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【ONE】マリキンがデ・リダー下し、三階級制覇! タン・カイがタン・リーをTKO、ブルックスが豪快スラムも反則スパイキングで王座陥落、ブラーがまさかのイエローカード3枚で失格、鈴木真治が本戦初登場でダウン奪いズーハオ降す、山北渓人がブルドッグチョークで一本勝ち!

2024/03/01 21:03
 2024年3月1日(金)、カタールのルサイル・スポーツアリーナにて『ONE 166: Qatar』(U-NEXT配信)が開催された。 ▼ONE世界ミドル級選手権試合 5分5R×ライニアー・デ・リダー(オランダ)※ミドル級王者[3R 1分16秒 TKO]〇アナトリー・マリキン(ロシア)挑戦者 ※ヘビー&ライトヘビー級王者※マリキンが三階級制覇  メインイベントでは「ONE世界ミドル級(※93kg)王座戦」(5分5R)として、王者ライニアー・デ・リダー(オランダ)に、現ヘビー&ライトヘビー級二冠王者のアナトリー・マリキン(ロシア)が挑戦する。  両者は2022年12月の『ONE FIGHT NIGHT 5』「ライトヘビー級王座戦」で対戦し、マリキンがデ・リダーを右フックでKOしてライトヘビー級のベルトを奪取している。  ミドル級王者デ・リダーはブラジリアン柔術黒帯のグラップリング能力を武器に、プロデビューから16戦全勝。アウンラ・ンサンと2度対戦し、2020年10月のミドル級王座戦で一本勝ち、2021年4月のライトヘビー級王座戦で判定勝利を収め、2本のベルトを手にしている。ミドル級王座は2度の防衛に成功し、2022年2月にONE世界ウェルター級王者キャムラン・アバゾフ、7月に元ミドル級王者のビタリー・ビグダシュを退けている。2022年12月の階級を越えたマリキン戦がMMA初黒星だった。  リマッチとなる今回の試合に向け、デ・リダーは自身のジム「コンバット・ブラザーズ」にオープンドア・ポリシーを導入し、オランダのブレダのジムに欧州の強豪MMAファイターが集う環境を作ってきたという。  会見では、「この試合のために1年間、毎日練習してきた。今回はもう少し謙虚になろうと思っている」と、前戦の反省を活かしてミドル級王座戦を戦うとした。  対するマリキンはMMA13戦全勝で、判定勝ちが一度も無い(9KO・4一本)フィニッシャー。2022年2月のONEヘビー級暫定王座決定戦でキリル・グリシェンコを2R KOで下し、暫定王者に。2022年12月にデ・リダーを初回 TKOでライトヘビー級王座も獲得。2023年6月にヘビー級正規王者のアルジャン・ブラーとの統一戦で3R、ブラーを打撃で圧倒し、がぶりから引き倒してパウンドアウト。ヘビー級統一王座獲得で二階級を制覇している。  今回のミドル級でのデ・リダーとの再戦に向け、プーケットのタイガームエタイで「プロキャリア史上、一番ハード」な事前特訓をしてきたという。その強化は打撃ではなく「組み技」。  公式インタビューに「今回はレスリングに集中した。デ・リダーがレスリングを仕掛けてくるのは間違いない。フリースタイル・レスリングに力を入れてきたから、自分をテイクダウンするのはそう簡単じゃない。それに、柔術にも取り組んだ。そして有酸素トレーニングとして水泳を新たに採り入れた」ことを明かしている。  その結果、カーディオも高まり、打撃にもいい影響が出てている。 「シャドーボクシングやサンドバッグを使った練習では、自分が恐ろしいと思うくらい。スピードもパワーもあり、自分はタフだと感じているし、やる気も高まっている」  会見では、「金曜日の準備はできている。3本目のベルトを獲りに行く。前と同じように彼をノックアウトする。この機会に感謝している。金曜日にここに来て、自分の力をみんなに見せることができるなんて、言葉では言い表せないくらい興奮している。3本のベルトだ。