“TK”高阪剛とALLIANCEのメンバーたちとともにベルトを巻いた藤井伸樹(C)ゴング格闘技
2022年11月27日(日)東京・後楽園ホールで「プロフェッショナル修斗公式戦 2022 Vol.7」が開催され、セミファイナルの「環太平洋バンタム級チャンピオンシップ」にて、大激闘の末、藤井伸樹(ALLIANCE)が、石井逸人(TRIBE TOKYO MMA)をスプリット判定で破り、新王者に輝いた。
ABEMAのライブ配信では、試合中からコメント欄に「すごい試合だ」「ワールドカップじゃなくてこっちを選んで良かった」と3Rの熱闘に称賛の声が挙がるなか、年間ベストバウトともいえる試合を制した“TK”高阪剛の愛弟子・藤井。
PANCRASEでアラン“ヒロ”ヤマニハに判定勝ちするなど5連勝後に、修斗に主戦場を移し、白星も黒星も経験するなかで、10戦目の修斗で自身初のベルトを巻いた。
対戦相手に“もっとも戦いたくない男”と言わしめる我武者羅ファイターが、今後に望んだこととは? 試合のハイライトを連続写真とともに振り返った。
お互いに必死で、我武者羅になっちゃいました
──修斗10試合目で環太平洋バンタム級王者となりました。
「あっ、10試合ですか……自分でもちょっとよく分かってなかったですね(笑)。ああ……10試合目になるんだって感じですね」
──MMA20勝12敗3分、PANCRASEでアラン“ヒロ”ヤマニハ選手に判定勝ちするなど5連勝後に、修斗に主戦場を移し、ベルトを獲得しました。
「ベルト……よりもほんとうに勝てたことが、自分にとって大きかったです。ベルトを獲ったことが嬉しくないわけじゃないですけど。1月に負けしてしまったので、そこで悔しい思いをして、今日、勝てて良かったなと、ホッとしています」
──1月の小野島恒太戦では、藤井選手がテイクダウンを仕掛けるも倒し切れず、判定負けで環太平洋王座を逃しました。あの試合から考え直したことは?
「技術面では打撃のところとか……普段の生活面でも格闘技に向けてしっかりしていこうと意識してやってきましたね。一個一個、しっかりやって行こうと。自分でコントロールできるようになってきたかなと思います」
──今回の石井逸人選手との試合は、打ち合い、投げ合い、スクランブルの応酬と、タフすぎる展開でした。こういう試合になるとは思っていましたか。
「思ってなかったです。もっと……組みの展開は向こうの方が上かなというか……向こうの方が有利かなと思っていました」
──それが思ったより組みで対応できたと。1Rに藤井選手がダブルレッグでテイクダウウンも、石井選手が立ち上がり首投げで投げた。2Rには、石井選手がダブルレッグで尻餅着かせ、藤井選手がすぐに立ち上がると、そこを大腰で投げられるも、ここも藤井選手が背中から落ちずに残して正対。
あのとき、石井選手が脇を潜りバックについて片足をかけたところに、藤井選手が正対して、石井選手のギロチン狙いを逆に脇を潜りバックについて殴った。
その後も藤井選手のシングルレッグをかわした石井選手が内股も、ここも藤井選手は背中を着けず立ち上がって、石井選手のシングルレッグ、首投げ、アームロックを潰して鉄槌を入れた。あの一連の流れは凄まじいものでした
「石井選手の寝技が強いのは知っていたんで、“これ早めに対処しないと、どんどん向こうの展開に持って行かれちゃうな”と思ったので、そこで必死に暴れちゃいました。2Rの投げの切り返しも咄嗟に出ましたね」
──さきほど仰った打撃の一つひとつをしっかりと、という向上も、石井選手のジャブ&ロー、ストレートを受けながらも、藤井選手もワンツー&ローを伸ばし、近い距離で左ボディを効かせていました。1Rのホーン直後の右は藤井選手としては珍しかったですが。
「あの打ち合いは……自分でも最後少し当たってしまったというのはありますけど、最後無かったことになってますかね(苦笑)、すみません」
──ホーンも聞こえにくい激闘だったと思います。打撃を当てて、組んで投げて寝技でもスクランブルという目まぐるしい展開のなか、競り勝てた要因をどう考えていますか。
「競り勝ったのか、分からないですけど……お互いに必死で自分も必死だったし、向こうも必死に感じました。なんか……我武者羅になっちゃいましたね」
──その我武者羅が最後まで続くのが、藤井選手の強さだと思います。投げられても最後にバックを取った。それが勝因だったでしょうか。
「バック、それに三角ですかね。組めたけど対処もされました。上から(石井が)鉄槌も打ってたので、このままだとジャッジに入らないかもしれないと思って、下から絞めながらも殴って取りに行って、殴って取りに行ってと行ったら持ち上げられたりもしたので……」
──しかし、バックからの絞めのみならず、後ろ三角からの極め、打撃というのは、サトシ・クレベルらも使うMMAでの極めの返されにくい形なのかと感じました。
「あれは……ちょっと乗りすぎちゃって(苦笑)、十字か何かに行って『やるならやれ!』と声も聞こえたんですけど、そんな十字が得意というわけでもないので(苦笑)、ちょっと前にズレたら、運よく三角が入った形です」
──「運よく」と言えど身体に染み付いているのでは?
「いやあ、あれは流れ、で“たまたま”だと思います……まだまだ技術的には課題が多い感じですかね……。ほんとう相手、強かったです。でも自分のなかでは一本・KOは、今回も取れなかったですし、次こそはという感じです」
【写真】両者が出し尽くした凄まじいスクランブル戦、石井から仕掛ける場面も多かった熱闘の判定はスプリットに割れた。
──これまで対戦相手に“もっとも戦いたくない”と言わしめた、頑張り続けるファイトは、積み重ねた練習と技術に裏打ちされたものだと思います。ベルトではない、と言いながらも、高阪剛代表はじめ、周囲が喜んだ戴冠だったように見えました。
「いやあ……あの……ほんとう……何が何でも勝ちたい、勝たなきゃなという気持ちでした。こうしてベルトを獲って一緒に喜べたことはほんとうに良かったです」
──環太平洋王座を獲得して、世界のベルトは安藤達也選手が巻いています。 これからはどうしますか。
「今後は、しっかり身体を休めて……すぐに練習を始めたいと思います」
──「しっかり休息」するのに「すぐに練習」とは藤井選手らしい新王者の言葉でした。試合直後にありがとうございました。
— 石井逸人 (@HAYATO_141) November 29, 2022