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インタビュー

【RIZIN】MMA4試合連続一本勝ちのイゴール・タナベ「引き込むスタイルにはリミットがあると分かっている。目指すは──」

2023/10/03 11:10
 2023年10月1日(日)『RIZIN LANDMARK.6』(ドルフィンズアリーナ)が開催。第7試合で、イゴール・タナベ(セラヴィー)が、MMA4試合連続の一本勝ちを極めた。  23歳のイゴール・タナベは、柔術世界選手権で、ジュブナイル青帯&紫帯で優勝、茶帯で3位と、すべての帯色でメダルを獲得。黒帯ではJBJJF全日本大会で21年・22年に階級と無差別の両方で優勝し2連覇を達成している。  2021年11月のHEATでプロMMAデビューし、清水洸志に三角絞めで一本勝ち。2022年12月の巌流島でメルヴィン・マヌーフにヒールフックを極めMMA2連勝を飾ると、2023年7月の『超RIZIN.2』でRIZIN初参戦。ミドル級(84kg)契約で元DEEPウェルター級王者の阿部大治を1R、内ヒールフックに極めてバーバルタップアウト勝ち。RIZINデビューを勝利で飾っている。  対する対する32歳のANIMAL☆KOJIは、柔道出身で、2017年『DEEPヒューチャーキングトーナメント2017』ミドル級で優勝。その後、初代LEGION JAPNミドル級王者となり、2020年からK-1に参戦。クルーザー級でRUIにKO勝利すると、2021年3月『K'FESTA.4 Day.2』で愛鷹亮にも判定勝ち。その後、3連敗を喫するが、2023年1月の『Krush.145』で中平卓見に判定勝ち。4月の『Krush.148』で山口翔大に判定負けしている。  MMAは6勝9敗で、2020年2月の『ONE Warrior Series 10』でのメディ・バゲリ戦での2R、ドクターストップによるTKO負け以来、3年8カ月の試合だった。  試合は、右ローを突くANIMAL☆KOJIにイゴールがダブルレッグテイクダウン。すぐに右足を抜き、ハーフからパウンド! 左足も抜きニーオンからS字マウント、一瞬、腕十字狙いもANIMAL☆KOJIのケージを蹴ったリバーサルに合わせて三角絞めを極めた。  引き込みではなく、両足タックルからのテイクダウンでトップからパウンドでのTKOも狙ったイゴールだが、ハーフガードのため仕留めきれず、最後は得意のサブミッションで極めた。  ケージの中で息子と娘を抱いて、「奥さんのためなら誰にも勝てますし、どこにでも行ける。どんどん強い相手を当ててください」と語ったイゴールは、これでMMA4戦無敗・全試合一本勝ち。試合後の会見では、今後の対戦相手や階級、対世界などについて語っている。 世界のトップに行くためにフィジカルの壁があってほしくないから── ──試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。 「また一本勝ちできて良かったです。ひと安心しました」 ──MMA4試合連続の一本勝ちで、ご自身の強みが今見せられているでしょうか。 「そうですね、やっぱり僕は、前回も言ったのですが、どこからでも極められるっていうのが特徴で、今回は前回とは別の技で極められて、良かったです」 ──対戦相手のイメージは対戦前と違うところはありましたか。 「(想定と違うところは)無かったですね。警戒すべきところは打撃だったので、寝技になれば自分のフィールドで自分がうまくやれました」 ──寝技に地元の観客席が沸いていましたが、聞こえていましたか。 「正直あんまり聞こえていませんでした。結構集中していたので。セコンドの声は聞こえていたんですけど、あんまり周りの音は聞こえていなかったです。もちろん声援は嬉しいです」 ──試合を終えたばかりですが今後の目標・展望を教えてください。 「多分これはもちろん目標なのですけど、大晦日出していただきたいです、めちゃくちゃ出たいです大晦日。僕の目標です」 ──三角を極める前に上から殴っている場面もありました。