MMA
インタビュー

【ONE】青木真也と対戦するセージ・ノースカット「僕はまだ全てを出し切っていない。多様なスタイルをいろいろな形で変化させている」=1月28日(日)有明

2023/12/05 15:12
 2023年11月30日(木)、ONE Championshipが都内で会見を行い、2024年1月28日(日)有明アリーナにて『ONE165:Rotang vs. Takeru』を開催することを発表。キックルール(3分5R)で武尊vs.ロッタン・ジットムアンノン、MMAルール(5分3R)で青木真也vs.セージ・ノースカットの2カードが決定し、4選手が登壇した。  本誌では、会見後に4選手およびチャトリ・シットヨートンONE会長兼CEOに個別インタビューを行っている。武尊、ロッタンに続き、今回は青木と対戦する“スーパー”セージ・ノースカットンのインタビューを掲載したい。  27歳のノースカットは、UFC6勝2敗から2019年5月にONEにウェルター級で参戦し、元IT'S SHOWTIME 77kg MAX世界王者のコスモ・アレクサンドレに1R KO負け。コロナ禍もあり、2023年5月にONEにライト級で復帰し、アフメド・ムジタバを1R ヒールフックに極めて、ONE初勝利を挙げている。  40歳の青木のMMAの試合は、2022年11月のサイード・イザガクマエフ戦以来、1年2カ月ぶり。ONE4連勝から、秋山成勲とイザガクマエフにTKO負けし、その間グラップリング戦も戦って来た。  両者は当初、2021年4月29日の『ONE on TNT IV』で対戦予定だったが、ノースカットが「新型コロナウイルスの影響が長引いた」ため試合を辞退。青木は、秋山戦がキャンセルされたフォラヤンと緊急対戦していた。  会見でノースカットは、「格闘技はもちろんアニメを見たりして育ったので、日本に来ることは常に夢でした。1月28日の日本大会は、日本のレジェンドの青木選手との戦いが決まり興奮しています。キャリアにとって大事な試合になると思います。ここから2カ月さらに磨きをかけていきます。青木選手の母国であるこの地で自分自身が戦えることが嬉しく楽しみにしています」と語っている。  会見後のインタビューで有明アリーナの「リング」で戦うノースカットに青木戦について聞いた。 今回の「リング」での青木戦は、プラスとマイナスの両面がある ──プライベートも含め、日本に来たのは初めてでしょうか。 「はい、初めて!」 ──空手など武道をやっていたときに世界中を回ったそうですが、なぜ日本には来なかったのですか? 「行きたいと思っていた場所でしたよ! ロシア、クロアチア、アイルランド……、たくさんの国に行ったんだけれど、日本は行ったことがなくて。でも日本は“行きたいところリスト”に入っていた。でもあいにくここ数年、日本大会というのが無かったからね。だから今回、日本で戦えることがほんとうに楽しみなんだ」 ──カジュケンボーとテコンドーでも黒帯で世界王者になっている。空手の種類は? 「スポーツ空手をやっていました。スポーツ空手には様々なスタイルがあって、キックボクシングのようなものもあったりするけれど、足へのキックは無し。だけどすごくフルコンタクトっぽい。でも、攻撃を4回繰り返すなかで、1発は蹴りを使わないといけないなど、それぞれルールが異なっていました」 ──限定的な立ち技ルールの競技をやったことはMMAにどう影響していますか? 「うん、少しそういう部分はあります。すごくいろんなフットワークやムーブメントができるようになるということ、ほとんどの大会において、リングは20×20フィートで、ちょっとMMAより小さいんだけれども、そういうサイズ感としても悪くなかった。狭いなかでのフットワークが磨かれたよ」 ──その意味では、今回の試合がケージでなくリングなのは、ノースカット選手にとって良い部分もありますか。 「まさに、そのことを考えていたんだ。実はこれがリングの試合になるって数日前に聞いたばかりで、いろいろとアジャストしなくちゃいけないのは確か。しかもリングとなると青木はPRIDEでもDREAMでも、リングでかなりたくさん戦ってきているし、その点では、ううむ、考慮すべきことがたくさんあるな、って」 ──あなたのスタンディング面ではコーナーがあることは優位に働きますか? 「おそらくプラスにはなると思う。もちろん両面があると思っているけれど。というのも多くのファイターはテイクダウンされたら立ち上がるのにケージを使うけれど、コーナーにいない限りそれはできないから。