この右手を見てくれ。この右で、彼は金曜日に眠りについてしまうだろう」と、右の強打で三階級制覇を成し遂げると予告した。  1R、オーソドックス構えのマリキンに、サウスポー構えのデ・リダーは前蹴り、左ハイからヒザと繋ぐ。右のダブルで詰めるマリキンは右を当てる。組んで右で小手に巻くデ・リダーに、クリンチボクギングのマリキン、頭をつけてデ・リダーにいい組み手で組ませない。  突き放してスタンド。右ジャブ&右カーフでマリキンをこかしたデ・リダーはラッシュに行くが、体勢を戻したマリキンは足払い、右フックで押し戻す。組んで右で差すデ・リダーだがマリキンは右ヒザを突く。シングルレッグへ。デリダーは右で差すが、差し返したマリキンがヒジ・ヒザ。デ・リダーは右ハイ、マリキンは右ボディ打ち。右カーフに再びマリキンは体勢崩す。  2R、左フック、右ボディで詰めるマリキン。デ・リダーは組んでのヒザ、シングルレッグもマリキンは切って下のデ・リダーには付き合わず。マリキンの右の打ち終わりにシングルレッグ。組みヒザも断ち切るマリキンは、打撃でボディ打ちから顔面と打ち分け、右アッパー! 軸を揺らしながら凌ぐデ・リダーの左右の腹を突いて右! グラ突くデ・リダーはケージを背にし続ける。マリキンは詰めてクリンチアッパーを突く。  3R、圧力をかけるマリキンに、デ・リダーはシングルレッグ。しかし、スプロールするマリキンはデ・リダーを潜らせずにグラウンドヒザ! デ・リダーの下からの腕十字もかわして体を離して右の蹴り。レフェリーがブレークもデ・リダーは立てず戦意喪失。そのままマリキンのTKO勝ちとなった。  マリキンの腰と両肩に3本のベルトがかけられると、マリキンは「僕の夢は現実のものとなった」と歓喜。座り込んでいたデ・リダーを引き起こすと、「この男はレジェンドだ。タフだった。笑顔を見せてくれよ」と称えた。最後に5万ドルを獲得し、マット上で側転。最後はマット中央で大の字になって、妻と勝利を噛みしめた。 [nextpage] タン・カイがタン・リーとの再戦でTKO勝ち ▼ONE世界フェザー級王座統一戦 5分5R〇タン・カイ(中国)正規王者[3R 4分48秒 TKO] ※右ストレート→パウンド×タン・リー(米国/ベトナム)暫定王者※タン・カイがフェザー級統一王者に  2022年8月の『ONE 160』以来の再戦。前戦ではタン・カイがタン・リーを判定3-0で下し、中国人男性初のONE王者となっている。  タン・カイは2022年3月のキム・ジェウン戦で強打を爆発させて1R KO勝ち、ONE6戦無敗でタン・リーに挑戦すると、4Rに左フックでダウンを奪って判定勝ちで新王者となった。しかしその後、タン・カイは負傷のために欠場が続き、今回が1年7カ月ぶりの復帰戦となる。  対するタン・リーは、2020年10月にマーティン・ニューイェンを3R TKOでベルトを巻いた。当時、ONE5戦無敗でタン・カイの挑戦を受けたが、判定負けで王座陥落。その後、タン・カイの負傷欠場もあり、2023年10月にイリヤ・フレイマノフと暫定王座決定戦を戦い、1R、内ヒールフックを極めて一本勝ち。暫定王者となった。  正規王者のタン・カイは、会見で「初の中国人(男子)MMA世界王者になれたことを誇りに思うし、今週の金曜日にはタン・リーとの再戦に勝つつもりだ。カタールという国を愛しているし、ここにいることを誇りに思っている。金曜日の夜、タン・リーを相手に、そしてファンのために壮大なショーを見せるよ」と、王座統一に自信。  さらに今回のタン・リー戦に向けて練習環境を変えてきたという。 「我々の新しいコーチはロシアのダゲスタン出身で、シンプルで実践的な戦闘スタイルに重点を置いている。打撃からグラウンドへのシームレスな移行は、ロシアの戦い方の強さだ。ファンのみんなには、完全にアップグレードされた、別の自分を見てもらえることを願っている」  ライアン・ホール仕込みのタン・リーの足関節についても「僕も常に万全の準備をしてきたし、もちろんヒールフックを理由に戦略を変えるつもりはない。