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「『イップス』になってます。昔当たり前にできてた前に出ることができません」──RIZINで4連敗を喫した金太郎について発した「周囲の言葉」が、金太郎自身の言葉として拡散されている。金太郎に確認すると、「イップスではないです。あの試合で前に出られなかったのは別の理由がありました」と、それまで口を閉ざしていた金太郎が、明かした。
2023年4月1日(土)丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)にて『RIZIN.41』が開催され、第5試合のバンタム級(5分3R)では、3連敗中の金太郎(パンクラス大阪稲垣組)と、DEEP同級暫定王者の石司晃一(フリー)が対戦した。
オーソドックス構えの石司に対し、サウスポー構えの金太郎は、互いに立ち位置の取り合いで慎重なスタンドの攻防から、最終ラウンドに石司が組んでバックコントロール、接戦をスプリット判定で制した。
試合後、金太郎を心配する周囲が、「イップス」だとSNSで発したため、一気にそれが事実として拡散された。それは本人の意図するところだったのか、金太郎に聞いた。
試合1週間前に左の拳を剥離骨折していた
【写真】試合から5日経った左の拳の腫れはまだ引いてはいなかった。
――『RIZIN.41』で石司晃一選手と対戦した金太郎選手ですが、試合後、ネット上で「イップス」になっていたというコメントが出ていて、それはご本人がそう感じていることなのか、確認したく連絡させてもらいました。
「周りは心配してそういう風に言うんですけど、やっぱり僕は競技者やから、僕にしか分からないことがあるんで、そこはこういう場でしか言えないなという気持ちがあって取材を受けさせてもらいました」
──イップスは、「集中を必要とする場面で極度に緊張を生じ、無意識に筋肉の硬化を起こし、思い通りのパフォーマンスを発揮できない症状」だといわれています。かつてはイチロー選手も体験したという、この症状にかかっているという言葉が、金太郎選手本人ではないSNSから拡散されてしまい、ネット上では金太郎選手の言葉のように広まっているので、話せる範囲で事実を確認させてもらいたいと思いました。
「正直、イップスではないんです。攻め手を欠いたのは気持ちの問題ではなかったです」
──周囲からは、試合前に万全ではなかったことも聞いています。ファイターは誰しもが万全ではないにしても、その程度もある。試合後にそれを言うのは躊躇われるかと思いますが、今回の騒動には、それも関係しているのではないですか。
「何を言っても言い訳になるので言わなかったんですけど……そこまで聞いているなら。試合後の会見でも言わなかったんですが、イップスと誤解されているようなので……今回、前に出られなかったのは怪我の問題が大きくて。武器というか、自分は左ストレートが得意なんですけど、その左の拳を試合前に剥離骨折して、試合中にもまた痛めてました」
――そうだったんですか……痛めたのはいつ頃に?
「試合の1週間前ですね。それも治したばかりの左ヒジが影響していて、前回の堀口選手との試合後に──関節ねずみってわかりますか?」
――はい。関節の中に、軟骨や骨のカケラが遊離して、関節の間にねずみがはさまると痛みとともにヒジが動かせなくなる。
「前回の試合後に、その手術をして関節ねずみを除去したんです。治して、左ストレートがしっかり伸びるようになってたんですけど、それが試合の3週間前に急にまた再発して……」
――ヒジが伸びなくなった。
「はい。急に左のストレートが伸びなくなって、すごい痛みが走って。その時点で試合をどうしようかって話になったんですけど、昨年ぎっくり腰で欠場してしまったことがあったので、そのときの自分の不完全燃焼さというか、そのときのやるせない気持ちを覚えてたので、何とかまっすぐ左手が伸びない分、左のオーバーハンドを使って戦おうという意識に変えたんです。いつも打たない左のオーバーハンドをかなり練習して、だいぶいい形になってきて、当たり出したところで、最後の練習で左のフックを打ったときに相手の頭を殴ってしまって……」
──一番の武器の左拳を最終日に痛めたと。
「だから、今回は自分に運がなかったと思っていて。イップスで身体が動かなかったのではなくて、怪我があって左ストレートを打てないから、ああいう試合になった。それでもみんなどうにかして試合をするわけで、自分の場合は、1ラウンド目の1発目の左ストレートで、ものすごい痛みが走って、身体に。1ラウンド目からイップスとか関係なく、打つ制限が身体にかかってしまってたんです。ヒジにも拳にも痛み止めの注射を打って出たのに、1発目で“打てない”って」
――それで序盤から入れなくなっていた。
「そうですね」