考えなきゃいけないことは色々あって……。もし自分が打撃を当てて、彼がそこを追ってくる感じになるとどこにも行けなくなるというのもあって」 ──グラップラーにとっては、ロープとロープの間でクラッチができますね。 「そう、ロープの後ろに手が回るという点は考慮しなくてはいけない」 ──あなたとしても、ロープの間で腰を逃がしたり、テイクダウンされてもロープの下で頭を動かすことができます。 「そうですね。あと少なくともキックボクシングやムエタイのようなロープだとリバウンドするというのもあって、ヒジもヒザもケージではこうして体を傾けることができないですよね。でもリングなら頭の後ろ、トップロープの上にスペースがあると動きが変わってくる。もちろん自分にとってもポジティブな面はあります」 [nextpage] 僕が今立てられる最大のプランは、なるべくキツい一発をシンヤにお見舞いすること ──1月28日の日本大会に向け、会見のフェイスオフでは青木選手は目を合わせようとしませんでした。 「そうですね(笑)。意味はよく分かんないけど、彼って、そういう人でしょ? ほかのいろんなファイターにあんな感じだったろうし、自分はできうるかぎり丁寧に接して握手もしたけれど。まあ、そういうことはモチベーションになるよね。火がつきます」 ──ノースカット選手はONEではまだ2試合のみです。コスモ・アレクサンドレ戦では低いガードで戦って、ワンツーに右ストレートを合わされました。2度目のアフメド・ムジタバ戦ではガードが高くなったように見えました。少しスタイルを変えたのでしょうか。 「仰る通り少し変えました。最初の試合では怪我があったから(※8カ所の顔面骨折により9時間に及ぶ手術)。あれは予想外なことだったので、スタイルを変えざるをえなくなりました」 ──そして2023年5月の前戦では、アフメド・ムジタバ相手にオーソから左の蹴りを連打して、互いのジャブから腰を落としてしまい、テイクダウンを受けました。 「(日本語を聞いて)ねえ今それ、立ち上がりのこと言ってるでしょ(笑)。わかってる!(笑)予想通りだったというかね、ちょっとその“試合前ブルー”みたいなのじゃないんだけど、ちょっと時間が空いてしまってからの復帰初戦で。今はそういうのは大丈夫だけど。それにその(笑)、僕のいいパンチもあって、彼をグラつかせたし、彼はすぐに自分を掴むつかんだけれど、カットして、左目周辺の出血で縫っていましたね。自分のジャブが捕らえからね! ハハハ(笑)」 ──下になったあなたは右手でムジタバの左腕をオーバーフックして、相手が体を離した瞬間に外掛けからヒールフックを極めました。そこまで3つの一本勝ちもありましたが、初の足関節でのフィニッシュでした。 「いま、いろんなラップリングコーチについてもらっていて、ここ3、4年は自分の柔術をかなり鍛えている。だから柔術のレベルは劇的に向上しているよ」 ──ただ、青木選手のようなファイトスタイルはMMAに置いて稀有かと思います。彼のスタイルも真似してくれるような人は周りにいるのでしょうか。 「青木は優れたグラップラーでとてもフレキシブルだ。だからとても警戒しています。コーチが似た感じの黒帯のパートナーを見繕ってくれているよ。それにMMAグラップラーもね」 ──ホイラー・グレイシー系のマルセロ・クレメンテの黒帯ファビオ・プラドと練習している様子を拝見しました。 「チームアルファメールで練習しているから、プラドに柔術を習って、もちろんユライア・フェイバーにダニー・カスティーリョ、それから他のチームメイトはUFCファイターのアレックス・ムニョスはすごくいいレスラーだよ。あとディビジョン1のレスラーでライアン・ローダーっていうのがいて、彼は今MMAをやっているんだけど(6勝1敗)レスリングの強豪なんだ。で、ストライキングはお姉ちゃんの旦那さん、つまり僕の義理の兄のレイモンド・ダニエルズと最近よく練習しているんだ!」 ──なるほど、お姉さんのコルビー・ノースカット選手のパートナーは、GLORYから現在はBellatorでも回転技で活躍中のレイモンド・ダニエルズ選手なのですね。 「うん! とてもいいチームだよ!」 ──今回対戦する青木選手は、グラップラーのイザガクマエフとの試合ではキックを多用していました。MMAのなかでムエタイの名手です。 「あの試合は見ました。たしかにキックを出してましたね。僕としては違う隙を見つけたい。でもそれを見られるのは試合の日だから、待っていて」 ──そうですね。