GLORY COLLISION 62023年11月5日(日)オランダ・ヘルレドーム※U-NEXTで見逃し配信
▼メインイベント(第11試合)GLORY世界ヘビー級王座統一戦 3分5R〇リコ・ヴァーホーベン(オランダ/正規王者)判定5-0 ※50-45×3、50-46、49-47×ケヴィン・タリク・オサロ(ナイジェリア/暫定王者)※ヴァーホーベンが11度目の防衛に成功。
ヴァーホーベンは、2021年の『GLORY COLLISION 3』でのジャマール・ベン・サディック戦以来、GLORYのリングから遠ざかっていた。ヒザの負傷により、2023年初めの復帰戦はお預けとなったが、ついに待望のGLORYカムバックとなる。
バダ・ハリ、グーカン・サキ、ベンジャミン・アデグビュイ、ピーター・アーツ、エロール・ジマーマンなど数々のレジェンドに勝利し、キックボクシング界の頂点に上り詰めた34歳は、GLORY史上最多の王座防衛記録(10回)を持ち、現在16戦無敗という驚異的な記録を10年近くも続けている。
しかし、彼が不在の間に新チャンピオンが登場した。この1年、タリク・“クッキー”・オサロが、GLORYデビューイヤーにKOに次ぐKOという驚異的なパフォーマンスを6度披露し、新たなプロモーション・スターとなった。
ヘビー級4人トーナメントでオサロは、準決勝でムラト・アイグンをKO。6月の『GLORY COLLISION 5』のメインイベントでは、大本命のアントニオ・プラジバットを破壊的なKOで破り、暫定ヘビー級王座を獲得している。
得意の身体ごと打ち込むアッパーを主武器に強豪たちをなぎ倒してきたオサロは、勝利後、スタンドで観戦していたヴァーホーベンに「できるだけ準備をしろ、タイトルを獲りに行くぞ!」と宣戦布告していた。ヴァーホーベンがGLORY無敗記録を更新するか、それともナイジェリアの巨漢が、新たな時代の扉を開くか。
1R、まずはヴァーホーベンが右ロー、オサロも左ローを返す。ヴァーホーベンがジャブから前蹴り、サウスポーになると前に来るオサロに左ミドルを蹴る。オーソドックスに戻すと右ローを蹴るヴァーホーベンにオサロはワンツーを合わせに行く。慎重な出足の両者に、場内から煽るような歓声が上がる。またもヴァーホーベンの右ローに右ストレートを合わせるオサロ。圧を強めるヴァーホーベンはヒザを見舞う。オープンスコアは10-9×3(10-10×2)でヴァーホーベン。
2R、ジャブと前蹴りで前へ出るヴァーホーベンにオサロは左ローを蹴っていくが、ヴァーホーベンが右ストレートをヒットさせる。ヴァーホーベンはさらに前足を上げてから右ストレートを打ち抜く。ロープやコーナーを背にするオサロへヴァーホーベンは左ローで誘いをかけていった。OPスコアは10-9×5でヴァーホーベン。
3R、サウスポーのヴァーホーベンは左ミドルを蹴り、オーソドックスに戻るとジャブと右インロー。そしてまたサウスポーになると左ミドル。オサロはカウンターを狙って打つが、なかなかヒットを奪えない。右を当てては組み付いてヒザを蹴るヴァーホーベン。このラウンドもOPスコアは10-9×5でヴァーホーベンがとった。
4R、前に出るのはオサロ。左フックをクリーンヒットさせる。ヴァーホーベンは左右に構えを変え、前蹴り、左ミドル、左ローと蹴っていく。ヴァーホーベンの鋭い前蹴りが何度もオサロのボディを捉える。さらに右ストレートもヴァーホーベンはボディへ打つ。左ミドルを蹴られるとサウスポーになるオサロ。ヴァーホーベンがまた前蹴りを入れるとオサロはクリンチに。前蹴りをフェイントにしてハイキック、右ストレートをを打つヴァーホーベン。
5R、ジャブを突くヴァーホーベンにオサロはクリンチ。レフェリーから注意を受ける。ヴァーホーベンは左前蹴り、左ミドル。前に出るオサロはワンツーを打つが、ヴァーホーベンは右ストレートを返す。オサロが右アッパーを打つと、ヴァーホーベンは右ローを蹴る。これにオサロはバランスを崩す。前に出るオサロをハイキックとクリンチ、そしてフットワークでいなすヴァーホーベン。そのまま試合終了となり、ブーイングも起こった。
