンの左右ボディ連打でケージを背負う。  3R開始前、観客を煽るピューリック。左フック、ジャブから左右フックと前に出るロッタン。右ストレートは相打ち気味になるが、ピューリックの左右フックはかわしていく。空振りが目立つピューリックへロッタンはヒザを突き刺し、ジャブをボディと顔面に。前に出るピューリックだがやはり空振り、バックスピンキックは不完全ながら当たるが、バックハンブローは空を切る。ジャブと左フックで前へ出るロッタン。右フック、右アッパーを叩き込み、ピューリックが前へ出てくると下がって左ボディ。そしてすぐにヒザで前へ出るロッタン。ピューリックは諦めずに左右フックを放って前へ出るが、ロッタンはほぼ当てさせない。  試合終了のゴングが鳴ると、両者は正座して抱き合い、肩を組んでケージを一周する。この試合までロッタンをさんざん煽り、体重超過にも怒りのコメントをしていたピューリックだが、健闘を称え合った。  判定は3-0でロッタン。ピューリックは笑顔でロッタンと抱き合った。  マイクを向けられたロッタンは涙を流し、「前回の試合に敗れて今回計量オーバーしていろいろな不安があったが勝てた。サポートしてくれたみんなありがとう」とコメントすると、その場に泣き崩れる。そして「次は武尊と戦いたい」と武尊との対戦を表明した。 [nextpage] ▼第7試合 ONEバンタム級 サブミッション・グラップリング 1R10分〇マイキー・ムスメシ(米国)[1R 3分20秒 カーフスライサー]×ガブリエウ・ソウザ(ブラジル)  ONEサブミッショングラップリングフライ級王者のマイキー・ムスメシは階級を上げ、バンタム級サブミッション・グラップリングマッチで、かつて黒星を付けられたガブリエウ・ソウザと対戦。  両者は2021年9月の『Who's Number One Championships』ライト級1回戦で対戦。ムスメシはインヴァーテッドガードも、ソウザの頭を抱えてのパスガードにノースサウスチョークを極められている。その後、ONEでは今成正和、青木真也を極めるなど6試合で全勝。  レフェリーのハーブ・ディーンとも握手した両者。  1R、ダブルレッグテイクダウンのソウザ。下を選択したムスメシにケージまで押し込んで動きを制限するソウザ。  オモプラッタ狙いからまたいだソウザの足を伸ばしてマイキーロック、さらに外掛けのストレートフットロックのムスメシ。  その足を外側に畳んでバックからカーフスライサーへ。ソウザはアンクルホールドで反撃しているようにアクションするが、微動だにしないムスメシはカーフスライサーを極めたままバックからボディロックで絞り、タップを奪った。  3年ぶりにリベンジを果たしたムスメシは、ジューサー(ステロイド)への不満をまくしたてると、「彼は僕の家族のことや、いろんなことを言っていて許せなかった。7カ月くらい待ってステロイドを取っても試合しろと言っていた」と語ると、5万ドルボーナスを獲得。コーチに分配することを表明。  ここで、9月デンバーで2階級上のグラップリングで対戦するケイド・ルオトロがケージイン。  マイキーは「お金じゃないんだ。歴史を作るために戦う」とマイク。ケイドも「柔術の最高峰のレベルが見せられる」とコメントした。  マイキーは「ルオトロはナチュラルだ。彼ら兄弟は尊敬する。でもソウザは……」とあらためてガブリエルを批判した。 [nextpage] ▼第6試合 ONEライト級 MMA 5分3R〇ケイド・ルオトロ(米国)※MMAデビュー[1R 3分20秒 リアネイキドチョーク]×ブレイク・クーパー(米国)2-1  2022年のADCC世界選手権77kg級で史上最年少19歳で優勝&現ONEサブミッショングラップリングライト級王者(4度防衛に成功)のケイド・ルオトロが待望のMMAデビューを果たす。  対するONEライト級でハワイのクーパー一族のハードパンチャー、ブレイク・クーパーと対戦する。