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2024年4月19日(金)19時からABEMA格闘チャンネルにて配信の優勝賞金300万円『格闘代理戦争-THE MAX-』の準決勝に向け、「本命」の呼び声高い中村京一郎(EXFIGHT)と岡見勇信監督(&中村倫也監督)に、決戦直前の話を聞いた。
1回戦では、上限69kgのキャッチウェイトで中村は、BreakingDownでも活躍した秋山成勲推薦のミスター・ホンデを、ノーモーションのカウンターの左ストレートでダウンさせてパウンドアウト。非公式試合ながら、5連続1R KO勝ちで、準決勝進出。
対するサトシ&クレベル推薦のギレルメ・ナカガワ(ボンサイ柔術)は、1回戦で鶴屋怜推薦のストライカー諸石一砂(THE BLACKBELT JAPAN)をテイクダウンからボンサイ仕込みの三角十字に極めて、40秒一本勝ち。アマチュアMMA戦績を11勝(9フィニュシュ)無敗としている。
準決勝で激突する優勝候補同士の大一番に向け、中村は「MMAだったら、柔術青帯の僕が黒帯の選手にも勝てることを証明する」と語った。
現代MMAで柔術だけで勝つのは、ちょっと厳しい
――1回戦の試合前の中村京一郎選手のテンションに、戸惑いも感じていた岡見監督ですが、秋山成勲監督のミスター・ホンデに1R KO勝ちで、不安も払拭されましたか。
岡見 そうですね。京一郎は特に、僕とは違うものを持っているので、格闘技の向き合い方であったりとか、試合への入り方であったりというのは僕と真反対な部分がやっぱりありましたね。
中村 まだですよ。岡見さんのレベルまでまだいってないので。
岡見(苦笑しながら)こういった(リアリティーショーの中での大会配信の)舞台って、なかなかいつものプロのイベントとは違うものがあったので、僕も『格闘DREAMERS』以来、かなり久々だったので、僕自身もちょっと不安もあったんですけど、そこを試合・内容ともに全部払拭してくれて、もう何も言うことないような試合をしてくれたので、やっぱり違うんだなと。そこらへんは本当素晴らしいなと思いました。
――中村選手の動きは、脱力していて終始余裕があったように見えました。ご自身ではどうだったのですか。
中村 プランが2、3個あって、2R目の後半くらいからちょっとペースを上げようかなと思っていたところの1R目があんな感じでヒットしたので、自分でも予想していなかったサプライズの部分もあり、結構みんなに言っているんですけど、あれは“たまたま”だなという感じはします。決めようと思ったパンチじゃなくて、力を抜いて出したのが一番良かったのかなと」
――あのノーモーションの左ストレートのフィニッシュについては、岡見監督はどのようにご覧になりましたか。
岡見 プランでは1Rはしっかり様子を見ながら、距離感を測りながらいこうと。2R目にどんどん勝負していこうという話はしていたので、1Rのあの展開の中からあのフィニッシュというのはあまり予期していなかった部分はありましたね。相手のホンデ選手が結構、振ってくると思ったので、そこに付き合わないように、という話だけはしていたんですけど、あの左を合わせる時点ですごいなと感じましたね。
中村 (動画を見ながら)見えていましたね。まあでも相手はMMA初戦ですから。逆によく試合をしてくれたなというところもあります。
――中村選手は試合ごとに様々な局面で強さを増して、そして身体自体の強さも感じますが、それは最近になってなのか、海上自衛隊の頃から、元々の身体の強さがあったのでしょうか。
中村 最近ですね。アマチュアとプロデビュー戦のときまでは、本当に好きなことしかやっていなかったというか。
――プロデビュー戦ということはPOUND STORMでの狩野優戦も?
