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インタビュー

【UFC】中村倫也「セフード、メラブに“中村は絡んでくるよな”と思わせるような結果にしたい」──“怪物ぞろい”のバンタム級でUFC2戦目

2024/02/16 13:02
 2024年2月17日(日本時間18日)米国カリフォルニア州アナハイムのホンダ・センターにて開催の『UFC 298: Volkanovski vs. Topuria』(U-NEXT配信)で、UFC2戦目に臨む中村倫也がインタビューに応じた。 ▼バンタム級 5分3R中村倫也(日本)8勝0敗(UFC2勝0敗)135.5lbs/61.46kgカルロス・ヴェラ(エクアドル)11勝3敗(UFCデビュー)135.5lbs/61.46kg  2023年8月の前戦でUFC本戦デビュー勝利した中村。  レスリングでU-23世界選手権61kg優勝などの実績を掲げ、プロMMAデビューから8戦全勝、6試合でフィニッシュ(5KO・1一本)をマークしている。2022年の『ROAD TO UFC シーズン1』バンタム級決勝戦で風間敏臣に勝利し、UFC契約を獲得。2023年8月のシンガポール大会でファーニー・ガルシアに判定勝ちして以来、半年ぶりの試合となる。  当初、中村はブレイディ・ヒースタンド(米国)と対戦予定だったが、試合4週間前にカルロス・ヴェラ(エクアドル)に変更。ヴェラは、『Fury FC』で活躍後、2023年の『The Ultimate Fighter 31』(TUF)でチーム・マクレガーに所属。ブラッド・カトーナに判定負けも今回、UFCとの契約を果たした。  カポエイラベースでギロチンチョークと足関節を武器とする“異質”なヴェラを相手に中村は、UFC連勝を飾ることが出来るか。同大会では、同じバンタム級で、UFC9連勝中のメラブ・ドバリシビリと元フライ&バンタム級王者ヘンリー・セフードの一戦も組まれており、トップクラスとの距離を測る試合にもなる。  フライ級が注目されるなか、より層が厚く“怪物ぞろい”のバンタム級で、MMA8戦無敗の中村はどんな戦いを見せるか。インタビューで中村は「上位に食い込んでいくためのステップアップの試合」と語った。(C)U-NEXT [nextpage] 「一番楽しい時間」がやってきた ──ファイトウィークを迎えていかがでしょうか(※インタビューは2月13日に行われた)。 「いまラスベガスは19時で、ちょうど試合をするくらいの時間なのでさっきまで動いていました。コンディションも崩さず、ここまで来れたし、海外での試合経験もレスリングを含めれば慣れているので“やっとまた、ファイターとして一番楽しい1週間が始まっているな”という感じです!」 ──一番辛い、ではなくですね(笑) 「はい! 一番楽しいです、一番辛かったらやってない(笑)」 ──では一番辛い時期はいつなのですか? 「辛い時期か……。身体として、辛いなっていうか動きが鈍くなってきたと感じるのは、試合前の追い込みをしている3週前で。その時はもう、頭がしっかり身体に対して語りかけて、“自分を練習に連れて行ってあげなきゃいけない時間”というのはあります」 ──そこを超えて、試合に向かうのは「ご褒美タイム」ということですね。 「はい、一番楽しい時間なんです」 ──減量なども問題なく? 「はい! 全然です」 ──それで気持ちの面でも落ち着いている、と 「だんだん上がっていってるのをむしろ抑えなきゃな、くらいです」 ──高揚しすぎちゃう? 「ずっとテンション高くなっちゃって。昨日もショッピングモールではしゃぎまくってて(笑)『ここで疲れちゃうよ!』みたいな(笑)」 ──今回は『UFC 298』ということでナンバーシリーズに出場となります。 「やっぱり『ファイトナイト』よりアメリカ本土だし、ナンバーシリーズで、UFCのタイトルマッチ(フェザー級王座戦・ヴォルカノフスキーvs.トプリア)もちゃんとある大会というなかで、今後上がっていく上では同じような環境で試合をしていくことが多いと思うので、それをこの2戦目で入れてくれた、UFCやマネジメントには感謝したいと思っています。