ケイドはケージMMAでもルオトロチンを極めるか。ケイドはコーンロウに髪を編み込んでケージイン。  1R、オーソのケイド、サウスポー構えのクーパー。グローブタッチから右ハイを見せたケイド。左ジャブを突く。さばくクーパーに右ハイも。二段蹴りのクーパー。右ローにすぐにケイドも右ローを蹴り返す。  組むケイドに差し返すクーパー。ケイドは左オーバーフックから離れ際に右ハイをガード上に当てる。クーパーの左ストレートをかわすケイドは右ミドル。  右をかわして首相撲ヒザ! さらに組んで脇潜りバッククリンチから引き込み。右腕で左肩を抱き、左腕に変えて首下に巻いてリアネイキドチョーク! 片腕で絞めながら右手でパウンドし、頭後ろで組んでチョークを極めた。  MMAデビュー戦で一本勝ちしたケイドは、兄タイ、コーチのタイラー・ウォンブルス、エリック・パーソンコーチらと握手。  5万ドルのボーナスを獲得すると、「思っていたほど自分の打撃は鋭くなかったけど、一本で勝てて良かった。兄やコーチに感謝したい。9月のマイキーとの試合はみんな期待しているだろう。マイキーはP4Pと言われているけど、サブミッションを取れるだろう。ボーナスはお金よりも周囲の影響が大きい。他界した祖父のロイドは僕ら兄弟が格闘技をすることに反対していたけど、いまはきっと誇りに思ってくれていると思う」と語った。 [nextpage] ▼第5試合 ONEフェザー級 キックボクシング 3分3R〇シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ/同級3位)[判定3-0]×野杁正明(日本/team VASILEUS)  野杁は2009年にK-1甲子園初となる高校1年生王者になり、“怪物”と呼ばれるようになった。圧倒的なテクニックと類まれなるセンスでプロ転向後すぐにトップクラス入りし、WBCムエタイ日本スーパー・ライト級王座、第2代Krushウェルター級王座、NDC -66kg王座などを獲得。2017年6月には日本人選手として初めてゲーオ・ウィラサクレックに勝利し、第2代K-1 WORLD GPスーパー・ライト級王者に。  翌年にはウェルター級に転向し、ジョーダン・ピケオーには敗れたもののその後は連勝。2021年9月の「第2代ウェルター級王座決定トーナメント」を全試合KOで制して2階級制覇。2021年のMVPを獲得した。2022年6月の『THE MATCH』で海人との国内頂上決戦に敗れるが、2023年3月にジャバル・アスケロフを1Rわずか2分でKOして復活。2023年7月にはアマンシオ・パラスキフを1RでKO。戦績は49勝(25KO)11敗。  シッティチャイはプロ160戦以上と鉄人的な戦歴を持つ現役のムエタイレジェンド。キックボクシングとムエタイを合わせ、世界王者に11回輝く。過去10年間に渡り、キックボクシングとムエタイで、最も圧倒的な強さを誇る選手の1人として評価を築き上げてきた。  ONEには2020年7月から参戦。2022年の「ONEフェザー級キックボクシングワールドグランプリ」では決勝へ進出するもチンギス・アラゾフに判定負け。2023年9月にモハマド・シアサラニに判定で敗れ、2024年1月の日本大会ではマラット・グレゴリアンにKO負けを喫して連敗中も決してあなどれない古豪だ。戦績は128勝(39KO)35敗5分。  1R、サウスポーのシッティチャイが左ミドルで先制すると野杁は三日月蹴りを返す。シッティチャイはジャブと左ロー、野杁は左ローをすぐに返す。前蹴りでシッティチャイを下がらせる野杁はサウスポーになって左ボディ。シッティチャイは下がりながらもワンツー・右ローを蹴る。  距離を詰めた野杁は左ボディと左ロー。シッティチャイはショートの右アッパーとヒザ。接近する野杁を前蹴りで突き放し始める。そして左ロー&左ミドル。やや距離が開くとシッティチャイは左ストレート。手数を出すシッティチャイに野杁は距離を詰めるが、シッティチャイは左アッパーも突き上げてくる。  