2022年12月4日(日)東京・品川インターシティーホールで開催されるJAPAN KICKBOXING INNOVATION主催『Z RACING PARTS presents RESISTANCE-10』のダブルメインイベント1、INNOVATIONスーパーウェルター級(69.85kg)王座決定戦3分5R延長1Rを争う同級8位・風間大輝(橋本道場)と同級6位・馬木樹里(岡山ジム)のインタビューが主催者を通じて届いた。
風間は2021年12月にプロデビューし、戦績は4勝(1KO)1敗。身長181cm。25歳。馬木は2019年11月プロデビューで戦績は4勝(1KO)2敗。身長191cmの長身。24歳。
風間大輝「打ち合ってくれるなら上等。そうでなくても打ち合わせて倒します」
――骨太の空手スタイルでK-1ライト級王者、朝久泰央選手を撃破し、K-1で旋風を巻き起こしている与座優貴選手が風間選手をキックボクシングと橋本道場に誘って今があると聞いております。
「そうですね。与座は同い年で20歳くらいから同じ地元(茨城県土浦市)の遊び仲間で、ずーっと『一緒にやろうよ!』と言ってもらっていて、それで23歳でようやくのこと橋本道場に入門させていただきました」
――与座選手が熱心に勧誘する程ですから、かなりのアマキャリアがあったとか?
「遊び程度にちょろちょろやっていましたけど左程でもないです」
――すると只ならぬ才能が見抜かれていたとか?
「それはどんなものかですが、燻っていたようには見えたんですかね?(笑)」
――5勝1敗の好成績ながらプロキャリア6戦目でタイトルマッチに辿り着いた風間選手の来歴をお聞きします。格闘技キャリアは、やはり与座選手が盟友なだけにフルコンタクト空手?
「いえ全然。小さな頃、父親がテレビでK-1とかDREAMとかをつけていたら何となく見る程度で、魔裟斗さんを名前だけわかる程度の興味でした。運動は小3から中学生まで野球一色で、小中ともキャプテンを務めましたし、中3の夏に関東大会ベスト8までいきました」
――すると相当な野球少年の青春?
「と思われがちですが、そうでもないんです。きっかけは2コ上の兄に引っ張られてですし、運動神経も人並みで脚なんか速くもなかったです」
――それでいながらキャプテンに選ばれるには理由がありそうです。
「それはわかんないんですよね(笑)」
――そこまで野球をやられていたのなら、高校進学で「目指せ甲子園!」の路線には?
「いかないんです。自分で無理だと悟ってしまう部分があって、その気持ちが芽生えたら上にはいけないですから」
――すると情熱の対象はどこに?
「“遊び”です(笑)」
――北関東はヤンキー帝国のようなイメージが勝手にありますが、失礼ながらそっち路線?
「中学野球部時代を含めて、それなりのヤンチャはしていましたけど、人道に外れるようなことはしていません(笑)」
――現在も堂々たる偉丈夫ですが、中高時代も同様ならかなり厳つかったのでは?
「中3で178cm、80kgはありましたからね」
――ヤンチャに喧嘩が含まれるのであれば相当に強そうです。
「中学の夏、野球部引退後は、柔道部の顧問をされていた担任の先生に何故か柔道を個人教授で仕込まれまして、1対1ならそれなりに負けない自信はありました。多少ブン殴られても耐えて組んじゃえば簡単ですから」
――その柔道が初の格闘技との接触?
「そうですね。けど、その後は特に何をするでもなく高卒から就職して、その頃だったかキックボクシングをしていてK-1甲子園に出るくらい頑張っていた友達に誘われてK-1の大きなイベントを代々木第二体育館に見に行ったんです。それが大当たりの凄い大会で、65kgの日本トーナメントで野杁正明選手、久保優太選手、木村ミノル選手、山崎秀晃選手、HIROYA選手、左右田泰臣選手なんかが一堂に会した偉い面子で、試合内容もとんでもなくて大熱狂しました。今でこそその価値がわかりますけど、当時は選手のこともろくに知らないで、だけど試合を見てただただ『スゲーっ!』って騒ぎまくっていました。格闘技への気持ち、あれが原点かも」
――それが実戦につながるのは、与座選手のスカウト?
「いえ、その前に少し。そのK-1を見て『やるならキックだな』って思いはあったんですが、地元でキック専門ジムが近くになくてT-BLOODって川尻達也さんとかがおられたMMAのジムに入ります。けど、遊び感覚なんで週一くらいの練習で、基礎練習とか嫌でスパーリングの日くらいしか行かなかったような。一応、そこからキックのアマ大会に出て2戦2勝ではあります」
――野球や柔道で鍛えた基礎があるにせよ、MMAジムからキック大会で連勝なのですから才能はかなりのものでは?
