最終Rの左ストレートからの左ハイ──ベーシックなフェイントは、途中で出していても防がれていた
――最終5ラウンドで、ウスマンが左ハイキックをもらってしまったのもそれが影響していたと思いますか?
「おそらく影響していたと思います。スタンドの打撃に関しては、ウスマンのジャブがすごく有効で、エドワーズはなかなか自分のパンチの距離にさせてもらえなかった。ただ、左の蹴りはボディや狙った腕にヒットしてるんですよね。だからエドワーズは“近づいてパンチを入れるのは難しいけど、蹴りは当たるな”っていうイメージを持ちながら試合が進んでいったと思うんですよ。一方でウスマンの方は、“ケージ際で倒してしっかり上を取れればいいけど、四つ組みになるのは面倒だな”という感じで、お互い少しうまくいかない部分がありながら、最終の第5ラウンドを迎えたと思うんですね」
――ウスマン側に立って考えれば、4ラウンドまでおそらくポイントでリードしていたので、最後の5ラウンドは“スタンドで自分の距離を保てば判定で勝てる”という思いがあったのかもしれないですね。
「それもあってか最後までスタンドではウスマンの距離だったんですよ。だから、エドワーズは左ストレートから左ハイキックのコンビネーションで倒しましたけど、あれは“パンチが当たらない距離だな”と理解した上で、左ストレートはあくまで目くらましで出して、ウスマンの頭を動かして左ハイキックを入れた。あれはエドワーズが“この攻撃なら当たる”という感覚をつかんだからこそ、出せた一撃だと思いますね」
Undisputed welterweight champion of the world, @Leon_EdwardsMMA - Est. August 20th 2022 👑 pic.twitter.com/KQkyBzggmd
— UFC (@ufc) August 21, 2022
――5ラウンドまでの攻防の積み重ねでその感覚をつかんだ、と。
「おそらくあのコンビネーションを途中で出していても防がれていたと思うんです。でも5ラウンド目だからこそ、ウスマンのほうにも“この距離ならパンチは当たらない”“あとは下手に組まれずに、蹴りに関しても致命傷になるようなものをもらわなければ勝てる”という気持ちが生まれたことで、言ってしまえばベーシックなフェイントに引っ掛かってしまったんだろうな、と」
――エドワーズの四つ組みを警戒したことで、最終ラウンドのウスマンは選択肢が“自分のパンチの距離で戦う”というひとつになってしまい、そこを狙われたわけですね。
「だから目に見える攻防だけじゃなく、頭の駆け引きもいろいろと行われていたんでしょう。それを想像すると、かなり深い5ラウンドだったんだと思いましたね」
――では今回、それを踏まえてのダイレクトリマッチは、どのあたりがポイントになりそうですか?
「再戦っていうのは、必ず前の試合で起きたことがまずポイントになるんですよ。前回はハイキックで決まったので、ウスマンは蹴りをより警戒するというか、ちょっとしたトラウマになってると思うんですよね。だからエドワーズは逆に、蹴りのフェイントを多用する可能性が高いと思います」
――警戒しているからこそ蹴りのフェイントがより効果を発揮する、と。
「ウスマン側からすると、そうならないためにどうするかと言えば、その距離にならないことが手っ取り早いので、ケージに押し込んでのテイクダウン。それは前回の試合でもかなり有効だったので、そっちを柱にしてくるんじゃないかと予想します。エドワーズが四つ組みに強いこともしっかり想定して準備をしてくるでしょうからね」
――そうなるとお互いが前回突かれた“穴”を塞いでこの試合に臨んでくるわけで、いわば穴のない者同士の戦いになりますよね。
「そうなんですよ。だから、お互い想像もできないような秘策を用意するか、別の穴を見つけるしかなくなってくるので、これはお互い大変な試合ですよ」
――お互いに難題が突きつけられているわけですね。
「エドワーズ側からすると、前回はウスマンが四つ組みを嫌ったことで得意とする“際(きわ)”で放つエルボーがあまり出せませんでしたけど、今回、ウスマンが組んでくるとしたら、それが突破口になるかもしれない。あとはテンカオ(カウンターのヒザ蹴り)も得意なので、ウスマンが組み付いてくるところに入れるテンカオというのも、1個起点になるかもしれません。ただ、ヒザをキャッチされたらテイクダウンされる危険性が高まるので、双刃の剣ですけどね。エドワーズからしたら、そこで脚を刈られそうになったところで、ヒジを入れるというのもありかな、と思いますけど」
──前回あまり出せなかった自分が得意とする攻撃というのが、意外と効果的なのかもしれないですね。
「あとは間違いなく裏のかき合いになるので、そうなるとベーシックな攻撃が有効だったりするんですよ」
――裏の裏をかきすぎて、まさかこんなベタなコンビネーションでくるとは思わない、という。
「そういうことが起こるかもしれない。いずれにしても、両者ともに前回の試合を踏まえて準備してくるので、観る側も録画した映像なりアーカイブ配信なりを、もう一度しっかり見直して復習してから今度の試合を観た方が、このハイレベルな戦いを絶対により楽しめると思いますね」(取材・文/堀江ガンツ)
◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール
『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC286 in ロンドン エドワーズVSウスマン、ダイレクトリマッチ!』
3月19日(日)午前6:00[WOWOWライブ]※生中継
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
3月21日(火・祝)午前0:30[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWオンデマンドで同時配信)