27歳・MMA15戦(12勝3敗)のノースカット選手と、40歳・MMA58戦(47勝11敗1NC)の青木選手の戦いの構図になっています。青木選手のここ2試合を見て、どのような印象を持っていますか。 「前の試合はすぐ終わってしまったし、その前っていうと秋山戦だから、何というか……秋山はすごい強いのはもちろんだし、あの年齢で超すごいフィジカルしてますよね。ああいうその筋肉標本みたいな選手との試合を通して判断するのは難しいですよね。ただ、彼の敗戦っていうことで言うと、MMAで一本負けをしたことがないけれど、グラップリングでレッグロックで負けているっていうのがありますね」 ──打撃の無いグラップリングルールではマイキー・ムスメシにストレートフットロックを極められていますが、そもそもあのアオキロックは、青木選手の得意技ですし、MMAにおいては秋山選手をチョークで極めかけ、エドゥアルド・フォラヤン選手に腕十字・肩固めで一本勝ちするなど、レッグロックのみならず、MMAではトップを取る、バックを奪うことに長けている青木選手のスタイルをどれくらい研究していますか。 「もちろん。彼は非常にタイトで、攻撃のなかで、ミスだったりスペースを見つけるのが上手くて、自分としてはそれに対してのディフェンスを上手くやる術はある。多分うまくできると思う!(笑)何ていうか、多くの人はやっぱりどうしても僕のグラップリングスキルを過小評価しているとは思うし、実際そうだった。だからこの4年ほどかけて、グラップリングをすごくたくさん練習した。だから柔術のレベルは向上していて、黒帯相手にもしっかりやれてきている。だから青木戦はグラップリングの攻防・スキルをファンに見てもらえるいい機会になる試合だと思っているよ。とはいえ、まずはストライキングから始まる。そこも大事さ」 ──たしかに試合はスタンドから始まります。ストライカーとはいえ、時折危うさも見せるノースカット選手を相手に、青木選手も組むためのアプローチとして、まずはスタンドで対峙することになります。 「そうですね。通常のスタイルで言うと、グラップルして相手をグラウンドで下にさせる感じになるから、距離はすごく重要で、と言うか距離とムーブメントが重要だ。やろうと思っていることはあるから、できたらいいなというところで見守っていてほしい(笑)。あと、さっきスタイルの変化について聞いてくれたけれど、多分自分のスタイルのなかのユニークさっていうところで言うと、全部をまだ出したことはなくて。自分はたくさんのスタイルをいろいろな形で変化させているんだ」 ──だから試合毎に異なっているのですね。それが次の試合でどうなるかと。その意味で参考にしたりする選手もいますか。 「憧れのアイドルみたいな選手は特にいないけれど、スタイルに注目している人はいます。というより、どの選手でもチャンピオンシップに1度でも出場したことがあるようなファイターなら、そのスタイルから何かしら学ぶことができる。だからなるべく全ての試合に目を通したいと思っているよ」 ──試合まで2カ月、どのように準備し、どんな試合をしたいですか。 「具体的なテクニックのドリルをかなりたくさん積むつもりで、それからシチュエーションに合わせての生きた動きの練習をたくさんしていこうと思います。試合当日は、うん、ハードでしょうね。ゲームプランを立てて臨んでも、大抵そのゲームプランは試合の中で刻々と変えていかなければいけなくなる。ま、僕が今立てられる最大のプランは、なるべくキツい一発をシンヤにお見舞いすること! さてどうなるかな、見ていてください」 ──ところでお姉さんのコルビー選手と同じONEで戦っていることは、どんなモチベーションになっていますか。 「すごくいいこと! 僕たち姉弟は一緒に練習して育ったし、レイモンドもいる。それに僕たちにはショーンっていう弟もいるんだけど、ゆくゆくは彼も試合することになる。彼は本当に格闘技が上手でグラップリングがとても上手いんだ! 彼は僕とはスタイルが違うんだよ。もうね、本当にすごくって、本当に上手。素晴らしい選手になっていくと思う。あ、あとね、すごいイケメンだから! モデルみたいなんだよ。かっこいいんだ」 ──姉弟について力説するところに、ノースカット選手の人柄を感じました。最後に日本のファンにメッセージを。 「1月28日の青木真也との試合にワクワクしているよ。ぜひ観てください。スーパーエキサイティングな試合になります。僕が熱くするからね!」
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