MMA
インタビュー

【RIZIN】キム・スーチョル「中島選手のパワーは脅威的」「日韓の実力差は」「妻の夢を叶えるために大学院に」「入場で全力疾走する理由は──」

2024/04/29 05:04
 2024年4月29日(月・祝)東京・有明アリーナ『RIZIN.46』に出場する全選手の個別インタビューが27日、都内にて行われた。休憩明けの第6試合から第8試合までは「日韓対抗戦」 として3対3のRIZINvs.韓国戦が行われる。  大将戦では、韓国の雄・キム・スーチョルが、元PANCRASEバンタム級王者の中島太一と対戦する。スーチョルはMMA21勝7敗1分で、2022年9月に扇久保博正に判定勝ち後、Bellatorとの対抗戦ではRIZIN代表としてフアン・アーチュレッタと戦い、スプリット判定で惜敗した。以降、ROAD FCで3連勝中だ。  これまで日本人に敗れたことが無いスーチョルは、2023年10月の前戦『ROAD FC 066』63kgトーナメント決勝でも、原口央を2R TKOに下している。  そんなスーチョルが、大将として参戦する対抗戦前に語ったこととは? キム・スーチョル個人、いち選手として中島選手を叩きのめすために来た ──試合前の心境を教えてください。 「いまとても幸せです。このRIZINの大会に出られて嬉しいですし、呼んでいただけたということに感謝しています。嬉しくて飛んでいきそうな気持ちです」 ──RIZIN4戦目で日本のファンも増えています。日本のファンの応援をどう感じていますか。 「ほんとうに感謝しています。これほど日本で応援してもらえるとは思っていませんでした。驚きでいっぱいです。これだけ応援していただいているからには、もっといい試合をしなくていけないと思っていますし、もっとファイト溢れる試合をしたいと思っています」 ──中島太一選手の印象を。 「とても強い選手だと思います。気持ちが強い。ロシアで試合をして、日本でタイトルマッチを戦い、RIZINでも戦っている。その過程を見ていると本当に大変で体力的にも疲弊すると思いますが、彼は決して疲れない。その姿に感銘を受けました」 ──どんな試合展開になると考えていますか。 「まずは、打撃をまともに食らってはいけないと思っています。それは一撃も許すまいと意識しています。ジャブなどパンチも非常に強いということ、グラップリングも大変強い選手で、フェザー級から落としてきた彼のパワーは脅威的だと思っています。強さをよく分かっているので、この試合だけは──今までの試合も大事じゃないわけじゃなかったけど──この試合だけは何よりも“勝ち”が重要だと考えています」 ──「何よりも勝ちが重要」と。パワフルで打撃やグラップリングにも強さを感じている中島選手にどういう勝ち方が理想的でしょうか。 「全ての面で圧倒しようと考えています。パワーでもそうですし、フィジカルも、パンチ、グラップリング、全てにおいて圧倒して勝ちたいと思っています」 ──スーチョル選手はスタミナにも自信があるのではないかと思います。 「(日本語で)ありがとございます。ただし油断は禁物と思っています。たった1%の勝率でも相手に与えない。それを成し遂げるために今回、RIZINの試合に臨むことになりました」 ──「日本人には負けたくない」というのがある? 「(日本語で)ぜんぜん違います。日本だからというのは全くありません。私は、キム・スーチョルという個人です」 ──ところで入場がいつも全力疾走なのは? 「試合前というのはいつもすごく緊張する。毎回“負けたらどうしよう、こわい”そういうことを考えています。“そのまま故郷に帰るのかな、妻や息子の前で僕は倒れて負けてしまうのかな”とか、いろいろな良くないこと、後ろ向きなことを考えてしまうんです。そういったすべて打ち消すために、入場で全力疾走しています」 ──早く戦いたいからかと。 「早く戦いたくて──その理由もありますけど、もともとシャイなんです。人に注目されるのが苦手で、みんなが僕を見ていると思うといたたまれなくなります。それで耐えられなくて全力疾走しているというのもあります」 ──試合プランは? 「“初めから最後まで圧倒的に勝つ”というプランを既に立てているし、全ての情熱、全ての闘志を、最初から最後まで圧倒して勝つということに注いでいます」 [nextpage] 10年前、韓国格闘技は焦土化していたけど── ──ところで、32歳の今になって、週2日4時間をかけて釜山の大学院に通って体育学を学んでいるというインタビューを見ました。なぜ、通うことにしたのでしょうか。 「(日本語で)分からないです(笑)。4時間かけて大学院になぜ通っているんだろう。妻が妊娠をしたとき、彼女はちょうど博士課程で博士号を取ろうと勉強していたときでした。しかし出産することで学業を断念しなくてはいけなくなりました。妻の夢は博士号を取って、ひとかどの看護師になることだった。でも出産でその夢が絶たれた。ぜひ夫である私に、『自分が叶えきれなかった夢を叶えてほしい』と説得されて通うようになりました」 ──通ってみて、これまで気づかなかったことや、いまのMMAに活きていることはありますか。 「大学院に行った人はみんな分かると思いますが、論文をたくさん読みます。大学院の勉強の基本は論文を書くために論文を読むことのくりかえし。たくさん読んでいます。そのなかで役に立ったのは減量です。何が必要かの知識をたくさんの論文から得られました。コンディションの管理、体調管理にもさまざまな知識を得られた。3、4年前は得られなかった知識を大学院に入ったことで読むことができて知識を得られたことは収穫です」 ──今回の日韓対抗戦では、韓国代表です。いまの韓国の格闘技選手のレベルをどう考えますか。 「高校生のとき──わずか17年前くらい。日韓の格闘技の試合があると韓国の選手は日本の選手の餌食で、来るたびに負けていました。韓国に日本選手が来ると、焦土化していた。圧倒的に日本の選手が強かったわけです。ROAD FCに久米鷹介選手(※同日29日にPANCRASEで粕谷優介と対戦)がいらっしゃったときも、やはり大会を焦土化していました。そのとき唯一全敗を防いでくれたような存在がナム・ウィチョル選手でした。そんな歴史もあります(※実際には10年前でも佐藤将光、田村一聖、手塚基伸、山上幹臣ら実力者が韓国勢に黒星を喫している)。  日本が7、8で、韓国が3、2。このくらいの力関係だったと思います。今は贔屓目にみて5:5。ただ、日本のほうが格闘技インフラが整っていて大きいので、それを考慮すると日本が6で韓国が4くらいではないかと思います。私自身は客観的にものを見ることができると自負しているので、一番の大きな違いはインフラ。日本の格闘技のインフラは大きく整っている。同じアジアなのにこんなに違うのか、というのはあります。でも韓国もかなり追いついてきているとは思っています。ほぼすぐそこまで近づいているのではないでしょうか。  ただ『日韓対抗戦』と言われているけれど、私はあくまでも韓国を代表する選手ではなくキム・スーチョル個人、いち選手として来ています。私の目的はあくまで中島選手を叩きのめすこと。そのために来日しています」 ──ドライに聞きますが、韓国ソウル大会を榊原CEOが示唆しています。もしそうなればあなたがメインイベンターに相応しいと思います。そのことについてどう考えますか。 「ドライに答えますが、私はあまり頭が良くないのであまり先のことは考えられません。今は、ひたすら中島太一選手のことで頭がいっぱいです」
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