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レポート

【BLACK COMBAT×DEEP】先鋒戦で二冠王・大島沙緒里が粘るイェリンを振り切り一本勝ちでDEEPが1勝=試合詳報

2023/02/07 12:02
 2023年2月4日(土)、韓国スウォンのスウォン・コンベンションセンターで『Black Combat 5: Song of the Sword』として「BLACK COMBAT」と「DEEP」の5対5の対抗戦が開催された。  BLACK COMBATは、ドラマチックな映像を駆使し、選手のバックボーンとキャラクターを際立たせ、YouTubeでそのストーリーを拡散させることで新たなファンの獲得に成功している韓国の新興MMAプロモーションだ。  日本の「DEEP」は現王者2名と元王者、王座挑戦者を含む5選手を選抜。韓国「BLACK COMBAT」側は、今回の対抗戦に向けて各階級で4選手による選抜戦を行い、代表を決定して対抗戦に臨んだ。  DEEPによれば「試合順はBLACK COMBAT側が決めた」という。DEEPとしては、現王者2選手が序盤に出場し勢いがつく形だが、BLACK COMBATとしては、中堅・副将に強豪キム兄弟を置き、最後は大将戦に託す形か。 ▼先鋒戦 女子アトム級大島沙緒里(AACC)10勝3敗ホン・イェリン(DK Gym)4勝2敗 ▼次鋒戦 ライト級大原樹里(KIBA マーシャルアーツクラブ)31勝18敗3分ユン・ダウォン(MMA Story)5勝4敗1分 ▼中堅戦 バンタム級山本聖悟(Team Cloud)4勝10敗1分キム・ジョンフン(MOAI GYM)4勝0敗 ▼副将戦 フェザー級中村大介(夕月堂本舗)34勝22敗1分キム・ミンウ(MOAI GYM)10勝2敗 ▼大将戦 無差別級赤沢幸典(Tristar Gym 日本館/Team Cloud)3勝5敗チェ・ウォンジュン(MMA Story)5勝5敗  そんななか、先鋒として現DEEPミクロ級&DEEP JEWELSアトム級王者の大島沙緒里(AACC)が登場。ホン・イェリン(DK Gym)と対戦した。  大島は柔道で全日本ジュニア優勝などの実績を持ち、MMA10勝3敗。RIZINでは49.0kg契約で浅倉カンナと山本美憂をいずれもスプリット判定で破る実力者だ。  対するイェリンは、BLACK COMBAT代表選抜戦の1回戦で元ONE Championshipのキム・ナムヒと対戦。テイクダウンプレッシャーをさばいて、出入りからボクシング経験もある回転の速い打撃で圧倒。最後はナムヒのダブルレッグをスプロールして右腕を縛りつけてのパウンドアウトで勝利した。  決勝では、175cm 70.75kgと階級上の17歳チョン・スミンを相手にオーソからの前手の左フック、左ミドル、相手の打撃に頭の位置をずらしての右ストレートなど打撃で攻勢に立ち、判定勝利で代表を決めている。  組みに絶対的な自信を持つ大島と、ストライカーのイェリンとの対決で対抗戦は幕を開けた。 [nextpage] 極めの大島に凌ぐイェリン、腕十字に一瞬、場内は静まり返ったが──  満員となったスウォン・コンベンションセンター。熱気にあふれるなか、先に2本のベルトを肩に“リトルジャイアント”大島が入場。続けて“ゴースト”イェリンが太極旗を背に羽織りケージイン。試合はケージ、5分3Rで行われる。  1R、ともにグローブを合わせてスタート。オーソドックス構えから先に左インローを突く大島。さらに右ローも前足に突くと、イェリンの打ち返しの動作に合わせてダブルレッグへ。  両足を後方に飛ばしてスプロールするイェリンだが、右ヒザ裏を掴む大島が前に。それを切り返して上になるイェリンに、大島はその流れのなかで右で差して右足を跳ね上げてスイープし上を取り返す。  上四方を取る大島はイェリンが伸ばしてきた右腕を腕十字に極めに行くが、その際で上体を起こしたイェリンは腕を抜いて立ち上がり。