MMA
インタビュー

【ONE】平田樹の強気と本音「みんなが見たいのは自分」「大差あると言われてるけど、自分的にはそんなにないと思ってる」

2023/03/22 19:03
 2023年3月25日(土)シンガポールのインドアスタジアムで開催される『ONE Fight Night 8』の女子アトム級戦でハム・ソヒ(韓国)と対戦する平田樹(日本)が22日、現地からリモートで囲み取材に応じた。  両者は2022年11月に対戦予定だったが、平田が計量のハイドレーションテスト(尿中の水分値)で苦戦。水分を飲んで基準値を下回ると体重オーバーになり、計量をクリアできず。ハム・ソヒがキャッチウェイト戦を拒否したため、試合が中止になっていた。  米国ニューヨークから1週間前にシンガポール入りした平田は、仕切り直しのハム・ソヒ戦が組まれたことについて、「すぐオファーが来たので、それだけ期待と見たいという人たちが多いんだろうなと思って、自分はすぐOKしました」と、周囲がこの試合を望んでいるから組まれたとし、「厳しい戦いになるかもしれないけど、最後まで攻め切ればチャンスがある」と勝機を語った。  試合前にもうひとつの戦い、減量・計量が待っているが、「今回はごはんを管理する栄養士さんをつけてもらいました。いつもより1カ月くらい早く減量を始め、ハイドレーションテスト(水分の尿比重値)についても勉強し、普段から測ってきました。あと400(グラム)で余裕です」と順調な様子。  ファイトキャンプでは「ケージレスリングとグラップリングを強化してきました。(ハム・ソヒとは)大差があると言われてるんですけど、自分的にはそんなにないと思ってるので、近い距離の打撃に気を付けて、少し穴があるテイクダウンで組んで倒してグラップリングで極めたい」と語った。  また、計量失敗が続いたことで、日本のファンからも失望の声が挙がっていることについては、「でも、結局やっぱみんな見たいのは自分だと思ってるので。こんだけ『ハム・ソヒは強い』『ハム・ソヒはすごい』みたいに言われてるけど、結局自分のほうが見られてる数は多いし、自分のほうが話題になっちゃう。試合前でも自分のフォロワーがドーンって増えても、相手のフォロワーは増えないっていう、その点でも差があるんじゃないかなと思っています」と、反感を買いながらも、主役は自分だとした。 「勝ったら全てが変わる」という声もあるなか、「ここで勝ってもアンチはもっと増えると思うので。“アンチ”はめっちゃイラつく立場でもあるけど、“お前ら結局見るじゃん”みたいな。自分的には別にいいんじゃんみたいな、なんとも思ってない」と、強気を崩さなかった平田。難敵との試合に向かう気持ちは出来ていることをうかがわせた。  一部だけを切り出すと強い煽りの言葉ばかりが並ぶが、団体や周囲が期待を寄せるなかでの試合キャンセル、そして今回の仕切り直しの試合は、平田がこの階級で強く望むと望まざるとに関わらず、避けることのできない試合ともいえる。そんななかですべてのプレッシャーを跳ねのけて、勝利をつかめるかどうかは、ここまでの取り組みがかかわってくるだろう。  一方のハム・ソヒは、計量失敗のことよりも、平田の姿勢について納得せず、前回の試合を拒否したが、それは平田との試合を避けたわけではないことを証明するためにも、今回のオファーを受けている。  試合決定時に、「ファンの声によっては私の前回の(試合をしないという)判断に色々と意見があったのも事実だったので、イツキとのことは早くケジメをつけたかったから、オファーをもらえて良かったです。トレーニングは、今まで通りやっています。試合に向けても時間がたっぷりあるので、細かい部分や自分の体のコンディションにもより気にして過ごしています。この試合で勝って、自分が次のタイトル挑戦者であることを伝えたいし、この階級で自分が一番だってことを見せたいです。日本のファンの皆さん、前回の私の判断に賛否があったと思いますが、私は日本が大好きです。応援してくれたら嬉しいです!」とメッセージを寄せている。  果たして、両者の一戦は、ハム・ソヒが実力を見せつけるか。