MMA
インタビュー

【UFC】試合を渇望した平良達郎、松根代表「あんなに落ち込んだ達郎を見たことはなかった。いまは試合が決まって燃えています」

2023/06/29 12:06
 2023年7月8日(日本時間9日)米国ネバダ州ラスベガスのT-モバイルアリーナで開催される『UFC 290: Volkanovski vs. Rodriguez』に、日本の平良達郎(Theパラエストラ沖縄)が緊急出場することが決定した。  本誌『ゴング格闘技』では、平良陣営にこの経緯を取材。UFC3連勝中の平良がいかに試合を望んでいたか、今回の2週間間隔での連戦に、どんな覚悟で臨むのかを、至近距離から見てきた松根良太代表に聞いた。  平良は、6月24日のUFCフロリダ大会でクレジソン・ホドリゲス(ブラジル)と対戦予定だったが、ホドリゲスが3ポンド(1.3kg)の体重超過。陣営はホドリゲスが2試合連続の体重超過のうえ、前戦で白星を掴んでいることも鑑み、試合を受けないことを決めていた。  陣営の説得を受けていったんは試合を諦めた平良だが、松根代表は「達郎はひどく落ち込んでいて、僕も“こんな達郎、見たことない”と思うほどでした」と、いう。 「対戦相手が誰になるのか分からなくても、試合がしたい」という平良の意向を受け、イリディウム・スポーツ・エージェンシーのジェイソン・ハウスCEOから、2週間後のラスベガス大会、7月ロンドン、8月シンガポール、秋の大会などの提案があり、平良陣営はラスベガスを選択。そこで同じイリディウムがマネジメントするメキシコのエドガー・チャイレスとの130ポンド(58.96kg)契約試合が決定した。  対戦相手の“ピットブル”チャイレスは、MMA10勝4敗。10勝のすべてをフィニッシュ(6つの一本勝ちと4つのTKO勝利)勝利しており、緊急出場で戦うには危険な相手だ。 「8月のコンテンダーシリーズに再び出ることも決まっていた選手が、達郎の相手として推薦されて契約を掴んだので、絶対的に高いモチベーションでUFCデビュー戦に臨んで来ると思います。そういったリスクを踏まえても、達郎はやってくれると思います」と、松根代表は、試合を渇望した平良に期待を寄せる。  果たして、計量からこの5日間に何が起きていたのか、チーム平良はこれからどんな戦いに向かうのか。聞いた。 [nextpage] 2週間後、また同じ減量をして、気持ちを作ってというのは、普通の選手だったら出来ない(松根) (C)Matsune Ryota ──6月24日のUFCフロリダ大会で対戦相手のクレジソン・ホドリゲス選手が3ポンド(1.3kg)オーバーで、試合は見送られました。その2週間後のラスベガス大会『UFC 290』で、平良選手が試合を行うことになったと聞きました。松根代表から経緯を教えていただけますか。 「最初は相手選手(ホドリゲス)が4ポンドオーバー(1.81kg)と聞いて、計量では3ポンドだったんですけど、それでも『試合はさせることは出来ない』と自分とマネージメントのイリディウムのジェイソン・ハウス代表と岡田遼と相談して──達郎本人は試合をしたがっていたんですけど──“この相手にこの状況で試合をするべきではない”と判断して(平良を)説得して試合を受けませんでした」 ──フロリダでの試合に向けて練習し、減量して計量をパスしての試合中止に、平良選手のメンタルが一度は崩れかけたそうですね。 「そうですね。本人が“じゃあ止めます”となった後に、“でもほんとうにやらなくてよかったのか”とすごくこう……自己嫌悪に陥ってしまって。達郎はやはり“対戦相手が誰になるのか分からなくても、試合がしたい”と。  そこでジェイソン・ハウスから『いろんな選択肢があるんだぞ』ということで、戦いたければ、2週間後のラスベガス大会、7月22日のロンドン大会、8月26日のシンガポール大会、あるいは秋の大会でランカーと戦うということも可能性はあると聞かされ、やはりラスベガスだとこれまで何度も試合をしていますし、練習場所もUFC PIもあって、とても過ごしやすく、米国国内で移動できる場所ということもあり、現実的ではありました。 【写真】ラスベガス入りした平良達郎は、Bellatorバンタム級暫定王者パッチー・ミックスとも合流。(C)Matsune Ryota  しかし、いかんせん『2週間後』で、また同じ減量をして、気持ちを作ってというのは、普通の選手だったら出来ない。