2Rも左ミドルと前蹴りで野杁を突き放すシッティチャイ。野杁は左カーフと右の三日月を蹴って入っていくが、シッティチャイが右アッパーを突き上げる。左ボディからワンツー、そして左ミドルのシッティチャイ。野杁は左カーフを狙い撃ちにするが、シッティチャイが次々と攻撃を繰り出していく。  野杁が右ミドルから近づくとシッティチャイは左のヒザ。野杁も右ヒザを返す。シッティチャイが前蹴りから左アッパー、さらに右ヒザ。野杁が左右フックからの右ストレートをヒット。ジャブを打つシッティチャイにも右ストレートをヒットさせる。野杁はこの右に活路を見出したか、右ストレートを連続ヒットさせていった。  3R、シッティチャイの左ミドルに左カーフを合わせるオーソドックスの野杁。シッティチャイは左ミドルと左ヒザ、野杁は距離を詰めて右ロー。表情に疲労が見えるシッティチャイだが、左ミドルと前蹴り、ジャブ、左ボディストレートと長い攻撃。  野杁は右ストレートを当てて距離を詰めるが後が続かない。シッティチャイは下がって距離を作り、長い攻撃。野杁は距離を詰めて左フックもシッティチャイはクリンチ。離れるとワンツー、左アッパーのシッティチャイ。前蹴りを打つシッティチャイが左ボディストレート。組んだところで野杁がバランスを崩してヒザをマットに着いてしまう。  いらだちが見える野杁は距離を詰めていくが、シッティチャイは下がって距離を取ると長い攻撃を当てていった。終了のゴングが鳴ると、シッティチャイはガッツポーズ。野杁は不安そうな表情を浮かべる。  判定は3-0でシッティチャイ。試合巧者ぶりを発揮し、野杁のONEデビュー戦に黒星を付けた。野杁のセコンドに就いていた武尊は笑顔で勝者シッティチャイを称えた。 [nextpage] ▼女子アトム級 5分3R〇デニス・ザンボアンガ(フィリピン)2位[判定3-0]×ノエル・グランジャン(タイ/フランス)  女子アトム級2位のザンボアンガは、元チームメイトでアトム級王者のスタンプ・フェアテックスに挑戦予定も、スタンプが半月板断裂手術により欠場。2023年4月のジュリー・メザバルバ戦での判定勝ち以来の試合となる。  グランジャンはノーランカーの強豪。MMA5勝2敗で、黒星はDouble GFC女子ストロー級王者のキム・ソユル(8勝1敗)の三角絞めに一本負け。2024年5月の前戦で日本の澤田千優に判定負けを喫しているが、今大会で平田樹と対戦するビクトリア・ソウザには判定勝ちを収めている。女子アトム級の力関係が見えるサンボアンガ戦だ。  1R、ともにオーソドックス構え。左ジャブを起点にワンツーのザンボアンガ。グランジャンは左ロー、右を伸ばす。  ワンツーを打ち込むザンボアンガ。かわすグランジャンは左の蹴りも遠い。ワンツーの右をかすめるザンボアンガは右をヒットも、グランジャンも右を返して、前足を足払いでこかすも深追いせず。  すぐに立つザンボアンガは左ジャブから連打も近づいたグランジャンは首投げテイクダウン。しかし、頭を抜くザンボアンガはバックから両足フック。背後からパウンドし、リアネイキドチョークを狙う。  4の字ロックに移行からおたつロックに変えたザンボアンガはうつぶせになったグランジャンを絞めるがゴング。  2R、左ジャブを伸ばすザンボアンガ。グランジャンも左ミドル、左ローを当てる。ローを返すザンボアンガは、右ミドルハイ。長い左ジャブを伸ばす。  グランジャンは左右を連打し前進。金網背負わせるも組まず。ザンボアンガの右ボディストレートに、またも近づき首投げを狙うグランジャンだが離れると、ザンボアンガのワンツーをかわす。  圧力をかけるザンボアンガはワンツーの右。ザンボアンガの左ジャブを被弾するグランジャンに、左回りのザンボアンガ。右ミドルを掴んだグランジャンだが、ザンボアンガは足を抜く。  左ボディを突くザンボアンガを詰めるグランジャンだがとらえきれず。