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レポート

【Bellator】ヒョードルが引退試合で王者ベイダーに1R TKO負けで有終の美を飾れず「期待した試合を見せられなかったけどすごく幸せな気持ち」。ミドル級王者エブレンがトコフに完勝、悪童ワードがTKO勝ち、体重超過のアヴサラゴワが辛勝、コールドウェルが4連敗

2023/02/05 09:02

Bellator 290: Bader vs. Emelianenko 2 速報

日本時間2月5日(日)朝8時 開始(U-NEXT生配信
米国カリフォルニア州イングルウッド キア・フォーラム

【メインカード】

▼Bellator世界ヘビー級選手権試合 5分5R
〇ライアン・ベイダー(米国)王者 234.4ポンド(106.32kg)
[TKO 1R 2分30秒]
×エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)挑戦者 236.2ポンド(107.13kg)
※ベイダーが3度目の防衛に成功。

 2023年2月5日(日本時間)、『Bellator 290: Bader vs. Fedor 2』(U-NEXT生配信)で、いよいよ“最後の皇帝”エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)が引退試合を迎える。

 対戦相手は、現Bellator世界ヘビー級王者ライアン・ベイダー(米国)。2019年1月に1R KO負けした相手との再戦にしてリベンジマッチ、そして「Bellator世界ヘビー級タイトルマッチ」に向け、ヒョードルは2連勝で“最後の試合”に臨む。

 2月2日のメディアインタビューに応じたヒョードルは、「最後の試合がタイトルマッチで感謝している。結果がどうであれ。スコット(コーカー代表)、対戦相手のライアンもありがとう。試合を見ていてほしい」と静かに語った。

 ヒョードルは、MMA47戦40勝6敗1NC。2022年9月に46歳になった。

「(46歳でも動けることに)自分でも驚くよ」と微笑したヒョードルは、2000年5月のプロデビューから今回の引退試合までで「最も重要な試合」を問われ、「ノゲイラとのベルトをかけた最初の試合」と答えている。

 2003年3月、横浜アリーナで開催された『PRIDE.25』でヒョードルは、初代PRIDEヘビー級王者アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラの持つ王座に挑戦。ロシアンフック、テイクダウンからのパウンドで“柔術マジシャン”にダメージを与え、判定勝ちでベルトを獲得した。

 ノゲイラの連勝を「13」で止めたヒョードルは、その試合について「私は自分のファイティングIQを高め、勝利への鍵を見つけなければならなかった。当時、彼は世界最高のファイターだったから」と振り返った。

 そして、ファン、数多くのメディアがベストバウトに挙げる2005年8月のさいたまスーパーアリーナでのミルコ・クロコップ戦。さいたまスーパーアリーナに47,629人を集めた王座戦でヒョードルは、K-1出身のミルコに自ら圧力をかけ、テイクダウンにも成功。判定勝ちで2度目の王座防衛に成功している。

 この試合について、元K-1 USA代表にして、現Bellator代表のスコット・コーカーはヒョードルが、ミルコの打撃に対処する方法にショックを受けたという。

「ミルコ・クロコップはK-1で何年も戦い、キックボクシングでも何年も戦ってきた、打撃の歴史において最も偉大なストライカーの一人だった。彼はMMAに転向し、ランデルマン、コールマンらを1RでKOし、ヒョードル戦に向かった。あの日、私は生で観れなかったが、夜中の2時までテレビで観戦していたよ。ヒョードルはミルコをスタンドで圧倒していたんだ。ヒョードルはミルコを打ち負かし、ミルコをテイクダウンし、圧倒した。“この男は世界最高峰の選手と殴り合えるのだ”と確信したよ。“彼ができることは他にもある”と」

 そして、今週末の「Bellator世界ヘビー級タイトルマッチ」に臨むヒョードルをあらためて「比類がない」とコーカー代表は語る。

「私はあの時代を生き、あの時代を見てきた。多くの偉大なファイターがいることは知っているが、他のアスリートと比較して、彼の総合的な仕事ぶりを見ると、比類がない。そして、彼はまだそれを続けている。46歳になってもノックアウトしている。彼はまだ超高速だ。少しは衰えたか? ああ、でも彼はついに引退するところまで来たんだ……彼はすべての道具を持っていた。サブミッション、レスリング、ファイト、そして素晴らしい立ち技……」

 ヒョードルは、「オクタゴンの中で戦わなかった史上最高のファイター」ともいえる。その可能性につて、ヒョードルはかつてインタビューで、ダナ・ホワイトUFC代表と面談したことを認めている。

