石井戦へ向けて気合いを入れる京太郎
2023年3月12日(日)東京・国立代々木競技場第一体育館『K-1 WORLD GP 2023 JAPAN ~K’FESTA.6~』にて、スーパーヘビー級3分3R延長1Rで石井慧(クロアチア/チーム・クロコップ)と対戦する京太郎(チーム未完)が2月24日(金)都内にて公開練習を行った。
パンチのみのミット打ちで速いジャブ、重い右ストレートを叩き込んだ京太郎は「前回から試合間隔が空きましたが、上手くここまで修正できた。この年になってキツいことをやっているなと思いますが、あと2週間、いい感じで迎えられたと思います。あとはリング上で分かる」と、コンディションは整っているようだ。
「彼がK-1に来たのもボクシングをやったのもこの試合のためだと思っているので、そう考えるとよくここまで来てくれたと思う。それだったら迎え撃たないとダメだなって気がします」と、石井の気持ちに応えたいとし、石井が共に日本格闘技界の浮き沈みを経験し、同じ時代を生きてきたことのシンパシーを感じているとの発言をしたことに「僕は他の選手に興味はないんですけれど、そう聞かされてみて旧PRIDE、旧K-1からやっている選手は少ないし、その中で一緒にやってきたと思ったら仲間でもあるだろうし、ヘビー級は基本的に少ないから僕は全て仲間だと思っているので。でもそれと戦うのは別なことなので。出来るというのは幸せなこと」だと、そんな2人が戦うのは幸せなことだとした。
その石井の気持ちをどう受け止めるのかと聞かれると「自分の土俵じゃない立ち技に来てくれたのは、僕は立ち技専門なので僕は総合には絶対に行かないので、僕のために来てくれたのだとしたら僕が受け止めないと何も進まないと思うし、何も生まれない。僕も自分が上だと思ってやるつもりはないし、僕も挑むって気持ちでやります。僕が上だとは一切思ってないです」と、自分と戦うためにK-1に来たことの想いを互角の立場で受け止めたいとする。
「今の若い子は人気や注目を気にしていると思いますけれど、たぶん僕と石井選手は自分たちの格闘技人生を自分たちの中でいろいろ考えてやってきた選手なので、他のことを気にしてやってきたわけではないんですよ。その2人が戦うのは凄くいいことだし、それがぶつかり合うのは僕にとっては初めてかな。身体と身体でぶつかり合うって感覚ですかね。僕は今まで挑むって形が多かったので、そう思うと同じ気持ちで、例えば同門対決みたいな気持ちになったのは初めてなので試合になるのがちょっと楽しみ」と、同門対決に似た様な感覚があるという。
ベテラン同士の戦いで若い選手たちに何を伝えたいかとの質問には、「若い選手は若い選手で生き方があるだろうし、格闘技人生があるので、僕と石井選手の試合を見ても全く違うものだと思う。何かを感じてくれるのであればそれはそれでいいし。時代が全く違うので、お前ら見とけよみたいなものはないです。何かちょっとでも感じ取ってくれればいいなとは思いますけれど、今回に関しては周りと言うよりも自分たちがよければいいかなって感覚が大きいので、自分たちが分かっていればいいかなって感覚があります」と、あくまでも2人の戦いであって自分から伝えたいとの気持ちはないとした。
2022年4月の「K-1無差別級トーナメント」準決勝でムハマード・サッタリに判定で敗れて以来の試合。この1年間で「いろいろなことを考えますね。この後の人生のことも考える中で、年も年なので。もしかしたら石井選手じゃなかったら断っていたかもしれない。石井選手だから、ここでしか出来るチャンスはないと思ったし。寝ている中で急に叩き起こされたみたいな感じはあります。よくここまで身体が戻ったなと思うし、よく作れたなって。それは石井選手だから気持ち的にも作れたのだと思います」と様々な考えがある中で、石井が相手だからこそ受けた試合だとする。
