(C)ONE Championship
8月2日(金)フィリピン・マニラで行われる「ONE:DAWN OF HEROES」において、マーチン・ウェン(豪州)が持つONEフェザー級王座に挑むことが決定した松嶋こよみ(パンクラスイズム横浜)。
6月15日の上海大会でのONE第2戦での勝利から1カ月半と短いスパンでの挑戦となるが、幼少から空手、柔道、レスリング、キックボクシングと戦いの中に身を置いてきた松嶋にとって、それは決して不利には働かない。「シンドい試合」を覚悟し挑む松嶋に、決意を聞いた。
――前回の試合(6月15日上海大会でクォン・ウォンイルと対戦)からすぐにタイトルマッチが決定となり、驚いたのではないですか。
「試合が終わってすぐで、こないだの試合もあまりいい勝ち方とは言えなかったので、このタイミングで来るとは思っていなかった、というのはあります。でも、今回の前にも1度タイトルマッチの話があって、その時は怪我があってできなかったんですけど、こうやってオファーが来たらやるつもりでいたので、タイミング的にはビックリですけど、チャンスだなという風には思っています」
――前回は怪我で致し方ありませんでしたが、チャンスが差し出されれば断ることはしないと。
「やっぱり今断っちゃったら次いつできるか分からない、そう考えるとここでやるしかないのかと思って覚悟を決めた感じです」
――前回の試合はケガからの復帰戦で、久々となるリングでの試合であり、普段といろいろ感覚の異なるところがあったのではないですか。
「リングの試合自体が新宿FACEでの修斗の新人王決勝(15年12月)以来というぐらいなので結構空いていて、新宿FACEとリングの大きさも全然違うし、その後ずっとケージでやっていてケージの方が慣れているので、その部分ではやっぱりやりにくいなぁっていう感じはありました」
――試合間隔が空いたことについてはどうでしたか?
「なんか気持ちの準備が難しかったというか、ある程度のスパンでずっと試合をしていると気持ち的に積み重ねていける部分はあるんですけど、今回はそういう部分がちょっと足りなかったなって。“あれ、こんな感じだったっけ?”っていう心配とかもすごくありました。ただ向こうでは体の調子がよかったので気持ちと体のバランスが上手く取れていなかったっていう部分はちょっとありました」
――試合前の気持ちの整え方だったり、期間が空いたことで分からなくなってしまったところがあったのでしょうか。
「そうですね、実際殴り合うってなるとやっぱり練習とは全く違うものじゃないですか。そうなるとちょっと難しい部分はありました。ほんと小っちゃい頃から格闘技を始めて、こんなに期間が空いたのが多分人生で今までなかったっていうぐらいだったので。大きな怪我も今までそんなにしたことがなくて、だからそういう部分ではちょっと気持ちの準備とかも難しかったっていうのと、感覚がまだ戻ってなかったなっていう感じは試合をしていて思いました」
――逆にこれまでは試合、戦うことがコンスタントにある人生だったと言いますか。
「はい(苦笑)。1年間で何大会出ていたか分からないですけど、小っちゃい頃からずっと戦ってやっていたので、そう考えると“こんなに戦ってないの初めてだなぁ”ってちょっと思いました」
――では、前回の試合は復帰戦で試合間隔が空いていたこと、リングという2つのイレギュラーがあったと。
「そうですね、それと予想以上に相手が強かったっていうのもありました。もっと(相手が)できないと思っていた部分があったんですけど、そんなに甘くないなぁっていう。倒されてからの対応とかも他の試合を見てもっと下手かなと思っていたんですけどちゃんと対応してきて、僕が倒してから上手く作れなかったのもあるんですけど、向こうの対応がすごい上手だったなっていう感じはしました」
――復帰戦を終えたと思ったらすぐに今度はタイトルマッチとなり大変だなと思いましたが、先ほどの話を聞くと試合間隔は空いていない方が松嶋選手はよさそうですね。
「そうですね、逆にこないだの試合で浮かれることもなく、気持ちが切れるという感じでもなかったので、逆にこのタイミングでよかったのかなって。もちろん追い込みが続いて精神的にキツい部分はありますけど、格闘家なので戦ってナンボ、戦わないといけないので、そう考えるとよいタイミングでオファーを頂いたと思っています」
――そういった緊張、心身ともに追い込んだ状態が続くことにシンドさはありませんか?