それはあまり重要ではないと思う。ヒールフックはそれほど複雑ではなく、誰でもできるから」と問題ないとした。  王座戦の5Rに向け、「挑戦者として5R戦い抜くのは普通のこと。プロの格闘家にとって最も重要なことは勝つことだ。勝つことだけに集中したいし、もちろん勝つための最善の方法は早めにゴールすることだ。まばたきしないでほしい、一瞬で彼をKOする」とタン・カイは語っている。  対する暫定王者タン・リーは会見で「みんな、僕が花火を持ってくることは分かっているはずだ。勝利したときの100パーセントのフィニッシュ率は全く下がっていない。俺たちにはやり残したことがある」とコメントした。  また、公式インタビューでは、「前回の試合は、タン・カイとそのチームが練り上げた素晴らしいゲームプランと、この数年で最悪だった自分のパフォーマンスと意思決定の結果が組み合わさったものだった。今回は、リマッチが組まれるまで時間がかかった。自分にとってはゲームプランを練り上げる時間をとりとれた。まったく違った試合になるだろう。  1回目の対戦ではこうすべきだった、というような戦いを披露するのが楽しみだ。試合はフィニッシュ決着になるだろう。自分のキャリアでは、もう判定には持ち込みたくないんだ。全力で攻め込んで、プレッシャーをかけていく。タン・カイは試合序盤から自分のパワーを感じることになる。正直に言おう。1Rで終わらなかったら驚きだ。なぜなら彼は試合の序盤で眠らされるからだ」とリベンジに絶対の自信をのぞかせている。  1R、サウスポー構えのタン・リーは細かいステップ。オーソのタン・カイが中央を取り、タン・リーは左ミドルでけん制。スイッチしての右ストレートもまだ遠い。互いに手数が少なく「アクション」の声がレフェリーからかけられる。 圧力を詰めてタン・リーの頭を下げた動きに右の蹴りを狙うタン・カイ。右ボディストレート、リーの入りに左フックを狙う。タン・リーは左ミドル、足を取りに行く動きも見せて前蹴り。膠着気味の展開に両者にイエローカード。再開。タン・カイが右を大きく振ると右ボディストレートも。タン・リーは左の攻撃。その前足にローを打つタン・カイにリーは左で前に出てヒザを突く。  2Rも中央を取るタン・カイに、サークリングするタン・リーは左ストレート、右サイドキックを遠間から見せる。タン・カイは右ボディストレート、右から左フック、左右のローをタン・リーの前足に突く。タン・リーはダブルレッグも、切るタン・カイは圧力を強め前に出る。そこに左ミドルはタン・リー。タン・カイにサイドキック、その前足に関節蹴りを打つ。喧嘩四つで前手を触り合い。タン・カイの左後ろ廻し蹴りは空を斬る。  3R、タン・リーが右関節蹴り、左のミドルをダブルで突くタン・リー。タン・カイは右ボディから左フックと繋ぐが、両者ともに被弾を警戒し、2人にイエローカードが出される。タン。リーは左ストレートから左ミドルにタン・カイも右ミドル、左ローの蹴り返し。タン・リーの右フックに左フックを狙う。さらにタン・カイは右ミドル、じりじりと詰めるなかで、頭を下げて入るフェイントから、角度をつけて踏み込んで右! 後方に倒れたタン・リーにパウンド連打で試合をフィニュシュした。 [nextpage] ブルックスがバックを奪い頭から落とすスパイキングで「失格」に ▼ONE世界ストロー級選手権試合 5分5R×ジャレッド・ブルックス(米国)王者[1R 0分56秒 DQ]〇ジョシュア・パシオ(フィリピン)挑戦者  2022年12月の『ONE 164』以来の再戦。  ブルックスは、PANCRASEで活躍後、一階級上のUFCフライ級で2勝2敗。2019年12月の『BELLATOR JAPAN』で、越智晴雄に判定勝利。2021年11月にONEに初参戦すると、リト・アディワン、箕輪ひろば、ボカン・マスンヤネを撃破しランキング1位に浮上。