判定は5-0でヴァーホーベンが勝利。11度目の防衛に成功した。ヴァーホーベンは「10カ月くらい前に膝の手術をして、復帰できるか分からなかった。今日は勝ててよかった。次の試合までに準備することがある。GP出場は分からない。本当に復帰できるとは思わなかった。オサロとはまた戦うことになると思う」と語った。
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▼セミファイナル(第10試合)GLORY世界ライトヘビー級タイトルマッチ 3分5R〇ドネギ・アベナ(スリナム/正規王者)判定5-0 ※50-45×5×モハメド・トゥチャッシー(モロッコ/挑戦者)
GLORY世界ライトヘビー級王座統一戦は暫定王者タリク・カバベ(モロッコ)の欠場により、正規王者アベナがトゥチャッシーの挑戦を受けての初防衛戦に変更された。
アベナは2015年9月にプロデビューし、2017年のA1WCCチャンピオンズリーグトーナメントで決勝まで勝ち上がった。GLORYには2018年12月から参戦し、2019年6月にはGLORY世界ライトヘビー級王座に挑戦したがタイトル奪取ならず。ここからGLORYで4連敗を喫するも2022年10月に当時ライトヘビー級3位のフェリペ・ミケレッティに判定勝ち、2023年2月にセルゲイ・マスロボイエフにTKO勝ちで王座を奪取した。しかし、6月のカバべとの初防衛戦を前に食中毒となり急遽欠場。戦績は26勝(7KO)9敗。
トゥチャッシーは15勝(12KO)無敗の戦績を誇る新鋭で、2022年6月にロビン・シリックとの王座決定戦を制し、初代Enfusion世界ウェルター級王座に就いた。GLORYには2023年10月に初参戦し、ミドル級でエドゥアルド・アレクサニャンから3度のダウンを奪ってTKO勝ち。今回はなんとわずか4日前のオファーを受けてミドル級から階級を上げての挑戦。
アベナはリミットちょうどの95kgで計量パス、トゥチャッシーは90.7kgとかなりのアンダーで計量をパスしている。
1R、体格差がある両者。アベナは右ローでバランスを崩しておいての左右ボディ、右ストレート、ヒザとアグレッシブに攻めていく。トゥチャッシーも左右ボディ、左右フックを思い切り叩きつける。右を顔面とボディへ1発打ってはすぐに離れるトゥチャッシー。アベナの左右フックをガードするトゥチャッシーだが、身体が左右に揺れる。
2R、トゥチャッシーはジャブをブロックさせて右ボディストレートを打つ。明らかにパンチのパワー差を感じさせるアベナの左右フック、ワンツーにガードを固めるトゥチャッシー。手数は出すトゥチャッシーだが、アベナの攻撃力が目立つ。
3R、トゥチャッシーの前蹴りに左ボディから右フックを打つアベナ。左右ボディ、右フックをもらうトゥチャッシーは左ボディを打ち返し、思い切り右ストレートを打つ。アベナの攻撃に下がるトゥチャッシーだが、前へ出てくるアベナに手数は出す。
4Rも右フックとヒザ蹴りで前へ出るアベナにトゥチャッシーは思い切り右フックを叩きつける。アベナの左右フックをもらって身体が揺れるトゥチャッシーだが、それでもジャブを返す。粘るトゥチャッシーにアベナに攻め疲れが見える。左右ボディから飛びヒザ蹴りを放つアベナ。
5R、トゥチャッシーは前蹴りを顔面とボディへ。アベナは左右フックからヒザを突き上げる。下がりながらもパンチを繰り出すトゥチャッシーにアベナはじりじりと詰め寄ってヒザ、左右ボディ、左右フックを打つが序盤ほどのパワーは感じられない。
体格差がありながら堂々と戦ったトゥチャッシーだったが、階級の壁はいかんともしがたく判定5-0でアベナが初防衛に成功した。「トゥチャッシーが前へ出てくるのは分かっていたからこの結果に驚きはない。判定はドミネートしたと思っている。ちょっとした怪我もあるから少しバケーションをとりたいね」とアベナは語った。
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▼第9試合 GLORY世界ミドル級タイトルマッチ 3分5R〇ドノバン・ウィッセ(スリナム/王者)判定5-0 ※50-44×2、49-45、48-46×マイケル・ボアペア(ガーナ/同級1位)
