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インタビュー

【インタビュー】クレベルに挑む鈴木千裕が平良達郎、五味隆典との練習で得たもの「みんな“対応”しようとして対応できなかった。僕が立ち向かえるのは──」

2023/06/19 15:06
 2023年6月24日(土)北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナで開催される『RIZIN.43』のメインイベントにて、5連勝中の鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)が、RIZINフェザー級王者クレベル・コイケ(ボンサイ柔術)が持つベルトに挑戦する。  タイトルマッチに向け鈴木は、Theパラエストラ沖縄で合宿し、同日(日本時間25日)のUFCフロリダ大会で日本人選手として8年半ぶりの「4連勝」に向かう平良達郎と合同練習を行ってきた。また、東京に戻ってからは、五味隆典の東林間ラスカルジムにも出稽古を敢行している。  公開練習でクレベルの寝技に対し、「ぶっちゃけ力で防げる。ボブ・サップが言ったように『パワーの前には技術は無意味』」と語った本心はどこにあるのか。  平良、五味との練習のなかで鈴木は何を得たのか、本誌で単独インタビューした。 平良と練習「達郎は5手先、10手先を持っている」(鈴木) ──RIZIN北海道大会に向け、鈴木選手はTheパラエストラ沖縄で合宿を組んだようですね。そこでは、同日にUFCで戦う平良達郎選手とも練習する姿を拝見しました。 「すごい勉強になりました。やっぱり世界に行く選手は違うんだなって体感しました」 ──どんなところが違う、と感じましたか。 「一番、気づいたのが、みんながサボるところで頑張るというか。みんなが抜くところを攻める感じがあって、それがすごく嫌ですね」 ──サボらない。一息つかないということでしょうか。 「すごく言い表し辛いんですけど……将棋で言うと、10手、20手、30手先を考えるというじゃないですか。普通はその先が分かっているつもりでも行けないんですよ。格闘技として、こうされたらこうしてこうしてと、5手、10手先を持っている。でもたいてい2手、3手先で止まっちゃう。ちょっと休まなきゃとか、ここはキープしてみようとかになるんですけど、平良選手は──僕は“達郎”って呼んでるんですけど──3、4、5手先、さらに7、8、9、10と行ける。それってやっぱり簡単じゃないです」 ──なるほど。そこで行けるのは、その先の彼なりの「答え」を知っているからでしょうか。 「全部が揃っているんだと思います。答えも知ってますし、それに対応できるフィジカル、スタミナ、技術……全部が整っているから出来ることだと思います」 (C)suzuki.chihiro0514 ──そしてそこに向かう勇気もあるから行ける。 「そうです。全局面で自信を持っているので、打撃でもレスリングでも寝技でも全局面で戦えるから強い。それが松根(良太・Theパラエストラ沖縄代表)さんが叩き上げてきたものなのかなと。日本を背負って戦う姿もかっこいいなって。練習の取り組み方も、日本の格闘技を代表して戦えるのは誇りに思えることだろうし、自分もそうなりたい、追いつくぜ、と感じましたね」 ──そういうなかで、平良選手と同日にクレベル・コイケ選手という世界で戦ってきたチャンピオンと鈴木選手も戦います。手足の長い平良選手の背格好は、クレベル選手にも似ているのはないでしょうか。 「似てますね。すごいいいイメージで練習出来ました。でも対策うんぬんというより、純粋に、いつもの普段通りの達郎と戦いたいなと思って行って、それが出来たのがすごく嬉しいです」 ──なるほど。平良選手を体感できたことが、動きは違えどサイズ的にも結果的に“仮想クレベル”にもなったんじゃないですか。 「そうですね。互いに試合に向かう強い平良達郎と練習できた。それが大きいです」 ──さきほどの公開練習では、「寝技はフィジカルというテクニック。どんなに腕十字や三角絞めでも、思いっきり持ち上げてやったら外れる」というコメントがありました。それは、沖縄での練習でも手ごたえを得てのことでしょうか。 「練習では思いっきりはできないので……。