カーフキックは「長倉蹴り」。4、5種類を使い分けている
――バラット戦では得意のカーフキック(相手のふくらはぎを蹴るローキック)が見られませんでした。
「キャッチされたりするのも嫌だったし、相手がサウスポーだったから出さなかったというのもありますね。出す時と出さない時の判断は、相手の立ち方とか体のバランスとか、色々を見てその時に決めている感じなんで」
――カーフキックにはふくらはぎより低い位置を蹴ったり、足を引っ掛けるように蹴ったりするものなど種類がありますが、和田選手のキックはどういうタイプですか?
「色々使い分けていますね。正面から蹴る場合、体重を乗せて蹴る場合、足首を返して蹴る場合、位置をずらして蹴る場合。ちなみに、僕は“長倉蹴り”って呼んでいるんですよ」
――長倉蹴り!? 元同門の先輩で、DEEPなどで活躍する長倉立尚選手ですか?
「はい。最近カーフキックがメチャクチャ注目されてるんですけど、僕からしたら『遅せえな気づくの』って。何を今さら騒いでるんだよと。それが使えるってこっちは気づいてるんだよと」
――そういえば長倉選手のローの威力は有名でした。いつぐらいからカーフ……長倉蹴りを使っているのでしょうか?
「長倉蹴りの歴史は結構古いですよ。ちょっと待ってください。(スマホで自身のTwitterをさかのぼって)2012年の11月27日に、こういうツイートしてるんですよ。
今日もアライアンスでぐっとな練習ができた。
— TATSUMITSU WADA 和田竜光 (@tatsumitsu13) November 27, 2012
長倉蹴りのコツを教えてもらってさらにべりぐっとでした。
ありがとうございました(^ ^)
――「今日もアライアンスでぐっとな練習ができた。長倉蹴りのコツを教えてもらってさらにべりぐっとでした。ありがとうございました(^ ^)」とありますね。これはやはり長倉選手に教えてもらった?
「はい。長倉さんに教えてもらいました。もともと長倉さんが使っていて、くらって『いってえってな』って。それでコツを教えてもらったんですけど。その後大沢(ケンジ)さんが試合の解説で“すね蹴り”とか“カーフキック”という言葉を使うようになったんですけど、僕の中ではこれは長倉蹴りなんです」
――教わった当初から何種類も蹴り分けていたのでしょうか?
「自分なりに改良しています。相手の立ち方とバランス、一番は距離感によって蹴り分けています」
――何種類くらいあるのでしょう?
「角度をちょっとずらせば変わって来るので無限にある感じですね。ただ入りの打ち込みでいうと……4種類か5種類はやっていますね」
“リング”はアクシデントが起きやすい場。DJにとってマイナスになる部分が出てくるかもしれない
――なるほど。得意技について聞かせて頂いたところで、次戦は大一番、元UFCフライ級王者でもあるデメトリアス・ジョンソン(DJ)との一戦です。DJの印象はいかがですか?
「もちろん寝技・打撃のスキルは高いんですけど、その混ぜ方が抜群に上手い。打撃から組技、組技から打撃、寝技からスタンドへ行くキワ、その辺の使い方がもうめちゃくちゃに上手いので、ディフェンスも含めて全部が一つというか。そこがすごいなと思っていますね」
――その中で和田選手が対抗できる部分はどこにあると思われますか?
「うーん……。自分が勝っているポイントを探すのは難しいです。でもMMAなんで、一個一個のレベルは勝てていないと思うんですけど、MMAだからこそ通用することはあると思うんで。難しいんですけど……。メイウェザーにボクシングで勝つことはできないけど、キックボクシングだったらパンチでKOすることはあると思うんですよ。MMAだったらなおさらその幅が広がってパンチで倒せる可能性が増えるというか。僕らがやっていることはMMAなので、一個一個のレベルはDJには勝てていないんですけど、それを繋ぐことで攻撃を当てられることができる競技だと思っています」
――DJのONEデビュー戦である前回の若松佑弥戦(2Rノーアームのギロチンチョークで一本勝ち)はご覧になっていかがでしたか?
「DJも人間なんだなと思いましたし、ただやっぱり強いなと思いましたね。パンチを嫌がる場面もあったんですけど、じゃあ違うところで攻めればいいや、という切り替えの早さと、それをすぐに実行できる技術、それが体に染みついている。どういうプランだったか分からないけど、それを急きょ変更できる選手だと思うし、フィニッシュの引き出しも多い選手だと思います」
――練習仲間でもある若松選手から何か言われたことは?
「DJとの試合後に、どうだった? と聞いたら、手ごたえを感じたという話も聞けたので、やっぱりDJも人間だなと思いますし。佑弥の中でも自信になった部分もあったと思います」
――DJとの試合はケージでなくリング。リングでの試合経験でいうと、和田選手にアドバンテージあります。
「そういう部分はあると思います。僕はDEEP育ちでリングでの試合はいっぱいやってきたので。DJよりもリングは慣れているなって思っていたんですけど、よく考えたらDJのジムはどうせデカいからリングあんだろと(笑)。ああ、アイツ俺よりもリングで練習してる、まずいなと思ったんですけど、いや練習と試合では違うんだと。
【写真】RIZINでもカイカラフランスにカーフキックを決め、判定勝ちした和田。フランスは現在UFC2連勝中だ。
ただリングっていうのはケージと違って“アクシデント”が起きやすい場だと思うんです。僕は正直MMAというのはケージでやるものだと思っています。そもそもケージだと体が外に出たり指とが引っかかったりということがほとんどないじゃないですか。なので選手の強さがフルで出るというか、壁際でのレスリングが強い人がトップを取る、立ち上がるのが上手い人が立ちあがる。でもリングだとそれとは違うものも出てくると思うんですよ。例えば攻めている方の人が相手に組みついてクラッチを組んだらロープに引っかかっちゃってリフトしたいけどできない。そこで手を組み替える時に逃げることができたりと。
それは僕にとってプラスになるのかDJにとってプラスになるのか分からないですけど、もしかしたらDJにとってマイナスになる部分が出てくるじゃないですか。そこに関してはもしかしたらケージよりも勝つ可能性が上がるのはリングなのかもしれないですね。ただリングに関して僕にアドバンテージがあるのかは分からないです」
――そういったことも踏まえ、次戦ではどのような戦いを見せたいですか?
「僕が一番戦ってみたかった。昔からMMAで一番戦い方を尊敬しているのがDJなんですよ。そんな選手と戦えるんだから自分が持っているモノを全部出せるような試合がしたいなと思いますね。これが開始5秒で負けちゃったらせっかくのDJと触れ合える時間がすぐ終わっちゃう。それは嫌なんで、いっぱいゴロゴロして、スクランブルして、パンチくらったりくらわせたり、持っているモノを全部だして、結果どうなるかはそこからだなという感じですかね。
とにかく自分がやってきたことがどのくらいできるのか、通用するのかというのを試したいなというのがあるんで、楽しみでしかないんです。自分がここまで格闘技をやってきて、今これだけのモノになったな。というのを確かめることができる相手、そしてDJ以上にそれを確かめることができる相手はいないと思っています」
(取材・文=服部吉弥)
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