MMA
インタビュー

【Bellator】トフィック・ムサエフ「キルクリフFCには、僕とは全く異なる戦いのスタイルを持っている選手がいる」「僕がチャンピオンと戦うべきだった」=3.10 ライト級WGP

2023/03/11 01:03
 2023年3月10日(日本時間11日)に米国カリフォルニア州サンノゼのSAPセンターで開催の『Bellator 292』にて、優勝賞金100万ドル(約1億3千万円)の「Bellatorライト級ワールドグランプリ」(5分5R)が開幕する。  日本ではU-NEXTでライブ配信される同大会で、GP1回戦の2試合が行われる。  ひとつは、Bellator世界ライト王者のウスマン・ヌルマゴメドフ(ロシア・16勝0敗)と、元UFC世界ライト級王者のベンソン・ヘンダーソン(米国・30勝11敗)による、GP1回戦&ライト級王座戦。  もうひとつは、RIZINワールドGP2019優勝のトフィック・ムサエフ(アゼルバイジャン・20勝4敗)と、7連勝中の強豪アレクサンドル・シャブリー(ロシア・22勝3敗)によるGP1回戦となる。  ムサエフは、RIZINのGPでダミアン・ブラウン、ジョニー・ケース、前Bellator王者パトリッキー・フレイレを下して優勝。コロナ禍のなか、2021年6月に1年6カ月ぶりに復帰し、ホベルト・サトシ・ソウザに三角絞めで一本負けも、2022年7月の前戦でBellatorに初参戦し、シドニー・アウトローを27秒、TKOに下している。  対するシャブリーも強敵だ。ACB、Fight Nights Global等、ロシア主戦場時代から強い圧力と破壊力ある打撃で、右の打撃だけでなくスイッチしての左フック、左ヒザも脅威だ。Bellatorでは2021年12月にボビー・キングを渋い塩漬けにして判定勝ち。2022年6月の前戦では元王者のブレント・プリマスを2R、右ストレートからの左フック、パウンドでTKOに下している。  フロリダのキルクリフFCで練習するコーカサスのムサエフと、フロリダATTでも練習するロシア西部のロストフ・ナ・ドヌ出身のシャブリーによる、強豪同士の潰し合いで、準決勝に進むのは?(text by Isamu Horiuchi) サトシはAJ戦で何度かフィニッシュできるチャンスがあったと思う。でもあの試合で彼は自分を貫き通せなかった ──ムサエフ選手、しばらく日本で試合をしていませんが、日本が恋しくなることはありますか? 「もちろんさ。僕にとって故郷のようなものだ。将来また日本で試合できることを心から願っているよ」 ──日本のファンもそれを願っています。 「そうなる運命さ。また日本でトーナメント等が開催されるなら、ぜひ戦って自分の力を試したい。日本の皆さんのことはすごく感謝している。みんな本当に良くしてくれたし、現在僕がファイターとして世界で名前を知られるようになったのは、日本のRIZINで戦うことができたおかげだ。日本のファンに大きな恩を感じているんだ」──さて、Bellatorに移籍後第1戦となった前回は、シドニー・アウトロー選手をわずか27秒でTKO。これ以上ないほど鮮烈な北米デビューとなりました。ご自分でもこの結果には驚いていますか? 「僕らにはゲームプランがあって、その通りに戦っただけだよ。序盤に相手の隙が見えたから、そこにつけ込んでフィニッシュにつなげたんだ」 ──アウトロー選手が前に出てきたところに、強烈な右のオーバーハンドを当てて効かせ、一気に詰めて試合を決めました。もう少し時間をかけて戦い、Bellatorのケージを感じたかったという気持ちは? 「いや、結果には満足だ。あの試合の前に、シドニーはBellatorで2連勝を挙げてナンバーワンコンテンダーの地位にいた。タフな選手だよ。そういう相手にああいう勝ち方ができて、ライト級の選手たち全員に自分の存在を知らしめることができた。それを自分でも感じ取れたし、嬉しく思うよ」 ──そして今回のトーナメント参戦が決まりました。大変な強豪が顔を揃えていますが、その中でも最も手強いと思う相手は? 「楽な相手など一人もいない。みんな独自の技術とスタイルを持っているからね」 ──決勝で戦いたい相手はいますか? 「僕らは一試合一試合計画を立ててやっていくんだ。だから今は一回戦のアレクサンデル・シャブリー戦に集中している。他のどの選手も優れたファイターだから、誰と戦うことになっても楽しみだよ。そのなかの二人、パトリッキー・ピットブルとシドニー・アウトロー(※欠場が決定し、代わりにブレント・プリムスが出場)とは以前に戦っているけど、誰とでも戦いたいね」 ──初戦の相手であるアレクサンデル・シャブリーはあなた同様に強力なストライカーですが、勝利に向けた一番の鍵は? 「作戦はあるよ。身体的な面でも技術的な面でもね。それがどのくらい上手くゆくかが鍵となるね」 ──もし勝利できたら、試合後にはRIZINのリングでいつもやってくれていた「アゼルバイジャン!」の咆哮を聞かせていただけますか? 「インシャラー(神の思し召しのままに)、喜んで。あなた方の期待は裏切らないよ」 ──初戦を突破すれば、次に戦うのは、AJマッキーと、以前RIZINライト級GP決勝であなたと戦ったパトリッキー・フレイレの試合の勝者です。 「僕はなによりまず初戦の相手、シャブリーに勝たなければならないと思っている。今はこの試合に集中しているから、その後に何が起こるかは気にしていないんだ。AJマッキーとパトリッキー、どちらと戦っても興味深い試合になるだろうね。でもそれは、今の僕の関心事ではないよ」 ──そのAJ選手は、昨年末の大晦日の対抗戦であなたと戦ったサトシ選手と闘い、僅差で激闘を制しました。試合前あなたはサトシ選手の一本勝ちを予想していましたが、あの試合を見てどう感じられましたか? 