右で差して大島を金網に押し込む。  左で小手に巻き体を入れ替える大島は右ヒザを突いて、左を奥襟に持ち替えて左大内刈でテイクダウン! 左は差さずに首を抱えてパスガードすると袈裟固めへ。そのまま左腕をVクロス、両足によるアメリカーナを狙う。  柔らかい身体で両足をシザーズで頭にかけて腕を抜いたイェリンに、顔にかけようとする足を外した大島はサイドからキムラ狙いから腕十字へ。  これをすぐに内側を向いて側転してずらしたイェリンはまたいでヒジを抜くとヒザ十字へ。後転してトライアングルを解除しヒザを抜いた大島はなおもサイドへ回り、左腕を抱えて再び腕十字に。両手をクラッチして上体を起こすイェリンは腕を抜いて上に! 体を離し、下の大島の足に蹴り、腹にフットスタンプを放つ。  立ち上がる大島のシングルレッグをスプロールするイェリンにがぶりの大島。イェリンは首を突っ込み、ボディロック&小外がけでテイクダウン! 首を抱える大島だがギロチンに行くにはハーフで浅い。再度深く組み直そうとする大島に、ヒザを立てて立ち上がるイェリン。  首を抱えて後方に回す大島が上に。サイドから頭をまたいでのキムラ狙い、うつ伏せになろうとするイェリンを寝かせて袈裟固め狙い。しかしここも柔軟なイェリンはシザーズで大島の頭を挟むと一瞬動きが止まりブレークに。大島にとっては厳しいスタンド再開だ。  大島の入りに右ヒジを狙うイェリン。かわす大島にイェリンは右ロー。その際で組もうとした大島がバランスを崩すと、イェリンは立ち際にサッカーキックも、すぐに金網まで詰める大島は、左で小手巻き、右で引き手を取ろうとするが、イェリンは右で深く差して投げさせず体を入れ替えてケージに押し込み。空いた左手で顔面に細かいパンチを突く。  極めに行ったことで腕を使ったか。インターバルでセコンドに腕のマッサージをリクエストする大島。「焦って組みに行かなくていいから。もう1回チャンスあれば取れる」と指示を受ける。  2R、左右ローの大島に左ジャブを突くイェリン。大島の組みを避ける。追う大島は右ハイは空振りもそこから回転して向き直りすぐさまダブルレッグ。脇を潜りスタンドバックに。正対しボディロックのイェリンに首を抱えて強引に首投げに行く大島。  潰すイェリンを足で跳ね上げるが正面についていくイェリンが上に。背中を着いた大島はクローズドガード。頭を胸につけて顔に右パウンドを入れるイェリンだが、1Rと同様に早めのブレーク。クローズドガードの中ながら、今度はイェリンにとって厳しいブレークか。  またも左インローから入る大島だが、その打ち終わりにイェリンは右ストレート! 一瞬アゴが上がった大島がすぐに詰めると、そこにイェリンはさらに右フックを振って大島はバランスを崩して両手を着くが、すぐに立ち上がりダメージは見せない。  大島の左にかぶせる形で右を振ると大島はまたもバランス崩して両手をマットに。その立ち際にイェリンはバックを狙い、すぐさま左手を首下に。右足はかかっていないがリアネイキドチョークを極めに行く。横回転して仰向けになることで絞めを外した大島に、イェリンはハーフからヒジを3連打!  さらにヒジを落として前腕を喉もとに押し付ける。ホームの大歓声のなか、右脇にもヒジを入れるイェリンだが、右腕をオーバーフックした大島は、相手の支点を無くして右足を外からかけて右に回してスイープ。そのまままたいでマウントで上になると、細かいパウンド。ケージを蹴って脱出を試みるイェリンだが、大島は肩を頭を着いて返させず。  マウントから腰を切りサイドに移行するとヒジ打ち。イェリンに足をかけさせずにコントロールして袈裟固め。こつこつパウンドしドミネートする。左脇を差しての右足をイェリンの頭の下に入れて挟んで固定し、左のパウンドをこつこつと60連打。レフェリーの顔を見るがゴング。  インターバルで「勝っていると思うな。判定になったら分からないから最後まで取りに行け。後悔しないようにやれ。極めるつもりで行け。