それとも平田が「すべてをひっくり返す」か。平田との一問一答は以下の通りだ。 [nextpage] 前回の試合キャンセル後、すぐにオファーが来たので、それだけ見たいという人たちが多いんだろうなと ――平田樹選手、3月25日の『ONE Fight Night 8』に向け、シンガポールに入ったのはいつですか? 「3月18日の夜です」 ――いつもより早めに入っていますよね。 「そうです。ちょっと早めにニューヨークから入りました。長かったです。ドバイ経由で19時間から20時間くらいかかりました」 ――時差ボケはもう解消されましたか。 「最初はめっちゃつらくて、1日だけ24時間くらい起きてて、そこからはけっこう大丈夫です」 ――シンガポールに入って4、5日目ですが、練習もこなしていて調子はいかがですか。 「調子はいい感じです。ここでは練習を2部やったり、1部だったりですけど、変わらずレスリングをやったしています。あとは2、3日調整して試合って感じです」 ――前回11月の試合のキャンセル以降、すぐにアメリカ戻ったと思いますが、強化してきたことは? 「そんなに変わることなく、レスリングの練習を増やして、グラップリングも増えたかなという感じです」 ――あらためて、前回のハム・ソヒ戦の計量失敗があって、試合ができなくなったときの心境を教えてください。 「練習しただけで終わっちゃったんで、試合を見せれずに終わったことの悔しさと、自分に負けたなって感じですね」 ――その前回の経緯があって、ハム選手がこの試合を受けたことについて、最初に聞いたときはどのように感じましたか。 「まあ、試合するかみたいな感じです、自分的には」 ――では、試合ができるということに関してどう感じましたか。 「試合できることはすごい嬉しいことだし、すぐオファーが来たので。それだけ期待と見たいという人たちが多いんだろうなと思って、自分はすぐOKしました」 ――今回ハム・ソヒ選手と初めて戦うことになるわけですが、3R、どんな試合展開を予想していますか。 「厳しい戦いになるかもしれないけど、最後まで攻め切ればチャンスがあると思います」 ――ハム・ソヒ選手の強み・弱みを、平田選手はどう感じていますか? 「打撃の近い距離が得意かなと思うのと、あとはテイクダウンのところに少し穴があるんじゃないかなと、デニス・ザンボアンガとの試合を見て思っています。でもそんなすごい穴があるわけじゃないので、その隙をしっかり捉えれたらなと思います」 [nextpage] 栄養士さんをつけた食事で、今回は最後まで動けている ――その試合にたどりつく前、これまで計量ミスが続いたことで、計量への怖さみたいなところもありますか。 「毎日あります、それは。キツくなると階級を上げたいなとか思うんですけど、今回の試合が終わってからそれは考えようという感じです」 ――こうしてカメラの前に立つと、顎のラインとかがスッキリしたように見えます。今回ウエイト、計量の対策というのは、どのように取り組んでいますか。 「今回はごはんを管理する栄養士さんをつけてもらって、アメリカでの食事とかも毎日連絡を取り合いながら、こういうのを食べてとか、こういうものを摂取してというのを相談しながら、今もやっています」 ――通常体重から落とすことにしたのでしょうか。 「減量の仕方というか、減量の食事面を変えたからという感じです。食事の内容を変えました。その内容は、自分の身体と相談しながら、栄養士さんと相談しながらやってきました」 ――食事を変えることによってどんな効果がありましたか。 「いつも疲れながら減量するんですけど、今回は最後までけっこう動けてるので、その点では違うかなと思います」 ――ニューヨークにいる時点から、いつもと比べるとどれくらい異なるペースで減らしていっているんですか? 「いつもより1カ月くらい早かったので、2カ月くらい(体重調整を)やってるかなと思います」 ――体重調整をしながらかなりハードなトレーニングをやっているかと思いますが、そのあたりの不都合はなかったでしょうか。 