あのまま打撃でフィニッシュしたいという思いも? 「ありました(笑)。なんか殴り始めたときに結構効いていたので『このまま終わらせたいな』って思ったんですけど、まあ終わらせられなかったです(笑)」 ──相手がタフだったのでしょうか、拳のダメージを考えてですか。 「いいえ。ハーフガードでヒザが(相手のガードの中に)入っていたんです。ヒザが入っているとパウンドの打てる範囲が狭いんですよね。正面、目の前にいたときは殴れたんですけど、寄って行ったときに殴れなくて、解除しないと次に行けないなと。パウンドを諦めてパスガード行ったんです」 ──試合後にお子さんをケージに。あの場面は最初から考えていましたか。 「いえいえいえいえ。あれは逆に、上がってきてびっくりしました。後ろを向いたときに子供がいて(笑)。めちゃくちゃ嬉しかったんですけど、それをやっていいものかと……。本当はやりたかったんですよ、毎試合、子供を上げたかったんですけど、やっていいか知らなくて。今回上がってきて本当に嬉しかったです。これから毎回やりたいと思います(笑)」 ──お子さんは何と言っていましたか。 「なんかさっき子供に会いましたが、なんかもうずっと子供が、奥さんから聞いたのですけど、緊張して声も出なかったって。ずっと『腕十字、腕十字』と言っていたみたいですね、試合中に指示を出していました(笑)」 ──セコンドに宇佐美正パトリック選手がいて、先週の大会で宇佐美選手はキックルールで安保瑠輝也選手に敗れてしまいましたが、その思いを背負っていた部分が? 「もちろんですね。試合前のインタビューでも言わせていただいたのですけど、やっぱり仲間としてパトリックの負けはすごい悲しかったし、自分が仲間として喜ばせないといけないという気持ちがもちろんありました。モチベーションになりましたね」 ──令和猪木軍の大将として命日に宣言通り勝てたことは、嬉しい気持ちが? 「すごく、それも、試合前インタビューでも言わせていただいたことですが、運命だと思っていますし、猪木さん、『INOKI BOM-BA-YE』がなければ、僕がまだRIZINにいたか分からないので、僕は“令和猪木軍の大将”というこの気持ちはもうどこに行っても持ち続けますし、これからも猪木さんへの感謝は常に持って戦っていきます」 [nextpage] マヌーフと試合して、これより怖い試合はないなって思って ──打撃はあまり出していなかったですが、1発いいフォームで蹴っていました。打撃が出せなかったけれども伸びているという手応えのようなものもありますか。 「今回、打撃は出せなかったのですけど、前の試合からずっと打撃を練習しているんです。一番伸ばさなくてはいけない場面だと分かっていますし、試合で出す・出さないは関係なく、ずっと練習しています。毎日良太郎先生にミット持ってもらって、今回は結構左ミドル練習していたんですよ、実は。試合で出す出さないを問わず。あとは自分の打撃の進化が分かったのが、結構、中心を取れていたんですよね、ケージの。自分からプレスをかけることが出来ていたので、そこもやっぱ打撃の成長だと思います。打撃は出していないんですけど、ちゃんとこう相手の打撃も見れたし、ちゃんと相手の動きをちゃんと読んで前に行けていたので。それで今回タックルもうまく行けたと思いますね」 ──寝技の圧力があるなかでスタンドにいい影響もあるかと思います。これまでの3試合が、今回も含めて、メルヴィン・マヌーフ選手や、阿部大地選手などストライカーが多く、阿部選手はウェルター級ファイターということもあり、階級と、もう少しMMAファイター寄りの相手と戦ってみたいという気持ちもありますか。 「階級は、試合前のインタビューでウェルター級に落としたいと言いましたが、それは変わらないですけれど、今回水抜きしたときに、やっぱりウェルター級に落とすにはもうちょっと期間がいるかなと思って。次の試合がいつ決まるか次第なんですよね。