MMA
インタビュー

【RIZIN】RIZIN初参戦の日本バンタム級の雄・佐藤将光が太田忍と対戦「僕的にはサッカーボールキックや4点ヒザがあったほうが戦いやすい」

2023/09/29 12:09
 2023年10月1日(日)愛知県ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催される『RIZIN LANDMARK.6』にて、佐藤将光(坂口道場一族/FightBase都立大)がRIZIN初参戦。63.0kg契約(5分3R)で太田忍(パラエストラ柏)と対戦する。  当初、太田と対戦予定だった井上直樹が右顎下腺唾石症を発症し、ドクターストップにより欠場。佐藤は緊急オファーを受けて63.0kg契約で太田と戦う。  佐藤は、修斗では堀口恭司が返上したバンタム級王座を獲得し、ONEでは現王者のファブリシオ・アンドラージとランキング2位のステファン・ローマンに判定負けしたのみで4勝2敗と勝ち越し。さらなる試合機会を求めて、RIZINに参戦する。  これまでRIZINに出場していない日本バンタム級トップのひとり、佐藤将光は、初のケージRIZINでどんな試合を見せるか。FightBase都立大で聞いた。 僕がやろうとしていることと、ONEが求めていることが、ちょっと離れてきていた ――佐藤将光選手には、RIZINから何度か状況の確認があったようですね。参戦が今回のタイミングになったのは? 「一番最初に声をかけてもらったのは、2021年のバンタム級トーナメントをやるときでしたね。でもそのときはONEの契約真っ只中で、自分でどうこうできる問題じゃなかったですし、RIZINもそのことは理解してもらっていて、ありがたいなと思っていました。同時に、16人も集めてグランプリをやるのは羨ましい、面白そうだなと思いながら見てたんですけど、僕は僕でONEでチャンピオンを目指してやっていたので、本気で参戦を考えるようなことはなかったんです。ちょっといいなって浮ついた気持ちが少し出るくらいで(笑)」 ――2017年に修斗世界バンタム級王者となり、ONEで4連勝。ONEバンタム級2位につけていました。しかし、ランキング外の選手を当てられ、コロナがあったとしても、VTJを挟んでも1年に1度ほどしか試合が組まれませんでした。 「今年の1月の後も、マネジメントのほうに試合をしたいというのを伝えて、ONE本体のグローバルにも直接連絡して、この間のキム・ジェウォン戦から8カ月、そろそろ試合ないの? というのを、2週間に1回はメールを送ってましたが、試合は決まらずで、返事が来たと思ったら、『しばらく試合はありません』と。それで、そうですかという感じでリリースにさせてもらいました」 ――元王者のジョン・リネカーを最後まで苦しめたジェウォンに勝っても、試合が無いんですか。 「ちょっと厳しいなと思って。このままここにいても、自分の思うようなペースで試合できない。競技人生も限られているので、こういう決断に至った部分もあります」 ――日本人選手にとってなかなか試合が組まれず、厳しい状況が続いていますね。 「チャンピオンシップまで負けてなければ、さすがに関係なく組まれたとは思うので、そこはちょっと足りない部分はあったのかなとは思うんですけど……でもなかなか“方向が違う”というのは非常に感じましたね。『アクション』のコールがすごく早かったり……たぶん僕がやろうとしていることと、向こう(ONE)が求めていることが、ちょっと離れてきてる。昨年3月のステファン・ローマン戦くらいから、なんか方針がちょっと変わったんじゃないかなと感じていました。ちょっとずつズレを感じ始めていたというのはあります」 ――とはいえ、佐藤選手の試合に動きがないかというと、そんなことはなくて、行くときはしっかり行く。多種多様なMMAの動きがありました。 「あそこを評価しないということだと思うんですよね。しっかり明確に、毎回の攻撃を倒しに行く感じを出せということだと思うんですよね」 ――でもその動きの積み上げの先にフィニュシュがあるのだと思うのですが……。 「そうですよね。そこに向かっていたのですが。ただ、ジェウォン戦はともかくローマン戦ではテイクダウンを受けてからの動きをもうちょっと作らないといけなかった。結構相手もバテてた感じしたんですが、思ったよりガードから作れず潰しが強かったですね」 (C)ONE Champioship ――佐藤選手のONEでの黒星は2つのみ。BRAVE王者のローマンは佐藤選手に判定勝ち後にビビアーノ・フェルナンデスも下して11連勝。ユーサップ・サーデュラエフにも勝利していますし、もともと佐藤選手はサーデュラエフとの対戦がローマンに変更された試合でした。その前年のファブリシオ・アンドラージも、佐藤選手との試合後もONE負けなしの8連勝で王者に駆け上がった。