試合前に予約していた手術を、来週します
――試合を見直すと、左の蹴り、ヒザもカウンターのいいタイミングで入れていたりもする。それは左ストレートが使えなかった影響もあったのですか。
「いつも僕あんまりパンチをもらわないんです。練習で強いスパーリングをやるときも、あまりパンチをもらわない。それは足を使って避けて、自分のタイミングで打つから。だから、ガンガン行くときと、カウンターを取るときで、試合中でもガラッと攻め方も変わる。
ただ、今回は左手をあまり使えないから、やっぱり出せるパンチが少なかったので、足を使いながら、ほんまにいいタイミングのときしか打たなかった。パンチの数が少なかったのも、これ以上拳を壊してしまうと、このラウンドを戦えなくなるな、という防御反応が身体に働いてしまって。蹴りとかでごまかしながら、最悪なパンチはもらわないようにしていたという感じなんですけど、やっぱりそれじゃあ勝てない。どうしてもそういう戦いやと判定になるなと」
――なるほど。石司選手は終始、間合いを詰めてきた。それでなおさら打つタイミングが難しくなっていたこともありますか。
「いや、いつもの感じだと前に来てくれるほうがやりやすいです。自分も連打を打つのが得意なので。石司選手みたいにデカい選手に遠い距離で戦われるとけっこう厄介で、一発当てるのも大変やと思うんですけど、ただ、前に来てくれたから、まだミドルが当たったり、ローが当たったり、ちょっと交差したり、そういう展開があった。もし、石司選手が後ろにも下がるタイプやったら、正直お互いなんもできずに終わってたんちゃうかなと思います」
――そのくらい手数を絞らなければいけなかったと。石司選手も「カウンターを狙っているのを感じたけど、予想以上に打ってこなかったので、自分も相手のペースに合わせてちょっと見すぎてしまった」と語っていました。その動きは、イップスによる影響ではなかったのですね。
「そうですね。もし気持ちが折れててイップスの怖さがあったら、たぶん試合に出れないです。このヒジの手術から始まって拳の怪我をして、それでも“うまく戦えば勝てるやろう”という変な根拠のない自信もあったので。そこは届かなかったんですけど、自分的にも、試合を受けた以上、自信もあったから、この状態でもまあなんとか勝てるように出来ると思って出てるし。直前の剥離骨折とかは、もう直前すぎて、こんなところで断れるわけがないという、自分のプライドもあったので。試合で前に出ようとも思ってたんですけど、序盤の左ストレートを打ったときに──初めてその痛みを無視して思い切り試合で開放したので、リミッターを外して打った1発目に、予想外の痛さが走ったという、それで手数を絞ってタイミングを待つ形になった感じですね」
――そんななかでも勝ち切らなければならないのが試合で、MMAではほかのプランもあったかと思います。テイクダウンを混ぜることに関してはあんまり考えなかったですか。
「いや、めっちゃ四つの作戦はあったんですよ。相手は身長がでかかったので、ウエストがけっこう細いイメージなので、四つ組みでテイクダウンを狙ってたんですけど、左ストレートを打ったときに、頭から吹っ飛ぶくらい、激痛が走って。下手に組むと、手を使うじゃないですか。だから、その作戦も1ラウンドの1分目くらいで一気に無くなった。だから、正直、立ちでも組みでもいくつかのプランを考えてきたんですけど、変更せざるをえなかったです」
――簡単には思い通りにさせなかった石司選手の強さもあるなかで、結果はスプリット判定負けでした。試合直後には、「“思い通りにいかんな”と。それは全部自分次第なので、言い訳なく、みんなを喜ばしたい気持ちはあるんで。簡単に“またやります”とは言えないけど、信じてくれる人のためにも、やらないとなって思っています」と語っていました。まずは怪我を治すことからでしょうか。
「実は、試合前から予約していた左ヒジの手術を9日後に行います。拳は、めちゃくちゃ腫れたので試合終わってすぐ病院に行ったんですけど、手術の必要はなく、腫れがひくのを待てばいいと。ヒジは内視鏡の手術なので、メスは入れないから、どちらも1カ月くらいあれば完治する予定です」
――結果としては、四つ黒星が並んだ形です。いずれも強豪相手ですが、いったん怪我を治す必要がありますね。
「そうですね。ファンにも心配をかけてしまいましたし、今回はタイミングが悪かっただけで、幸いめちゃくちゃ大きい怪我ではなくて、手術をすれば治る怪我なので、しっかり治して、次もし試合できるなら、8月とか9月とかくらいに復帰して、完璧な状態で、全員黙らしたろうって思ってます」