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インタビュー

【UFC】メラブ・ドバリシビリ、大いに語る「セフードは普通の人間」「テイクダウンし続けても僕は疲れない」「日本のファイターに必要なもの」「オマリーのジャケットは──」=2.17『UFC 298』

2024/02/17 10:02
 2024年2月17日(日本時間18日AM8時)に米国カリフォルニア州アナハイムのホンダ・センターにて『UFC 298: Volkanovski vs. Topuria』(U-NEXT配信)が開催される。  メインのアレクサンダー・ヴォルカノフスキーvs.イリア・トプリアのUFC世界フェザー級選手権試合に次いで注目なのが、バンタム級のメラブ・ドバリシビリ(ジョージア)vs.ヘンリー・セフード(米国)の一戦だ。 (C)Zuffa LLC/UFC  UFC9連勝中で、朝倉海らとの交流で日本でも知られるドバリシビリが、北京五輪レスリング・フリースタイル55kg級金メダリストにして元UFC世界フライ級&バンタム級王者のセフードと対戦する大一番。 (C)Zuffa LLC/UFC  ドバリシビリは、ジョン・ドッドソンや コーディー・スタマン、マルロン・モラエス、ジョゼ・アルドといった強豪を立て続けに撃破し、2023年3月の前戦では、元王者のピョートル・ヤンをテイクダウン地獄で完封し、その実力を見せつけている。  対するセフードは、2020年5月の『UFC249』でドミニク・クルーズをTKOに下しバンタム級王座防衛に成功後、引退を宣言も、2023年5月に3年ぶりに復帰。いきなり当時の王者アルジャメイン・スターリングのベルトに挑戦したが、判定2-1のスプリットで敗れた。  同級では日本の中村倫也も出場する今大会に向け、メラブに本誌がインタビューすると、話は熱い格闘技論へと進んでいった。 「セフードは普通の人間だ」 ──今回のヘンリー・セフードとの対戦に向けた練習環境、トレーニングパートナーはどのようなものだったでしょうか。 「ラスベガスのシンジケートMMAで、トレーニングパートナーは知っての通り、元UFC世界バンタム級王者のアルジャメイン・スターリング、元UFCファイターのヴィンス・モラエス、同じくUFCファイターのムイン・ガフロフだよ」 ──そのアルジャメインは、今回のメラブの対戦相手セフードと戦っていますが、何かアドバイスをもらったりしましたか? 彼のレスリングスキルについてはどのように言っていましたか。 「彼が教えてくれたのは、『セフードは普通の人間だ』と。アルジャメインが言ってくれたのは、『ヘンリーはいい選手で、トリッキーな、いいレスラーであるけれど、君は自分らしく自分がやるべきことをするべきだ』と。それだけなんだ。自分が自分らしくあること。『彼は普通だから、必ず倒せる』と言っていたよ」 ──朝倉海選手がピョートル・ヤン戦前のメラブについて話してくれたことがあるのですが、試合直前までかなりハードに練習していることに驚いた、と。今でもそういう形で、試合直前までハードに練習しているのですか。 「うん、うん。それは、自分の減量方法だから。人によって水抜きと言えばサウナだとか熱い湯にじっと浸かっていることだったりすることだけど、自分としては、ワークアウトしたり、ランニングして汗をかいたりっていうトレーニングのなかで体重を落としていく。だから、ギリギリまで練習し続けているんだ」 ──なるほど。それはタフですが、過度な水抜きの負担よりもメラブにとっては試合で動ける形なのですね。 「そういうことになるね(※レイ・ロングによるとドバリシビリはスターリングと試合前の練習でと5分3R本気で戦ってからファイトウィークに向かったという)」 ──テイクダウン対決とされる今回の試合ですが、メラブとセフードではスタイルが異なると思います。セフードは松濤館空手を採り入れた間合いのコントロールからの打撃とレスリングでグラウンド&パウンドする。対してメラブは相手が立っても立ってもテイクダウンマシーンのように倒していく。