金ちゃん「俺、コイツが出た試合のセコンドやったんですよ」、坂井「がっぷり四つに組んだけど──」
──知っていると逆に聞けないことですね。
金ちゃん そうです。俺ももちろん格闘家に対してリスペクトはあるのですが、格闘技が好きな方が持つリスペクトとは違うので、ある程度、友達感覚で行けるので。そこを活かすようにしていて。
坂井 そこはね、僕も葛藤があって。リスペクトしすぎると面白くないんですよ。だから金ちゃんがいるのはありがたいっちゃありがたいんですけど、あまりにも失礼すぎるというか……。試合も見たことがないから、目の前のゲストの怖さも知らないわけですよ。それなのに平気で『経験人数は何人ですか?』とか『ベッドの上ではSですかMですか?』とか……。
金ちゃん そういうのをみんな知りたいんだからさー! 青木(真也)さんがドMなのを引き出したのも俺だからね?
坂井 『腕折られたいですか?』とか言ってたよなオマエ。意味分かんないから!
金ちゃん (声をしゃがれさせて)『まあそれもいいかもねー』って(笑)。
──腕を折ってしまった話も、タップしない以上、折ってしまったことは仕方がないけれど、その後の行動はちょっと興奮していたという心境を引き出したのは金ちゃんでした。
坂井 確かにね……(苦笑)。
金ちゃん 興奮してたってね、ハハハハ。マジでサイコパスだよなって。本当にめちゃくちゃ格闘技が好きな坂井とは対局なので、俺は気楽なポジションやらせてもらっていますよ。
──ファイターのこういうところを引き出そうと意識していることはありますか?
坂井 やっぱり俺はマニアックなこと聞いちゃうんですけど、それだけにならずに金ちゃんの『格闘技以外の時間に何しているんですか?』とかから始まる下世話な部分もね。お笑いでも、その芸人に興味が湧くと、ネタ以外の部分聞きたくなったりするじゃないですか。そんな感じのパーソナルな情報とか、『オンナ好きなんですか?』とか。
金ちゃん ね。で『どれくらいモテるんですか?』とか。格闘技やっていない人でもちょっと気になるじゃないですか。芸人だったら売れてきたらモテるとかってあるんですけど。格闘家の場合、成り上がりで、試合勝っていって、カネ儲けて、オンナにモテるとか。そこの本当のところが知りたいというか。
坂井 意外とね、皇治選手みたいな方には『本当にオンナ好きなの?』『それともブランディングで言ってんの?』みたいなのは聞きたい部分ではあったので。
金ちゃん そういう意味では、平本蓮君がめちゃくちゃいい子だったり。
坂井 そうだね。彼は今、格闘技界を盛り上げるために、トラッシュトーカーとしての才能を開花しているわけで。実際この番組出てくれた時も、鈴木千裕選手に負けてドン底で。あれだけ色々言って。でもその状態で出てきてくれて、平本蓮という生き方を貫くと。だから俺らは、“いい子”だとも言っちゃいけないのかもしれないですよね。いい子と言ってしまうと、マイナスにもなっちゃう。でもやっぱり平本選手は、格闘技を盛り上げていきたいとか、格闘技に対して、歪んだ部分もあるのかもしれないけれど、真面目な素晴らしい選手だと思います。それが今の結果についてきているのかもしれない。
金ちゃん たしかに。
坂井 本当にあんなことだけやっていても結果ってついてこないので、絶対。試合も面白かったですからね、弥益ドミネーター聡戦とか。あとはYA-MAN。悪いけど僕らもね、ブサイクには強く行けるんだよね。
金ちゃん ブサイクイジりな。
坂井 YA-MAN、初対面なのにめちゃくちゃ失礼な質問してたよね?
金ちゃん イケメンだとこちらも身構えちゃうんですけど、YA-MANだったら格闘技知らなくてもイジれる。で、お笑いもできるんで。喋りもできるじゃないですか。そういう意味では、全然格闘技のこと知らなくても楽しめる番組にはなっているんですよね。
──ところで、坂井さんは格闘技好きということですけどどこから入ったのでしょうか。
坂井 最初はプロレスから始まって、桜庭(和志)vs.ホイス(グレイシー)とか、藤田(和之)vs.マーク・ケアーとかからPRIDEに入って、どっぷり。そこからUFCも観て。それでPRIDE、K-1が崩壊してから、今のRIZINや新生K-1など、復活してからも全部を観てきているのですけど、かれこれ20年以上見ていますね。
金ちゃん 俺はK-1が2000年代に盛り上がっていた時期とかはめっちゃ見ていましたね。どちらかというと、総合格闘技よりK-1とか立ち技のほうが好きで。マーク・ハントとか。
坂井 マイティ・モーとかね。同じ体型のファイターでしょ。
金ちゃん そう、サモア系(笑)。レイ・セフォーとかね、あの辺がめちゃくちゃ好きで見ていましたね。
坂井 K-1 MAXも好きだったもんね。
金ちゃん そうそう、マイク・ザンビディスとかね。
坂井 インファイターがね。手の短い選手が好きだったよね。
金ちゃん インにいくタイプが好きなのよ。キモとか好きでしたもん(笑)。
坂井 やっぱり自分みたいなね。この人、ボクシングやってたんですよ。村田諒太選手の先輩ですからね。
金ちゃん いや、マジで半年くらいですよ! 中3くらいで。俺の同級生に三原って奴がいるんですけど、三迫ジムの三迫さんの確か孫なんですよ。で三原がやってるから行く、みたいな感じで半年くらいやってましたけど。
坂井 それでも三迫歴で言ったら村田諒太選手より……。
金ちゃん 俺のほうがちょっと早いよ。一応”先輩”って言ってるんですよ。
坂井 で? 金ちゃんは腕短いけど、インファイトしてた?