次の試合がたとえば大晦日にやらせていただけるのだったら、そこはミドル級じゃないとキツいんですけど、もし来年とかになるんだったら、ウェルター級でいけるかな? でも、それもやっぱ、1回落としてみないと自分の動きも分からないし、1発でいきなりウェルター級に落として、それがどう行くか分からないので、とりあえずミドル級かなって感じですね。かならず最終的にウェルター級には落とすんですけど、とりあえずミドル級かなという感じです」 ──いずれウェルター級というのは世界で戦うために? 「そうです。Bellatorのミドル級チャンピオンとか、世界で見たときにやっぱりフィジカルの差をすごく感じるので。世界のトップに行くためにフィジカルの壁があってほしくないので。自分が肉体を鍛え上げるより、階級を下げるほうが自分的にラクかなと思うのですけど、もしかしたらそれで落としてみたときに、そうじゃなかったら、それ(ミドル級)で頑張ってフィジカルつけるしかないって感じですね」 ──ストライカー相手が続いているなかで、どのストライカーが来ても、メルヴィン・マヌーフと戦った経験があって打撃の成長という部分も踏まえて、打撃が怖くないというのはありますか。 「やっぱり僕もその、毎回思うんですよ。マヌーフと試合して、これより怖い試合はないなって思って。次の試合、ラクだなって思って。で、阿部さんとやったじゃないですか。阿部さんと『超RIZIN.2』の会場でやって、さすがに阿部さんとやってこれ以上の緊張はないと思っていたら今回もすごい緊張したんですよ。やっぱり恐怖はありますし、でもやっぱりストライカーとやっていたらどんどん、多分試合より、練習の成果だと思うのですよね、やっぱり打撃の成長を感じるのは。前回の阿部さんの試合でだいぶ打たれて、打撃が怖くはなくなったんですけど、やっぱりそれも練習の成果だったんですよね」 ──世界と戦っていく上でストライカーと戦っていくにあたり、組みの部分でレスラーだったら組みつかせないとか、寝技に付き合わない、だけど組みを熟知しているという選手が世界にいます。今後強くなっていくために、どういったタイプの相手と戦っていかなきゃいけないかなと思いますか。 「前に言わせていただいたのですけど、僕が目指すスタイルは、ギルバート・バーンズ(UFCウェルター級5位)みたいなスタイルなんですよ。彼は柔術黒帯の世界チャンピオンって忘れるくらい打撃も出来る。世界でやっていくためにはあれくらいできないと、やっていけないなというのは頭にあるので。常に打撃が一番練習しているし、レスリングとか壁レスっていう練習も頭に入れているので、自分の中でも引き込むスタイルはリミットがあるというのを分かっているんですよ。だから僕もこれからもっと、今回も成功したんですけど、必ずテイクダウンした上でやりたいんですよね、そのために誰とでもやれるスタイルになりたいんですよ、もう本当に。コンプリート。打撃も寝技もレスリングもできる。ってならないと、世界でやってけないって分かっているので、そこを目指してやっています」  試合前のインタビューでイゴールに「前回はパンチからニータップ気味で引き込んだ外掛け。あの展開は望んでいた形かは分かりませんが、結果的に引き込む形のヒールで外から内で極めた。引き込む以外のMMAでの柔術の極め技のアプローチについては?」と聞いたところ、イゴールは、「もちろん、僕はあまり得意技がなくて、特徴は“どこからでも極められる”こと。前回の阿部さんもテイクダウン取って、バックまでいったところを(頭をロープの間の)場外に出されて、そこで極め切れていたら何も言うことなかったんですけど、そこで極め切れなかったのが一番の課題。今回はああいうチャンスがあれば絶対逃さない。ケージだったらあれは無かったので」と語っていたが、今回は、近年打撃の試合が続いていたANIMAL☆KOJIが相手とはいえ、柔道出身でもあるANIMALをダブルレッグでテイクダウン、パスガードから教科書通りの三角絞めを極めた。  今後、イゴールは、ミドル級からウェルター級も視野に入れるなかで、よりレスリング・柔術能力も高く打撃に優れたMMAファイターとの対戦に向け、どんな進化を遂げるか。
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