詰めて首を掴み大外刈狙いも外すザンボアンガ。  3R、左ローのグランジャン。前手は遠い。左ハイのグランジャンだが、連打はザンボアンガ。ワンツーから右ローまで繋ぐ。ジャブの刺し合いで勝るザンボアンガ。グランジャンは左ハイをガード上に。しかしザンボアンガも右ミドルハイ。グランジャンの突進をさばいてワンツー。  グランジャンは左ミドルを当てるが単発。ザンボアンガのワンツーの右を被弾する。バランスを崩したグランジャン。立ち上がり右を放つが、左の外に回るザンボアンガ。なおも詰めて組むが、切るザンボアンガは右ロー。さらにジャブ・ロー。  グランジャンは詰めて触るがクラッチまで行けず。右前蹴りも当てるザンボアンガは左から右バックフィストは空振り。  ジャブにアゴが上がるグランジャンは右オーバーハンドもかわすザンボアンガは右ストレート、シングルレッグの動きも見せて、マタドールのごとく左回りでジャブを突き、ゴング。  判定は3-0で2位のザンボアンガが勝利。同じくグランジャンを判定で下した3位澤田千優とのマッチアップは実現するか。1位にはハム・ソヒも控えている。 [nextpage] ▼第4試合 ONEライト級 MMA 5分3R〇エイドリアン・リー(シンガポール/米国)1勝0敗[2R 1分56秒 リアネイキドチョーク]×アントニオ・マンマレッラ(豪州)1勝1敗  元ONE世界女子アトム級王者で引退を表明したアンジェラ・リー、現ONEウェルター&ライト級世界王者のクリスチャン・リー、ONE女子アトム級で活躍したビクトリア・リーの弟のエイドリアン・リーが、ONE ChamlpionshipでプロMMAデビューする。  兄クリスチャンと同じONEライト級MMAマッチでの対戦相手はイタリアのアントニオ・マンマレッラ。プロMMA1勝の24歳。  アマチュアMMAで活躍し、待望のプロMMA戦に臨むエイドリアンは、亡き姉・ビクトリアについて「とても仲が良かった。歳も近くて何をするにも一緒だったから。自分が姉を尊敬していた理由のひとつは、その意志の強さだった。目標に集中していて、強い意志を持っていた」と言う。 「大きなトーナメントは、いつだって緊張するもの。けれども幸運なことに自分の兄姉全員はそうしたことを経験しているから、いつだって応援してもらえた。兄(クリスチャン)はあらゆる段階で自分を支えてくれた。主に、目標に集中し続けて気を散らさないように、ということを教えてくれたし、姉アンジェラは平静でいること、メンタルとフィジカルの両方の健康をちゃんと維持するようにってちょっと教えてくれた。  プロ転向は自分で決めたことじゃない。コーチの意見には関係なく、自分は転向する準備ができていた。チャンスがあれば飛びつく準備はできていた。プロになる準備は整ったとしばらく前から思っていた。けれども、コーチがちょうどいま、自分のスキルが仕上がったと信じてくれたんだ。だからプロとしてのキャリアを始めることにした」とMMAプロデビューの経緯を語る。 「いまはアントニオ・マンマレッラを倒すことしか考えていない。だが、その後はライト級チャンピオンになるつもりだし、もしかしたら2階級制覇だってするかもしれない。もちろん、これまでに出た試合の経験は、プレッシャーに立ち向かうのに役立つだろう。けれども、ただ自分のやってきたトレーニングを信じて、チャンスが訪れたときのために準備は万端にしておくつもりだ」と語っている。  1R、ともにオーソドックス構え。先に中央に出て左右から右で差して組んだリー。左小手から戻すマンマレッラに、リーは左差しでテイクダウン。  ハーフから右で差すマンマレッラに、リーは頭を押して右ヒザ! さらに中腰からパウンド、左右ヒザからアナコンダチョークへ。中腰になるマンマレッラに固めたままヒザ。  首を抜くマンマレッラに右ハイ。マンマレッラも右ローを返す。左ボディストレート。左ヒジを狙う。左右にステップしてダブルレッグテイクダウンはリー。  