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【RIZIN】サトシが語る、クレベルの残り10分の400g「彼は『信じられない、最後まであきらめない』と言って、泣いた」──どうなる? タイトルマッチ

2023/07/05 19:07
 2023年6月24日の『RIZIN.43』メインイベントの「RIZINフェザー級タイトルマッチ」にて、400gの体重超過で「王座剥奪」となったクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)について、試合前日の14時リミットまで減量に付き添った同門のホベルト・サトシ・ソウザが、クレベルに何が起きていたのかを、自身のYouTubeで語った。 クレベルの身体、今日ちょっと変だなと  試合前日の午前11時から午後2時まで行われる計量。前々日の22日の時点でクレベルは残り3㎏まで減量していた。  計量当日の朝に最後の水抜きをするサトシに対し、これまでクレベルは計量の前日の夜にはリミットの体重を作っていたが、この日は、異変があったという。  サトシは、「みんな知らないだろうけど、いろいろと私とクレベルでやった。北海道に来たときはあと3kgくらい。(試合前日の)朝に体重チェックをするから、いつもクレベルは前日の夜に体重が出来る。私の場合はいつも計量と同じ日に体重を落とす。12時に計量なら朝8時くらいに起きて、だいたい4kgくらい落とす。そんなにたくさんではない。UFCの選手は6kgくらい(落とす選手もいるから)。私は4kgだけ。  クレベルはいつも(計量)1日前には体重が出来るけど、今回はもっと難しかった。朝、7時か7時半に起きたときにあと2kgだけ(残っていた)。ほんとうにすごい少なかった。プロの選手なら2kgは普通、簡単と言うと思う。お風呂と布団で水抜きして、私なら1時間で2.5~2.8kg、たまに3kgくらい、その1Rで落ちる。クレベルはその1Rやって200g(しか落ちなかった)」と、計量当日の朝に2kg残しのクレベルの水抜きが、いつものように落とせなかったと語る。  2R目は、風呂にエプソムソルトと無水エタノールを入れて、浸透圧による脱水で皮下水分を排出する方法に。  サトシは、クレベルと「しょうがないからもう1回、やろうと。プロ選手がやる塩(エプソムソルト類)とアルコール(無水エタノール)を入れるともっと汗が出るから、クレベルはあと40分くらいそれをやって、また体重チェックした」──結果、そこでも減量は「100g(だけ落ちた)」と、ドライアウトは思うように進まなかった。  水抜きに付き添い、クレベルの身体に異変を感じていたサトシは、「その時に私は“えっ、身体今日ちょっと変だな”と。サウナはあまり好きじゃないけど、1時間半かかって合計300gだけ(しか落ちなかったから)しょうがないからサウナに一緒に行って──私は30分くらいで汗でびしょびしょになって体重落ちてヤバいなって思ったくらいだけど──クレベルの身体が心配だから隣で一緒に入って。このタイミングで12時くらい(※リミットの14時まであと2時間)。クレベルはちょっと汗が出るけどほんとうに少ない。30分くらい入ってまた体重をチェックして、また200g(だけ落ちた)。このときに12時半くらい。8時から12時半くらいまでやって、500gくらいしか落ちなかった」と、絶望的な状況だったという。 「あと1.5kgを1時間半で落とさなくちゃいけなかった。そのあともいろいろやった。水を飲めないなか、お風呂、サウナ……今回は、彼の身体が分からないけど、ほんとうに変だった。私が4kg当日に落とすときも2Rやったらほんとうに疲れる。“もう動けない、すぐ体重チェックしたい”となる。歩いても話できない。  クレベルは8時から13時まで繰り返しお風呂とサウナをやっているから危なくて心配だった。普通の人ならすごく危ない。彼はすごい疲れていたけど“まだ出来る”って言うから最後まで行って、もうほんとうに出来ない(のに)最後の13時半くらいにまたサウナに一緒に行って、25分くらい、だいたい13時50分まで入った」  計量のリミットまで残り10分、サウナにともに入っていたサトシは、クレベルの身体に汗として出るべき水分が残っていないことを感じたという。 「私は身体びしょびしょだけど、ヤバいのは彼を見たらおでこに何も出ない。もうおかしいほんとうに。サウナはほんとうにすごく暑くて、私は鼻までちょっと痛かった。(鼻で)呼吸すると熱いからヤバいなって(鼻を押さえる)。でも彼は全然汗が出なかった」 [nextpage] 髪を切り毛も剃るというクレベルに、サトシは「無駄だ」と諭した  最後に体重計に乗る時間が近づいていた。「あと10分で、最後の計量の14時。私はクレベルに『ごめんね、でももうしょうがない。水が出ないから、後もう5分で行こう』って言いました。このとき、彼は『もう信じられない、最後まであきらめない』って言って、彼は結構泣いた」  クレベルは、サトシに手足の毛も剃って髪も切る、と主張したが、サトシは「それは無駄だ」と諭した。 「私は彼の気持ちはよく分かるね。試合のことだけじゃなくて、皆が待っているからね。彼のRIZINのベルトの初の防衛戦。ファンもスポンサーもRIZINもみんな待っているから、彼が出来なかったから、ほんとうに気持ちが分かる。一番悲しいのは、ほんとうに彼は頑張った。たくさんの選手が体重オーバーするけど、“あーもうしょうがない、私、出来ないな”と思っている。でも彼は最初から最後までほんとうに頑張った」  最終計量は66.40g。「400g」の体重超過でクレベルは王座剥奪となった。  試合は規定により、クレベルに20パーセントの減点(イエローカード)が課せられた上でスタート。鈴木が勝利した場合のみベルトを獲得。