2024年2月17日(日本時間18日朝8時)、米国カリフォルニア州アナハイムのホンダセンターにて『UFC 298』(U-NEXT配信)が開催される。
メインイベントでは「UFC世界フェザー級タイトルマッチ」(5分5R)として、王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキー(豪州)に、同級3位のイリア・トプリア(ジョージア/スペイン)が挑戦する。
(C)Zuffa LLC/UFC
ヴォルカノフスキーはフェザー級の“絶対王者”。2019年12月にマックス・ホロウェイに判定勝ちで豪州出身初のUFC世界王者となると、5度の防衛に成功。2023年には2階級制覇を狙い、2度ライト級王者のイスラム・マカチェフのベルトに挑戦している。
対するトプリアは、MMA14勝無敗。うち12勝がフィニッシュと高い決定率を誇る。デイモン・ジャクソン、ライアン・ホール、ジャイ・ハーバート、ブライス・ミッチェルをいずれも2R中にフィニッシュすると、2023年6月の前戦でジョシュ・エメットに判定勝ち。ジャッジ1者が5Rで最大8P差をつける圧勝劇を見せた。
前日計量では、ともに144.5ポンド(65.54kg)でパス。
本誌では、ドイツで生まれ、ジョージアでレスリングを学び、スペインでMMAに出会ったトプリアのルーツと、いかにヴォルカノフスキー戦に向かうのかを聞いた。
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スペインでグレコローマンレスリングを続けたくて母が見つけてくれたジムで、MMAに出会った
──UFC6連勝でフェザー級タイトルマッチにたどりついたトプリア選手です。あなたがいまスペインでMMAを行うまでいろいろな話があって直にお伺いしたいのですが、ご両親はジョージア出身ですよね。
「そう。両親がジョージア出身でドイツに移っていて、自分が生まれたのはドイツで6歳まで育った。それからジョージアに戻って、最終的に両親と一緒に15歳の時にスペインへ移ったんだ。だから過ごした時間としてはスペインが一番長くて、スペインで育ったと言えるかな。いろんな国と関わりがあるけれど」
──グレコローマンレスリングはどのタイミングで始めたのですか。
「ジョージアにいる頃だよ、8歳の時から」
──スペインに渡ってクリメントジムに入ったきっかけは?
「完全に偶然的なことなんだ、お母さんがジムを見つけてくれて。そこで今も練習しているんだよ。スペインに渡ってからというもの、グレコローマンレスリングを続けたかったんだけれど、スペインにレスリング文化っていうのがなくて。お母さんが長年レスラーだった人と知り合って、僕たちがグレコローマンレスリングを続けられるようなジムはないかを尋ねてくれたんだけれど、彼はブラジリアン柔術と、MMAのコーチだった。かつては空手とか柔道しか教えてなかった場所に柔術を持ち込んだクリメントコーチたちは、スペインMMAのパイオニアだった。それをきっかけにたまたまそのジムに行くことになったんだ」
──それがホルヘとオグスティン・クリメント兄弟だったわけですね。トプリア選手について「11年間、面倒見てきた。最初はパスガードもできずに大会に出てたのに今じゃすごい」と感心していました。
「スペインには有名なMMAファイターというのはあまりいなかった。僕のコーチたちはスペインでもパイオニアのような存在だから、すごく刺激を与えてくれたよ。その後も僕自身はUFCを観て、たくさんの選手を勉強して、ジョゼ・アルドや、ジョルジュ・サン=ピエール、アンデウソン・シウバ、そういったファイターたちがとても刺激を与えてくれたんだ。そういうこともあったから、一生懸命このスポーツを追いかけていられたし、必死にトレーニングしていられた」
──トプリア選手のようなトップランカーだと、北米に拠点を移す選手が少なくありません。トプリア選手がいまでもスペインで練習しているのはご自身のことをコーチたちが一番知っているからでしょうか。
「そうだね。正直言ってスペインで暮らすことが何より快適だから。ホームだと思えるからなんだ。世界中を旅して回った上でそう思ってる。それにスペインで練習し続けていても十分だと思える練習環境が整っている。ボクシングやBJJ、レスリングといった全てにおいてハイレベルな練習が出来ている。だから実際のところ、居心地がいいからだね」