ウィッセは2016年11月にプロデビューすると連戦連勝で2018年9月からGLORYに参戦。しかし、12月の2戦目でプロ初黒星を喫した(12戦目)。その後は再び連勝の波に乗り、2021年9月にユスリ・ベルガロイをTKOに破って王座を獲得。2022年8月には初防衛に成功した。2023年2月にはシーザー・アルメイダと防衛戦を行うはずだったが、アルメイダが体重超過のためノンタイトル戦に変更となり判定勝ち。6月に最強の挑戦者と目されていたセルカン・オズカグライヤンの挑戦を退けて2度目の防衛に成功した。戦績は19勝(10KO)1敗。
ボアペアはRINGS Holland Fighting Networkが主催する『Rings Gala』を主戦場とし、2022年3月には『Rings Fighting Network 2022』にてRINGSミドル級タイトルマッチを経験(ケビン・ヴァン・ヘッケレンに判定負け)。2022年8月からGLORYに参戦するも、2戦目でセルゲイ・ブラウンに判定負け。2023年3月には当時ミドル級3位のエルトゥールル・バイラックを判定で破り、6月にはウルリック・ボケメにTKO勝ち、8月にセルゲイ・ブラウンに3連勝。戦績は16勝(7KO)3敗1分。普段は棺桶作りの職人。
現在8連勝で2度の防衛に成功している安定感のあるウィッセか、3連勝の勢いに乗って挑むボアペアか。
1R、いきなり前に出るボアペアが右ストレートを叩きつけてヒザ蹴り、ウィッセをロープ際まで追い詰める。ウィッセはジャブで押し返し、右ストレートと左ボディも打つ。右カーフを蹴り合う両者。ガードを高く上げて前へ出るボアペアはウィッセのガードの上からでもお構いなくパンチを叩きつける。両者とも顔面一辺倒にならず、ボディやローキックも放って攻撃を振り分ける。両者ともかなり多くの手数を繰り出すが、より多いのはボアペア。しかし、ウィッセは的確に強いインパクトのあるパンチを打つ。終盤、ボアペアの飛びヒザ蹴りを右フックで撃墜したウィッセ、日本ならダウンを取られてもおかしくないタイミングだったが、フラッシュダウンで認められず。
2R、両者とも両腕閉じブロックが固い中、左右や下からガードの隙間を狙う。このラウンドもボアペアが前に出てウィッセにロープやコーナーを背負わせ、掴みからのヒザ蹴り連打、左右ローを蹴る。ウィッセも右カーフを蹴り返し、ボアペアが頭を下げる所にヒザを突き上げる。頭を左右に振りながら前に出たボアペアが左フックから右フックを返すと、ウィッセが仰け反る。さらに詰めていくボアペアだがウィッセは冷静に攻撃をブロック。ジャブを突き、右クロスを打ち、ボアペアのヒザには右ストレートを合わせる。
3Rも前に出て手数を出すボアペアにウィッセはジャブと右フックを返していく。ボアペアは接近するとボディへのヒザを上手く入れる。ボアペアのパンチやヒザをしっかりブロックし、左ボディを返すウィッセ。ボアペアは疲労からか攻撃の後に組みに行くのが目立つ。右ストレートをしっかり打ち抜き、右フックを打ち込み、ローを返していった。
4Rもボアペアは前へ出るも手数はかなり減って来た。そこへウィッセが左ボディ、右ボディストレートを叩く。あまり手が出ないボアペアへウィッセがワンツーからヒザ。前へ出るのはボアペアだが、ウィッセは下がりながらもしっかりと攻撃を当てていき手数も多い。派手さはないがしっかりと攻撃を当てて相手の攻撃はもらわないウィッセ。
5R、かなり疲労の色が濃いボアペアは鼻血を出し、ウィッセのパンチをもらうとマウスピースを落としてしまう。ウィッセの右ボディストレート、左ボディをもらいながらも前に出て来たボアペアにウィッセのワンツーがヒット。ボアペアは大きくグラついてロープにもたれかかる。そこへワンツー、左右フック、右ハイ、左ボディで畳みかけるウィッセ。ボアペアが大きくバランスを崩してロープにもたれかかったところでレフェリーがスタンディングダウンを宣告。その後もウィッセがワンツーを中心に攻めるがボアペアもパンチを振り回して必死の抵抗。