でも達郎の場合、それ以上に“戦いたい、このまま帰りたくない”という気持ちが強くて……本人が望むならやるしかないということで、ジェイソン・ハウスがこの短い期間で、より大きな舞台で試合を組んでくれたので、試合をやる、という流れになりました」 [nextpage] 達郎は、『全然、フライ級にもう1度落とせるし、その覚悟もある』と言っていました 【写真】フロリダに到着時の平良、すでに絞り込まれていた。(C)Matsune Ryota ──試合はフライ級(125ポンド・56.7kg)ではなく、130ポンド(58.96kg)契約で行われるとのこと。平良選手は4月30日の大会でカルロス・カンデラリオが直前に食中毒で欠場して、2週間後の5月14日大会で再びフライ級に落とすという過酷な試合を戦っていますね。そしてUFC2戦目のCJ・ベルガラ戦が、ベルガラの3ポンド(約1.36kg)体重超過で129ポンド契約で戦っていますが、今回の130ポンド契約というのは、2週間で2回減量という身体への負担を考慮してのものでしたか。 「平良達郎は、『全然、フライ級にもう1度落とせるし、その覚悟もある』と言ってました。僕も達郎は2週間後でももう一度落とせるだろうなとは思いました。ジェイソンへの自分からのリクエストは『体重オーバーをしない選手』ということを伝えさせてもらって。ただ、2週間というこの期間で、減量をしっかりやり切れる選手を探すのは難しいことも感じていました。また計量オーバーで試合が消滅するようなことがあってはいけないので、少し(契約体重に)余裕をもって対戦相手を探そうと。  バンタム級契約でバンタム級の選手とやることは出来ませんが、対戦相手のチャイレス選手がフライ級の選手で、『2週間で130だったら行ける』ということで、それなら、達郎も2週間で再び身体を(減量で)酷使するよりは、ということころで許容範囲の落としどころとして130ポンドにしようということになりました」 ──なるほど。チャイレス選手の試合動画をいくつか見たのですが、急に戦うには、危険な相手だなとも感じました。 「そうですね。UFCに出ている選手で弱い選手はいないので……チャイレス選手は現在7勝無敗のUFCのクレイトン・カーペンターに判定負け(2022年8月)していますが、アマチュアでも連勝していたカーペンターといい勝負をしていますし」 ──チャイレス選手は、カーペンターから左フックでダウン気味に腰を落とさせてますね。 「はい。8月のコンテンダーシリーズに再び出ることも決まっていた選手が、達郎の相手として推薦されて契約を掴んだので、絶対的に高いモチベーションでUFCでの試合に臨んで来ると思います。そういったリスクを踏まえても、達郎はやってくれると思います」 ──平良選手が一本勝ちしたヘスス・アギラーとUWC王座戦を戦い、ギロチンチョークで一本負けしていますね。でも5Rを戦っています。 「その試合も結構押していて、最後にチョークを取られたという印象でしたね」 ──このチャンスを掴んで悲願のUFCでのし上がっていこうというチャイレス選手ですが、平良選手にとってはランキング入りするためには、越えなければいけない相手ともいえます。 「そうですね。試合直前の中止から2週間で戦うリスクはあるんですけど、ここで試合をしておいた方が、次のランキング戦に向けてメリットはあると思います。“この試合を越えたら、次はランキング戦だ”とイリディウムからは言われています」 ──平良選手からは「応援して下さる皆様、そしてチーム皆んなの支えのおかげで前を向いて次に進んでます! 本当にありがとうございます。試合が決定しました。残りの期間しっかり準備して、思いっきり戦ってきます!!」という力強い言葉が見られました。平良選手のモチベーションは隣りでご覧になっていて、どう感じていますか。 「試合をするために、自身の強さを証明するためにここに来たので、試合が流れたときはひどく落ち込んでいて、僕も“こんな達郎、見たことない”と思うほどでしたが、試合が決まると生き生きとして、今日も練習を行って清々しく感じました。戦いに向けて燃えているという印象です。先週の減量で1回、落としているので、逆に今週は少し身体を大きくして、短い期間ですけど食べてもらって、来週また減量を始めることになります」
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