中村 あの時もパンチでいけんだろ、みたいな感じでやっていて組みの動きも知らずに、今思えば格闘技をなめてましたね。今はパーソナルトレーナーを2人入れて、ムーブメントトレーニングも含めてやっているので、ちょっとずつ、その成果が出てきたのかなという感じはありますね。
――2戦目以降は4試合連続1Rフィニッシュ勝利。岡見監督から見て、その成長をどのように感じていますか。
岡見 京一郎が話したとおり、パーソナルトレーニングも2人のトレーナーの方に身体を見ていただいて、自分のルーキー時代とは随分違いますね。僕らの頃はやっぱり重たいものを持ち上げてとか、スクワットとか腕立てとかがメインで。
──それでも人を使った補強運動などは、力になっていたと思いますが……。
中村 今はもっとサイエンスですよね。フィジカルとムーブメントの両方をやっていますから。
岡見 ムーブメントなど、身体の科学的な動きに加え、彼の場合、精神面のメンタルトレーニングもやってる。自分も興味があって、学ぼうとは思っているんですけど、中村倫也とか、彼らはもう今この時点ですごくたくさん勉強していている。本当に勉強熱心というか、新しいものにどんどんトライするのは時代の違いというか。情報がたくさんある中で、しっかりといいもの・自分に合うものを持ってきているなと思いますね。
――計量・フェイスオフでは、ギレルメ選手に比べて大きさを感じました。
中村 まあ、ギレルメ選手が小さいので。
――そのギレルメ選手ですが、これまでに中村選手が戦った相手の中に、いないタイプではないでしょうか。
中村 そうですね。あそこまで柔術に特化したというか、五角形で見たら寝技の柔術だけグーッて抜きん出ているような感じは初めてなので。いまも岡見さんと話していたんですけど、現代のMMAではクレベル選手やサトシ選手が特別なだけで、柔術だけで勝つというのはちょっと厳しいんじゃないですか。
打撃もあって“ボペガー”はいいんですけど、それしかできないはちょっとウィークポイントになっちゃっているのかなという。サトシ選手も、この間、中村K太郎選手にハイキックで倒したりとか、打撃を進化させている。そこがないとちょっと僕には勝てないかなという感じはありますね。
――シャーウス・オリベイラがツァルキヤンに敗れる、あの絶対の極めを持ってしても。
岡見&中村 そう!
中村 あれだけ打撃も出来るオリベイラが、下からの強い仕掛けを持っていても漬けられる、というなかでMMAで寝技に特化するのは、無理がある。
――とはいえ岡見監督、柔術の実績ではギレルメ選手を上回るトミー矢野選手の1回戦を見ると、ギレルメ選手の方がMMAの動きとしての完成度は高いように見えました。
岡見 それはもう本当に想定していて、ギレルメはやっぱりクレベル選手、そしてサトシ選手を見て育ってきているので、彼ら2人はもちろん打撃をしっかりこのMMAにアジャストして、柔術をさらに生かしてきているので、ギレルメが打撃をしっかりやってくるというのも想定内です。
ただ、彼の一番の武器は柔術。そこはもう変わりようがないので、打撃は京一郎の土俵と自信を持って言えるのでいかに──必ず彼は組みにくるので、そこはもう間違いないというなかでしっかりと対策して、組みをディフェンスして、京一郎の土俵である打撃に持っていくか。もしギレルメが“打撃でもやれる”と“喧嘩”してくれるなら、それが一番嬉しいです。
――ギレルメ選手の打撃はどう見ていますか。
中村 映像もあまりないし、その部分ではこれからの選手だと思っているので、その見えない部分が試合で一番楽しいところですよね。全部、分かっちゃっても……。たぶん試合って、やっぱり予期せぬことが起こるものだと僕は思っていて。
――その見えない部分が楽しい?