金ちゃん いや、アウトボクサー(笑)。足使うタイプで、はい。
──好きな選手の話と違うじゃないですか(笑)。
坂井 テクニシャンでね。運動神経いいから。
金ちゃん うん。運動神経だけでやってたんで。まあだから、すこしは格闘技にも関わりがあるという感じですよね。
坂井 一般成人男子くらいは好きだよね。
金ちゃん たぶん全く知らないという感じじゃなくて、普通の人くらいには、好きです。ちょうど高校生くらいの時代に格闘技ハマったし、いいなあと思ってやったりとかしてるんで。
坂井 だから、那須川天心vs.武尊とか、朝倉兄弟とかって言われれば分かる。
金ちゃん まあ今のはそうですね。当時のK-1 MAXとかだったら分かりますよ。
──金ちゃんはボクシング経験があるということですが、坂井さんの格闘技歴も伺えますか?
坂井 高校の時は柔道。PRIDE、K-1などを見ていて、やっぱりやっていない時って『俺でもできるんじゃないか』とか『リングに上がってみたい』って思うんですよね、男って。で、高校の時に何の経験もなく柔道を始めて、『あ、もう無理だ』と。柔道の地区大会くらいでこんなに強いんだと分かって。で、全国大会行く選手やオリンピックとか世界の舞台に行くような選手がPRIDEに出て負けたりしている。『あ、もうこんなバケモノみたいなのは無理だ』と。自分は見るのを楽しもうと思って、そこからゴリゴリの格闘技ファンとして生きていくことを決めました。それでも総合格闘技のジムにも行ったりしました。
金ちゃん やってたよねー、俺、コイツが出た試合のセコンドやったんですよ。NSC在学中に新宿FACEに出るからって。
坂井 タッグのグラップリングマッチね。
金ちゃん 知らないおじさんと戦ってたんですけど(笑)。
坂井 カレー屋の店主ね。
金ちゃん がっぷり四つに組んで全然、5分くらい動かなくて(笑)。ブーイングがブーブーすごいことになってて(笑)、俺らもめっちゃ気まずくて、みたいな。
坂井 緊張もするし、無理ですよ。
──そういう場に相方が応援に行くというのも、珍しくありませんか?
金ちゃん そうですよね。『心細いから来てくれ』って言われて。俺ともうひとり同期の奴で行きました。一応、俺らも上半身裸で、覆面かぶってセコンドついて、めちゃくちゃスベるんですよ、やっぱり。
坂井 スベってたね。
金ちゃん 登場でスベって、また試合がスベるっていう、とんでもない……。
坂井 あの時にさ、格闘技でも”塩試合”ってあるじゃない、あの、膠着する辛さを知ってよりリスペクトするようになったというか。膠着している試合も、みんなラクしているわけじゃない、と。
金ちゃん 体力が減っていってお互いに動かなくて、みたいな。何かをやりたいのは分かるんですけど、お互いに体力もないし何も動かないみたいな。アレはセコンドしていて気まずかったですよ。
坂井 気持ちは分かるけど、実際は、塩試合する選手のこと平気でSNSで書いたりしますけどね。やっぱり見る方って気楽ですから、なんでも言えちゃう。
金ちゃん たしかに。やる方はつらいよな。
坂井 つらいよ……。
──塩試合もそうですけど、やはり肌感覚で絞めや極めの感覚や痛みを知っているというのは見る上でも大きいですね。
坂井 いやあ、痛かった。アキレス腱固めとかめちゃくちゃ痛いですからね。だから根底には全・格闘家にリスペクトがあります。
──芸人としてのお二人の話も伺いたいのですが、鬼越トマホークの看板の”ケンカ芸”、あれはライブ前に実際に喧嘩をしてしまったことがキッカケとありますが、その時って……(後篇に続く)