「サトシは何度かフィニッシュできるチャンスがあったと思う。でも僕が思うに、あの試合では彼は自分を貫き通せなかったんじゃないかな。サトシの狙いは常にサブミッションだ。でもそれを防がれてしまった時に少し気持ちが弱くなり、勝負を諦めてしまったように見えたよ。心理的なことだ。勝利を追求しきれなかったね」 ──興味深い分析です。試合後にAJ選手も攻める気持ちの重要さを強調していました。さて、現在あなたはヘンリー・フーフトの下、フロリダのキルクリフFCで練習されていますよね。 「そうだ」 ──ジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズやマイケル・チャンドラーといった、近い体格のUFCトップファイター達とトレーニングする機会があるのですよね。 「だからこそ、僕があそこで練習する意味がある。彼らは僕とはまったく異なる戦いのスタイルを持っている。そういう選手たちとのトレーニングを通してこそ、僕はより多くの経験を得て自分の戦いを磨くことができるよ」 ──いろんなスタイルに触れることが重要だと。 「あそこでのスパーリングは僕にとって本当にためになるよ。とにかくいろんな選手がいるからね。そこが気に入っているんだ」 ──キルクリフFCでは、佐藤天選手や木下憂朔選手のような日本人UFCファイターも練習しています。彼らと練習したことは? 「サトーとは一緒にスパーリングしたりして、とてもいい関係を築けているよ。ベリー・グッド・ガイだ。もう一人日本人のUFCファイターがいて、ラスベガスで試合することになっているんだよね」 ──そちらが木下選手ですね。 「だから今、ヘンリーが彼に付いているよ。彼ともいい関係だよ。僕は彼らのような日本人選手たちと練習することが大好きだし、仲間だと思っているよ」(※取材翌日の2月4日、木下はUFN218にてUFCデビューを果たすも、アダム・フューギットに1RTKO負け) ──嬉しい言葉です。あなたの活躍を楽しみにしている日本のファンにメッセージを。 「すぐに、また皆さんと日本でお会いできるはずだよ! アゼルバイジャン!」 [nextpage] 試合を少し変えるときが来た(ムサエフ)  インタビュー後、ムサエフは3月8日に現地での会見に出席。直前の意気込みを語っている。そこでは、シャブリーについて、「僕らのスタイルは少し似ている。だからこそ、試合内容にも変化が生まれる」と新たな一面を見せる可能性を示唆した。  また、2022年7月のBellatorデビュー戦で、当時1位だったシドニー・アウトローを27秒でKOしながら、一度は破っている王者パトリッキーへの挑戦権を得ることがなかったことについて、「僕がチャンピオンと戦うべきだった」と主張。  続けて、「だから、GPで今度こそチャンスを得ることを楽しみにしている」と、勝ち上がれば必ず王座挑戦にたどり着くGPで頂点に立つことを誓った。 ──強豪揃いのGPメンバーで、その厳しさに圧倒されたりはしませんか。 「いや、その代わり、モチベーションが上がる。この大会には多くのトップクラスの選手が参加しているので、モチベーションも上がるし、もっと上を目指したいと思わせてくれる。このような大規模なトーナメントに参加する機会を与えてくれたBelletorに感謝し、8人のなかに選ばれたことを光栄に思うよ。こうした大会に参加する、最初のアゼルバイジャン人であることに喜びを感じている。このイベント自体が私にとって歴史的なものであり、この機会を与えられたことを光栄に思う。  僕にとって“初めてのGP”じゃないんだ。2回目のGPになる。これを機にBellatorの70kg級ファイターと、UFCの70kg級ファイターによるGPを実現させたい。エキサイティングだと思うし、いつかやってみたい」 ──あらためて、想定練習などをしたうえで、対戦相手のアレクサンドル・シャブリーをどうとらえていますか。 「僕らのスタイルは少し似ている。だからこそ、試合内容にも変化が生まれると思う。全体としては、素晴らしい戦いになると思う。誰もが自分のプランを持っていて、僕も自分のプランを持っていて、それを実行するためにできることをするつもりだ。僕がここにいるために多大な役割を果たしてきたコーチに感謝したい。準備のために多大な努力をしてくれたチームメイトたちにも感謝したい。  僕はこれまでのキャリアのなかで厳しい戦いをしてきたけど、いつもファイターとして素晴らしい個性を示し、勝つために必要なことを行ってきた。次の試合もそうことをするのが楽しみなんだ。試合を少し変えるときが来た。この試合が楽しみだ。素晴らしい試合だし、ファンのためにショーをするのが楽しみだ。自分の国を代表して戦うことを楽しみにしている」 ──Bellatorデビュー戦で27秒KOしたことで、ファンに何かメッセージはありますか。 「もちろん、初戦をあんなに早く終わらせることができたのは最高の気分だよ。僕はファンのために素晴らしいショーを行い、ここの観客のために試合を終わらせたいと思っている。でも僕はあまり話すのが好きではないし、トーナメントに参加している他の選手たちのことは気にしない。最強で最高の選手になるためにここにいるんだから、あとは僕のファイトに任せよう」 ──あの秒殺勝利後、パトリッキーの王座に挑戦したのはウスマンでした。 「僕はこの団体に来て、No.1コンテンダーと戦った。僕の意見では、僕はチャンピオンと戦うべきだった。その後、いくつかのことが変わり、ウスマン(ヌルマゴメドフ)がベルトを賭けて戦った。もちろん、Bellatorのベルトのために戦ったということを自分のレガシーにしたいと思う。だから、GPで今度こそチャンスを得ることを楽しみにしている」
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