「UFCがPRIDEを買収したとき、その(UFCで戦う)可能性があった瞬間があった。しかし、契約書にサインしなかった。だから実現しなかったんだ。私たちは一度会ったことがある。島で休暇を過ごしていたら ダナ・ホワイトが来た。だけど、いいことは何もなかった。私は少し違った視点からこのことを見ている。“もし、そうなるはずだったなら、そうなっていたはずだ。そうでなかったのなら、そうでなかった”ということだ。私は起こったことに満足している。今を生きて、今あるものに満足しなければならないんだ」

 事前会見では「もしも」についての質問も飛んだ。

「もし、あなたがベイダーからタイトルを奪取して、しかも、(王者のままUFCを離脱した)フランシス・ガヌーがBellatorと契約したら、UFCとベルトを統一する試合をガヌーとしたいか?」

 その問いに、ヒョードルは「いまチャンピオンであるライアン・ベイダーの前でその質問はおかしい」と、淡々と答えている。

 前戦で1R KO勝ちして王座挑戦権を得た46歳の皇帝は、2022年にワレンティン・モルダフスキー、シーク・コンゴを相手に2連勝中の現役王者と戦うのだ。

 2019年1月のBellatorヘビー級ワールドGP決勝戦でヒョードルは、ベイダーの左フックからのパウンドで1R 35秒、KO負けした。

「前回起こったことはすべて、とても早く起こったんだ。確かに私の思い通りにはいかなかった。もちろん、あれから4年が経ち、若くはない。でも、46歳でも彼に“戦いを挑める”ことを願っている」

 そして、ヒョードルは、トラッシュトークではなく、試合で行ったことでファンの記憶に残りたい、と語った。

「私はMMAファンから、MMAのスキルに基づいて人気とファンベースを獲得した選手として記憶されたいです。トラッシュトークや今流っている嫌なことではなく、ファイトスキルに基づいて。それが私が皆さんの記憶に残る方法です」

 事前会見の最後に、ヒョードルは「土曜日に何が起ころうとも、引退するつもりだ」とも語っている。タイトルマッチで勝とうが負けようが、ひとつだけ確かなことがある。それはエメリヤーエンコ・ヒョードルが、時代を代表するファイターであるということだ。

 先に入場したヒョードルは静かな表情でうつむいたまま顏や胸を叩いて自分に喝を入れる。場内は大声援だ。続いて入場したベイダーはやや速足でケージへ向かい、ケージインすると「ハッ!」と気合いを発し、小刻みに身体を動かす。

 コールを受けたヒョードルは右手を軽く振り、場内の観客は立ち上がって拍手を送る。続いてコールを受けたベイダーは軽くシャドー。向かい合った両者は視線は交わさない。

 1R、まずはヒョードルが右フックを振って前へ出る。ベイダーはバックステップでかわすとジャブを突いていき、右フックで追っていく。ガードの低いヒョードルはその右フックをもらう。ヒョードルの大きな左フックを空振りさせたベイダーの右フックでヒョードルはダウン。

 すかさずパウンドとヒジで追い打ちをかけるベイダーにヒョードルはガードになり、ベイダーの右腕をオーバーフックで抱えるがベイダーは左でヒジを落とす。

 ベイダーはサイドバックから腰を抱いて固定し、鉄槌とパウンドの連打。最後はハーフガードのままヒョードルは一方的に殴られ続け、ヒョードルは顔面から出血が見られる。防戦一方となり、ついにレフェリーがストップ。ヒョードルは有終の美を飾ることが出来なかった。ベイダーは3度目の防衛に成功。

 ヒョードルはグローブを外すとそっとマットの上に揃えて置き、引退の儀式。

 マット上で「ワンサイドで終わってしまい自分が期待した試合を見せられなかったけど、一方ですごく幸せな気持ちです。 みんなが応援してくれ、20年以上の選手人生をともに歩んだ猛者たちがここに集ってくれた。コーチやチームメイトたちも皆ありがとう」と語った。

 ケージ内にはホイス・グレイシー、ジョシュ・バーネット、ダン・ヘンダーソン、マーク・コールマン、ヘンゾ・グレイシー、チェール・ソネン、チャック・リデル、マット・ヒューズ、ランディ・クートゥアー、フランク・シャムロックら往年の名選手たち、そして榊原信行RIZIN CEOも上がってヒョードルと握手を交わした。

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