ONEで唯一アンドラージがフィニュシュできなかった相手が佐藤選手になります。あのときも2位の佐藤選手がノーランカーの危険な相手を当てられました。 「実際強い選手だったので……アンドラージがジョン・リネカーを倒して、それくらいの力量なんだなと。彼が通じたからといって自分が通じるわけじゃないですが、(王座には)遠からず、遠いところにはいないなという風には感じていました」 ――そのリネカーとの試合を支配し、残り1秒で逆転KO負けしたキム・ジェウォンに、佐藤選手は1月の試合で判定3-0で勝っています。試合間隔が空くなか、日本で戦うということに関しては、いくつかの選択肢の一つだったんでしょうか。 「ちょうど1カ月前くらいにリリースがあったので、次どうしようかとちょっと考えていたところで、いろいろなところを当たっていた感じなんです」 ――それは海外を含めて? 「そうですね。PFLとかにもコンタクトを取って行こうとか、日本でもRIZIN以外にも、もちろん修斗とか、日本のローカルもいろいろ声かけて、とりあえずまとまった複数試合契約を取る前に、単発で、契約の縛りがない試合をやらせてもらいながら、そういう話をしていけたらいいなと考えていたところで、今回、急にこういう話が来て。RIZINも元々はたぶんもうちょっと先の試合で考えていたと思うんですけど、たとえばアゼルバイジャンとか大晦日あたりで。でも、井上直樹選手の病気(※右顎下腺唾石症)による欠場があって、僕に矢印が向いたというところだと思います」 [nextpage] ぶん投げられるだろうなと。自分は「全部やる」つもりでいます ――白羽の矢が立った。しかし、またもショートノーティスです。 「もう2週間しかなかったので、63kgは僕が指定しました」 ――それは躊躇というか、今回は流すということは考えなかったですか。 「いや、考えましたよ、一瞬。キム・ジェウォンのときも2週間前のオファーだったんですけど、オファーをもらったときに怪我していたとかだったら別ですけど、自分、別に普通に練習している状況でここで断るのは──たとえ1年後にできるとしても断るのはダサいなと思って。かっこいい自分でいたいなと思って──たまにそういうときあるんです(笑)」 ――しかも相手は、倉本一真、瀧澤謙太を2連続初回TKOに下している元オリンピアンです。 「そうですね。今乗っていますよね。でも、たぶん相手が誰でも、自分が試合を受けれる状況にないわけじゃないから」 ――とはいえ、これまで日本で佐藤選手の姿を見るのは主にセコンドが多くて。先日のパク・シウ戦でも相手を打ち気にさせたなかでカウンターのテイクダウンを見事に指示していました。 「最近はそうですよね。セコンドのほうが多くなっちゃって、忙しいです(笑)。でも、格闘技に触れてない日は一日もなくて。日曜日とか、試合のセコンドとかに行ったら動かないですけど、格闘技に触れてはいる。練習は週6くらいではやっていますね」 ――いまの練習環境は? 「月曜は、昼にここFight Baseでグラップリングをやって、夜は坂口道場でMMAの練習。火曜日は昼にKRAZY BEEに行って、夕方から指導ですね。水曜日はFight Baseでの練習。木曜日はTRIBE TOKYO MMAに行って、夜は指導です。金曜日は、昼にMMAのプロの選手のパーソナルをやって自分も動いて、夜にMMAコーチ。コクエイ(マックス)のクラスに出て。土曜日は、一日ほとんど指導して混ざりながらやって」 ──平日は指導もしながら、日曜日だけ身体を休めると。 「日曜日は、セコンドなどの試合がなければ、午後からFight Baseの会員さんとスパーリングのクラスがあるので、そこのスパーリングに混ざりながら、その前に柔術も出ているんですけど、柔術は流しながらやっているという感じですね」 ――佐藤選手、それ休みになっていません(笑)。 「ハハハ、けっこう自分でリズム調整できているので、睡眠時間とかは確保できるようになっています。人と会うことが月に2くらいで入るので、そういうときが休みになっています」 ――常に格闘技に触れてきたとはいえ、目標がないとなかなか追い込めないと思ってしまいます。 「僕、練習が本当に好きで、やれるならずっとやっていたいタイプなんです。普通に起きて、めっちゃ身体がだるいな、というときはありますけど、頭の中に、じゃあ練習に行く・行かないって選択がそこにないというか、迷うことはないので」 ――キツくても練習に行くのは前提なんですね。 「行けば動く。動けば楽しいので」 ――そして出稽古にも。どういう選手と組むことが多いのでしょうか。 「KRAZY BEEは、けっこううちのジムの子たちも連れていって、KRAZY BEEではアーセン選手とか、鬼山(斑猫)くんとか、EXFIGHT勢ですね。