当時の王者ジョシュア・パシオに判定勝ちし、新王者となった。  パシオは、ウーシューやムエタイをベースに2018年9月に内藤のび太を破りONE世界ストロー級王座を戴冠。2019年1月に猿田洋祐に判定負けで王座陥落したが、同年4月のダイレクトリマッチでKO勝利し王座奪還。2021年9月に猿田と3度目の対戦でKO勝利。3度の防衛に成功している。その後、『ONE 164』でジャレッド・ブルックスに判定0-3で敗れ、王座陥落した。  ONEストロー級MMA世界王者のジャレッド・ブルックスは、会見で 「前回、ジョシュア・パシオにはかなり(決定的に)勝ったと思っている。ジョシュア・パシオの名前が完全に消え、僕が史上最高のストロー級選手になるまで、何度でも何度でもやり直したい。僕はストロー級の“GOAT”なんだ。みんな、僕のハングリー精神とONE Championshipでの目標を過小評価している。今、僕はジョシュア・パシオに誰が一番かを見せるためにここにいる。彼をノックアウトして終わらせたい。今度こそ仕留める」と、前回とは異なりフィニュシュを予告した。  また、公式インタビューでは、「今、僕はゾーンに入っている。僕を止めるものは何もない。準備が整ったところです。“もし”も、“しかし”も無く、顔を殴る準備はできている。僕は注目を集めるためにここにいる。初めて5万ドルのボーナスをもらうために来たんだ。誰も僕を倒すことはできない。この男が何を持って来るのか、僕はすでに知っている。彼は角度を工夫してさらに攻撃的な態度をとろうとするだろう。でも僕にはその準備ができている」と、王座防衛の準備は出来ているとした。  その後のビッグプランまでブルックスは、描いている。 「僕はデメトリアス・ジョンソンとの試合が欲しい。僕たちはサイズ、身長、スピードにおいて非常に近い。そして僕たちはレスリングにとても熱心でキックでも人々を驚かせる。だから、非常に興味深い戦いになると思う。僕は何年も彼を研究してきたけど、彼には僕のような嵐を引き起こす準備ができていないと思う」と、“DJ”が持つフライ級王座も狙うと予告した。  対する元ONEストロー級MMA世界王者のジョシュア・パシオは、11連勝後のブルックス戦の敗戦後、2023年10月にマンスール・マラチエフに判定勝ち。今回の王座挑戦の権利を得た。 「正直なところ、僕は今マニラにいるような気分だ。フィリピン人がたくさんいる。どの国で試合をしても、フィリピン人が多いんだ。ONE Championshipの選手の一人であることは、世界で最も偉大で大きな格闘技団体に所属していることで、それを誇りに思う。ここで試合をすることで、次の世代にインスピレーションを与えるために、神がこのプラットフォームに私を置いてくれたのだと思う。夢があるなら、それを追いかけなさい──フィリピンの皆さん、私が今週の金曜日に黄金のベルトを持ち帰ることを期待していてください」と、王座奪還への意欲を語った。  1R、試合前に予告した通り、ジョシュアの大コールのなか、先に中央を取るパシオ。パシオのローの打ち終わりにブルックスは素早く組んでスタンドバック、ワンフック。背後を取られながらもアームロックを狙うパシオを持ち上げて頭から落としてパウンド。パシオは動けず。ケージに登ってガッツポーズのブルックスだが、ハーブ・ディーンが降りてきたブルックスに反則だと説明。  ブルックスの頭から落としたスラムが反則の「スパイキング」にあたり、ブルックスは「DQ(DisQualified)」で失格に。抗議していたブルックスだが、両肩を落として顔を歪ませた。倒れていたパシオは意識を戻し、病院へ直行したことがアナウンスされている。 [nextpage] ブラーがまさかのイエローカード3枚で失格 ▼ONEヘビー級 5分3R×アルジャン・ブラー(インド)※元同級王者[3R 4分15秒 失格] ※消極的な戦いでブラーにイエローカード3枚〇アミル・アリアックバリ(イラン)  元UFCのブラーはONEヘビー級前王者。