堅実かつ安定した冷静な戦いぶりで試合を終えたウィッセが判定5-0でボアペアを破り、3度目の防衛に成功した。ウィッセは「7週間でのショートノーティスでのタイトルマッチだったけれど、次は10週間くらいのノーティスで準備をしたい。プレッシャーを1Rからちゃんとかけられた。相手はタフだけれどKO出来ると思っていたが5Rまでいった。とりあえず1回休んで次に備えたい」と語った。
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▼第8試合 ウェルター級 3分3R〇ハミチャ(モロッコ/同級2位)判定4-1 ※29-28×4、28-29×カマラ(フランス/同級9位)
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▼第7試合 ミドル級 3分3R×セルカン・オズカグライヤン(トルコ/同級2位)判定0-5 ※30-27、29-28×4〇ウルリック・ボケメ(コンゴ/同級5位)
オズカグライヤンはK-1ヘビー級で活躍したグーカン・サキの従兄弟。45勝(36KO)8敗という戦績を持つサウスポー。GLORYには2021年10月から参戦し、3戦目でシーザー・アルメイダに敗れるも2023年2月にセルゲイ・ブラウンを左フックでKO。6月に世界ミドル級王座に挑戦したが、王者ドノバン・ウィッセに圧倒されて判定負け。
ボケメはサッカーのスイス代表チームでプレーしていたが、怪我のため引退。リハビリで始めたキックボクシングでプロになることを決意したという。キャリア初期はスイスの大会で連勝し、『Enfusion』を主戦場にするとオランダやフランスで活躍。GLORYには2019年10月に参戦し、初戦では敗れるも12月の2戦目で勝利。しかし、その後はリングを離れて2022年6月に約1年半ぶりに復帰して勝利を収めている。2023年6月にGLORY復帰も果たしたがマイケル・ボアペアに初回TKO負け。戦績は31勝(17KO)4敗。
1R、ジャブから前へ出て行くサウスポーのオズカグライヤンにボケメは右ミドル。オズカグライヤンが蹴って来るとボケメは蹴り足をキャッチしてコカしにいく。前へ出るオズカグライヤンは左右フックから右アッパー。強打でボケメにロープを背負わせるオズカグライヤンだが、ボケメは右ミドルとヒザをしっかりと当てていく。
2Rも前に出るのはオズカグライヤン。しかし、ボケメの首相撲からのヒザをもらい、すぐにボケメが左右フックを振ったところで左フックがクリーンヒット。後退するオズカグライヤンにボケメがラッシュをかけてオズカグライヤンが崩れそうになるが、左右フックで反撃を開始。右ミドルをバンバン蹴るボケメは右膝も突き上げる。オズカグライヤンは左右ボディとローで対抗。左右のストレートを放つオズカグライヤンにボケメはしっかりブロックしてヒザを返す。
3R、左ストレートをフルで放つオズカグライヤンに右フックをしっかり合わせるボケメ。オズカグライヤンはパンチから左ローにつなぐ。ボケメはヒザ蹴り。ボケメが大きく振った左フックがヒットし、オズカグライヤンがグラつく。オズカグライヤンの左ストレートをブロックしたボケメは、両手を広げて余裕をアピールするとワンツーからヒザを突き刺す。終盤、オズカグライヤンは左フックを2発ヒットさせたが、ボケメは下がらず打ち返す。
判定は5-0で的確に攻撃を当てていったボケメが制した。「またタイトルマッチが出来たらいいなと思っている」と勝利者インタビューに答えた。
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▼第6試合 ウェルター級 3分3R×ジェイ・オーバーメール(オランダ/同級1位)判定0-5 ※30-27×2, 29-28×2, 28-29〇チコ・クワシ(オランダ/同級4位)
オーバーメールは2017年10月に16人制のWFLウェルター級トーナメントで優勝すると、2019年2月にはWFLウェルター級王座を獲得。2021年11月にはエンディ・セメレールが保持するEnfusion世界ウェルター級王座に挑戦したが、判定で敗れた。2022年3月よりGLORY参戦を果たし、2023年3月にジェイミー・ベイツをTKOで破り4連勝(3KO)をマークして6月にタイトル挑戦となったが、王者エンディ・セメリアに判定で敗れ王座奪取ならず。戦績は29勝(15KO)5敗。