平良選手もずっと一本で勝ってきていますから、たかが対策を練ったくらいで対応されてたまるか、ということだと思いますし、僕がクレベル選手だったら、こんなずっと寝技やってきて、そんなちょっと対策されたくらいで極まらない技じゃないぞ、という思いもあると思います。  でも、その差を埋めるのは、根性とパワーと気合なのかなって。みんな“対応”しようとして対応できなかった。としたらそこに立ち向かえるのはパワーだと思います。もちろん、そのパワーのなかに技術が必要だということも」 ──それが「フィジカルもテクニックのひとつ」という意味ですね。 「はい、いかにそのパワーを使うか。そこも確認できたと思います」 ──沖縄では、平良選手たちとのスパーリング、松根良太代表との技術練習などを行うことができたと。 「あとは2週間のキャンプで、それに入ると用事が無くなるんですよ。東京にいると打ち合わせやミーティングが入ってしまうけど、沖縄にいると入らなくなる。練習だけになる。その環境が集中できます」 (C)Zuffa LLC/UFC ──フライ級の平良選手とのスパーリングの模様も一部公開されていましたね。 「いやあ、やられました。強いです。達郎がベテラン選手だったら『あの時代だから、あの人だから』と何かのせいにできるけど、同い年で同じ時代に生きてる同士なんで、何も言い訳出来ない。だから自分も(クレベルに)普通に勝たないと何十歩も置いて行かれちゃうんで、1歩でも近づけるように普通に勝ちます」 ──奇しくも同じ「6月24日」に試合。先に試合するのは日本の鈴木選手で、平良選手は米国の24日、日本時間の25日に試合になりますね。 「繋ぎますよ。達郎に。僕もバッっとしっかりKOで勝って、ちゃんとKOという形でしっかり終わらせて。みんなが(クレベルを)KO出来ないじゃないですか。みんながどうしてもKO出来ない理由がある。僕はそれをだいたい答えが分かったんで、その答え合わせをしてみようかなって。僕だったら倒せると思うんで。  それに、達郎を見て、世界で戦っている人を目の前で見るとカッコいいから、それに近づけるように。Bellatorとの対抗戦を見て、すごい刺激を受けたというか、RIZIN代表になってBellatorに乗り込めるんだったら、RIZINを背負って乗り込みたいですし、まずは日本でベルトを獲って、世界に繋げられるように頑張ります」 [nextpage] 五味さんから『電気流れたら止めるから言え』って言われて── ──KOでも、全ラウンドを通じて泥試合で競り勝ってもベルトはついてきます。出稽古では、本誌でも特集させてもらったパラエストラ八王子練習に加え、五味隆典選手のラスカルジムにも行っていますね。あの五味選手に受け継がれている「木口式」の練習をどう感じていますか。 「あれ、ヤバいっスよ……(苦笑)。木口式トレーニング」 ──五味選手いわく「木口先生は桜の木を抜こうとしていた男」ですからね。試合前に身体をいじめてますが、大丈夫ですか。 「首に負荷をかける補強トレーニングがあるじゃないですか。あの……五味さんから『電気流れたら止めるから言え』って言われて(笑)。それって流れた時点でダメじゃね? 止めるの流れる前じゃね? って思って(笑)。すごく面白かったです」 ──それを「面白い」と言える鈴木選手もなかなかのフィジカルです。 「そう五味さんから言われたということは“凌ぐしかねェんだな”って覚悟を決めましたね」 ──そういう身体と心のスタミナもつける練習になっているわけですね。 「試合のピンチを救ってくれる練習です。ガッツをもらえます。五味さんのところに行くのはエンジン入れに行くというか、スイッチが入るから」 ──五味選手は木口先生に言われた「三角絞めが来たら砕けばいいんだよ」と言っていましたね。「そっからクレイジーダイヤモンドだよ」と。 「はい。普通に黙って見届けてくれ、と。“行って組まれたらどうする?”って、しょうがないじゃないですか。こっちだってそこで勝負かけるんだから。何のリスクも負わずに勝てる試合なんてない。その刺激が格闘技だし、五味さんからも『もう行くしかないよね』って。もうほんとうに(クレベルは)寝技が上手いから『今さら技術をやってどうすんの?』っていうのはその通りで。バカ力と気合と根性で乗り越えます」 ──でもこの話を聞くと、それは玉砕ではないようですね。 「はい。勝算があってそれが合っているか・合っていないかを勝負する。その戦いを見てください!」 [nextpage] 平良達郎「お互いに勝って次に行きたい」 『ゴング格闘技』本誌「NO.326」では、6月24日(日本時間25日)の『UFC on ABC 5: Emmett vs. Topuria』(米国フロリダ州ジャクソンビル・VyStar ヴェテランズメモリアルアリーナ)で、MMA8勝2敗のクレイジソン・ホドリゲス(ブラジル)と対戦する平良達郎にもインタビューを行っている。  その中から、今回は鈴木千裕について語った言葉も紹介したい。平良は鈴木のクレベル戦について「寝技の展開になったときも慌てずに落ち着いて対処すれば、必ず自分の時間は回ってくる」と、鈴木の得意な打撃を活かす勝機は来るとした。 ◆「(鈴木の打撃は)遠いけど伸びてくるから当たる」(平良) 「千裕くんのことは、もともとTheパラエストラ沖縄での練習で会う前から知っていて、キックボクサーから総合に来たんだと思っていたら組み技もすごくて、投げとか極めに行ったり、“これキックボクサーじゃない”ってそのときに思ったのが印象的でした。  手足が長く、身体の使い方がすごく真っすぐ系とか蹴りもそうですが、すごく人より全然伸びるなって。遠いけど伸びてくるから当たっちゃう。それとやっぱり身体の強さ。クラッチを組んだときに重心の落とし方というか、“ドスン”という感じが、体幹が強いなと感じました。  同じ日に試合があるんですけど、僕がUFC4戦目でロドリゲス選手にしっかり勝って、次、ランキング戦につなげたいので、絶対に落とせない一戦を気を引き締めて勝ちに行こうと思います。  また、北海道では鈴木君がタイトルマッチ、RIZINのベルトを持ってきてくれると思うので、お互い勝ってパーっと行きたいと思います。 (クレベルは)やっぱり極め、サブミッションが強い選手なので、寝技の展開になったときも慌てずに落ち着いて、必ず自分の時間って回ってくるんで、そのときに千裕くんのストロングポイントの打撃とかで絶対にKOしてベルトを獲ってほしいです。 (鈴木は)スパーが終わっても動きについて話したり、格闘技に対して考えていて、たまにすごい賢いなと思うんですけど……普段? 真っすぐなバカ、という感じですね(笑)。格闘技で真面目だし、自分の正直さというか純粋さを隠せないタイプ。自分はたまに考えすぎちゃうことがあるから、千裕くんのまっすぐな姿っていうのは真似したいです。同じ年だし、いい刺激をもらっています」 [nextpage] 朝倉未来の「中堅選手」発言に「じゃあクレベルに負けたあなたはどうなの?」  18日夜には『RIZIN CONFESSIONS』エピソード126が公開され、朝倉未来の「鈴木不利」予想に、鈴木はあらためて異を唱え、平良が言うように、チャンスを掴む意気込みを語っている。  朝倉未来が会見で「クレベルが“中堅選手と遊んでいる”んで」と、5連勝の挑戦者を「中堅選手」と呼んだことについて鈴木は、「何とも思わないですね。じゃあクレベル選手に負けたあなたはどうなの? って。中堅なの? それとも上位陣なの? って話じゃないですか。僕は格闘技に格上も格下もないと思っているんです。その日強い人が、食らった者勝ちだと思ってるんで」と、結果を出した者が評価されるのが格闘技だとした。  これまで萩原京平にカーフを効かされ、今成正和に足をからめられ、サウスポーの中原由貴に左の攻撃を当てられたが、いずれもピンチを脱してきた鈴木は、「『勝てない』と言われる試合ほど面白い試合はなくて、僕の今までのRIZINの全試合って、必ずピンチに追いやられてるんですよ。必ず相手の得意分野に巻き込まれてからの逆転が多いんで、それはもう学んだ。覚えた全部の集大成が今回のタイトルマッチだと思っているんで勝たなきゃって感じですね」と、決意をあらたにしている。  いよいよファイトウィークに入った『RIZIN.43』北海道大会と、『UFC』フロリダ大会。『RIZIN.43』は、RIZIN公式YouTubeにて全試合無料配信(6月24日12時30分~)も決定し、『UFC』での平良の試合(6月24日24時~)もプレリミナリー第1試合に予定されており、UFC公式YouTubeでの無料配信およびUFC Fight PassやU-NEXTでの配信も行われる。  選手たちも追い込み練習を終え、最終調整に入る。果たして、23歳と24歳の若武者2人は、どんな試合を見せるか。
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