中村 はい。「全部予想通りだったな」となると、勝っても消化不良じゃないですけど、「用意してきたのがこんなにあったのにな」という気持ちになります。
――まだプロ5戦の選手とは思えない言葉ですね……。
岡見 京一郎と話してると、僕の発想にないことをどんどん言ってくるんです。さっきも話してたんですよ。「ギレルメ選手は喧嘩も打撃もガンガンくる可能性あるぞ」って。そうしたら京一郎が……。
中村 ギレルメ選手って口数けっこう少ないじゃないですか。だから“喧嘩ファイト”がたぶんできないタイプなんですよ。手数もやっぱ少ないので。
岡見 「口数が少ないと手数が少ない」がリンクしてるって、初めて聞いたなと。
中村 やっぱりMMAやってるときもいち人間なんで。どんだけMMAのときにこう羽織っていても、最後に自分って出ちゃうので。たとえばクレベル選手は口でもピットブルと喧嘩したりするじゃないですか。だからやっぱり“喧嘩スタイル”も出来る。
――でも、ギレルメ選手はポルトガル語のときはもっと口数が多くなるそうです。だからもしかしたらそういう秘めたものを持っているかもしれない。
中村 でもポルトガル語でも声、小っちゃいですよね。
――ああ、たしかに。打撃では口数が少なくても、寝技では雄弁なのが、今のところの彼にとっての喧嘩スタイルなのかもしれない。ところで、もう1つの準決勝・中谷優我(監督:青木真也)vs.トミー矢野(監督:イゴール・タナベ)はどう見ていますか。
中村 やるってなったら別にどっちでもいいですけど、自分は70パーセントくらいトミーだと思っています。ただやっぱり青木さんが持ってるので、“青木ワールド”があるんじゃないのかなという。
――対戦相手としてはどちらが来てもいいと。
中村 そうですね。どっちと戦いたいというのもないです。
――岡見監督は?
岡見 僕は中谷選手が来るんじゃないかなって思っています。相性的に中谷選手がテイクダウンして、トミー選手に極めさせず、上を取り続けてという可能性もあるんじゃないかと。
中村 トミーくんが背中つけて安心しちゃうというか、柔術の気持ちのまま下から作っていくという試合になると、やっぱり3分なので、判定だとジリ貧になっちゃうなというイメージもあります。トミーくんが勝つんだったら、上取ったほうがいいですよね。
――なるほど。さて、このトーナメントの中で、正直言って、中村選手がプロの戦績で抜けているのは確かです。その中村選手があえてこの『格闘代理戦争』に出て示したいことはなんですか?
中村 いま僕も普通にトレーニングの一環として柔術をやっていて(YAWARA柔術)、プロのMMAファイターは青帯スタートなんですけど、ギレルメ選手は黒帯じゃないですか。トミー選手が上がってきても黒帯。中谷くんも柔道ベースという格闘技経験があって、黒帯というランクづけの中で、MMAだったら、柔術青帯の僕が黒帯の選手にも勝てるというのをまず見せたいのと、青帯だから駄目とかじゃなくて、みんなも人生の中で頑張るものを一つ、最初から無理って決めつけないでやればできるということを見せたいかなと思います。それはABEMAさんの発信力の力を借りて示したいところではあります。
岡見 今回、京一郎の『格闘代理戦争』出場は、本当縁が重なったというか、いろいろな意味で、ちょうど試合がない時期に、そして次をどうするか、というときにこの話がきて、全てが繋がってきているなと感じます。ここをしっかり勝ち上がって、また次の舞台へという形で、さらにステップアップしていきたいなと。今回の経験は大きな経験になると思います、この『格闘代理戦争』は。
――1試合ごとに。
中村 そうですね。こんな月1トーナメントで3カ月って、内臓疲労もあると思うし、なかなかたぶん今後のキャリアでもないと思うので。
岡見 そうだね。もう最後だと思うので、今回の形は。
――先ほどの会見では、今回の『格闘代理戦争』優勝のオプションとして追加された、7月28日『超RIZIN.3』への出場権獲得について「1回戦終わってから出て来た話なんで、プランに無かったというか、自分の行きたいステージとは違う」と語っていました。行きたいステージというのは?
中村 もちろんUFCに行きたいんで“行きたい”というか、行くので。『Road to UFC』に出るのもそうですし、ちゃんとやればUFCに行けるのは分かってる。UFCに行って勝つことが大事なんで。入るだけなら何の意味もない。それ(RIZIN出場権)は、最初から優勝特典としして出ているのと、後出しなのはちょっと違う。他の選手はみんな『モチベーションになっている』と言っていましたけど、“いや、そっちか”みたいな。あと『超RIZIN』でも「オープニングファイト」っていうのが……。せっかくRIZINの舞台、しかも久々のさいたまスーパーアリーナでのスタジアムバージョンで試合できるというのは経験になるだろうから、やるならちゃんとやりたいし、UFCに行く前に“予防接種”を受けるのはいいかなとは思います。
――岡見監督はどんな試合を期待しますか?
岡見 まず勝つ、これだけですね。トーナメントなのでもう優勝するのが一番なので、どんな形でも勝つ。それしかないです。