2019年8月18日(日)ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催される『RIZIN.18』第3試合にて、Bellatorにも参戦経験のある米国のタバサ・ワトキンズ(Scorpion Fighting System)と対戦するあい(KRAZY BEE)が8月6日、所属ジムにて山本美憂とともに公開練習を行った。
▼第3試合 RIZIN女子MMAルール 5分3R(49.0kg)※ヒジあり
あい(KRAZY BEE)
タバサ・ワトキンズ(米国/Scorpion Fighting System)
レスリングシューズを履いたあいは、1R目は同門の山本美憂を相手にレスリングの打ち込み。シングル・ダブルレッグテイクダウンからパスガードなどを披露すると、2R目は服部竜真マネージャーが持つミットにサウスポー構えから強い右ジャブ、左ストレートを打ち込んだ。
2006年にジュニアオリンピック52kg級とアジアカデット選手権52kg級の二冠を制したレスリングエリートのあいは、アマチュアMMAでは2016年10月のアマチュア修斗全日本選手権女子ミニマム級で優勝、2018年には「格闘代理戦争3rdシーズン」準決勝進出を果たしている。
2018年年末の「RIZIN」でプロデビューを果たすと、仮面女子の川村虹花をパウンドで仕留めTKO勝利。その後もDEEP JEWELSで活躍しこれまでMMAでは4勝1敗の戦績を誇る。前戦は6月のDEEP JEWELSで山口さゆりと1階級上の52.7kg契約で対戦し、2R リアネイキドチョークで一本勝ちをマークしたばかり。
しかし、MMA唯一の黒星が2018年12月の「格闘代理戦争」での古瀬美月戦の腕十字による“見込み”一本負けであるあいにとって、腕十字を得意とするワトキンズの仕掛けの速さには注意が必要だ。
あいと対する米国出身のワトキンズは、アトム級の105ポンド(47.6kg)からストロー級の115ポンド(52.1kg)を主戦場としているグラップラー。3勝中2つの1本勝ち(腕十字)を記録する極めの強さが特徴的。
17歳で柔術を習い始め、半年後にはアマチュアMMAの試合に出場。アマ3勝3敗の戦績で、2015年5月の「WXC 57」ではRIZINにも参戦したことがあるシーナ・スター(※真珠に一本負け)に1R 1分02秒に腕十字で一本勝ちを収めている。
2017年2月のプロデビュー後、初陣を判定で勝利すると、2018年3月の「PFO」、2019年1月の「Valor Fighting Challenge」でいずれも腕十字で一本勝ちしデビュー3連勝を飾るも、続く2019年2月の「Bellator215」では、6月の「Bellator222」でRENAに一本勝ちしたリンジー・ヴァンザントに左ストレートでTKO負け、プロ初黒星を喫した。2019年4月にはシャノン・ゴーガリーにも2R TKO負けで連敗中なだけに、日本で再起を期す。
長い手足を持つワトキンズは打撃ではジャブから、打点の高い前蹴りなどキック主体にスタンドを戦い、組みでは対戦相手に投げられる場面も見せるが、ボトムからの仕掛けが速く、投げられた段階でガードのセットアップに入っている。
あいとしては、スタンドで劣勢にならずにいかに自身の形で組めるか。投げてからもバックを許さず、美憂がアドバイスする通り「手の置きどころに注意しながら」腕十字やラバーガードを潰し、得意のパウンドを当てたい。下からオーバーフック、あるいはヒジ・手首を抱えてセットアップしてくるワトキンズに対して、「ヒジ打ちも練習している」という。
レスリングでは国際戦の経験も豊富なあいだが、MMAでは初の海外勢との試合になる。また、ワトキンズはBellator参戦経験もあり、RENAに一本勝ちしたヴァンザントと腕十字合戦を繰り広げるなど、メジャーでの実力測定がなされている選手だ。あいにとっては女子アトム~スーパーアトム級で世界での立ち位置が見えてくる試合となる。
「Bellatorに出てる選手とどこまで良い試合が出来るのかは、自分のいまの強さを測るのにも凄く良いと思うので、この試合に勝って終わらせたいです」というあい。
公開練習であいの相手を務めた山本美憂は、「レスリングが持ち味だけどが、打撃を怖がらずにガンガン前にいけるのが武器」とあいを評価し、ハム・ソヒと10月12日『RIZIN.19』大阪大会で対戦する自身の今後については、「毎回、対戦相手が強くなっていくのは当たり前なので、一戦一戦勝って、その先に色んなものが付いてくるのかなって思っています」と、ROAD FC王者との対戦に落ち着いた口調で語った。
以下、公開練習後の一問一答。
あい「(RENAに一本勝ちしたリンジーとワトキンズの試合を見て)やっぱり強いなと思いました。もうちょっとレスリングを足していけたら……」
──試合が迫ってきましたが、率直な心境は?
あい そうですね、調子も良いのでこのまま順調に試合まで行けると思います。
──昨年末にRIZINでプロデビューしてから8カ月になります。ご自身で成長したと思う点は?
あい 年末からはだいぶ成長出来ていると思います。やっぱり年末の時はまだ何も格闘技が出来ない状態でリングに上がったので、そんなにいいパフォーマンスが出来ていなかったと思うんですけど、徐々に色んな事を覚えて、パウンドだけじゃなくて他の極め方だったり打撃を覚えたので、いろいろ出来ると思います。
──美憂選手から見て、あい選手の成長はどのように感じていますか?