インド系カナダ人でレスリングカナダ代表としてロンドン五輪出場。ONE2戦目で王者マルロン・ヴェラをKOして王座獲得も、欠場中に暫定王者となったアナトリー・マリキンと2023年6月の王座統一戦で3R KO負け。37歳。 アルジャン・ブラー「名誉とともに戦う」 「これはハヌマーンのガダだ。インド文化のチャンピオン・レスラーに贈られるものだ。伝説のレスラー、ダラ・シンから勝利の後に贈られたものだ。その血統を代表し、これを携えて戦いに臨むことは、私にとって大きな名誉だ」  元RIZINのアリアックバリは、グレコでイラン代表として世界選手権金メダル獲得。ドーピングの出場停止を経てMMAに転向し、RIZINでは5勝1敗。唯一の黒星はミルコ・クロコップ戦でのKO負け。ONEではカン・ジヨンとアナトリー・マリキンに敗れるも、そこから3連勝。元王者のブランドン・ヴェラも2022年12月に1R TKO。2023年7月の前戦では、ダスティン・ジョインソンを同じく1R TKOに下している。36歳。 元RIZINのアリアックバリは、グレコでイラン代表として世界選手権金メダル獲得。ドーピングの出場停止を経てMMAに転向し、RIZINでは5勝1敗。唯一の黒星はミルコ・クロコップ戦でのKO負け。ONEではカン・ジヨンとアナトリー・マリキンに敗れるも、そこから3連勝。元王者のブランドン・ヴェラも2022年12月に1R TKO。2023年7月の前戦では、ダスティン・ジョインソンを同じく1R TKOに下している。36歳。 アミール・アリアクバリ「誰とでも戦える」 「私は贖罪の道を歩んでいる。目の前の相手なら誰とでも戦える。カン・ジウォンとは来週でも戦えるし、その直後にアナトリーと戦うこともできる。  今回は、私にとってこれまでのONEで最大の試合だ。我々は2人ともレスラーで、ブラーの身体能力は彼の最大の強さの源だ。それが私が彼を殴るのを難しくするかもしれない。しかし、もし彼のレスリングが使えなければ、彼のスキルセットには限界があり、多くのことはできないだろう。勝者はONEヘビー級王座挑戦に値すると信じている」  1R、ともにオーソドックス構え。大きな右を見せるブラー。アリアックバリの右ストレートをかわす。左ジャブ、右ボディを突くアリアックバリ。左前手のフックも。さらにワンツーで前に出るが、バックステップでかわすブラー。アリアックバリは左ハイをガード上に当てる。両者に膠着の注意。右アッパーから左に繋ぐアリアックバリ。ここもかわすブラーにさらに右を突く。  2R、「次の膠着はイエローカードだぞ」とハーブ・ディーンレフェリーに警告される両者。右フックで前に出るアリアックバリに、やはりバックステップでかわすだけのブラーにイエローカード(20%減点)が出される。  前に出るアリアックバリは右アッパー。左。サークリングするブラーに右アッパーから左フックも、指が入ったか右目を気にする。アリアックバリの左フックも空を斬るなか、右ストレート、左フックで前に出るアリアックバリ。右ボディも。  左ジャブの刺し合いはアリアックバリ。ワンツーの左・右を当ててスリーフォーで前に。ここも下がってサークリングするブラーに、ハーブ・ディーンは2枚目のイエローカード。それでもブラーは手が出ない。  3R、アリアックバリの左から右アッパーがローブローとなり、パンチによるローブローで中断も再開。左で飛び込むアリアックバリに右を狙うブラー。アリアックバリの左右は遠く、ブラーはバックステップでかわす。左から右で組むアリアックバリだが、ブラーも脇をしめて突き放す。アリアックバリの前進をさばくのみのブラーについに3枚目のイエローカード=レッドカードが出され、終了のゴング。消極的な戦いを続けたブラーは「失格」となった。 [nextpage] ▼ボクシング キャッチウェイト (147ポンド)3分3R×ズハイール・カハタニ(サウジアラビア)[判定0-3]〇メディ・ザトゥー(アルジェリア) ズハイル・アル=カハタニ(WBC中東チャンピオン・プロボクシング9戦無敗) 「このような機会を与えてくれたカタール当局に感謝したい。私たちは歴史を作っている。歴史を作り、自分の目標や目的を達成し続けるよう鼓舞する。私はサウジアラビア人初のボクサーであり、サウジアラビア人初のWBCタイトルを獲得した。そして今、私はここカタールで歴史の一部となり、歴史を作っている......そして私は新しい世代を鼓舞したい」 ザトゥーはムエタイ&キックボクシングで120戦のキャリアを持ち79勝をあげている40歳。WBCムエタイ王座、ISKA世界王座を獲得した。ONEには2018年から参戦し、6試合(3勝3敗)を戦った。2022年10月のONEでエイサー・テン・パウを初回TKOに破り、ボーナスを獲得して引退スピーチを行ったが、今回現役に復帰。ボクシングはデビュー戦となる。  両者ボクシングシューズを履いてのケージでのボクシングマッチ。  1R、カハタニはスタンス広く低く構え、左右にスイッチ。ザトゥーはジャブを突きながらじりじりと前へ出て行く。ボディへジャブやストレートを伸ばすザトゥー。頭を下げるザトゥーにカハタニは左右フックを打ち込む。ノーガードになって挑発するカハタニがワンツー、ザトゥーは右フックを返すがカハタニがノーガードで余裕の表情。ザトゥーのワンツーはカハタニが頭を下げてかわす。  2R、カハタニはマウスピースを付け忘れて一時中断。低く頭を下げるカハタニにザトゥーは左右を見舞っていくがなかなかヒットは奪えない。カハタニが組み付いてきたところに右手でクリンチしながらの左フックを連発し、カハタニが倒れたためダウンに。ノーガードで挑発するザトゥーはカハタニのパンチをかわしてみせる余裕ぶり。  3Rもノーガードで「ここを打って来い」と挑発するザトゥー。カハタニは左右フックで入り込もうとするが、ザトゥーには届かない。頭を低くしてパンチを振り回すカハタニに、ザトゥーは余裕でかわしてカハタニの真似をしておちょくる。  判定は3-0でザトゥーの完勝。本職のプロボクサーを翻弄して見せるという結果となった。 [nextpage] ▼キャッチウェイト (67.02kg)ムエタイ 3分3R×ザファー・シャイック(トルコ)[判定0-3]〇ウラジーミル・クズミン(ロシア)  クズミンは2022年2月にONE初参戦。クリス・ショーに判定勝ちし、7月にムアンタイにスプリット判定負け、11月にジョナサン・ハガティーに2-0で判定負けと惜敗したが、2023年11月にファビオ・ヘイスから判定勝利を収めた。シャイックはONE初参戦。  1R、サウスポーのクズミンは軽快なステップを踏みながら、サイドキック&左ロー、左ミドル。空振りが続いたシャイックはクズミンが前に出るところにパンチを合わせる。首相撲になるとクズミンがイニシアチブを握る。出入りも速いクズミンがパンチのコンビネーションを繰り出し、シャイックがクリンチで止めたところでラウンド終了。  2R、サウスポーながら左へ回り込むクズミン。シャイックは顔面前蹴りで後退させるが、クズミンはオーソドックスになると左ミドルと前蹴りで対抗。シャイックはテコンドー仕込みの後ろ蹴りを繰り出すが、これはクズミンにバックステップでかわされる。クズミンワンツーを綺麗に打ち抜いてダウンを奪う。クズミンは組み付き際にヒジ、首相撲からのヒザ。シャイックはハイキックを繰り出すが空振り、クズミンは左右にスイッチしながらステップを踏み、入り際にヒジを打つ。  3R、前に出るシャイックが左右フック、クズミンは右アッパーを交えたコンビネーションで対抗する。シャイックの右ストレートに右ミドルを合わせるクズミン。