相手を押さえ込むことに注力はあまりしないように感じます。 「それが自分のスタイルだからかな。テイクダウンするのが好きだっていうのもあるし、このレベルになってくると、なかなかコントロールし続けるのは簡単なことじゃないから。相手がハイレベルなファイターになっていけば行くほど、逆にいかにして立つかっていうことに長けてくる。みんなどうやって立つかをすごく分かっているからね。そこでリスクを負いたくないと考えているんだ。  テイクダウンして押さえ込むっていうことはリスキーなこともある。もし相手に返されたら、相手の術にはまる可能性もあるから。トップを取られると厳しい。だからとにかくテイクダウンをしに行き、彼らが必死に立とうとしているところをそうさせてやって、またテイクダウンをする、そうやって相手を疲れさせているんだ。この状況で自分は疲れていないから、エネルギーを無駄に消耗せずにいるようにしている」 (C)merab.dvalishvili ──なるほど。その一方でセフードはスプロールしてのテイクダウンディフェンスがとても得意で、アルジャメイン戦でもそれを見せていました。セフードをいつものようにテイクダウンできると考えていますか。 「分からないといえば分からないけど、もちろんトライはする。言ったように彼は言っても“普通の同じ人間”だろう。とはいえ彼はオリンピックでレスリングのチャンピオンになったほどだから、そこには彼の特別な力があると思うし、テイクダンディフェンスも相当上手い。でも、俺はもともと柔道選手からいろいろな試行錯誤をして、MMAのポジショニングやタイミングを考えて打撃を混ぜてテイクダウンができるようになった。だから、まさしくこれは“ファイト”なんだと。構わないんだ、これは柔道でもないしレスリングでもないから、俺は勝てる。自分は誰が相手でも勝てると信じているし、どうあれ問題ない」 [nextpage] 日本の選手はもっとMMAレスリングができるようになるといい ──いま日本のヒロヤ選手がそちらで練習していますよね。これまで日本人ファイターでは井上直樹選手や朝倉海選手と練習したことがあるなかで、日本の選手に何が必要だと思いますか。 「みんな才能があって、強くて、戦士だと感じるいい選手たちで、何が必要かっていうのはちょっと分からないくらい、一生懸命練習していていい選手たちだと思っている。彼らに必要なのは──もうちょっとレスリングの練習時間が必要なんじゃないかということかなあ? ビリー(ビゲロウ)ってコーチが日本で彼らの環境を変えて行っていると思うけど、彼はとってもいいコーチなんだよ。彼と練習しているなかで、ヘンリーと戦うためのトリックを仕込んでもらったりもしたんだ。だから、とりあえずもっとレスリングができるようになるといいかと思う。MMAレスリングという意味でね。  聞いたところによると、通常の日本のジムってとても小さいんだよね? それじゃ大変だ。大きなジムであることも大事だし、そこにケージがあることも必要だし、しっかりと安心して練習できるちゃんとした人たちとトレーニングができることも必要だね。とはいえ、彼ら自身はとても才能豊かで、とてもハードに練習する、とてもハイレベルないい選手たちだって思っている。彼らと練習するときは厳しい時間を過ごしているんだよ。セラロンゴで井上直樹と最初にトレーニングしていたときは全然大丈夫だったけど、最後にスパーリングしたら彼は成長しててすごいキツかった。それに朝倉海はとてもハイレベルなストライカーだね。そしてヒロヤ。彼はとてもいい選手だと思う。驚いたんだよ、すごく才能があって。スクランブルが上手い、もっと良くなっている。 (C)merab.dvalishvili  MMAっていうのは競技としては新しいから、ジョージアでも同じようなものだと思う。もっと成長するのに、もっと時間がかかる。個人競技で、政府だとか何か機関から援助があるわけでもなく、とにかく個人でやらないといけなくて、いいトレーニングジムはないし、個人でやってるにしてもすごくビジネス一辺倒なところもあって……。