美憂 レスリングがやっぱり持ち味じゃないですか。でも打撃を全然怖がらず、自分から前にガンガン行けるので、そこはすごい武器だと思います。
──あい選手は対戦相手の映像ですが、勝った試合も負けた試合も見ましたか?
あい 両方見ています。
──どんな印象ですか?
あい 柔術が上手で極めて勝っているので、そこはちゃんと対策して試合に臨みたいなと思っています。
──RENA選手に勝っているリンジー・ヴァンザント選手がワトキンズ選手にTKO勝ち(2019年2月の「Bellator215」)しています。その戦い方は参考にしていますか。
あい そうですね、その試合も見させて頂いたんですけど……正直、その試合を見てやっぱり強いなと思いましたね。なので、もうちょっとあそこにレスリングを足していけたらなと思っています。
──投げられることもあるワトキンズ選手ですが、下からの仕掛けが強い選手です。オーバーフックに巻いてきたり、ラバーガードをしたり……その対策はKRAZY BEEのチームで対策を?
あい そうですね。柔術の先生とかに徹底的に教えていただいて、ずっとその対策はやってます。
──美憂選手にとっても、下から極められる事は今はないですが、その点でアドバイスも?
美憂 今は、はい(笑)。失敗があってここまで来たので。でもまだまだです(笑)。あいもそこの部分は私を見ていれば分かると思います。置いてはいけない手の場所とか、それさえ気をつけていればレスラーは上のバランスは強いので。下からの仕掛けだけは防いで。
──プロデビュー後、初の外国人選手との試合になりますが、何か特別な対策などは?
あい 同じ体重でも体・骨格が大きいので、やっぱり力が絶対あると思うので、私も負けないように力はつけてます。
──どんなフィジカル練習を?
あい ウェイト全般だったり、ロープ登り、懸垂とかレスリングの時にやっていた事を中心に、プラスで細かいところをフィジカルの先生にパーソナルで見てもらっています。
──フィジカルで不安を感じたことも?
あい 一番動けた時のフィジカルまでは戻り切ってはいないので、ほぼ8割ぐらいは戻ったかもしれないけど、あと2割くらいをしっかりつけていきたいなと思います。
──レスリング時代はどういう強さに自信がありましたか。
あい あんまりレスリングの時は相手の力が強いなとか、自分が結構、力強い方だったので心配が無かったんですけど、まだ、美憂ちゃんとかの身体を見てもらえればわかると思うんですけど、同じ階級でやっていくにはフィジカルが足りないかなと思っています。
──レスリングから離れて総合の練習をしていくうちにフィジカルが衰えた?
あい いえ、そういうことではないですね。同じくらいやってるんですけど、レスリング時代は小さい頃から継続して作り上げたものがあるので、今は「格闘代理戦争」から初めて10カ月しか経っていないので、流石に戻りきらないなという感じですね。
──フィニッシュにはこだわっていく?
あい したいですね。今回は打撃には拘っていないですけど、フィニッシュは出来ればいいなと思っています。
──美憂選手はあい選手との接点は?
美憂 本当に(あいが)子供の頃。はい。
──どんな先生でした?
あい すごい優しかったです、美憂ちゃんは。
美憂 (自分は)先生というか、なんかチームメイト(という感じで)、歳は全然違うけど、コーチがいて先生がいて、その下で一緒にやっているというか。
──コンスタントに試合をするあい選手の姿勢を見ていかがですか?
美憂 いやいや、一応(総合では)先輩なのであいの方が(笑)。でも自分がプロとして出てて、あいも今、RIZINで活躍するようになってすごい嬉しいというか、一緒のところで戦えるのがすごい嬉しいですね。
──今回はヒジありルールです。上のポジションを取るとワトキンズ選手は下から手首を持って腕十字を狙ってくることがあります。手首を持たれてもヒジは打てる、そこにヒジを当てようということも考えていますか。
あい はい。それはありますね。
──その練習もしていますか?
あい はい、しています。
──血まみれに(する)?
あい フフフ(笑)。
──RIZINでの目標は?
あい 今は明確な目標は作らないようにしているんですけど、「格闘代理戦争」から初めて、今年は1年間、年末まではなりふり構わず一戦一戦にかけようかなと思っています。
──「目標を作らない」というのは?
あい 大きい目標とかは、まだそんな事を言う立場でもないかなという感じですね。
──「今までで一番厳しい戦いになる」とコメントしていましたが、今回の相手に勝てば、世界の中でも位置付け見えてくると思うのですが、そういうことを考えたりもしますか。
あい そうですね。自分がどこまで戦えるのか、Bellatorに出てる選手とどこまで良い試合が出来るのかは、自分のいまの強さを測るのにも凄く良いと思うので、この試合に勝って終わらせたいです。
──「年末までは」と言っていましたが、大晦日を狙っている?
あい そうですね、はい。出場したいと思っています。
──美憂選手としては今後のプランは?
美憂 一戦一戦、毎回毎回、対戦相手が強くなっていくのは当たり前なので、一戦一戦勝って、その先に色んなものが付いてくるのかなって思っています。
【関連記事】
朝倉未来、そして上迫博仁がRIZINで勝つ理由とは?
元UFCの実力派トラッシュトーカーと対戦する越智晴雄「頭はクールに心はホットに戦います」