シャイックが右フックを放ち、クズミンが左インローで崩して両膝がマットに着いた状態で、クズミンが顔面へのヒザ蹴りを見舞ってしまい反則でイエローカード(減点1)。再開後、後ろ廻し蹴りの一発を狙ったシャイックだがこれか空振り。クズミンが前蹴りでシャイックを転倒させる。ジャブ、前蹴り、ワンツーでシャイックを突き放して戦うクズミン。  ダーティープレイはあったものの、ダウンを奪ったクズミンが判定3-0で2連勝を飾った。 [nextpage] ▼ONEフライ級 サブミッション・グラップリング 10分1R×オサマ・マルワーイ(イエメン)[5分31秒 腕十字]〇クレベル・ソウザ(ブラジル) オサマ・マルワーイ「中東には才能がある」 「僕は世界最高の選手と練習している。ご存知のように、僕のヘッド・インストラクター、アンドレ・ガウヴァオン、ルオトロ兄弟もそうだ。サブミッションで勝つ自信がある。カタールのドーハで初の歴史的イベントに参加できることは、僕にとって大きな意味がある。世界最大の格闘技プロモーションが中東にやってくるということは、中東には才能があるということだ」  1R、王座にマイキー・ムスメシがつくフライ級サブミッショングラップリング戦。  スタンドレスリングから挑む両者。2度目のシングルレッグでテイクダウンはソウザ。下のマルワーイの足関節にソウザも足を掴んで内ヒールへ。ヒザを抜くマルワーイ。ソウザも踵を取りに。回転して両足をつっこんだソウザにマルワーイはクロスヒールへ。互いに足を抜く。  パスガードの圧力は強いソウザ。再びリバースデラヒーバを狙うマルワーイに、ソウザはパスを狙い腕十字も、足を入れて腕を伸ばさせないマルワーイ。ソウザは両足を越えてマウント、後ろ三角から右腕を十字に極めた。 [nextpage] ▼キャッチウェイト(62.48kg) ムエタイ 3分3R×ザカリア・ジャマリ(モロッコ)[2R 0分51秒 KO]※左フック〇アリ・サルドエフ(ロシア/タジキスタン)  ジャマリはムエタイのほかにボクシングで4勝1分の戦績を持ち、サルドエフはキックボクシング(4勝無敗)とMMA(3勝無敗)の二刀流ファイター。  当初はフライ級で行われるはずの試合だったが、サルドエフが前日計量1.3kgオーバーでキャッチウェイト戦に変更となった。  1R、サルドエフが右ローを放ち、ジャマリが前に来るところへ鋭い左テンカオを突き刺す。前に出るジャマリはアグレッシブにパンチを繰り出し、右ショートストレートでダウンを奪う。距離を詰めてくるジャマリに飛びヒザ蹴り、前蹴りで反撃するサルドエフ。サウスポーのサルドエフに対して左へ左へとポジショニングし、左フック、右ストレートでサルドエフを追い詰める。サルドエフは左テンカオや左ボディでボディを攻める。ボディを嫌がり始め大振りになるジャマリにサルドエフが左フックを叩き込み、ダウンを奪い返す。  2R、開始と同時に激しく打ち合う両者。サルドエフは左ボディを打ちつつ、ワンツーを打つ。その左ボディからの左フックでダウンを奪うと、ジャマリは座ったまま立ち上がる素振りを見せず、サルドエフのKO勝ちとなった。大喜びのサルドエフはケージに登り、ケージの上に立ち上がって勝利を喜んだ。 [nextpage] ▼バンタム級 ムエタイ 3分3R〇鈴木真治(日本)[判定3-0]×ハン・ズーハオ(中国)  鈴木は2005年にプロデビューし、40戦以上のキャリアを持つベテラン選手。様々な団体に出場してトップ選手と拳を交え、2018年11月に開催されたシュートボクシング世界トーナメントS-cupでは決勝進出を果たしている(決勝は棄権)。ヒジ打ちやローキックを駆使する粘り強いファイトが持ち味。2022年から2023年4月にかけて行われた「ROAD TO ONE ムエタイ」ウェルター級トーナメントで優勝した。  2023年9月の『ONE Friday Fights 32』では、タイのスーブラック・トー・プラン49に2R、左アッパーでKO負けを喫している。  