「いやー、最初の30秒暴れ回ってその後はヘロヘロでようやく勝てたくらいものので。けど、楽しかったですね。その後、仕事を変えて上京して、足立区のキックサークルみたいなところで週3、4回くらいの練習は趣味程度にしていたんですけど、仕事で肋骨を折って実家に帰って、何もできない中『もうやろう!』って奮起して与座の誘いに乗りました(笑)」
――そして、橋本道場入門、いかがでしたか?
「ここからが自分の本当のキックボクサー人生のスタートなので、それまでとは全然違います。週4回は本部(福生市の橋本道場)、週2回はWINGS(所沢支部)で週6回、橋本師範(橋本敏彦会長)を追っかけてみっちりやらせていただいております」
――数々の名王者を多数育て上げた橋本会長の指導はどんなものなのでしょう?
「ジムの会長さんって立場であんなに毎日こと細かに教えてくれる方って他にいないんじゃないですかね? 練習内容も技術指導も最高としか言えないです。それとうちには、歳は下でも大先輩に安本晴翔君って怪物がいて、体格が全然違くても酷い目に遭わされています(笑)」
――そんな研鑽も早々に実ってアマ大会で優勝(KNOCK OUTアマチュア-75kg)、そして、昨年末(2021年12月21日)プロデビューから、矢継ぎ早にこれまで5試合。これらをダイジェストで振り返ってください。
「プロデビュー戦(ヤン・ヤンフン戦)は、余裕で倒す予定がドロドロになってしまって『思っていたよりキビしい』って判定勝ちながら思い知らされました。2戦目(鈴木清照戦)は、11戦もキャリアのある格上相手で『噛ませ犬なのかな?』って不安の中、チャレンジ精神で特攻したら判定で勝てて、その次(ジェイク the ハンセン戦)が『普通にやれば勝てるよ』って真逆の感じにプレッシャーがかかってしまった中、なんとか2ラウンドで倒せた具合」
――順調な3連勝の後、初敗北(中島将志戦)を経験します。
「なかなか試合が決まらなくて、あるんだかないんだかわからないまま何となくの減量をして、そこから試合直前に相手が変わって、なんかモヤモヤしたまま臨んだ試合ではありますが、2ラウンドKO負け。自分のタフさに自信を持っていただけに『俺って倒れるんだ』ってショックでした。1、2週間は心痛くて引き摺りましたがもう大丈夫。ちゃんと準備して臨めば勝ちます。自信あります! 次の一歩への肥しです!」
――前回(9月19日)は、S-BATTLEミドル級王者の青谷秋未選手に判定勝ちです。
「負ける要素はなかったんですが、倒しきれなかったことに悔いが残りました」
――そして、今回のタイトルマッチです。
「プロデビューから1年足らずでここまで来させていただいて感謝ではありますが、ベルトに挑むというよりも通常のワンマッチの気持ちで臨みます」
――相手の印象は?
「何せ身長190cmオーバーですし、75kg契約とかで試合をしていたので『やることはないだろう』と思っていたから意外でした。倒したい。けど『倒したい』と力むと上手くいかないので意識しないで倒します。向こうはムエタイスタイルで技術的に巧いんでしょう。俺はテクニシャンにはなれないけど気持ちで絶対に負けない自負があります。打ち合ってくれるなら上等。そうでなくても打ち合わせて倒します!」
――長身だけにロングリーチを活かしたヒジ打ちやヒザ蹴りがあるかもしれません。
「ヒジ・ヒザでこようと対策はできています。肘打ちありは初めてですけど楽しみです。ヒジ好きです」
――ここでINNOVATION王者のベルトを巻いたとして、その次の展望は?
「行けるところまで急ピッチにドンドン突き進みます! けど、今のままの自分がRISEなどトップ戦線で通用しないことも解っています。まずは更に1年。そこで爪がかかって、3年から5年で日本最強にはなります!」
――非常なポジティブシンキングを感じます。
「それが俺の得意なパンチよりも大切な武器です。ぶっちゃけ、どんなに頑張っても晴翔君よりも巧くなんかなれません。けど、試合なら熱い気持ちで実力以上のパフォーマンスを引き出すことが必ずできるようになります。『安本晴翔は橋本師範の最高傑作』かもしれませんが、俺も師範の作品として別の輝きで負けずに光って魅せます。そんな試合をやって師範が喜ばせることが俺の使命です」
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馬木樹里「しっかりとムエタイの恐い面を見せつけて倒しにいきます」
――今回、プロ7戦目にしてタイトルマッチにたどり着いたわけですが、馬木選手といえば、天才と謡われた実弟“ピンクダイヤモンド”馬木愛里選手の印象が強いです。
「憧れですし、尊敬しています」
――2歳下の弟ながら?
