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2023年2月25日(日本時間26日)にアイルランド・ダブリンで開催される『Bellator 291』のウェルター級統一王座決定戦にて、正規王者のヤロスラフ・アモソフ(29=ウクライナ)と暫定王者のローガン・ストーリー(30=米国)が対戦する。
アモソフは世界コンバットサンボ選手権で4度優勝するなどサンボをベースとし、2012年のプロデビューか26勝無敗。2022年6月に当時のウェルター級王者のドゥグラス・リマに判定勝ちで王座を獲得した。
元UFC世界王者ハビブ・ヌルマゴメドフの持つ防衛記録「29」にあと3勝に迫っていたウクライナの王者は、当初は2022年5月にロンドンでマイケル・“ヴェノム”ペイジの挑戦を受け、初防衛戦に臨む予定だった。
しかし、2022年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、アモソフは家族を移動させてから戦地に戻ることを決断、母国の防衛活動に入った。
その5月のロンドン大会でアモソフの代役としてペイジと暫定王座決定戦を戦い、ベルトを巻いたのが、今回戦うストーリーだ。
6月中旬に復帰に向けてのトレーニングを再開したアモソフは、ウェルター級王座統一戦にして、2年3カ月ぶりの再戦を前に、この1年を公式動画で振り返っている。
それは、彼が戦地で見て来たもの、破壊された自宅の地下からBellatorのベルトを見つけ出したときに友人たちからかけられた言葉、再びケージに戻るまでの軌跡を、アモソフが練習場所のアメリカントップチームで語っているものだ。
2人の王者がケージに入ってしまえば、それぞれのバックストーリーは関係なく、最後は1人だけがベルトを持って母国に帰ることが出来る。しかし、両者がどんな思いを背負って戦うかで、変わる局面もあるだろう。まずは、アモソフの思いを下記に紹介したい。
ウェルター級王者アモソフとウクライナの1年①
— U-NEXT 格闘技 公式 (@UNEXT_fight) February 22, 2023
「去年の24日、人生が変わった。眠ろうとしても瞼の裏に記憶が蘇り時折眠ることができない。なぜ一般人を攻撃するのか。みんなを助けたいと思った」
復帰戦は今週末#Bellator291
📅𝟮.𝟮𝟲㊐𝟭:𝟯𝟬㏂ (𝟮𝟱㊏𝟮𝟱:𝟯𝟬)
📺https://t.co/SEbSbLDynU pic.twitter.com/JAFUZCiTD4
「僕の人生は、2022年2月24日に変わった。いまは違う人生を生きている。もし誰かが『トラブルを抱えてる』と言ったら、それがウクライナ人ではない場合、僕は『あなたに問題は何もないよ』と言うだろう。
地元で朝起きたとき窓の外を見て、何が起きているのか耳をそば立てて聞いていた。6カ月の子供がいた。妻に言ったんだ。『さあ、行こう』と。36時間眠らずに運転して、別の町に向かった。それから、自分の町に戻って尽くさないといけないと分かっていた。
人々にとって辛い時期で、助けになりたかった。あるとき町の人々にパンを渡したら、みんな泣き始めた。みんな飲まず食わずで生きるのに精一杯だった。
前線は常に攻撃に晒されている。毎日が戦争だ。ただ、日常生活を過ごせる市もある。君がコーヒーを飲みたいと思ったら飲めるだろう。でも、そこにロケットが打ち込まれ、命を落とすかもしれない。
たくさんの光景を思い出す。数多くの市民が亡くなった。老婆や子供たち、家族。僕には分からない。なぜ老婆を撃つのか。なぜ子供を撃つのか。兵隊じゃない。一般市民だ。なぜロシア兵はそんなことをするのか、全く理解できない。
ベルトを見つけ出したとき、友人が言ったんだ。『ヤロスラフ、君はこのベルトを防衛しに行かなくちゃいけない』と
ウェルター級王者アモソフとウクライナの1年②
— U-NEXT 格闘技 公式 (@UNEXT_fight) February 22, 2023
「友人達がベルトの防衛をするべきだ、と言ってくれた。今のウクライナの状況は自分を奮い立たせてくれる。皆のために戦う。試合後は国に帰る」
復帰戦は今週末#Bellator291
📅𝟮.𝟮𝟲㊐𝟭:𝟯𝟬㏂ (𝟮𝟱㊏𝟮𝟱:𝟯𝟬)
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ときおり、眠ろうとしても眠れないときがある。目を閉じると町の光景が目に浮かび、時々、眠れない。
ロシア兵が僕の町やウクライナの中心地を去ってから、母親に電話して『僕のベルトはどこにある?』と聞いたら『あなたのベルトは私が隠した』と言う。家に向かって『ベルトはどこだ? ベルトは……』と探した。
僕がベルトを見つけ出したとき、友人が言ったんだ。『ヤロスラフ、君はこのベルトを防衛しに行かなくちゃいけない』と。長い時間、考えたよ。行くべきか、行かざるべきか。でも多くの人が『行くべきだ』と。だから、僕は行く。
いまウクライナで何が起きているか。それは僕にとって大きなモチベーションになっている。ケージのなかで戦いたい。そして勝ちたい。地元を離れ、練習を再開した。ああ、もちろんとてもハードだ。でも試合後にウクライナに帰る。そして世界に知ってもらいたい。ウクライナの人々がどれほど強く、屈強かを。ベルトを防衛したという知らせは、ウクライナの人々にとっていいニュースになるだろう。僕は彼らのために戦う」