「いや、ありますね(苦笑)。もちろん精神的にキツい部分もあるし、体もやっぱり疲れが抜け切れなかったりとかもしてきて、でもどんどんどんどん試合をした方が強くなると僕は思います。だからこそオファーを受けてしっかり勝ちたいと思って準備をしていますし、相手も5ラウンドを何回もやっていて、そのための追い込みの練習もずっとしていると考えたら絶対強いのは間違いないので、そこと戦うことを考えると僕ももっとキツいことをしていかないといけないと思うし、でもキャパオーバーをしないよう、難しいです」
ウェンが今まで経験したことがないような選手として戦わないと勝てない。北岡さんからも『絶対シンドい試合をするしかないから』と言われている
――王者マーチン・ウェンの印象をお願いします。
「打撃のオーバーハンドが一番目立つ武器だと思うんですけど、何でもできる選手だと思うし、その中で意外と組みもしっかり強いっていうのがあるので、その上手いところでかち合わないよう戦わなければいけないなっていうか。試合展開の作り方も上手いので、相手が今まで経験したことがないような選手として戦わないと勝てないかなっていう風には思ってます。例えば(ケビン・)ベリンゴンとやった時も、あのスピードをあまり経験してないからついていけなかったりしていたと思うんですよね。だからそういう部分で戦っていかないとっていう風には考えています」
――ウェンにとって未知・未経験の部分を作り出さなければいけないと。
「もう何が何でも組み倒してずっと漬けてでも立たせないとか、そういう気持ちの部分でも相手が折れるような戦いをしなきゃいけない、そうしていきたいっていう考えです。上手く戦おうとしたら絶対向こうの方が上手だと思うし、強打に関しても間違いなくあの当て勘には僕の当て勘じゃ勝てないと思うので、だからそこで戦うつもりは全くないし、シンドくても5分5ラウンドっていうつもりで戦いたいと思っています」
――それこそ北岡選手はセコンドにつくと、キツいことをやれ、シンドいことをやるぞといった指示を送っていますね。
「今回も試合が決まった時『絶対シンドい試合をするしかないから』という言葉を頂きました。もちろん僕もそういう風に思って準備をしているので、最後まで走り抜けたいっていう感じです。多分それしか勝てないだろうっていう感じはします(苦笑)。その中でどれだけ自分のよいところを出して相手を嫌がらせて、という風にできるかが勝負のポイントだとは思います」
――1発当たって倒れてくれないか……とかそんな甘い思いを持って挑んではダメだと。
「ガフロフ戦が結構いい勝ち方をしてその余韻に浸っていたのかもしれないですけど、“これ倒せるんじゃないか”と思っていたのが前回の試合で失敗した部分で、でもやっぱりそんなに甘くないというのをちゃんと思い出させてくれた試合でした。だからもうほんとぶっ倒れてでも最後までやり切りたいと思っています」
――練習の具合はどうでしょう、順調に行っていますか?
「変に今から入れてももうあまり時間がないので、今できることを出し切れるように準備をしている感じです。こないだの試合で悪かった部分をプラスしていこうと思っていたんですけど、その期間がなくて作り切れないので、それだったら今できることで勝負するしかない、そこで戦っていきたいと思っています。本当にしっかりMMAとして、打撃をして組みをしてというイメージです」
――日本人王者の誕生を期待しているファンへメッセージをお願いします。
「ほんとにシンドい試合になると思うんですが、5分5ラウンド、25分間自分の力を最後まで出し尽くせるよう準備して試合に挑みたいと思います。応援よろしくお願いします」(取材・文=長谷川 亮)