「最初、やっぱり慣れるまでちょっと大変だなとか思ったんですけど、全然練習とかと一緒で、少しやり始めれば全然慣れてきたので、そんなに苦じゃなかったです」 ――体重自体はいつもいったんはクリアをしている。それが水分の尿比重、ハイドレーションテストで引っかかるということがありました。その部分においてもコツを掴めていますか。 「前回日本に帰ったときに、尿比重についていろいろ勉強しながら、食事とか、成分とか、いろいろ教えてもらいながらやってきました。普段からどれくらいなのか、けっこう測ってたので」 ――さらに食事面も変えたことで、落としてはいるけれど、力が出ている練習が出来てはいると。 「そうですね。前よりかは全然いいと思います」 ――現状、あとどれくらい落とす状況でしょうか(※取材は3月22日の午前11時)。 「あと400(グラム)落ちれば余裕ですね。前回けっこうギリギリというか、アンダーというか、ピッタリだったんですけど、もうその点で、今回アンダーで入ろうかなって感じだったんで、もうちょっと動いてから。あと明日の夜まで過ごす感じです」 ――気持ち的にもだいぶリラックスした状態で計量に臨めそうですね。 「そうですね。前よりは全然違います」 [nextpage] グラップリング、ケージレスリングをたくさん練習した ――先ほど、練習において今回特化した部分で、レスリングやグラップリングを強化してきたということですが、ご自身の中で今回とくに手応えを感じた部分はどのあたりになりますか。 「やっぱり組み技の点で、ケージレスリングをたくさん練習したので、いつもけっこう手こずるケージレスリングの展開では、スムーズな試合内容になるんじゃないかなとは思っています」 ――ニューヨークでの練習環境はロンゴ&ワイドマンMMA、ネスター・マーティコーチのアルティメットジム、セラBJJといった場所での練習なのでしょうか。 「変わらず。対戦相手も一緒なので、前回と同じ感じでやっています」 ――ニューヨークではジムとジムの移動距離がかなり長いと伺いましたが、それについて、疲労の蓄積に繋がったりはしていませんか。 「だいぶ最後のほうはやっぱり疲れてくると、追い込み期間だと超疲れるんですけど。それも練習だと思ってやりました」 ――海外でファイトキャンプを張るなかで、オンとオフをどう分けていますか。 「オフはダラダラする、それだけ(笑)。練習しないでダラダラする。何も考えずに。それが一番です」 ――オンの練習で、強化してきたというレスリング、グラップリングはどのように? 「MMAの練習をしながらのレスリングだったんで、レスリングだけというか。レスリングの先生、コーチとかもいたので、前回と同じとおりで、そのまま延長線で練習したという感じです」 ――ハム・ソヒ選手は寝技、あるいは組みを混ぜた打撃にも長けています。鹿志村仁之介選手もニューヨークにはいたと思いますが、その点での対策も練られてきたと。 「はい。グラップリングでは、ニューヨークの10th Planetに行かせてもらっていて、すごくいい練習ができました。グラップリングがすごく楽しかったので。前よりかは引き出しは増えたんじゃないかなと思っています。  昨日の相手選手の動画、『ほんとうにやりたいです』みたいな動画を見て、けっこうモチベーションが上がったんで。そこは絶対クリアできる面で。あと、試合内容的にはけっこう大差あると言われてるんですけど、自分的にはそんなにないと思ってるので。15分間どんな試合をするのか、自分的にも楽しみです。グラップリングで仕留めたいです」 ――ハム・ソヒ選手の近い距離でのボクシングを警戒するなかで、そこをかいくぐって、テイクダウンを取りに行くというイメージでしょうか。 「そうですね。たぶん近い距離での打撃とか反応はすごいいいと思うので、そこで付き合わずにテイクダウンできたらいいなと思っています」 ――ザンボアンガ戦のことも引き合いに出されていましたが、ザンボアンガ選手はフィジカル・パワーで強引にテイクダウンを取りに行くときもあったと思いますが、平田選手もそのイメージでしょうか。 「そうですね。