もちろん高橋遼伍さんとISAOとは昔からずっとやっています」 ――ISAO選手の試合では観客席からもアドバイスを送っていましたね。TRIBEでは? 「TRIBEはもうTRIBE勢ですよね。若松佑弥選手とか後藤丈治選手、石井逸人選手……所属以外でも和田竜光さんや上久保(周哉)くんとか、最近はアキラ選手とか、いろいろなタイプがいて、助かっていますね」 ――という中で、今回の対戦相手の太田忍選手というのは、なかなかいない特殊なタイプにも思います。MMA4勝2敗でレスリングに特化して強く、MMAではまだ発展途上という……。 「順応しかけているところというか、まだ完全じゃないですよね、きっと」 ――その相手と決まったときはどんな気持ちを抱きましたか。 「どんなもんなんだろうなって。フィジカルとか。クラッチ組まれたら引っこ抜かれるんだろうなみたいな。そういうのはありますけど、どうってことないというか、ある程度想像がつくというか」 ――別に投げられても構わないと。 「はい。世界に上がってくる選手たちは、そういうフィジカルモンスターをやっつけてきていると思います。階級は下ですけど、ウチの駒杵嵩大も柔道で元全日本強化指定選手でフィジカルがエグいので、ある程度想像がつくというか、なんとなくイメージはつきますね」 ――そして、次の試合は当然、RIZINルールで戦うことになります。 「言われたルールで戦うという感じなので、特に意識することはなくて、僕的にはサッカーボールキックとか4点ヒザとか、あったほうが戦いやすいです」 ――佐藤選手の動きはMMAとして、打撃も組みも連動しているから、そこにサッカーキックや4点ヒザが組みこまれたら、より面白くなるなと感じていました。 「ただ、リングは……僕はできればケージがいい。その点、今回はケージなのでめちゃいいんですけど」 ――たしかに。ケージレスリングもあるなかで、対太田戦でも、そうそう簡単には組ませないぞという思いもありますか。 「たぶん向こうは必死に組んでくるので、組まれるだろうなと思っています。ぶん投げられるだろうなと。自分は“全部やる”つもりでいます。もちろん組まれないほうがいいし、打撃で行けるなら行きたいなと思っていますが、投げられることもがぶりが強いことも想定しています。もちろん組まれないようには戦いますけど」 ――でも組んでたとえ投げられたとしても、そこで瀧澤選手のように慌てて立って、同じ形で組まれて崩されるという動きは、佐藤選手はしなくていい形もあるかと。 「どうだろう……ちょっと動きは固まってるんですけど、今は言いたくないですね(笑)」 ――はい。ただ、対戦相手のキャリアは少ないけれど、けして軽視はできない相手ですよね。 「そうですね。もちろん。間違いなく武器はあるから。銀メダリストですからね」 ――でも、たとえばアンドラージやローマンの圧力と比べたら……。 「いや、僕は相手を軽視するようなことはないですね。警戒して、警戒して、こう来るかも、こう来るかもと思って作るので。どんな相手でも。そうしないと昔、足元をすくわれたことがあるので」 ――ところで今回は63kg契約ではありますが、ONEのハイドレーションテストがある減量とは違いますね。 「そんなに水を抜かないようにしたいんですけど、今たぶん練習終わりで66kgくらいです。練習前で67kgなので、試合前日には66とか65kgくらいまでにはしたいです」 ――そうしたらあと2、3キロの水抜きになりますね。 「はい。前回も向こうが落ちなくて68kgだったので、もう3、4年は65.8以下をやってない(※ONEは水抜き無しで実質1階級上の体重)ので、自分でも分からない部分があるので。VTJもキャッチウェイトでしたし」 ――VTJ(2021年11月)の河村泰博戦も佐藤選手の強さを再認識させられた試合でした。1R TKOの完勝でした。 「あれもただ“飲み込めた”だけで、そこまで実力差があるわけじゃないと思いますよ。戦い方というか」 ――でも「飲み込める」ということは、引き出しの差があるのではないでしょうか。佐藤選手がそういったMMAの強さを探求してきたなかで、今回参戦するRIZINは「ダメージ」の判定割合が50パーセントを占めるという、3R全体を通した独特の判定システムを採用していますし、選手の中にはエンタメ的なアプローチで人気を得る選手もいる舞台です。そういったRIZINで戦ってみようと考えたのは? 「シンプルにすぐに話をもらえたからというのは大きいです。賛否はありますけど、どこにいても自分であればいいというか。別にRIZINに出たからといって、急に僕がYouTubeを始めるとか、そういうことではないし(笑)。自分は自分の価値観でずっと生きてきてるから、意見が合うところは欲しいですけど、僕の要望は、やっぱり一番は自分が出来るタイミングで試合をさせてもらいたい、そこが一番なので」 ――一時期は横目で見ていたバンタム級GPのメンバーと戦うことになります。 