2023年12月2日(日本時間3日朝6時~)米国テキサス州オースティンのムーディーセンターにて『UFC Fight Night: Dariush vs.Tsarukyan』(U-NEXT配信)が開催される。
メインイベントでは、ライト級4位・イラン出身のベニール・ダリウシュ(米国)と、現ライト級王者のイスラム・マカチェフをUFCで最も苦しめたジョージア出身のアルマン・ツァルキヤン(アルメニア)が対戦する。
▼ライト級 5分3Rベニール・ダリウシュ(米国)22勝5敗(UFC16勝5敗)156lbs/70.76kgアルマン・ツァルキヤン(アルメニア)20勝3敗(UFC7勝2敗)155.5lbs/70.53kg
レスリングの組みのツァルキヤンと、BJJ黒帯のダリウシュだが、ともにMMAグラップラーとしてのみならず、蹴り技も得意とする。
34歳のダリウシュは、トニー・ファーガソンやマテウス・ガムロに判定勝ちするなど怒涛の8連勝。6月の前戦でシャーウス・オリベイラに右ハイを効かされ、パウンドアウト。連勝がストップした。
会見でダリウシュは、「ツァルキヤンは27歳と若くてとても才能がある。彼にはチャンピオンになる能力がある。多くの人が『このような男は避けるべきだ』と言っていることは知っているけど、僕は引退する前に必ず彼らと向き合いたいと思っているんだ。だって僕は世界最高の選手たちと戦いたいから。戦いを終えたとき、『最高の選手たちと戦った』と言える。『僕は誰も飛ばさなかったよ』と。ステイタスという点では、この試合に勝ってもランキング的にはどこにも行けないだろう。でも実際は、ランキングのためにここに来たわけじゃない。世界最高のファイターとして、世界最高の相手と戦うためにここに来たんだ。彼もその一人だ」と、多くのランカーが対戦を嫌うツァルキヤンとの対戦を受けた理由を語っている。
対するツァルキヤンは、UFCデビュー戦でいきなり後の王者のイスラム・マカチェフと対戦し、マカチェフの蹴り足を取ってのボディロックでUFCで初めてテイクダウンを奪うなど、レスリングで互角に渡り合っている。5連勝後の2022年6月にガムロに判定負けも、接戦の内容だった。その後、ダミル・イスマグロフに判定勝ちすると、2023年6月の前戦では ジョアキム・シウバを3R TKOに下している。
Bellatorライト級GP決勝進出のアレクサンドル・シャブリーを練習パートナーに、アメリカントップチームでは堀口恭司とも練習するツァルキヤンに、好勝負必至のダリウシュ戦について聞いた。
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ガムロと同じ間違いは犯さないつもりだ
──日本の『ゴング格闘技』です。試合前にインタビューを受けていただきありがとうございます。
「アリガトウゴザイマス、日本のメディアから取材を受けて光栄だよ」
──おお、その言葉は誰から?
「僕のコーチが教えてくれたんだ。日本に滞在していたことがあるからね」
──もしかして柔術家のマルコス・パルンピーニャコーチでしょうか。
「そうさ! 今回はATTからコーナーにパルンパ、アーテム・レビン、それにスパーリングパートナーのエルビス(シャクバジアン)がついてくれるよ」
──階級は異なりますが、堀口恭司選手とも練習することはあるのでしょうか。
「もちろん。一緒にトレーニングしているよ。彼は小さいからいつも逃げられたり隠れたりするんだよなあ(苦笑)。彼とレッスルするのが好きで、自分が減量を進めていくと軽い堀口ともトレーニングできるんだよ。堀口は125ポンド(フライ級)、135ポンド(バンタム級)では世界で最強の選手だと思っている」
──堀口選手のことはどのATTの選手に聞いても即座にそういう言葉が返ってきますね。堀口選手のバックボーンは空手ですが、あなたは7歳から14歳までフリースタイルレスリングを行い、パンクラチオンの世界王者にもなっていますよね。パンクラチオンは、道衣着用で顔面パンチ無し、投げや関節技、ボディへのパウンドがOKという限定された総合格闘技かと思います。そのときの経験がいまのMMAにどう活きていますか?
「パンクチオンは素晴らしい競技だし、色々な経験をさせてもらった。何試合かしたのだけど、日本人とも試合をしたよ。たしかに顔面パウンドが無いけど、パウンドできないから、フィニュシュするためにはしっかりポジションを取らないといけない」
──いまのツァルキヤン選手は強いパウンドを武器としていますよね。それは……。
「ポジションを取れているからだ。だからいまはパウンダーでもある(笑)。パンクラチオンはMMAを始めるにはいいスポーツだと思うよ」
──日本のファンにとっては2017年に勝利した3選手の名前でツァルキヤン選手を覚えた人も少なくありません。RIZINで活躍中のキム・ギョンピョ選手、GLADIATORで次期挑戦者決定戦に臨むグスタボ・ウーリッツァー選手、そして 佐藤豪則選手にもFEMFPライト級王座戦で勝利していますね。
「覚えているよ、タケノリ、サトウ。とても強い選手だったし、すごくいいグラップラーだ。プロデビューして2年。あの時は本当に入念に準備をして試合に挑んだ。あの時の自分にとって一番厳しい戦いだったし、一番強い選手だったのがタケノリ・サトウだった」
──佐藤選手に得意のアームロックを極めさせずに判定勝ち。12連勝でUFC入りを決めましたね。そして今回は、ライト級4位のベニール・ダリウシュ選手と対戦します。この試合に向けてATTではどんな練習を積んできましたか。
「ATTにはほんとうに沢山のいい選手が在籍している。Bellatorのライト級GPで決勝に勝ち上がったアレクサンダー・シャブリーもいるから、一緒にトレーニングをしてきたよ」。
──ダリウシュ選手はグラップラーながら、前蹴りなどの蹴り技も得意としています。その点でシャブリーのスイッチできる蹴り、前蹴りはダリウシュ対策になったのでは?
「もちろん。彼らは似ている選手だし、自分のスパーリングパートナー達はこのキャンプ期間中、みなダリウシュを模倣している、パンチもキックもレスリングも柔術もだ。だから戦う準備はできているよ」
──ともに戦ったマテウス・ガムロとのダリウシュ選手の試合を見て、どのような印象を持ちましたか。
「しっかり試合を研究した。あの試合でガムロは戦略を間違えたと思う。レスリングとボクシングのセットアップも良くなかったし、長い間合いで打とうとしてたからダリウシュはディフェンスもできたしガムロのテイクダウンを止める事もできたと思う。あの試合を見て、自分が今週末、何をすべきかが分かったし。ガムロと同じ間違いは犯さないつもりだ」
──ダリウシュ戦のキーはどんな間合いであなたが戦うか、でしょうか。それがあなたが左右で打てるキックや強みのレスリングも繋がりますね。オリベイラがヘッドキックを当てたように。
「君が想像しているのと同じだよ。キーは間合いとレスリングに対するディフェンスとストライキングだ」
──試合前にインタビュー、ありがとうございました。日本のファンへメッセージを。
「日本のみんな、こんにちは。いつも応援ありがとう! 今週の日曜の試合を見てね。いい試合を見せるから。あと、日本で試合をする日を待っててね。アリガトウゴザイマス!」
──マカチェフとのリベンジ戦も視野に入りますね。
「もちろんだ。ここで勝てば最高なシナリオになるよね」