ザンボアンガも突っ込む系のタックルだったので、そんな感じで行けたらいいなとは思ってます」 ――厳しいながらも、自分自身は攻め切って、チャンスがあればフィニッシュという勝ちパターンのイメージはどれくらい作ることが出来ていますか? 「自分的にはもう毎日イメージしてやっています。そのイメージ通りにできたらいいなと思っています」 ――そのフィニッシュはKOと一本、どちらの方が比重が高いでしょうか。 「チャンスがあればKOも狙いたいけど、自分的にはグラウンドで極めたいなと思います」 [nextpage] みんなが見たいのは自分だと思ってる ――計量失敗が続いたことで、現状、日本のファンまでかなり敵に回してると思いますが、そういう状況で戦ってる自分をどうとらえていますか。 「でも、結局やっぱみんな見たいのは自分だと思ってるので。こんだけ『ハム・ソヒは強い』『ハム・ソヒはすごい』みたいに言われてるけど、結局自分のほうが見られてる数は多いし、自分のほうが話題になっちゃうし、というのはけっこう思ってます」 ――ハム選手は前回の試合中止からかなり辛辣な発言が多かったと思いますけど、それについては今、どう受け止めていますか。 「特に別に思うことはないです」 ――「勝ったら全てが変わる」という言い方もありますが……。 「そうですね。ただ、ここで勝ってもアンチはもっと増えると思うので。自分的には別にいいんじゃんみたいな、なんとも思ってないです」 ――SNSでも、風当たりが強くなっています。“アンチ”は平田選手にとってどういう存在ですか。 「めっちゃイラつく立場でもあるんですけど、“お前ら結局見るじゃん”みたいな。いつも。だから、別にそんな。本当はすごいコメントとか返したいんですけど(苦笑)」 ――SNSでの見せ方で意識していることも? 「見せ方は特にないですね。普通の普段の自分を出してるだけなので、それでみんながボンって反応するので。結局こんだけ試合前でも自分のフォロワーがドーンって増えても、相手のフォロワーは増えないっていう、その点でも差があるんじゃないかなと思ってます」――こういう状況でも試合のオファーが来たことについては、あらためてどう感じていますか? 「やっぱそれだけ(周囲が)見たいカードだと思うし、チャトリ(シットヨートンCEO)さんにもそう信じてもらってるという、『信じてるからやりなさい』という前回の言葉もあったので、それを裏切らないように試合をします」 [nextpage] 身体を大きくしたいという願望はないけど、上の階級も気になる── ――今後もアトム級で続けていくつもりでしょうか。それとも今回は自身のけじめとして最後のアトム級になるという可能性もありますか? 「今回は絶対やるって決めたので、次からは、この試合が終わってから決めようかなとは思っています。身体を大きくしたいという願望はないけど、上の階級ではどれくらい大きいのかなというのもけっこう気になるし。階級を上げれたらいいなとも思います。(アトム級でもストロー級)どっちでも戦えれたらいいかなとは思っています」 ――ハム・ソヒ選手がアトム級のランキング2位。2位に勝ったら一気にタイトル戦にも近づくと思いますが、それよりも1階級上げて上を狙いたいというのも同じくらいに考えていますか。 「そうですね。上の階級でアンジェラ・リー選手もやっていたとき、ション・ジンナン選手が勝ったときのベルトの価値もあるので。この階級もすごい熱いですけど、上の階級でのベルトの価値もけっこうあると思っているので、どっちでも戦えれたらいいのかなとか思ったり……(いまは)あんまり考えてないですけど」 ――まずは今回とにかく勝つと。 「そうですね。今回の試合だけは絶対落とさないようにします」 ――最後に日本のファンに試合に向けてメッセージをお願いします。 「『お待たせしました』という気持ちと、朝から盛り上がる試合をお披露目しようかなと思うので、しっかり朝起きて見てください。以上です」
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