金網まで這って立つマンマレッラに、バッククリンチするリーは、サイドバックから左パウンド、ヒザ。ボディロックから大内刈テイクダウン!  休まず攻めて上になったリーはハーフから右パウンド、ヒジ連打ディープハーフのリーに、横三角絞めからキムラにとらえて背中に腕を回すもゴング。  2R、リーは右ストレートで詰めてボディロックテイクダウン。しかし立つマンマレッラに、四つから小外がけテイクダウン。バックを狙うが、正対したマンマレッラが下に。パウンドに背中を見せたマンマレッラにリーは左ヒザを連打し、バック。すぐに首下に腕を回しリアネイキドチョークを極めた。  クリスチャンとハグし、天を仰いだエイドリアンは、「兄と父無しにはここまで来れなかった。1Rで極めたかったけど、2Rでもよかった。ゲームプラン通りには行かなかったけど、この瞬間を待っていた」と語り、5万ドルのボーナスを獲得した。 [nextpage] ▼第3試合 フライ級 ムエタイ 3分3R×ジョハン・ガザリ(マレーシア/米国)[判定0-3]〇ニューイェン・トラン・デュイ・ニャット(ベトナム)  ガザリは2023年2月の『ONE Friday Fights 6』から出場し、タイ人を相手に3連勝(2KO)、10月の『ONE Friday Fights 36』ではテミルラン・ベクムルザエフ(ロシア)もKOし、12月の『ONE Fight Night 17』に出場するとエドガー・タバレス(メキシコ)にも1RでKO勝ちとONEで5戦全勝。“NEXTロッタン”と呼ばれる期待のニューフェイス。  ニャットはベトナムの武術タン・ジャー・クエンを幼い頃から学び、ムエタイではアマチュアで数々のメダルを獲得。2012年3月にプロデビューし、2019年9月からONEに参戦。2連勝を飾ったが、2023年12月のデニス・ピューリック戦でKO負けを喫して初黒星。また、ラウェイで2戦2勝、MMAで4戦全勝のレコードも持つ。  1R、ジャブ&右ローで前に出てプレッシャーをかけるガザリ。近づくと左フック、右ストレートを繰り出す。ニャットは右ローと右ストレート。両者とも思い切り左フックを振って豪快に空振り。ガザリは“もっと前へ来い”とばかりにゼスチャーを見せ、頭を下げての左右フックを繰り出して前へ出る。ニャットも負けじと打ち返す。ケージを背にしてジャブを突くニャットだが、思い切りのいいガザリは構わずパンチを繰り出す。  観客を煽るガザリ。2R、前に出ようとするガザリに右インローを蹴るニャット。ガザリは前蹴り、左ミドルと蹴りを多用するようになり、右ストレートを伸ばしていく。そこへローを合わせるニャット。これにガザリは左足が流れ始めるが、自らの足を叩いて“もっと来い”とアピール。さらにケージ中央で手招きして誘う。ニャットの左フックにバランスを崩すガザリ。ジャブを突き、ハイキックやバックハンドブローにつなぐニャットが盛り返したラウンドに。  3Rも左インローを蹴るニャットは、ジャブから右ロングフックを繰り出す。それでも前に出るガザリはニャットのローに右縦ヒジを合わせようとする。ガザリの圧に下がり続けるニャットにレフェリーからアグレッシブの注意が与えられた。思い切り左右のフックを振り回すガザリだがヒットは奪えず、ニャットの返しのパンチをガードの上ながらもらってしまう。さらにローも。  ガザリはケージに登り、マレーシアとアメリカの国旗を広げてアピールも判定に不安そうな表情は隠せない。判定は3-0で3Rにしっかりと攻撃を当てたニャットが勝利を手にした。 [nextpage] ▼第2試合 ONEアトム級 MMA 5分3R×平田 樹(フリー)[1R 1分31秒 ギロチンチョーク]〇ビクトリア・ソウザ(ブラジル)  柔道出身の平田は、2019年にONEでプロデビューを果たし、MMA5戦無敗から2022年3月の『ONE X』でジヒン・ラズワンと対戦し、スプリット判定でプロ初の黒星。