UFCとかRIZINとコンセプトは違うんです
――今後も続けるとすれば、強さを求めるプロレスラーに参戦してもらいたい、と。
「いや、強さを求めているんですけれど、求めていないんです、今の時代は。というのは、負けてもいいんです。勝敗よりもプロレスラーとして何を伝えられるか、だと思うんです。負けてもいいし、格闘技の技術がなくてもいい。猪木さんの世間に出すエネルギーのように、1人のレスラーが技術がなくてもそこを表現すればいいんです。
もっと具体的に言うと、ボクシングの試合で世界王者vs.4回戦はあり得ないですけれど、もしやったとして4回戦の選手が秒殺される可能性があったとします。だけど秒殺された方の選手はそれが財産になるんですよ。自分がどれだけその試合に向けて練習をしたかというのは試合に出るんです。結果は負けてもその1カ月か2カ月練習したことって表には出ないですけれど、自分の裏の世界では財産になるんですよ。あとはリング上で表現するのであれば、どういう負け方をするかで。これは語弊がありますけれど、中途半端に負けるのではなく、負けるのだったら正々堂々と綺麗さっぱり自分の散り際を考えながらやってもいいと思う。
もうひとつのパターンで言うと、パンチをもらったけれど死に物狂いで相手に向かっていく、その気持ちが伝われば僕は凄くいいと思う。だから強い弱いは関係ないです。プロレスラーとしてどういう表現をするかを僕は期待しています。だからUFCとかRIZINとコンセプトは違うんですよ」
――今のプロレスラーたちに、そのコンセプトに賛同して欲しいとの気持ちはあるでしょう?
「いや、賛同してもしなくてもいいです。やらない選手はやらないんですから。GLEATの中でも純プロレスとU系の選手と分かれているので。だから別にそこは求めてないです。そういう選手が1人いればその選手だけでいいです。その選手もいなくなったら僕が1人で語ればいいだけ。井土もプロレスラーは強くなければいけないという発想の持ち主なので。だから今、練習を見ていますけれど肌感覚で感じるには僕らがやってきたことに近い選手なのかなと思いますね。僕も何人も見てきましたけれど、口で表現する人、内面で表現する人、いろいろいるわけです。何となくですけれど井土は僕らに近い選手かなと思います」
――最後に、UWFやUスタイルと聞くともう古いもののように感じる人は多いと思います。でも、田村さんの中では時代に合わせて進化しているものなんですか?
「進化していると思います。僕だけ進化している感じですね(笑)。U-FILEにも僕の精神を引き継いでいる選手っていると思うんですよ。いつかどこかで交わることがあれば歴史の1ページになるでしょうし、井土が格闘家としての心構え、プロレスラーとしての心構えだったりが僕と近い考えであれば多分その選手と井土が交わる可能性があるでしょうし、そこは分からないです。それは5年、10年、20年経ってあの時に田村が言っていたのはこういうことだったんだというのを分かる人が1人、2人いればいいなって期待を込めています」
なお、『ゴング格闘技 2023年1月号 NO.323』で田村はアントニオ猪木の格闘家の部分“サブミッションレスリング”の実力についても語っている。