「格闘技に関しては、ホンマ天才で、家族を超えていちファンとして大好きです。多彩で奥深い技術もですが“闘い”に関する考え方が凄くて」
――今も一緒に練習されている?
「土日一緒に。ミットを持ってくれたり、スパーもします」
――長らくリングから離れている愛里選手ですが、今回のタイトル戦には岡山から東京へ来られますか?
「セコンドにはつかないと思いますけど、見には来てくれます」
――そんな兄・樹里選手の存在を初めて知ったのは「愛里選手に身長190cmオーバーの陸上選手をしている運動神経が半端ない兄がいるらしい」という噂で、2019年秋に岡山ジム主催興行でプロデビューの時には「大型新人が転向してきた」との認識でした。
「陸上はキックボクシングの体力作りの為にしていただけで、はじめからキックが本命だったんですよ。それが高校特待生で迎えてくれるということで陸上部入りして槍投げでしたけれど、高校三年間はそのしばりで試合には出られなかったんです」
――それは知りませんでした。勝手ながら「弟に触発されてトップアスリートの兄が遅まきの転向」かと。
「自分的には“転向”じゃなくて変えるべき本命の舞台に“帰って来た”感覚です」
――格闘技キャリアの始まりは?
「5歳からの極真空手です」
――端正なムエタイスタイルだけにそれは意外でした。
「愛里もすぐ一緒にやって、僕は、小3か小4で全国大会3位になりました。ちなみに愛里は準優勝でした」
――それがムエタイに傾倒していくのは?
「極真から闘我塾って自前の道場に移って、小4か小5で『キックもいいな』と気軽に岡山ジムにいって、タイ人の先生がおられてムエタイを知って、そのまま今に至ります」
――子供の頃に好きだった選手は?
「ブアカーオです! 空手時代から大好きでした。ムエタイ自体が好きでルンキットなんかもいいですけどダントツです」
――今も現役トップをひた走っている伝説です。
「この前(2022年10月28日)の佐藤嘉洋さんとのレジェンドマッチは、タイ合宿中で生観戦しました」
――極端な話、現在、同階級なわけで、これからスーパージャンプアップすれば対戦することもありうる?
「三浦孝太選手とのアレ(2022年8月のタイでのエキシビションマッチ)が羨ましくて。対戦だなんて畏れ多いですが、そこまでいけるようにまずはこのベルトを獲ります!」
――191cmという高身長でスーパーウェルター級(69.85kg)まで減量するのは並大抵のことではなさそうです。この契約体重は初めて?
「はい、プロデビューは84kgでしたが大丈夫です。プロとしての仕事なので」
――デビュー戦が84kgとは驚きです。
「陸上をやっていた時、筋トレにはまって筋量を増やしまくっていましたから。けど、早くから70kgをホーム階級にすることは決めていたので、着々と試合毎に契約体重を下げて、前回の試合(2022年10月2日)では71kgでした」
――このINNOVATIONスーパーウェルター級タイトルを狙って?
「はい! しかし、ここが目標ではありません。これは巻いて当然のベルトで通過点。ここで躓くわけにはいきません」
――相手の風間大輝選手は5戦4勝1敗。互いに好戦績のルーキー対決です。
「以前から風間選手の試合は見ていて『凄く良いな』『近くやる時が来るだろうな』とチェックしていました」
――具体的な印象は?
「フィジカルが強くて好戦的。何より橋本道場の選手なので特に燃えています!」
――岡山ジムと橋本道場は親交深く、馬木選手も安本晴翔選手などと仲がいいとは聞いております。
「最高の名門ジムでリスペクトしかありませんが、それだけに絶対勝ちたいです」
――そんな思い入れのある今回の試合、どう戦われますか?
「向こうは猛ファイターで典型的なキックボクシングスタイル。僕がテクニック重視のムエタイスタイルだから対極ですよね。綺麗で格好良い試合を作りますが、だからといってポイントアウトで終わらせる気はありません。しっかりとムエタイの恐い面を見せつけて倒しにいきます!」
――純キックボクシングルールのINNOVATION王座戦だけに5回戦のヒジ打ちあり、首相撲無制限です。
「ヒジ打ちありは、以前、NJKFとの対抗戦との時以来2回目で5回戦は初めてですけれど僕はムエタイですから望むところです」
――ここで勝利してINNOVATION王者となった後の展望は?
「RISEやRIZINといった大きな舞台でしっかりと名前を売りたいです」
――RISEなどの大手プロモーションは、肘打ちなしルールが主流です。
「それも全然問題ありません。(ムエタイからK-1で頂点に立った)ブアカーオを目指しているのですから当然です」
――最後に意気込みとメッセージを。
「岡山ジムの在間啓一会長や田村信明相談役にいただいたチャンス、必ずものにして、父母への報恩感謝を忘れず、ここから大きく羽ばたいてみせます。愛里以上に強く、高く!」