ただすごく大変な反面で最高の競技だと思うし、成長過程にあるとも思うし、きっとMMAこそが最高の競技だってことになるし、既にそうだとも思っている。柔道もレスリングも好きだし、オリンピック競技も好きだけれど、これらの競技は落ちてきている。誰ももう観ないし、大変だと思うんだ。ルールが細分化されすぎていて。  その点、MMAはどんどん競技として良くなってきているし、みんなのDNAに刻まれてる。つまり、“みんな戦うことが好きだろう?”ってこと。誰だって。ほとんどルール無用というか、とにかくしっかりクリーンに戦ってさえいれば、戦うだけのことで完結する。でも柔道なんかはしょっちゅうルール改定があって、足を触って投げてはいけないなんていう。レスリングもよくルールを変えるよね。レスリングでは1ポイントが全てを左右する。だからこそ上にも行けるけれど、ひとつのミスで失うものが大きすぎる。MMAではそういうことはない、1Rで負けることもある、テイクダウンを成功させることもあるけど、そこからリカバリーもできる。  戦うことってそういうことだ。立ち上がることや再起することだったり。ここ(MMA)ではガチで“一体誰が一番強いんだ”、そして“誰は弱いんだ”っていう戦いの場だ。そこに他のスポーツのような運の要素はない。フリースタイルレスリングはコーチの汚職もすごいと聞くんだよ。八百長的なことをやるって。そんなの狂気の沙汰じゃないか。ただ、これがいまスポーツと呼ばれるものの現状だよ。MMAだけが成長できているんだと思う。そして、自分は日本のMMAというのがより良くなっていて成長しているんだろうと思っている。日本にそういう歴史があることも知っているし、日本の人はMMAをすごく愛しているし。PRIDEを昔観ていたし、今はRIZINがあるよね。そういう団体が好きだ」 [nextpage] ショーン・オマリーのジャケットは── ──メラブがこんな一気にMMAについて話してくれるとは思っていなかったです。試合前にありがとうございます。ところで、エリック・アルバラシンを陣営に引き入れたとか?(笑) 「ああ、ジョークでね(笑)。いい人なんだよ、ヘンリーも含めて彼らは。ヘンリーのことをそもそもすごい尊敬しているんだ、今は対戦相手になってしまったけれどね。だからこういうジョークも楽しくやっていて。ポジティブな発信をするのが大好きなんだ。自分自身も楽しみたいし」 ──メラブらしいです。ショーン・オマリーのジャケットは返したのですか? 「ううん。ウチにあるよ」 ──ええっ!(笑)「返せ」って言われなかったんですか?(笑) 「うん。デイナには言われたけど(笑)」 ──デイナ・ホワイト代表から「オマリーに返してあげなよ」と言われた。面白すぎます(笑)。さて、日本にもメラブのファンが多くいるのですが、そんなファンにメッセージをお願いします。 「日本の皆さんに感謝しています。自分を知ってくれて応援してくれて、フォローしてくれて。それに日本という国が大好きなんです、僕は柔道選手でしたからね。柔道で育って、投げだったりいろんなことを学びましたし、日本のカルチャーに触れて育ったとも言えるから、日本の人たちを尊敬しているし、日本を訪ねることは叶えたい夢のひとつなんだ。だからできることならなるべくすぐにでも東京に行けたらって願っています。  毎日毎日練習しているから旅行をするってことはなかなか大変なんだけれど。だけど、うん、伝えたいこととしては、MMAを一般的に楽しんでもらいたい、素晴らしいスポーツだから。ほかのどのスポーツよりも素晴らしいって個人的には思っているんだ、戦いだからね。戦うことは俺たちのDNAに刻まれているだろ? 日本の人たちは侍だから、きっともっとたくさんの人が見てくれるようになってもっと楽しんでもらえると思う。みんなありがとう、日本に行ってみんなに会える日がすぐ来るといいな。そして、週末の試合はU-NEXTを通して観てください!」
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