すごい楽しみです」 ──メインカードでは、同じバンタム級でメラブ・ドバリシビリvs.ヘンリー・セフードの一戦も行われます。意識する部分もありますか。 「意識……そうですね、ホテルで見かけたりはしたいな、さすがに。どんな雰囲気なのかとか、会えるのを楽しみにしています。生で見られるのを。試合としては、人と比べて“俺のほうが”と思うことは自分のパフォーマンスを良くするわけではないので、逆に働くことはありますけど。なのでその辺はあまり意識しないように。結果的にあの試合よりインパクトあればいいなと思います」 ──大会そのもの注目度が高い中でどういう試合をしたいと考えていますか。 「PPVで、今までより観る人数も格段に増えると思うので、そこで、ベストなパフォーマンスを見せるというのはあります。見せた結果、セフード、メラブに“中村は絡んでくるよな”と思わせるような結果になることを望んでやってきます」 ──この先を期待してもらえる試合ができそうですか。 「なるといいですね、いや、なります!!」 ──2023年8月のシンガポール大会での前戦ファーニー・ガルシア戦は判定勝ち。試合後は反省の弁も述べていました。何か課題があれば、どのように改善をしてきましたか。 「前回は相手のスタンドゲームにあまり付き合わず、テイクダウンしてサブミッション、というのをイメージしていたのですけど、その間にある、上で削るという作業があまり出来ていなくて。結果サブミッションをエスケープされ、サバイブされる体力を相手に残してしまった。そういうことがあったので今回は分かりやすく言えばパウンドで、上からダメージを与えることをしっかりやりたいというのが、自分の中でテーマになっています。これはこの試合に限らずキャリアとして、まずこれが出来なきゃ幅は広がらないし、それを今回は意識して取り組んできました」 ──ガルシア戦は試合としては完勝でした。「削れなかった」ということですが、あの時に上四方から攻めることが多くて、パウンドで削るよりもあえて極めにこだわっていたようにも感じました。 「上四方って、自分はすごいいいポジション=相手は下から足が利かないし、僕の腹や股間の下で視界もないし、相手にとってはストレスが多いと思うんですよね。そしてエスケープするには1回下を向かなくてはいけない。そこで首を取れるかとか、そのなかでいろんな展開を考えていたのですけど、上四方を取っているときに向こうのセコンドの指示で、結構反応されちゃっているというか。僕が仕掛けようとしていることをセコンドの指示でガルシアに伝えて、ガルシアが『あれやこれを全部注意しとけ』と言われていて。 “これ以上先に行くにはダメージがないと、フィニッシュするなんていうことは簡単じゃないな”と感じたので、今後の相手も上四方で押さえて勝てるような相手だったら別にいんですけど、上に行くためにはそういうわけにはいかないので、自分のゲームに幅を持たせるためにも、上からしっかり削るということをやりたい。ただ、それは練習でなかなかパウンドを打てるわけじゃない、試せることではないので、色々シミュレーションをしてきました」 ──中村選手は試合中にしっかり相手コーナーの英語も聞き分けているのですね……。今後は潜らせなければあえてハーフの中に留まって上から削ることもポジションとしては考えられそうですか。 「もちろんガードを、前戦のカルロス選手はガードの展開が多かったのでそこももちろん考えてきましたし、ハーフになったら下から潜ってくるだろうし色々想定はしています」 ──ところで、試合中に足を折っていたそうですが、よくおくびにも出さずに戦えましたね。 「“変なところを蹴ったな”と思ったんですけど、そんなに、剥離みたいな感じだったので。試合を終えて“人間、すごいな”とは思いました」 [nextpage] 頭のいいMMAプラス、野生的な攻撃の両方を楽しんでもらえたら ──さきほどの課題そのものは対戦相手に限らずということですが、それも含めて対戦相手がブレディ・ヒースタンドからカルロス・ヴェラに変更になったことは、準備において影響はどれくらいありましたか。 「対戦相手は変更になりましたけど、4週前とか、そんなにショートノーティスってわけではなかったので、ちゃんと準備は出来ました。