対するハン・ズーハオは、ONEでモハメド・ビン・マムードをKOに下すと、アダム・ノーイ、ビクター・ピントに判定勝ちで3連勝をマーク。しかし、2022年9月にフェラーリ・フェアテックスに判定負けすると、2023年4月にエイサー・テン・パウに3R TKO負けで2連敗。  先に再起を飾るのは鈴木かハンか。  1R、ズーハオはジャブと前蹴りを伸ばして距離をとるが、鈴木はガードを固めて前に出る。圧をかけながら左右ローをしっかり当てていき、ジャブをフォローする。ジャブ、ワンツーを見せてけん制し、左右ローを蹴っていく鈴木にズーハオはジャブを出すが鈴木はバックステップでかわす。鈴木が左フックをヒットさせてラウンド終了。  2R、ジャブを突いて右をフェイントしてからの左フックで鈴木がダウンを奪う。これで前に出てくるズーハオが左フックを狙う。鈴木はズーハオのパンチをよく見てかわしての左右ボディ、ズーハオがパンチで前に出てくると下がって間合いを一度外し、また前に出る。ズーハオの左ボディに同じ左ボディを2発入れる鈴木。ズーハオは前へ出て右ヒジを繰り出す。  3R、左インローを蹴ってズーハオの前進を止めにかかる鈴木。ズーハオの右をブロックしてからの右を叩き込む鈴木だが、ズーハオは怯まず前へ出て右を顔面とボディへ打つ。右ボディストレートを多用するズーハオの右に鈴木は鼻から流血。ジャブ、右ミドル、前蹴りで距離をとろうとする鈴木にズーハオはどんどん前へ出て右を当てようとする。鈴木も右フックを返す。ズーハオの右に後退する鈴木へズーハオはヒジと右ストレートを打って行く。  最後は逆転を狙うズーハオに押された鈴木だが、判定は3-0で鈴木が勝利。本戦初出場で初勝利を飾った。 [nextpage] ▼ONEストロー級 MMA 5分3R〇山北渓人(日本)124ポンド(56.24kg)/1.0083[1R 4分04秒 ブルドッグチョーク]×ジェレミー・ミアド(フィリピン)124.25ポンド(56.35kg)/1.0036  ONE初開催となるカタール大会では、3つの世界王座戦=再戦のほか、ストロー級で山北がジェレミー・ミアド(フィリピン・計量パス)と対戦する。  第3代ストロー級キング・オブ・パンクラシストの山北は、フリースタイルレスリング出身。2023年3月にONEに初参戦し、強豪アレックス・シウバに判定勝ち。2024年1月28日のONE日本大会でONEストロー級2位のボカン・マスンヤネと対戦したが、マスンヤネのパワー&フィジカルに引き込む形になった山北が、ガードからの仕掛けを潰されて判定負け。プロMMA9戦目にして初黒星を喫した。27歳。  対する長身のミアドは、MMA10勝6敗。キックボクシングをベースに、2019年11月からONE4連続KO勝利を飾るも、2023年6月にロシアのマンスール・マラチエフにダースチョークで一本負けすると、11月にリト・アディワンとの再戦でリヴェンジを許す判定負けで2連敗中。31歳。  わずか1カ月弱のインターバルで再起戦に臨む山北は、本誌の取材に「前回ももっとレスリング勝負すればもっといい動きが出来た。自分から積極的にテイクダウンを狙う」と語った。  1R、ともにオーソドックス構え。先にワンツーを突く山北。左ミドルも。遠間からの最初のシングルレッグは切られた山北だが、2回目で金網に詰めて尻を着かせる。送り手を掴んでバックテイクする山北だが、ミアドは手首を外して正対して離れる。  ミアドは左ジャブ、山北は右を振って前足の足首を掴んでテイクダウン。立ち際にすぐにバックテイクも足はかけずにミアドの右手を両足で縛り腹固め。  右手を抜いたミアドがうつ伏せになると、山北は首を掴んだまま後転、亀になるミアドにブルドッグチョーク! 金網を支点に蹴りながら絞り、ミアドからタップを奪った。
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