10年前、韓国格闘技は焦土化していたけど──
──ところで、32歳の今になって、週2日4時間をかけて釜山の大学院に通って体育学を学んでいるというインタビューを見ました。なぜ、通うことにしたのでしょうか。
「(日本語で)分からないです(笑)。4時間かけて大学院になぜ通っているんだろう。妻が妊娠をしたとき、彼女はちょうど博士課程で博士号を取ろうと勉強していたときでした。しかし出産することで学業を断念しなくてはいけなくなりました。妻の夢は博士号を取って、ひとかどの看護師になることだった。でも出産でその夢が絶たれた。ぜひ夫である私に、『自分が叶えきれなかった夢を叶えてほしい』と説得されて通うようになりました」
──通ってみて、これまで気づかなかったことや、いまのMMAに活きていることはありますか。
「大学院に行った人はみんな分かると思いますが、論文をたくさん読みます。大学院の勉強の基本は論文を書くために論文を読むことのくりかえし。たくさん読んでいます。そのなかで役に立ったのは減量です。何が必要かの知識をたくさんの論文から得られました。コンディションの管理、体調管理にもさまざまな知識を得られた。3、4年前は得られなかった知識を大学院に入ったことで読むことができて知識を得られたことは収穫です」
──今回の日韓対抗戦では、韓国代表です。いまの韓国の格闘技選手のレベルをどう考えますか。
「高校生のとき──わずか17年前くらい。日韓の格闘技の試合があると韓国の選手は日本の選手の餌食で、来るたびに負けていました。韓国に日本選手が来ると、焦土化していた。圧倒的に日本の選手が強かったわけです。ROAD FCに久米鷹介選手(※同日29日にPANCRASEで粕谷優介と対戦)がいらっしゃったときも、やはり大会を焦土化していました。そのとき唯一全敗を防いでくれたような存在がナム・ウィチョル選手でした。そんな歴史もあります(※実際には10年前でも佐藤将光、田村一聖、手塚基伸、山上幹臣ら実力者が韓国勢に黒星を喫している)。
日本が7、8で、韓国が3、2。このくらいの力関係だったと思います。今は贔屓目にみて5:5。ただ、日本のほうが格闘技インフラが整っていて大きいので、それを考慮すると日本が6で韓国が4くらいではないかと思います。私自身は客観的にものを見ることができると自負しているので、一番の大きな違いはインフラ。日本の格闘技のインフラは大きく整っている。同じアジアなのにこんなに違うのか、というのはあります。でも韓国もかなり追いついてきているとは思っています。ほぼすぐそこまで近づいているのではないでしょうか。
ただ『日韓対抗戦』と言われているけれど、私はあくまでも韓国を代表する選手ではなくキム・スーチョル個人、いち選手として来ています。私の目的はあくまで中島選手を叩きのめすこと。そのために来日しています」
──ドライに聞きますが、韓国ソウル大会を榊原CEOが示唆しています。もしそうなればあなたがメインイベンターに相応しいと思います。そのことについてどう考えますか。
「ドライに答えますが、私はあまり頭が良くないのであまり先のことは考えられません。今は、ひたすら中島太一選手のことで頭がいっぱいです」