2023年8月には体重超過もあったがリン・ホーチンに勝利。しかしその後はハム・ソヒ、三浦彩佳に連敗して戦績を6勝3敗としている。  ソウザは、MMA7勝2敗。ブラジルのGladiator CFで5連勝後、2021年9月のONEでヴィクトリア・リーに2R TKO負け。以降は地元で1R TKO勝ちで再起を果たすと、2023年2月のONEでインドネシアのリンダ・ダローに判定勝ち。2024年3月にはノエル・グランジャンに判定負けを喫した。  グランジャン戦の1Rに右を受けてダウンを喫したソウザだが、2R以降は右ロー、右ストレートの打ち返しで盛り返しており、初黒星を喫したリー戦でもリーの三角絞めやギロチンを極めさせない防御力を見せている。これまで一本負けは無い難敵ソウザを相手に平田は、全局面で上回ることできるか。  プロ初の連敗を喫した平田は、ONEで1勝2敗のソウザとの生き残りをかけた戦いに向け、「初めてのタイでワクワクしているし、やっぱりここで勝たないと次に繋がらないと思うので、しっかり勝つので、U-NEXTで応援よろしくお願いします」とメッセージを送っている。  1R、ともにオーソドックス構えで平田は右ローから。左ジャブ、左ローでけん制のソウザ。ガード高くパーリングする平田は、ジャブの刺し合い。右フック、右ローを見せる。  ソウザは左ハイから右ローの対角の蹴り、さらにジャブのダブル、ワンツーを打ち込む。平田は右ローを返し、右フックを振るが遠い。  遠間から崩しなくダブルレッグに入る平田。切るソウザは、クローズドガードに入れてアームインギロチンチョークに! 座る平田は首を抜こうとするが、足の力が抜けて、91秒、失神した。「勝たなければいけない相手」に一本負けで平田は3連敗に。 [nextpage] ▼第1試合 バンタム級 ムエタイ 3分3R〇ジョハン・エストゥピニャン(コロンビア)[判定3-0]×ザファー・シャイック(トルコ)  エストゥピニャンは3月の『ONE Friday Fights 64』で大森弘太(弘・センチャイジム)に初回27秒でKO勝ちしての本戦デビュー戦。アマチュアムエタイのIFMAで金メダル。戦績は23戦全勝で、MMAでも1勝1敗の戦績を持つONE期待のニューフェイス。 シャイックは3月の『ONE 166』でウラジーミル・クズミンに判定負けしての連続出場。テコンドー黒帯。  1R、まさに「躍動する」という動きを見せるエストゥピニャンはサウスポーから左ミドル、前蹴り、左ストレート。オーソドックスになって左アッパーのフェイントから右ロングフックを打ちぬくとダウンを奪う。シャイックはヒザ蹴りに右フックをもらって2度目のダウン。シャイックは右ストレートのカウンターを狙うが、エストゥピニャンは左右に構えをスイッチして異常に伸びるストレートを当てていく。シャイックはクリンチでこのラウンドをしのいだ。  2R、サウスポーのエストゥピニャンはジャンピングハイキック、蹴りをキャッチしたシャイックに左フックを連打する。伸びる左ストレートから右ハイキック、シャイックはあくまでも冷静に右ミドルのカウンターを蹴る。一気に距離を詰め、なおかつ伸びるパンチを打つエストゥピニャンにシャイックはジャブを突いていく。  3R、蹴りからパンチ、パンチから蹴りへとつないで前に出るエストゥピニャン。右アッパーから左ストレート、左右フックと強打を見せる。そして左ボディストレートから右ボディを打つとシャイックは後退。すかさずボディにパンチを集中させるエストゥピニャン。シャイックはほとんど手が出なくなったが、ヒジを狙う場面も。残り10秒、シャイックが意地で左右の連打を繰り出して前に出た。  スイッチの多用と左右どちらでも強い攻撃が出せ、なおかつ変則的なリズムでパンチと蹴りをつないでくるエストゥピニャンが判定3-0で勝利し、24連勝をマークした。
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