ただ今回相手のスタイルがすごく“異質”なので、最後まで何が飛んでくるかわからないっていう意識は持って戦います」 ──「異質」というのはヴェラのあのテコンドーやカポエイラの回って飛んでくる蹴りやサブミッションなどでしょうか。 「テコンドーも含めたら格闘技キャリアとして30年以上やっていると思うので、ヘタクソに見えるけど、絶妙にやられないようなスキルとかを持っている印象です。そのなかで彼なりの足技を活かしたスタイルを得意として、テイクダウンはあまり気にせず下からの仕掛けで首と足を使って、プレッシャーをかけてくるというゲームだと思うのですけれど、もちろん彼がこれまで対戦したような相手に、自分のスピードだったり爆発力を持っている選手は多分いないと思うので、その辺りでサプライズを起こせる自信はあります」 (C)Zuffa LLC/UFC ──中村選手はサウスポーからの蹴りが、テイクダウンにおいても相手の上体を上げさせることで起点になっているように感じます。組む展開のなかで、いかにアプローチするか。スタンドにおいて何か強化してきたことはありますか。 「スタンドにおいては、自分の今まで通りのスタンドゲームを展開しようとすると多分、良くないことが起こる相手で。回ってきたり。その辺は角度と位置取りの──“自称天才タケさん”が言ってくださっていて、この位置はダメとか。その視点からも入っていますし、うまく入れて準備してきたものはあります、自分の攻撃として新しいものはあります。まあそれは言わないですけどね、フフフ」 ──それは試合を見てのお楽しみ、ということで。そしてヴェラの得意技のひとつがギロチンチョークです。相手にテイクダウンされて尻を着いてからもセットしてきます。ヴェラはスイッチスタンスですが、あの左手のギロチンチョークは、中村選手にとって右側に頭を出すと危ないようにも感じました。 「あそこは確かに。最初は“まあこんなの、かかんねえよ”と思っていましたけど。エントリーが、多分“あっ、大丈夫だな”と相手に思わせてくるようなエントリーなんですよね」 ──はい。何なら時にはあえて相手に脇を潜らせて首を掴んでいるようにも見えました。 「はい。で、こうヌルヌルと入ってくるので、もしそこに入ってきたら絶対に止まらないとは頭に入れています。そのワナにも気付けたので大丈夫かなと」 ──ギロチンは前回のガルシア戦でもすぐに二回跳んでエスケープしていましたね。そして足関節は、ジョン・ダナハー、ライアン・ホール、タン・リーらと練習しているようですが……正直、動画が切り取られていてあまりよく分からない。トランジッションに使っているようにも感じます。 「アタックとして見せている展開があまり無いですよね。でも僕がレスラーで試合数もあまり重ねていないということを考えたら、やっぱり作戦立てるのがうまいジム(Fifty/50 Martial Arts Academy)とは聞くので、展開として入れてくることももちろん考えています。それは野瀬(翔平)選手や風間(敏臣)選手とやる前に対策していたものが生きてくると思うし、今回に向けてもやってきました」 ──以前、MMAとしてケージのなかで「空間を支配する」ことについて話していましたね。 「そうですね。支配する前に“空間を認知”していなくてはいけない。“ワッ!”と“行くぞ!”となったときに、そこに対して集中する分、“後ろ”のスペースに対しての意識が無くなったりするんですけど、すごくいいときはそれもありつつで、空間を把握し支配する“この空間全部オレのものだ”っていうような感覚があるんです」 ──おおっ、それをだんだん掴みつつある、と。 「だからといってそこを使って誘うまでは、まだ完璧ではないですけど、出るかもしれないし、今後やっていきたいことのひとつでもあります」 ──どんな戦い方が今回見られるでしょうか。 「頭を使って、組み立てないといけないファイターではあるので、今までみたいにずっとずっとプレッシャーをかけ続けるという展開にはならないかもしれない。という意味では位置取りとかも前よりちゃんと考えているし、頭のいいMMAプラス、そのなかで野生的な攻撃も出ると思います。