ただブレークが早いいからそれだけ気をつけろ」とアウェーでの戦いの指示を受ける大島。  3R、グローブタッチした両者。互いにインローから。大島は右を強振するもかわすイェリン。遠間からのダブルレッグを切られた大島は引き込みへ。まだ15秒。しかしここで両脇を差している大島は左足首を股間にかけてイェリンを引き付けて後方に回してスイープ!  すぐにパスしてサイドを奪うと左足を顔にかけて腕十字へ! 両手をクラッチし上体を起こしてきたイェリンに右足もかけて頭を抜いてうつ伏せで極めに。またいでヒジを抜こうとするイェリンを前転させて仰向けにさせて右腕を絞るが、イェリンも後転してなんとか再び身体をまたぎに。しかし、再度、うつ伏せで極めに行く大島にイェリンは右ヒジを伸ばされ、巻き込まれている左手で腰をタップ。  レフェリーが間に入ると、場内は一瞬静まり返ってから、勝者に拍手。右腕を抱えるイェリンをハグする大島。  3R、0分59秒、大島沙緒里が腕十字で一本勝ち。勝者コールに小さなガッツポーズから跪いた大島に、場内からはあらためて大きな拍手が送られた。 [nextpage] 大島「女子アトム級のベルトを作っていただけたら」  イェリンの粘りに苦しめられた二冠王者だが、最後は判定に持ち込ませず。DEEPとしては幸先のいい一本勝ち。佐伯繁DEEP代表は笑顔で拍手も、ブラック代表は険しい表情で微動だにせず。  座り込んだままの大島にリングアナウンサーも片ヒザを着いて寄り添いインタビューを行った。  大島は、「極められると思いましたが取れませんでした。会見のときから韓国の方々が日本の選手にも優しくて、SNSでも敵が私ですが、『ホン選手と一緒に2人で頑張ってください』とメッセージが来ていたので、ほんとうに暖かくて韓国が好きになりました。私はチャンピオンですけど、格闘技(MMA)を始めてまだ3年半。ホン選手と同じくらいまだ経験が浅いので、日本でも韓国でもたくさん試合をしたいです。急に決まったので年末年始もこの試合のために家族で1人で残って練習をしてきたので子供たちとの時間がほとんど取れませんでした。1週間後に旦那が柔道を現役でやっているので、今回は呼べませんでしたが、次こそは子供たちを呼んできたいと思います」と語った。  続けて、ブラック代表に「対抗戦に呼んで読いただきありがとうございます。ひとつお願いがあります。この47.6kgは、世界的にも少ないので、女子アトム級のベルトを作っていただけたら私も参加して、ホン選手にも入ってもらって試合をしたいので、ぜひお願いします」とアトム級のベルトの新設をリクエスト。  ブラック代表は笑顔で「女子アトム級を新設するために代表選考会をしたわけで、そして今、私たちはゴースト選手の素晴らしい上達を見ました。ご存知の通り、韓国には本当に強力な女性選手がたくさんいます。アトム級でまた本物のチャンピオンを選んで、今後、リトルジャイアント選手のところに行くからまた待っててくださいね」と答えた。  大島はイェリンを向き直り、「ありがとうございます。私は結婚して5年前、MMAをしていることは想像できなくて、この世界にいることは信じられなかったですが、この3年はそれまでの倍くらいの経験をしてきました。自分次第でこの先を変えることができるので、今回の試合もこれからに活かして、準備ができたときにリヴェンジをしたいと望まれたら、私は対戦を受けるので、それまで頑張りましょう」と語り、イェリンとハグをかわし、ケージを降りた。  最後にインタビューを受けたイェリンは、「この試合が最後だと思っていました。ごめんなさい」と涙ぐみながら引退を示唆。  試合後、バックステージでイェリンの引退を聞いた大島は、涙をこらえながら、「私が引退試合でよかった、と思えるくらい……これからももっと強くなって有名になるので……どうかいい人生を送ってください」と言葉を贈っている。
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