クワジは2017年3月にロビン・シリックから勝利を奪った一戦が光り、6月にはスパルタカス・ファイティング・チャンピオンシップK-1 -75kg王座を獲得。2019年11月のKOKウェルター級トーナメントで優勝し、同時にIKBO K-1ルール王座も獲得。2021年10月にはKOKウェルター級王座を獲得すると、2023年3月からGLORY参戦。ステファン・オルザにTKO勝ち、5月はロビン・シリックとの再戦を判定で制して2連勝。戦績を41勝(22KO)5敗とした。『はじめの一歩』にインスパイアされてキックボクシングを始めたという。
両者はGLORY参戦前の2021年5月、ワールドファイトリーグで対戦し、オーバーメールが判定勝ちしている。
1R、クワジはハイキック、飛びヒザを交えながらパンチを繰り出していき、オーバーメールはやや後手に回る。互いにスイッチを多用し、オーバーメールはサウスポーになると左ミドルを蹴る。クワジはハイキックを空振りするとそのまま回転しての後ろ廻し蹴り。当たらずも技の多彩さを見せる。右足を上げて飛び込んだり、ハイキックから入ってきたりと変則的な動きをするクワジにオーバーメールはやりにくそう。
2R、ローを蹴るオーバーメールだがクワジは何度も飛び込んでの連打を繰り出す。ならばとオーバーメールはヒザ、左ボディ。飛び込んできたクワジに左右フックを打つオーバーメールだが、クワジは至近距離で頭を左右に振ってパンチをかわす。やりにくさがファイトぶりに現れているオーバーメール。
3Rはオーバーメールが前へ出て行く。右ストレート、前蹴りを繰り出し、右ローを蹴っていくが、クワジはパンチも蹴りも手数を出し続ける。オーバーメールが前へ出てくるとクワジは右ショートやヒザを合わせ、飛び込むと左アッパー。重さは感じられないが手数を出し、頭を振ってパンチをかわすクワジにオーバーメールは最後までペースをつかむことが出来ず、判定4-1でクワジが勝利した。
リベンジに成功したクワジは「今日はベストパフォーマンスは出せなかったが、このチャンスを2年間待っていた。厳しい2年間を過ごしてきた。次はタイトルショットでパフォーマンスを見せるチャンスが欲しい」と、リベンジを喜ぶとタイトルマッチをアピールした。
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▼第5試合 ライトヘビー級 3分3R×イブラヒム・エル・ボウニ(モロッコ/同級3位)TKO 2R 1分00秒〇ステファン・ラテスク(ルーマニア/同級6位)
日本のファンも気になる一戦、日本のK-1で活躍した者同士の対戦が実現した。
ボウニはメルヴィン・マヌーフの弟子で、2017年2月のK-1に初来日。当時、国内ヘビー級のトップに君臨していた上原誠に2RでKO勝ちを収めると、同年11月の「初代ヘビー級王座決定トーナメント」に参戦。1回戦でKOICHI、準決勝でロエル・マナートに連続KO勝ちという攻撃力の高さを見せつけたが、決勝ではアントニオ・プラチバットに判定負けして準優勝に終わった。その後は2018年7月から『ONE』に参戦し、初戦は勝利もタリク・ケバベス、アンドレイ・ストイカに連敗してONEを離脱。2022年6月からGLORYに参戦してマルシアーノ・ブングワンダス、RISEで清水賢吾と1勝1敗のバダ・フェルダオス、ムハマド・バリ、フェリペ・ミケレッティに4連勝。戦績は41勝(22KO)8敗1分。
ラテスクはアマチュアボクシングで150戦以上を経験し、ジュニアキック時代にISKA世界クルーザー級王座に就き、プロではまだ無冠だが16勝(7KO)2敗の戦績を誇る。2022年12月のK-1に初来日を果たすと、マハムード・サッタリを強烈な左フックでKOして初黒星を付け、大きなインパクトを残した。2023年3月の2戦目では谷川聖哉にローキックでダウン寸前まで追い込まれるも右フックで逆転KO勝ち。7月はK-Jeeも初回KOに沈めた。GLORYには9月に初参戦を果たし、パスカル・トゥーレに判定勝ちで初陣を飾った。
