教わったままやっているうちはまだダメ
【写真】ストレートフットロックで藤原は相手の蹴り上げを想定した動きを見せた。
──そういったゴッチさんのキャッチレスリングに加え、今日は、藤原さんがイゴール選手にアキレス腱固め、ストレートフットロックから、ヒールフックを見せました。外ヒールだけじゃなく、足を組んでの内ヒールも。当時としては珍しかったのではないですか。
藤原 あんなの誰でもやるよ(笑)。ヒールホールドは、昔、柔術をやっていたイワン・ゴメスとずっとスパーリングをやってたんだよ。教わったのはそれ1個だけな。あとは何ともなかったな。ブラジルで『チャンピオンだった』と言ってたけど、あんまり上手くなかったよ。蹴りとかも。
──アームロックもいわゆるキムラロックとは少し異なる形でした。
藤原 ゴッチさんからは『俺はこうしてやるけど、お前と俺では腕の長さも違うし筋力も違う。だから自分がいいように改良しろ。それで初めて完成だ。教わったままやっているうちはまだダメだ』と言われたよ。自分流に考えて自分なりにやりゃあいいんだ。だからアレもヒールもゴッチさんから教わった形じゃない。海外選手はすごい力が強いから。力比べだと負ける。持ち方ひとつで、すぐに外れたり、コントロール出来たりするんだ。
【写真】藤原は手首を持たずに手の甲を持ち、両腕を脇下に入れて極めた。
【参考】手首を持たずチョークのように組んで極める石井慧のアームロック。
──シビサイ選手とイゴール選手は、実際に体験してどう感じましたか。
シビサイ アームロックとか、自分が今まで教わってきたものと違う、初めての形だったので。身体の力が同じときに、拮抗してしまった時にああいうテクニックが生きるなと思いました。
イゴール 僕もフットロックで結構、手首を上げるのは柔術で意識していたんです。あまりその形でやる人が少ないんで、新しい発見かなと思っていたんですけど、全然、昔から……(苦笑)。
藤原 これは古いもんだ(笑)。栓抜きってあるだろ? これ(テコが)ブカブカだったら開かないだろ? テコが小さいからポンと開くんだよ。
イゴール ヒールホールドも、内ヒールで最近、流行っているじゃないですか。それもだいぶ前からある技だと知って興味深かったです。
藤原 46年前にイワン・ゴメスがやってて、“あっ、これいただき”ってな(笑)。
──藤原さんはゴメスが得意な外ヒールから、内ヒールにしていましたね。
藤原 ゴッチさんから言われていたからね。“もっといい方法はないだろうか”と常に考えることだ。日本とブラジルの両方の血をひいているんだろ?
イゴール はい。お父さんはブラジル人で、お母さんは日本人の孫です。
藤原 そうか……猪木さんもブラジルにいたし、ゴメスもブラジルから来た。日本に1年くらいいいて、いつもスパーリングパートナーだった。パスポートのことで車で連れて行っていたよ。縁を感じるね。