クレベル・コイケにRIZIN日本人ファイターとして初めて黒星をつけた金原正徳(リバーサルジム立川ALPHA)が26日、『榊原社長に呼び出されました 2023』に出演。今後の対戦相手として、ヴガール・ケラモフvs.鈴木千裕の勝者を挙げ、さらに朝倉未来についても「どれくらい強くなっているのか、やってみたい」と語った。
2009年10月以来、14年間対日本人で負け無しのクレベルと『RIZIN.44』で対戦した金原。戦前の大方の予想はクレベル勝利というもの。その状況に金原はイラついていたという。
「事前予想番組でイラっとして。さすがに一緒に練習したことがある人は忖度してくれ、と思って(苦笑)。全員、『1R・2Rに負ける』って“コイツら勝ったら、絶対ブッ飛ばしてやるかんな”って。試合前で気が立っているから“予想するんだったら、間違ったら俺に土下座しろよな”って。矢地くんだけですよ、僕に忖度してくれたのは(笑)」
しかし、同時にさいたまスーパーアリーナの観客からは期待も感じていた。
「(「金原」コールは)めちゃめちゃ聞こえてました。それがいま話題になっていて、『クレベル(外敵扱いは)可哀そうだろう』みたいな。試合前のインタビューを見ると、『ほかの日本人選手と変わらない』という言葉を見て、舐められてるなと。逆にそれが自分が突け入るチャンスだなと思っていた。
でも、ほんとうに組んでみないと分からなかった。1R、組んだときに“よし行ける”と。真っすぐガーッと来るパンチの方が嫌だったし、来たらすぐ組むというイメージはあった。(いつも)背中を着くことを嫌がらないクレベルが、背中を着くことをすごく嫌がってレスリングをちゃんとやるようになっていて、そこで逆に組手が嫌なんだな、チャンスだと思って、3R以降それで勝負しようと思った」
初回にクレベルの首投げで下になるもポジションを奪われなかった金原は、クレベルに「ビビらず」に先手を取って、相手が突っ込んできたところにカウンターのテイクダウンを奪取。得意の上からの寝技でパスガードのプレッシャーとともに削り、判定3-0で勝利した。
[nextpage]
引退興行を予定していた日に、フェザー級で復帰した
今回の『榊原社長に呼び出されました』に同席した佐伯繁DEEP代表は、2020年のRIZIN「バンタム級」で金原がビクター・ヘンリーに敗れたときのことを振り返り、「一時は引退興行の会場まで押さえていた」と明かし、金原も「いろいろあって(引退を)止めて、RIZINでの復帰戦(※2021年10月に階級を上げてフェザー級で復帰し、芦田崇宏にTKO勝ち)が、その引退興行と同じ日だった」と、今回の試合が運命的な巡り合わせにあったことを語った。
朝倉未来に一本勝ちしたヴガール・ケラモフが王座に就くフェザー級戦線は、混沌としている。今回、元王者のクレベルが金原に判定で敗れ、クレベルに一本負けした鈴木千裕がパトリシオ・ピットブル・フレイレにKO勝ち。
朝倉に判定負けした牛久絢太郎が萩原京平に判定勝ち。ケラモフに判定勝ちも、朝倉と牛久に判定で敗れ、平本蓮に判定勝ちしている斎藤裕は次戦が決まっていない。そして中原由貴が白川陸斗に、摩嶋一整が横山武司に、それぞれ判定勝ちしている。
金原はこの状況を、「こうなると思っていた。誰が1位になってもおかしくないし、“じゃんけんぽん”になる」と相性の問題としながらも、「ここに強い外国人が入ってきたら、全部、いままでの構図はひっくり返っちゃうなと想像していました。一番、怖いのはBellatorのフェザー級が来てないこと。それが来たときにいまの日本人、人気の話題の選手たちがどこまでやれるか。もうちょっと危機感を持たないと、全部食われちゃうなという感じがします」と、国内での鍔迫り合いの“先”を見据えて戦わなければ、ガラパゴス化が加速すると警鐘を鳴らした。