クレベルは試合前に王座剥奪となり、勝利しても「ノーコンテント」で白星はつかず、王座は空位となることが発表された。  クレベルに限らず、すべてのファイターは、この試合前の“もう一つの試合”ともいえる計量を戦い、マットに向かっている。サトシは言う。 「なんで水が出ないのか、なぜ今回だけ彼の身体が変なのか分からない。1個だけ今回は違う。いつもRIZINで試合をするときは東京とか大阪とか、いつも車で行く。今回は北海道だから飛行機で行った。私、彼とちょっと話したのは、たぶんこれかな、と思っている。2時間で早く着くけど、飛行機の問題は高いからプレッシャー(気圧)が。それだけ私は考えた。それじゃないかもしれないけど分からない」と、気圧が身体に影響を与えた可能性を語る。 「計量失敗後に彼はたくさん泣いたけど、私は彼と話した。『仕方ない。これからベルトは無し。絶対にあなたのヘイトの人たちがいろいろ悪いことを言うから、それはしょうがない。体重オーバーはもちろんあなたのせい。それは変わらない。でも絶対また応援している人がサポートをするから。もちろん嫌いな人はもっと言うけど』」と、クレベルに声をかけた。 [nextpage] 帰ってきた柔術の鬼神「誰かがこのタイトルをかけて戦うのは正当ではない」  ギリギリまでの減量のダメージとリカバリーの難しさ、さらに本計量後の公開計量でもファンの前で計量ミスを謝罪したメンタルをサトシは心配した。いつものように戦いに向かえるのかと。 「フェイストゥフェイスも(下を向いて)全然違ったし、試合の日は彼の頭(気持ち)が心配だった。試合当日の朝までは彼はまだ普通ではなかった。リングチェックもやってなかった。でも、彼がバンテージを巻いてからは普通に戻った。スイッチが入った」  バンテージを巻いてオープンフィンガーグローブを着け、セコンド勢とハグをかわしたクレベルは、マットに跪いてから、リングインした。その表情はすでに鬼神と呼ばれるものだった。  20パーセント減点。判定になれば挑戦者に有利な状況下、クレベルは鈴木につけ入る隙を与えず。鈴木の打撃に自らも左右を振って、シングルレッグ(片足タックル)からボディロックでテイクダウン。すぐにマウントを奪い、三角絞め狙いから腕十字に切り替えて、タップを奪った。  試合後、クレベルは400gの体重超過を「ときにコントロールできないことがある。神がそうしたかったのだと思う」と振り返り、「どの時点で勝てると確信したか?」の問いには、「勝ちを確信したのは昨日。(体重)オーバーした瞬間、自分は絶対に勝つと確信しました」と語っている。  そして、手放したベルトを再び取り戻す決意を示した。  サトシは、コンディションが良くないなか、それでも強さを見せたクレベルを「レベルが違う」と評した。 「400gオーバーしたけど、試合ではまた魅せたね。レベルが違う。彼の気持ちは分かる。ベルトを獲るまで道が長かった。今回頑張ったけどしょうがない。絶対に今年中にベルトを取り戻せるから頑張りましょう」  クレベルも王座戦について、自身に優先権があると信じている。 「正当に考えて、朝倉選手とケラモフ選手の勝った方とタイトルマッチをやるのが正しいと思います」  ベルトを剥奪された元王者が、変則王座戦で一本を極め、ベルトを取り戻すべく、次戦で王座戦が組まれた例がある。  2022年5月の『UFC 274』で当時のライト級王者シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)が0.5ポンド(226g)体重超過。王座を剥奪されたオリヴェイラは、変則王座戦でジャスティン・ゲイジーを1R リアネイキドチョークで極めた。  試合後、ダナ・ホワイト代表は「オリヴェイラは、彼が最強で最高の人間だと証明した。いいか、彼は、漢だ。ただ、ルールというものがある。彼は体重を作れなかった。だがいいか、みんな、プレスだろうがファイトファンだろうが、皆の心に“彼がチャンピオンだ”という意識は、はっきりと存在しているんだ。しかしながら、テクニカルな意味で、今大会の結果において彼はナンバーワン・コンテンダーとなっている」と語り、記者から「どうあれ次のタイトル戦の片側には彼の名があると?」と問われ、「100パーセントだ」と語っている。  その言葉通り、試合を評価し、元王者に敬意を表したUFCは、同年10月のイスラム・マカチェフとの「UFC世界ライト級王座決定戦」の機会を与えている。  大会前日に、榊原信行CEOは「クレベルが勝ってノーコンテストに持ち込むことになれば、次、我々が一旦預かるベルトをかけて、タイトルマッチに持っていけるんだろうなと思います」とコメント。  大会後には、「朝倉未来vs.ヴガール・ケラモフが次期挑戦者決定戦」となり、その勝者がクレベルと「王座決定戦」を戦う流れについて、「そういう流れになるのかなと思いますけれどね」と、大筋で認めつつも、「クレベルがこれでタイトルマッチの挑戦権を得たということでもないのかなと思っているので。そこも含めて7月のケラモフと未来の試合をどうするのかも少し考えて、この先の大会の中でフェザー級のタイトルをどこでどういう形にするかを考えたいと思います」とも語っている。  果たして「空位」のRIZINフェザー級のタイトルマッチは、いつどんな形で組まれるか。  5連勝中だった鈴木を相手に、圧倒的な強さを見せたクレベルは、「今日の試合も自分は負けていない。いま自分の腰に実際にチャンピオンベルトは無いけれども、自分の名前がチャンピオン。誰かがこのタイトルをかけて戦うのは正当ではないと思っています」と語っている。  7月30日の『超RIZIN.2』で勝つのは朝倉かケラモフか。クレベルは、その勝者を待っている。
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