石井のK-1での過去3戦は「あまり見てないんですよ。僕、他の人の試合を見ないので」と言い、「ここから見ようとは思うんですけれど、あまりよくなかったのかな。ボクシングの試合についても聞きましたが、あまりよくなかった気がするので。今までも相手の試合はほぼ見てないので、あまり気にすると…ああいう選手って底力が分からないんですよ。強い選手とやった方が力が出る場合もあるので。だからあまり(過去の試合内容は)気にしてないですね。経験は僕の方が全然上ですけれど、一選手として見ているので、そこはあまり考えてなかった。それ以上に尊敬も成し遂げてきたことも大きいので、過小評価はしていません。全身全霊を持って潰そうかなという気がします」と、過去の試合は参考にならないとした。
直前で石井がボクシングの試合を経験していることには「いろいろな障害がある中で、それでもやろうとしたのは、もしかしたら僕とK-1でやるために立ち技の経験としてやったと捉えているので。それはプラスになるいいことだと思います。そういういろいろなことに挑戦する探究心が凄い。だから怖いなと。僕は油断もしていないし、全身全霊で叩き潰すしかないなと」と、自分との試合を見据えて経験を積むためだったのではないかと推測。
2人は以前、練習もしたことがあると言い、「1年半くらい前にやりました。不器用だなという感じがしました、本当に。でもめちゃめちゃ頑張るんですよ。ヘロヘロになりながらも来るんですよ。瞬発系ではないかなと思います。キレがあるボクシングみたいなパンチではないんです。でも頑張る選手なので、僕がどれだけ打っても前へ来る。気持ちが強いんでね。本当に真面目な選手なんですよ。だから油断は出来ないです。この2カ月でもノビシロはあると思うし」と、気持ちの強さを感じ取ったようだ。
サウスポーであることには「僕、今までサウスポーと4回やってるんですよ。ヘビー級ってサウスポーがほぼいないので。本当はオーソドックスでサウスポーの人はいるんですけれど。僕がやったのは武蔵選手、ジェロム・レ・バンナ選手、あとボクシングで2人。全部大事な試合だったんです。でも全部僕が勝っていてサウスポーに負けなしなので、得意ではないですけれど相性はめちゃめちゃいいので行けるかなと」と自信を持っている。
互角の立場で、との言葉はあったが、K-1での経験ははるかに上で日本人初のK-1ヘビー級王者にもなった。その部分でのプライドはあるのではないかと問われると、「下には見てないですけれど迎え撃つという言葉を使ったのはそこだと思います。僕がやってきた格闘技人生があるので。今回は僕のルールでやるので、だからこそ迎え撃つって言葉を唯一使わせてもらいました。僕という人間がそれだけプライドが高い、偉そうな人間でもないので、その中で唯一その言葉を使わせてもらったのは自分がやってきたことへの自負があるからです」と答える。
しかし、負けたらその実績が一気に崩れる、リスクが高い一戦であることは間違いない。しかも石井はこの試合でK-1には一区切りをつけるかもしれないと発言しており、勝ち逃げされる可能性もある。そのリスクをどう考えているのか。京太郎は次のように答えた。
「でも旧K-1、旧PRIDEってそういう戦いが多かったじゃないですか。最近はそういう試合が全くないんですよ。僕があまり気にしていないというのは、相手を下に見ていないからでしょう。相手を下に見ていたら崩されたら終わると思うだろうけれど、僕は今まで通りの1対1の試合だと思っているので。結果論なのでそうなるかならないかは分からないですけれど、僕はそうは見ていない。いつも通りの一戦に全てを注ぎ込むって気持ちでやりたいと思います。いつもと違う熱を帯びるような試合が出来ればと思います」と、だからこそ昔のようなアツい戦いが出来るのではという期待感と自分はそう考えていないからリスクだとは思っていないという。
石井の気持ちを受け止め、自分の気持ちを真正面からぶつける。そこにはK-1ファイターとしてのプライドもある。京太郎は「僕が叩き潰すって言葉を使ったのは初めてじゃないかな。全身全霊で叩き潰すだけです」と、最大限のリスペクトを込めて全力で叩き潰すことが石井の気持ちに応えることだとした。
そして最後に「他の団体が入ってきたり、波が変わって来ましたけれど、また新しい戦いが出来ると思うのでね。その中で僕らベテラン選手が熱を帯びた若い選手とは違う戦いが出来ると思うので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います」とファンへメッセージを送った。