「あのときは“面白そうなことやってるな”というくらいで、自分ごとではなかった。違うところにいて、出ようにも出られる状況じゃないので、別物というか。単純に他の団体、LFAとかBRAVEとか、そういうのを見ているのと一緒でした。そこにいまはBellator勢も入ってきて、さらに面白くなるなという感じはしますよね。メンツがけっこう固定されてきちゃっていたので、僕もそうですけど、外から入ってくる選手がいたほうがもっと面白くなるだろうなと」 [nextpage] ファイトが自分の人生のメインになった ――グランプリを戦ってきた朝倉海、井上直樹といった選手とも自分が戦うかもしれないということは、いまはどの程度リアリティを持って感じていますか。 「まあ“強いな”と思って見ていましたよ。2人ともすごい強いなと。井上選手は少し波がありますけどね。試合によってめちゃくちゃ強いなと思うときと、今回どうしたんだろう、何かおかしいなというときがありましたけど。でも、絶対強いだろうなとは思っていいました」 ――そしてそこに元谷選手もいて。そこの中に混じっていくワクワク感もありますか? 「怖さはありますね。今まで向こう(ONE)でやってて、こっちの評価軸と別なところだったので、比べられないというところはあったんですけど、これではっきり比べられちゃうなって。怖さや不安はあるんですけど、自信もあります」 ――比べられるけれど、でも今までやってきたことが試せる、証明できる場でもあるんじゃないですか。 「そうですね。そういう場ですが“証明したい”という気持ちも別にそんなに無くて。僕は僕でやっているという感覚なんですよね。だから“誰だそいつ?”みたいな感じで言われて、“RIZINじゃ勝てねえだろう”とか言われても、僕は僕でやっているから、あまりそこを気にしてなかったですし、これからもたぶん気にすることはない。僕のMMAは“楽しい”の延長に、ただずっと“強くなりたい”があって、ずっとそれでやっているという感じで、“MMAの妙”もすごく得意ですけど、それをことさら見せたいとかは別に無いんです」 ――では何を? 「やっぱり試合を通して何かを感じてもらえばいい。楽しくて、強さを追求していって、その中でいろいろ、僕も感じることがいっぱいある。たとえば、いいことをしていけばいいことが返ってくるとか、一般にも通じることを伝えていけたらいいなと。格闘技でも練習したらそれだけ返ってくるし、相手に良くしたら相手も良くしてくれる。相手が強くなれば自分も強くなれる。自分だけで強くなろうと思っても強くなれないんですよ。単なる強さ以上に大切なこと。格闘技は個人競技なので、いい意味でも悪い意味でも欠落している選手が多い。数字を追いかけたりとか、それも大事なことですが、それだけに目が行っちゃうと、本当に大切なものは見えなくなってしまう。最後、行く末に、変な結末が待っていないといいなと思うことが多いです。生きていくうえで必要な、大事な部分を、自分の試合や取り組みを通じて感じてもらえたら、と思っています」 ――それをすごく厳しいMMAという競技の中で見せている。佐藤選手にとっては、ファイトが自分の人生のベースにある。ファイトベースなんですね。 「そうですね。たまたまそうなったという感じで。好きでやっていたら、これが自分の人生のメインになった」 ――好きであることと、強くなることだと。そのMMAでさらに強い人たちと関わるということに関しての欲というものも変わらずありますか。 「それをやっていくうえでいろいろ感じてこれたし、いろいろな人と会えたし、いろいろな経験ができたから、好きで学べること、格闘技を通して豊かな人生を送ることに重きを置いていますが、強さを求めることが無くなっちゃうとどうなるんだろうなと」 ――今後、他の試合がまだどうなるか分からないですけど、RIZINのバンタム級戦線でトップを取るということも視野には入っていますか。 「狙うことはあると思います。今回はちょうどリリースしてもらって、これからを考えているときに、急遽オファーだったので、今後については、この試合が終わったらゆっくり考えようと思っています。今は試合に集中しています」 ――太田忍選手との試合は、どんな試合になると思っていますか? 「僕の中では展開はある程度見えているんですけど、どんな展開になっても自分は“全部で戦う”。どっちもキツいと思いますよ。それでも、僕もやってきたことがあるので自信はあります。それでどうにかできると思っています」 ――その後のことはまた。 「またそのとき勝ったら聞きに来てください!」(→※計量前日の佐藤将光インタビュー)
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