1R、ローの蹴り合いでゆっくりとしたスタートとなったが、30秒で上背とリーチで優るボウニが左カーフキックからの右ストレートでさっそくのダウンを奪う。ボウニはラッシュはかけずステップでサークリングしながら右ストレート。ラテスクはスイングの鋭い左右フックを繰り出す。
頭を左右に振りながら圧をかけて前へ出て行くラテスクにボウニはコーナーを背負う。そこへ左右フックの連打、右フックでラテスクがダウンを奪い返す。思い切り左右フックを振り回すラテスクにボウニはジャブ、前に出るラテスクにボウニはサークリングを続ける。ボウニがジャブを出すとすぐに思い切りフックを繰り出すラテスク。
2R、両腕ブロックを上げながら前に出るラテスクに、ボウニはステップを使ってジャブ&ローで回り込もうとするも右フックでダウン。立ち上がったボウニは前後にステップを踏み、前へ出て来たラテスクにワンツーを繰り出すも、ラテスクは左フックを合わせてまたもダウンを奪う。もんどりって倒れたボウニは何とかカウント9で立ち上がるも、すぐに距離を詰めて左右フックを連打したラテスクに棒立ち。レフェリーがストップした。
逆転KOに成功したラテスクは「最高の気分だ、夢が叶った。あんな強い相手に勝つことが出来た。戦略は特になく、チームとベストを尽くせるようにしただけなんだ。タイトルマッチを戦わせてくれ!」とハイテンションで語った。
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▼第4試合 72kg契約 3分3R〇エイブラハム・ヴィダレス(メキシコ/同級1位)TKO 1R 1分14秒×アフマド・チク・ムーサ(ドイツ/同級2位)
ヴィダレスは、GLORYでは5戦して5勝(3KO)2敗で戦績は18勝(14KO)2敗。黒星はいずれもGLORYでペットパノムルンとセルゲイ・アダムチャックに付けられたもの。“ダイナマイトハンド”の異名を持つ強打者で、2022年10月にペットパノムルンが保持するGLORYフェザー級王座への挑戦者に選ばれたが完封負けを喫した。前戦はメキシコで開催された『GLORY RIVALS 5』でトマス・アギーレをミドルキックで支配して勝利している。
ムーサは“ゴールデンボーイ”の異名を持ち、ドイツ人キックボクサーの中でも優れたファイターであるという。GLORYには2022年8月から参戦して3戦3勝(1KO)の戦績を収め、2023年5月にフェザー級王座を懸けてペットパノムルンに挑戦したが、判定で敗れた。AFSOヨーロッパ王者で戦績は58勝(28KO)8敗1分。ムーサが前日計量で体重超過したため、試合はフェザー級ではなくキャッチウエイト72kgで行われることとなった。
1R、左右ローを蹴っていくムーサにヴィダレスはジャブを突いていく。ムーサのワンツーの右が2度連続ヒットしたが、ヴィダレスは退かずに左フックの3連打を返す。ハンドスピードで優るムーサはフック&アッパー。ヴィダレスはジャブを突き、さらに左手を伸ばして距離をとる。そこを強引に前へ出て来たムーサへヴィダレスが右ヒザを突き刺し、続いて左フック。この一発でよろめき後退するムーサ。ヴィダレスはチャンスを逃さず左右フックを連打し、左フックでダウンを奪う。
もんどりうって倒れたムーサは立ち上がるも完全にフラフラな状態。レフェリーが様子を見てストップをかけ、ヴィダレスのTKO勝ちとなった。「最高な気分だよ。リアルなキックボクシングファンが集まっているこの会場で試合が出来たことを光栄に思う。ペッチとのタイトルショットを狙っていきたい」とヴィダレスは笑顔を輝かせた。
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▼第3試合 ウェルター級 3分3R〇ドン・スノ(オランダ)TKO 1R 1分14秒×ジーノ・ヴァン・スティーニス(オランダ)
▼第2試合 ウェルター級 3分3R×ロビン・シリック(オランダ/同級5位)判定0-5 ※30-26×3, 29-27×2〇イスマイル・ウズニ(モロッコ)
▼第1試合 ウェルター級 3分3R〇フィゲレイド・ランドマン(オランダ)判定2-1 ※29-28×2, 30-27、28-29×ペトロス・フレイタス(ブラジル)