その二つを楽しんでもらいたいです」 [nextpage] 高谷裕之代表、『格闘DREAMERS』──最初に出会った仲間との再会に「意味がある」 ──互いに向き合っているときから注目ですね。ところで、そんななかで三段論法は意味が無いかもしれませんが、ヴェラは『TUF31』でブラッド・カトーナに判定負け。そのカトーナがUFCで風間敏臣選手をKOに下したギャレット・アームフィールドに1月に判定負けしました。その中で中村選手の今回のヴェラ戦で立ち位置が見えて来る試合になるでしょうか。 「現時点でその辺を一掃できる地力があるとまでは考えていないですけれど、そこからは今年中にバツんと抜けて行こうと思っているので、まず彼に対してしっかり勝つっていうのは最低条件だと思っています」 ──実は対戦相手がエリート続きでもあります。前戦は経済学専攻の銀行員、今回は会計学専攻の金融業経験者です。 「そうなんですね! ハハハ。頭良くて金融系の仕事をしていたならライフプランのなかに勝利ボーナスなんて入れてないんじゃないかな(笑)」 ──それは中村選手がいただきたいですね。さて、今回の試合に向けた練習環境は? 「スパーリングはおもにYSA KRAZY BEEのメンバーとやってきて、打撃は今回コーナーについてもらう高谷(裕之)さんと、タケダイグウジさん、あとパートナーとして『格闘DREAMERS』で一緒に練習してきた中村京一郎選手、主に育成の時からやってきたメンバーにプラスして僕のルーツである(山本)アーセンとその仲間たち、そして津田勝憲さんたちと作ってきた格闘技ですね」 ──高谷さんが再びセコンドに。そして中村京一郎選手も帯同したのはUFCの試合に向かう流れや取り組みを見せたかったという部分もありますか。 「僕は人生で起こる全てのことに意味を見出すタイプなので、最初に出会った仲間っていうのは、絶対僕に足りないものを持っているし、そのなかで、先に走って僕が景色を見せるなかで、僕も彼らからいろんないいマインドだったり考え方、技術を吸収して、いい感じで関係を作れていると思います。そして、その力は世界でも通用するって自信があるので、それを証明したいと思います。  中村選手は、彼の取り組みを身近に見ていて、“あっ、行くな、これ”みたいなものを感じるし、ファンの皆さんもぜひチェックしておいたほうがいいですよ」 ──中村京一郎選手はいま4連勝中。どんどん強さが増して決定力を感じます。プロスペクトという意味では、前回シンガポール大会で一緒になった鶴屋怜選手が、『ROAD TO UFC』でフライ級で優勝して、UFCとの契約をかわしました。学生時代にレスリングで会い、MMA転向してからも練習をした鶴屋選手の契約をどう見ましたか。 「鶴屋くんが、21とか22歳とかで契約して、彼も全然このUFCのランカーとかにガンガン絡んでいけるレベルだと思います。となるとやっぱり10年くらいは彼もUFCで戦っていけるわけじゃないですか。デイナ・ホワイト代表も彼を褒めていたし、日本人の存在感がだんだんUFCのなかで無視出来なくなってきているんじゃないかっていう嬉しさはあります。  ただ、僕はその中で競争しようとは思っていなくて、初のUFCチャンピオンっていうことにもこだわってない。僕自身がそれになれればいいので、平良(達郎)くんにももちろん行ってもらいたいし。僕は僕でバンタム級というこの階級で、今後、朝倉海選手なのか、誰が日本から来るかは分かりませんけど、ひとつずつ勝って、僕は僕でやっていきたい、背中を見せていきたいと思います」 ──では、最後に試合に向けてファンにメッセージを。 「UFCをご覧のファンの皆さんからは、いつも力をいただいています。ありがとうございます。今回の試合は、自分にとって上位に食い込んでいくためのステップアップの試合のひとつとして、フィニッシュして次に繋げるという目標を掲げて今まで作ってきました。それを皆さんに披露するのがすごい楽しみです! ぜひ楽しみにしていてください。試合はU-NEXTで観られるので、ご視聴をお願いします!」
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