海外強豪を迎え撃つ立場となった金原だが、その役目は「若手に託したい」とも話す。
「真面目な話、僕が外敵を倒しても将来が無いじゃないですか。だから若い子たちが外敵とやって勝てるのか、負けるのか。“こいつらが世界に行ったときにどんだけ楽しみなのか”という構図にならないと」と、下の世代の奮起をうながした。
「僕自身はいますぐにでも辞めたいくらい」と苦笑するが、佐伯代表は、「実際、金ちゃんを越えられる日本人選手はいるのかな」と、若手の壁となるベテランの次戦の相手に頭を悩ませる。
「個人的には(朝倉)未来選手とのスーパーマッチが見られれば。摩嶋選手とはもうやっちゃったし」という佐伯代表に、金原は、「(摩嶋とは)もうやらないです(笑)。僕は摩嶋と未来、見たいです。(摩嶋は)減量がどうしても上手じゃないけど、一度練習をさせてもらってすごく強いですしね」と、隠れた実力者の上位陣との試合を見たい、とした。
翻って、自身の次戦については、「僕と誰と見たいですか。鈴木千裕? 勝ってくれたらやりたいですね。斎藤裕? これまでやってないですね。(ベテランより若い選手を望んできた?)でもやってみたら差があったんで、あんまり手ごたえがなかった」といい、「手ごたえのある相手」として、現王者の名前を挙げる。
[nextpage]
ケラモフ、朝倉未来とはやってみたい
「ケラモフ? もちろん、やらせてもらえるなら。11月の結果次第で。(ケラモフと鈴木の)どっちがいいというのはあんまり無い。勝った方が強いんで、強い方とやりたい。やっぱりケラモフの方が有利になるとは思いますけど、相性的に。ケラモフとはやってみたい。勝てる部分は全然あると思うし、そんなすぐに取られることはない。また息子に『朝倉未来に勝った外国人とやるんでしょ』って言われるけど」と、アゼルバイジャン大会後にベルトを巻いている王者、とりわけケラモフと勝負をしたい思いを語っている。
そして、当初、RIZINフェザー級戦線に参戦したときに強さを確認したい、と語っていた相手──朝倉未来との対戦も視野に入れる。
「負けて休んでる場合じゃないですよね。練習しないと」と、朝倉に奮起を促す金原は、後輩の未来との試合について「あー、やってみたいですね。僕、一回、話来てましたよね。すごい昔。だって何年かな、(朝倉兄弟が)東京に来たときは、結構一緒に練習してたんですけど、もう5、6年くらい一緒に練習していない。どれくらい強くなっているのか、やってみたい。一緒に練習していると海も含め、その凄さは分からないけど、静岡でメインをやっているときに未来の(人気の)凄さを感じましたね」と、その成長具合を肌で感じたいとした。
榊原信行CEOは、金原の次戦について、「(ケラモフvs.鈴木の)勝った方とやった方がいい」と、タイトルマッチになる可能性を示唆。さらに、「我々からするとBellator勢だったり、米国のトップコンテンダーたち、ニューカマーをこれからフェザー級に呼びたい」と、混戦模様のフェザー級に、さらなる強豪海外選手を招聘したいとも語っている。
対日本人に圧倒的な強さを見せていたクレベルを金原が撃破したことで、RIZINフェザー級のトップは、ケラモフ、金原正徳、クレベル・コイケ、鈴木千裕、朝倉未来がトップ5となるか。
10月1日にアラン・ヒロ・ヤマニハ戦を迎える所英男のセコンドにつく四十路の金原は、「向こうはクレベルがセコンドにつくんですかね。(そこでもう1回?)なんで!?(笑)、勝ち逃げさせてください」と、苦笑するのであった。