(C)Zuffa LLC/UFC
──今回、同じ大会に出場するジョージア出身のメラブ・ドバリシビリ選手とも練習をされているようでしたね。
「もちろん! メラブとは幾度となく練習させてもらってる。とてもいい関係だよ。ファイトキャンプを手伝いに来てくれたことがあったんだ。それでたくさん一緒に練習して、すごくいいトレーニングキャンプだった。彼のテイクダウンはすごいからね。今回、ともにいい試合で勝てればと思っているよ」
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僕が全局面において彼に優っていると思う
──さて、いよいよ王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーとのタイトルマッチです。5Rの王座戦に向けての準備はいかがですか。
「自分はまず、とても健康状態も良くて、力を感じているし、パワフルで、とても精緻で、18日に勝利を手にする準備が整っている状態だよ。すごくハードなトレーニングキャンプを過ごした。いつものプロフェッショナルなものだ。対戦相手(ヴォルカノフスキー)について研究したり分析したりも丁寧にやってきた。だから準備万端だよ」
──お兄さんのアレクサンドル・トプリア(MMA5勝1敗)選手もクリメントジムにいるのですよね。
「その通りで、メインのトレーニングパートナーはいつも兄なんだけれど、今回はありがたいことにグラム・クタテラーゼ(MMA12勝4敗・UFCライト級1勝2敗)をトレーニングパートナーに迎えることができたんだ。それからペペ・トーレス(MMA7勝1敗)ともいっぱい練習してきた」
──クタテラーゼはマテウス・ガムロに勝ち、ダミル・イスマグロフにスプリット判定負けという実力者です。スペインでもそういったジョージアMMAコミュティが協力しあっているのですね。
「そうだね。それだけじゃなくて、たくさんの人たちがこのキャンプで自分をたくさん支えてくれたんだ」
──今回対戦するヴォルカノフスキーを分析・研究してきたということですが、そのヴォルカノフスキーの直近の試合はイスラム・マカチェフ戦でした。大会11日前のオファーを受けたヴォルカノフスキーの2度目のマカチェフ戦はどれだけ参考になるでしょうか。むしろあなたが想定しているのは、マカチェフとの初めて戦ったときのヴォルカノフスキーを今回想定しているでしょうか。
「マカチェフvs.ボルカノフスキー2はちょっと分析の対象にするのは難しくて、彼はキャンプを張っていたわけでもない緊急参戦で全然準備が出来ていなかったから。だからあの試合から情報を得ようということは考えなかったよ。ほかのたくさんの試合から読み取るべきことがたくさん得られた。もちろん。マカチェフvs.ボルカノフスキー1は、判定まで行ったからかなりディテールを見ることができたね」
(C)Zuffa LLC/UFC
──その判定も今回同様に5Rでした。長いリーチとケージレスリング、そしてあのラウンドを重ねるにつれてまるで強さを増すようなヴォルカノフスキーのスタミナをどうとらえていますか。
「まず、誰もプレッシャーを与えていない状態なら誰だってスタミナを保っていられるだろう? 自分の試合をしたかったら、絶対に疲れてしまうわけにはいかないんだ。そういう意味で、僕は彼がこれまで感じたことのないようなプレッシャーを彼にかけて、“彼が僕の試合に付き合わなきゃいけない”状態にしようと思ってる。同時に、5Rマッチの経験の少なさという点から、5日間、毎日5Rやってきた。だからしっかりフルラウンドやる準備もしてきた。僕が全局面において彼に優っていると思うし、彼より自分のほうが強いと言える」
──力強い言葉ですね。この試合を楽しみにしている日本のファンにメッセージをお願いします。
「いつも妻と話しているんだけど、東京は行ったことないけど旅行したい場所トップなんだよ。アイ・ラブ・スシ! 日本のファンの皆さん、どうもありがとう。『UFC298』の僕の試合をU-NEXTでご覧ください! さあ立ち上がって! レッツゴージャパン!」